人。人。人。
自分の目の前は人ばかりだ。
いらいらと感情が積もってくるうちに足音もどんどん粗くなってくる。
「まったく、お父様は何処に・・・。」
目線を右から左。見える限りでは店の中まで。
いまだに自分が迷子とは信じられない。
己の今の状況を受け入れがたく、父親に怒りを感じつつも止まっていてはどうにもならないので
足を人ごみのなかに勧めていた。。
父親を探すために店の中などをみていて前を見ていなかったので当然といえば当然だが、
唐突に前から衝撃をうけた。
「ったー・・・。」
ぶつかった衝撃で痛む鼻を軽く押さえていると
ぶつかったモノ、おそらく人だと思われるモノからの甘い香りが鼻腔をくすぐった。
「あぁ。すまない。大丈夫か?」
子供の声なのに随分と大人びたしゃべり方。
おどろいて目線をあげると、自分よりすこし背が高いぐらいの白い長い髪の少年がそこにいた。
髪をゆるく一つの三つ編みにして肩から前にたらしている。
瞳は金色ですこし切れ長。色白ですっと通った鼻梁。
彫刻かと思われるほどの美しさに息をとめた。
生きているものだろうか。それとも幻想だろうか。
とにかく目の前にある事実が現実か夢か。その判断がつきかねた。
「少年。息を吸わねーと死ぬよ?」
「!?」
そういわれて、息苦しい事にようやく気がつき、息を吸い込む。
どうやら自分は息を止めていたらしい。
「大丈夫か?」
「あぁ・・・。」
酸素が足りなくて、すこし頭がくらくらする。
ふらりとよろけそうになったところを目の前の男に支えられた。
「ゆっくり吸え。んで、ゆっくり吐け。」
男に言われたとおり、呼吸を繰り返すと大分楽になった。
(あぁ。そうだ。今頃だけれども。)
「僕に命令をするな。」
目じりを上げて目の前の綺麗な顔をにらみつける。
しかし、その様子にまったく臆した様子がなくそいつはくすくすと微笑んだ。
「お前、かわいーっ!子犬みてェ!!」
「は!?お前何を・・!?」
いきなり、抱きつかれて二の句が告げなかった。
そしてとたんに香る甘い匂い。
どうやら先ほどの匂いはこいつの匂いだったらしい。
しかし前言撤回。
大人びた話し方なのは気のせいだったようだ。
「お前・・・!無礼だぞっ!!」
もう少しこのまま抱きしめられていたいというおかしな気持ちをきりはなし、相手を突きはなす。
そして再び相手の目をにらみつけた。
だけど相手はやはり臆した様子はない。どこか楽しそうにニコニコと微笑んでいるだけだ。
「敵意むき出しで、かわいいっていってんの。
・・・・あ。ちょっとまて・・・どっかで見たことある顔だな・・・。」
目の前の綺麗な奴が突然、真剣な目つきになる。
僕を放ってくみてみればコイツはローブを着ていない。
マグルの服装。もしかして、穢れた血か・・・?
いつもならそんなやつとは言葉すら交わしたくない。
だけど今はそれを理由に自分がこいつを嫌えるとは思えない。
なぜだろうか。
「あー。マルフォイだ!ルシウス=マルフォイ!思い出したーっ!!」
そいつは無礼にも人差し指で僕の顔を指差して、妙に楽しそうに笑った。
しかも、父の名前を呼び捨てで。
「・・・・お前、お父様を愚弄すると・・・。」
「んなこと、しねぇって。」
からからとそいつは笑うと、右手を差し出した。
「俺は=ウィクリフ。よろしくー。お前、あれっしょ?ルシウスのご子息。」
「そうだけど・・・・。」
「んじゃぁ。名前教えろ。ほら、握手。」
とか名乗ったそいつは無理矢理僕の右手を取って握手をさせる。
「な!?僕はお前と仲良くするつもりなんかない!穢れた血め!」
「お?」
はきょとんと目をまるくする。
「残念ながら俺は、純血な魔法使いだけどー?」
「うそをつくな!?」
「嘘じゃないって。ほら、名前ー。言わないと俺、お前帰さないぜ?」
「っ・・・・・。
・・・・ドラコ=マルフォイだ。」
「ドラコ!?」
きらきらとの目が新しいおもちゃをもらった子供のように輝く。
しかも、ファーストネームをいきなり呼び捨てする図々しさ・・・。
「おま・・・・っ。」
「かっくいいー!ルシウスよりかなりいいし!」
「・・・・・。
そ・・そうか?」
かっこいいと直球で言われ、思わず頬が赤くなる。
なにを照れているんだ、僕は。
相手は男だぞ。・・・多分。
「なぁ、ドラコって呼ぶから。俺の事ってよべよ。」
「・・・強制か?」
「当然。」
命令口調で言われるものの、何故だか嫌な気はしない。
こんな人物は初めてだ。
息を深く吸い込んでから、目の前の綺麗な顔を再び見た。
「よろしく、。」
「おう。」
改めて握手を交わす。
「ちなみに・・・男だろうな?」
「・・・・いやん。女よ?」
「・・・・・・・。」
「冗談。れっきとした男だからご心配なく。」
くくっと、子供らしくない笑いをこぼし、は首をすくめて見せた。
「んじゃー。俺、買い物あるから。
ルシウスはすぐ見つかる。な。迷子くん?」
「・・・・な!?何故ソレを!?」
「みればわかるって。じゃーなー。」
「おい、!?」
名前を呼んだが、の姿は人ごみに隠れすでに見えなくなっていた。
手には温かさがまだ残っている。しかしあれは現実だったのだろうか。
「ドラコ。」
頭上から声がかかり僕は一気に現実に引き戻されて
目をしばたかせて声のしたほうを向いた。
「お父様・・・。どこにいってらしたんですか。」
「気がついたら、お前がいなかったのだ。すまないな。
・・・・それにしても、誰と話していたんだ?随分と親しげだったようだが。」
「です。友達になりました。」
「・・・・?」
その名を聞いたとたんに父親の目がおどろきに見開かれた。
その反応に僕はピクリと肩をゆらす。
「まさか、=か!?
いや・・・そんなはずは・・・。」
「いえ。=ウィクリフですが・・・・。
お父様、もしかして知り合いですか?
向こうも知っているような感じでしたけども。」
「いや・・・。違うはずだ。
・・・・。似たような名前の友が昔いたものでな・・・。」
遠くを見つめる父の視線を不思議に思ってその先を追う。
「お父様?」
「いや・・・・必要なものは全てそろったか?」
「はい。」
「では、帰ろうか。ドラコ。」
「はい。お父様。」
20040918