さっきからキングス・クロス駅の9番ホームをなんども行ったりきたりしている。

ここを通るのはもうこれで何回目だろうか。

たくさんの荷物が入ったカートを押していて、いい加減疲れてきた。

終いには溜息まで出てくる始末だ。



「9と4分の3番線・・・って言われてもね・・・・。
 ・・・それにしても不覚だわ。」



もうすこしちゃんと入学案内を読んできたほうが良かったかしらと頭の隅で思うが

今となっては家に引き返す事もできない。

汽車が出るという11時にはあと30分といった時刻を時計の針はさしている。



「案内係とか配置するとか考えられないのかしら?」



ぶつぶつと口の中で呟き、9番ホームの看板を恨めしげに見上げる。



「あんたもホグワーツに行くのか?」


「?」



背後から同い年ぐらいの少年の声がした。

振り返ってみると、そこには自分と同じように大荷物を積んだカートを携えている

人間かと疑うほどの美貌の持ち主。

白く長い髪をゆるく三つ編みにして肩から前にたらして、その髪と同化するかと思えるほど白い肌。

金色の瞳はどこか楽しそうに笑っていて、片手が腰に添えられている。



「・・・・あなた・・・妖怪?」


「は?」



とっさに頭に浮かんだのはとんでもない美貌をもつという妖怪。

本で読んだ気がするのだが、今は名前が思い出せない。

金色の瞳がまん丸になり面白そうに自分の顔を覗き込んできた。



「あんた、おもしれー・・・・。
 あ、いや、そうじゃない。俺、れっきとした人間だから。」



からからとその少年は笑う。

少年が人間だということはわかったが今はソレよりも先にきくことがあった。



「あなたもホグワーツに行くの?」



さっきホグワーツという単語が確かに聞こえた。

マグルはホグワーツという単語を知らないし、何よりもこの大荷物。

確実に同じ種類の人間だろう。



「あぁ。あんた困ってるみたいだから、行き方教えてやろうと思って。
 ・・・・・9と4分の3番線の。」



耳元にそっと息を吹き込まれるかのように告げられた単語。

人形のように綺麗な顔がすぐ近くにある。

心拍数が異様に高くなった。



「・・・・えぇ・・・・教えて・・・くれるかしら?」



よし、偉い私。

ちゃんと戻ってこれた。

それにしてもポーカーフェイスをちゃんと作れてるかしら。

さっきから顔に熱が上がってきている気がしなくもない。



「・・・・あなたは一年生?」


「おー。あんたと同じ一年生♪」


「・・・・あんたじゃないわ。ハーマイオニー・グレンジャーよ。」


「それは失礼 Ms グレンジャー。
 俺の名前は=ウィクリフ。よろしくー。」


「えぇ。よろしく。Mr ウィクリフ。
 ところで、9と4分の3番線の行き方は?」



なんとか、自分のペースが戻ってきた。

強気に言葉を返す。

はにっこりと笑みを返した。



「あー。そうそう。そこの9と10の間の・・・・柵?まぁいいや。
 それに走りこみましょう。」



楽しそうに人差し指を立てて言われた言葉に耳を疑った。



「あなた・・・頭おかしいんじゃない?
 そんなことしたら・・・・。」



くすくすとは笑い柱に目線を移す。

不思議そうに行動を見守っていると、私のカートを9と10の間の柵と平行にして、私の手にカートを握らせた。



「ハーマイオニー。あんたが行こうとしてるのは魔法学校だって言う事をおわすれなく。OK?」


「・・・・OK.」 


「Ready?」


「・・・YES.」


「GO!」



合図と共に背中を押される。柵に向かって走り出す。

目の前に壁が迫ってきた。背中に冷たい汗が流れる。

ぶつかる。そう思って目を閉じた。

しかし思っていた衝撃は体を襲ってこない。

・・・・・おかしい。足はまだ進める。

目を開けると、先ほどとは違う乗客でごった返すホームにきていた。



「・・・・?」



紅色の蒸気機関車には『ホグワーツ行特急11時発』と記されている。

改札口を見てみると9と4分の3番線という表示。

後ろの柵を見てみると悠々とした歩調でが出てくるのが見えた。



「あなた・・・走らなくて良かったの!?」


「あ?・・・あー。だって最初から歩きはコエーかなぁと思って。」


「走ったほうが怖いわよ!」



涙目になって、の襟元を掴むとはにぃと微笑み、鼻先に唇を落とした。



「怒んなって。可愛い顔が台無しだぜ?」


「な・・・!?」



顔が赤らんでいくのを感じた。

どうすればいいかと困惑している私の頭をはよしよしとなぜた。



「あなた・・・その年で手馴れてるなんて・・・・・。」



なんとか絞り出した声だが、それは弱々しくて反撃にはならない。

襟元から手を離すと、は微笑さえ浮かべて見せた。



「褒め言葉としていただいときます。
 さ、乗ろうぜ、ハーマイオニー。早くしねェと、コンパーメントなくなる。」



からからとカートを押してさっさと先に進んでいくの後を急いで追う。



「ちょっと!待ちなさいよ、!!」


「やーだね。」








20040919