「ちょっと、見た!?中庭の白い髪の人!!」
黄色い声が談話室に響き、眉をよせてその声の出所に目線を向けた。
おそらく一つとか二つ上かと思われる上級生で、頬はほんのりと赤く染まっていた。
うるさい。と口元で呟き読んでいた本に再び目を落とす。
しかし頭は先ほどの声に気を取られていた。
白い髪。
それが良く似合う人物を想像して、知らずのうちに溜息が漏れる。
「どうしていないんだ・・・・?」
ダイアゴン横丁で出会った人とは思えないほどの美貌をもった少年。
あの場にいたということはおそらくホグワーツの生徒であろう。
キングクロスからの汽車の中で目撃情報がいくつか寄せられている事もあってそれは確実。
しかし、今日まで一度も姿を見ていない。
あれだけ目立つ容姿で、なぜ今までみつからないのか。
そこまで考えて再び溜息をつく。
だいたい僕がどうしてあいつの事でこんなに悩まなくちゃいけないんだ。
手元の本の内容はちっとも頭に入ってこない。ただ情報として通り抜けるだけ。
組み分けの儀式のときに最後に呼ばれたその名前。
あいつかと思って期待したのに、そいつはぼさぼさの頭の似ても似つかない暗い奴。
そいつをなんどか廊下で見たことがあるけど、大抵一人で行動していて。たまに穢れた血の女といる。
同姓同名なんて紛らわしい。期待させた分を返せ。
僕から言わせてもらえれば、たいした奴ではない。
「おい!中庭の白い髪の美人みたか?!」
今度は男の先輩の声。今日は随分と騒がしい。
両性から騒がれているから、男なのか女なのかははっきりしないが、そんなに美人なのか。
気がつくと回りはその白い髪の人物の話でもちきりなっている。
状況からさっするにほぼすべての生徒が認めるほどの美貌のようだ。
そこまでいうほどの美人がなぜ今更になって騒がれるのか。
新入生であったとしても、組み分けの儀式で一度全員の顔は見ている。
ぽっと、湧いて出たわけでもあるまいし・・・・。
「・・・・!!」
まさか、まさか、まさか。
違うだろ。と頭の中で冷静な僕がつっこみをいれるが、身体はソレに反して勝手に動く。
がたりと、椅子を倒しそうなぐらいの勢いで立ち上がり、読みかけの本を床に落とし、足音を荒くして談話室を出る。
談話室は騒がしいので僕一人が椅子を倒したりしても誰も気には留めなかった。
目指すは中庭。あいつがいるか確認するだけ。
違うのであれば何も知らないふりをして戻ればいい。
野次馬といっしょにはされたくない。
いつもは2、3人程度の人しかいないバルコニーがあきらかに定員オーバーといった様子でひしめき合っている。
多分理由は”中庭がよく見えるから”だろう。考えることは同じらしい。
人ごみを掻き分けて、前へ出るとちょうど死角となっている木の陰に数名の人影が見えた。
おそらくあの中の一人にその美人・・・アイツがいるはずだ。
「見えない・・・・。」
見えそうで見えない。ここにいても埒があかなさそうだ。
その人ごみを抜け出して、直接中庭へと続く道へと足を進める。
自然と歩調が早くなる。なにをあせっているんだろう。
中庭への入口から二人のグリフィンドール生が現れた。
足はグリフィンドールの寮に向いている。
茶色のふわふわとした髪の穢れた血の女と白い髪の・・・。
「!!」
のどが張り裂けそうなぐらい大きな声でそう叫ぶと、二人は足を止め不思議そうに振り返った。
間違えるはずがない。これほど印象的な顔なのだがから。
後姿だけでも、なにかそいつにしか出せないようなオーラのようなものがにじみ出ているのだ。
「あー。ドラコじゃん。」
へらりと、は笑う。
その笑みになんだか、カチンと来るものがあって目をまっすぐに見据えた。
おぉ、怖い。とは冗談めかして言うと、横にいる女は心配そうにを見上げた。
「おい。」
どうして、がそんな女とかかわっているんだ。
よくわからない怒りのやりどころに困って、女を睨み付けてやると、女は一瞬ひるんだものの強気にもにらみ返してきた。
は苦笑いを浮かべ、しょうがないとでもいうように僕に視線を向けてからそいつに笑みを向けた。
「わりぃ。こいつと話しあるから先もどっといてくれるか?」
「・・・わかったわ。気をつけてね、。」
「ご心配なく。」
ひらひらと手を振って、そいつを見送るの腕を引き自分のほうへ引き寄せた。
自分の方を早く見て欲しい。
その思いが今は頭の大部分を支配している。
「どした?」
「、僕に言わずに何処にいたんだ?」
「え?ここにいましたって。」
「僕は一度も見てない!!」
「げぇ・・・さっきおんなじような事訊かれたしぃ。
つーか、見てたってー。」
あきらかに間延びした不真面目な答えに僅かに背が高いを見上げてにらみつけた。
なかなか見つけられなかったと言う事は学年が違うのだろうか。
とりあえず、その疑問をぶつけて見る。
「・・・・学年は?」
「第一学年。」
「同い年じゃないか!?
組み分けのときには僕はを見なかった!」
「俺の名前は=ウィクリフ。ちゃんといたろ?」
「お前じゃなかったじゃないか!」
「俺だってー。あれは俺なの。」
「・・・・そんな話信じるか!」
「あー・・・。」
どしたら信じてくれるかなー。とめんどくさそうには目線を泳がす。
そして、何か悪戯気な笑みを浮かべると僕のネクタイを持って、ひっぱった。
「なっ!?」
「これで信じとけ。俺のいうことに嘘はない。」
息がかかるぐらいまじかにの顔がある。
長い前髪が頬をくすぐり、一瞬後には額に濡れた感触が落ちた。
周りからなにやらピンク色の声が飛ぶ。
「!?」
「信じる気になったぁ?」
えへ。っとは小首をかしげて見せる。
これは一応恥じらいを演じてるつもりだろうか。様になっているような様になっていないような。
額に触れたものを妙に意識してしまって、心臓がバクバクと早打ちをする。
「・・・・男のお前にキスされても嬉しくない!!」
「またまたー。うれしぃ癖にー。」
「っー・・・・。」
「ありゃ、図星?」
くすりとは妖艶な笑みを浮かべた。
近くにいた女の先輩方が一瞬にしてトキメくのが見て取れた。
これで12歳なのだから間違えなく詐欺だ。
僕が知る限り、12歳はこんな笑い方しない。
「とりあえず信じたな?
あれは俺なの。OK?」
「あぁ・・・。信じてやる・・・。」
いつまでも軽い調子で言われる言葉に仕方なしに承諾する。
でも、先ほどのことで疑いとかそういったものがどうでもよくなってしまった。
心境的にこいつがいうなら間違えない。見たいな感じで。
「それはどうもー。
さてと・・俺は昼寝の邪魔されたからもう一眠りすることにするから。
つーことで、また夕食ん時に。」
快活に笑うそいつは、噂のまわるスピードからして授業がおわってすぐに中庭で昼寝を始めたはずだ。
大体1時間程度、その上まだ寝ると。
「寝る子はそだつんだぜ?」
考えていたことが表情にでも出たのか、口の端をあげては面白そうに微笑を浮かべた。
この自己中心的な感じでは、何を言っても聞き入れそうにはない。
「じゃぁ・・・夕食のときに。」
「おー。じゃぁな、ドラコ。」
ひらりと手を振り、はマントを翻しその場をゆったりとした足取りで去る。
その足が進むのと同じくらいから足を進め、スリザリンの談話室に向かう。
なんどか後ろを振り向いたが、は振り向いた様子はなく目線があう事はなかった。
少し寂しい気分にもなったが、そんなところは寮生はおろか他寮生に見られたくない。
胸を張って、もう振り返らずに談話室に向かった。
とりあえず、捜し求めていたというと大げさだが、探していた奴を見つけられて良かったと思った。
20040928