わずかに残り火がともる談話室の暖炉。

その1番近くの肘掛け椅子に腰をかけて本を読んでいるとハリーとロンの姿が目の端に映った。

談話室は既に薄暗くあの位置からだとコチラの姿は見えないはず。

ちなみに俺は例外。ばっちりハリー達の姿は見えてます。

肖像画への穴にハリー達が足をかけようとした瞬間にハーマイオニーが現れた。

ピンクのガウンが可愛らしい。まぁ、それは置いておこう。



「ハリー。あなたがまさかこんなコトするなんて思っていなかったわ。」



そうか?

ハーマイオニーには申し訳ないが、思わずそう思ってしまった。

ジェームズの息子なのだから、これぐらいするのは当然な気がする。

むしろ俺に言わせればまだ甘い。

これぐらいは悪戯仕掛け人達に比べればまだまだ序の口だ。



「また君か!ベットに戻れよ!」



・・・・ロン。

そこで大声だすなよ。

下手すりゃ先生が気付くぞ?

ついでに言わせてもらうと、ハーマイオニーはお前らの事を思っていってるわけだし。


ハーマイオニーがパーシーに言うだの聞いて、

また、わぁわぁやって、三人が肖像画の穴から外へ降りる。

おーい。ハーマイオニー。それじゃお前も同罪になるって。



「・・・俺も行って見るかねぇ。」



自然と口元に笑みがのぼる。

なんたって楽しそうだし。

ずばり題名は『ハリーたちの初☆夜中のお出かけ』でどうだろう。



「どーせ、ドラコが言ってた昼のやつに行くんだろうけどー。」



だけど、ドラコは来ないだろう。

ハリーを落とし入れる為の罠。

おそらく明日、罰則をうけるハリー達を見て笑うつもりなのだろう。



「・・・・ったく、せこいよなぁ。」



そして、わかりやすい。

口ではけなしておきながらも、俺の表情は楽しそうな感じになっているはずだ。

ドラコのそんなところは嫌いじゃない。ある意味でまっすぐでかわいらしい。

くくっと、笑うと談話室の肱掛け椅子から立ちあがり

好きな様に遊ばせていた白髪をゆるく一つの三つ編みにまとめた。

肖像画の穴に足をかけたところでふと、太った婦人の散歩時間だったことを思い出す。

出るとしばらく帰って来れなくなりそうだ。

まぁ、いいだろう。



「「「「あ。」」」」


「・・・・・・・・お前らなんでまだいるんだよ。」



予想していなかった状況に溜息をつく。

だいぶ前に出たはずの三人+一人を呆れた表情で眺めてから、

ばたんと肖像画を閉めた。



「「ああ!!」」


「ハーマイオニー、ネビル。静かにしろ。」



そんなんじゃばれるっつーの。

大声出すなって。



「なっ・・・なんてこと!なんか役立たずだわ!」


「そっ、そうだよ、!僕、折角中に入れると思ったのに!」


小声でやたら怒られる俺。

しかも役立たずとかまで言われてます。

どうしましょうか、お母さん。



「・・・・お前ら、ハリーたちと一緒に行くんじゃねぇの?
 つーか、なんでネビルがいんの?」


「・・・・・。」



ネビルは顔を赤らめて斜め下を向いた。

それで、大体察しはついた。



「あー。合言葉忘れたのな。」



例の如く。



「!?・・・なんでわかるの!?」


「やー。わかるだろ。・・・なぁ?」



他の三人に目を向けて見ると、一様に頷いた。

ネビル=合言葉を忘れやすい。の式が俺の中では大分前から組立っている。

ちなみにここまで全て小声で会話は進んでいます。

そろそろ進みましょうよ、皆さん。

ハリーがシーっと。人差し指を口元に持ってきて、目配せで進む様に指示をした。


いつのまにか俺もこの集団の中に入ってるらしい。

確かに最初から行くつもりではあったけれども、予定では一人のはずだった。

まぁ、人数は多いほうが楽しいからよしとしよう。


足音を忍ばせて、なおかつ大急ぎで四階への階段を駆け上がる。

しかしハリーたちはMrs.ノリスにもMr.フィルチにも会わなかったことを少しはおかしいとは思わないのだろうか。

トロフィー室に入ってみると予想通り、ドラコ達はいなかった。

きらきらとトロフィーが光っているのは罰則でひたすら磨かれているからだろう。

Mr.フィルチはなにげに学校に貢献している。



「遅いな。多分怖気づいたんだよ。」



ロンが杖を取り出して構えているハリーに囁く。

・・・そんなはずないだろ。

気付け。なんつーか、純粋すぎだ。お前ら。



「いい子だ。しっかり嗅ぐんだぞ。隅の方に潜んでいるかも知れないからな。」



隣りの部屋からMr.フィルチの声がした。

4人の表情が一瞬にして凍りついたのが分かった。

それとは逆に俺は笑みすら浮かべて見せる。

ハリーはめちゃくちゃ焦って、俺達に向かって手招きをし、彼を先頭にして5人とも部屋を出る。

丁度入れ替わりにMr.フィルチがトロフィー室に入ってきた。



やっぱりドラコはハリーをはめた様だ。

俺が行くと知っていたならやめていただろうか。

そんなことを考えながらハリーについていく。


一応、ココまでは順調。間一髪ではあるけれども見つかってはいない。

だからこそ、なんか起こりそう。そうは問屋が卸さない

そう思った瞬間にロンとネビルが倒れた。

鎧が倒れてガラガラと大きな音が響き渡る。

まぁ、お約束と言うかなんというか。

Mr.フィルチには確実に聞こえただろう。

笑いを押し殺して二人を見てから、ハリーに視線を移すとますます焦った表情を見せた。



「逃げろ!」


「ほい来た。キャプテン♪」



一人だけ楽しそうな俺をよそに

他の3人はいまいちどこに行きたいのか分らないハリーについてかなり懸命に走る。

多分先頭を走っている本人もどこに行こうとしているのか分っていないだろう。

はたして、どこに辿りつくのやら。



「あー・・・・。」



すこし考えてから心当たりを見つけた。

おそらくあの部屋だろう。

・・・・なるほど。

あれはこれを予期していたのか。


タペストリーの裂け目の近道に気付いたらしいハリーがそこに入り込む。

行き先は『妖精の呪文』の教室の近く。

これでなんとかMr.フィルチは巻けるだろう。



「フィルチを巻いたと思うよ。」



冷たい壁に寄りかかり、ハリーは息も途切れ途切れにいった。

ネビルなんかせきこんでるし。

弱ぇ・・・・。ネビル、俺はもうちょっと運動する事をお前にオススメする。



「だから――そう――いったじゃない。」



ハ−マイオニ−もかなりお疲れの模様。

運動不足が多いな、これは。



「グリフィンドール塔に戻らなくちゃ、できるだけ早く。」



ロンはとりあえず俺の基準をクリア。

で、結局ハーマイオニーはドラコにはめられたという結論に陥ったようだ。

ハリーも納得してなさそうな顔をしているが、恐らく心の中ではすでに答えは出ているだろう。

ただ、ハーマイオニーの前ではその事はいいたくないのだと思う。

ったく・・・負けず嫌いめ。



「行こう。」



ハリーがグリフィンドール塔へ向かって歩きだす。

しかし、やはりそうは問屋が卸さない。

世の中は上手くいかないものだ。

ガチャガチャと近くの教室からドアノブを回す音。



「あー。ピーブスじゃん。」



俺のその声にコチラを振り向く教室から出てきた物体。

一瞬、俺を見て表情が凍ったが、ハリー達をみてそれはまた元に戻った。

歓声とかあげちゃってるし。

ハリーが頑張って交渉してるけど、こいつ相手じゃ交渉なんて意味をなさない。


で。


ロンが怒ってピーブズを払いのけようとしたわけだけど、これが間違えだった。



「生徒がベットから抜け出した!――『妖精の呪文』教室の廊下にいるぞ!」


「あらまぁ・・・・。」



俺は感心したかのような声を出した。

これだけ大きな声ならばきっと城中に響き渡っただろうに・・・・。

大声選手権とか出たら素敵な感じだろうか?

ピーブズをみて突っ立ていると、ハーマイオニーに力任せに引っ張られて俺もまたなんか走らされた。


廊下の突き当たりで鍵のかかったドアにぶつかる。

どうやらここがダンブルドアが言っていた立ち入り禁止の廊下への入り口のようだ

4人はもちろんフィルチから逃げる事で精一杯で気がついていない。



「もうダメだ!」



ロンが叫ぶ。

ダメなはずは無い。

あの部屋・・・というか廊下に辿りつくはずだから。



「・・・・・・・・絶対につかまらねぇよ。」


「「は!?」」



何を根拠に!?

そういいたそうにコチラを見たのでクスクスと笑って見せると、ハーマイオニーが切れた。



「なに馬鹿なこと言ってるのよ!」



容赦なく頭をはたかれる。

促されて5人一緒にドアを押して見るが開く気配は無し。


開けてやる事も出来るけど、俺が開けるのはなんか嫌だ。

つまらないし。



「おしまいだ!一巻の終りだ!」



気が狂った人のようにハリーは叫んだ。

Mr.フィルチと思われる足音が近づいてくる。

おそらくピーブズの声を聞いてかなり急いでやって来たのだろう。

やたら足音と足音の間隔が短い。

このままでは見つかる。

・・・そろそろあの呪文使うしかないか?



「退いて!アロホモラ!」



ハーマイオニーがたくましく、ロンを押しのけて俺が唱えようとしていた呪文を唱えた。

さすがー。

おしみなく拍手を送りたい気分だが、今はとりあえず中に入るのが先。

扉の中に入って、まず最初に大きな目が見えた。

これも予期していた事なので、特に焦る必要はない。

ネビルはこの生物に気付いている様だが、

他の三人は扉に耳を押し付けて外の様子をうかがっている。


フィルチとピーブズの・・・・漫才がおわって、

安心した三人はネビルにローブを引っ張られて、こちらを振り向いた。

見る見るうちに顔色が青ざめていく。

妙な奇声を上げると、4人は扉を閉めてグリフィンドール塔の方へと走っていった。


俺をおいて。


ちくしょう。薄情ものめ。



「あーあ・・・。置いてかれたし。なぁ・・・どう思うよ。」



扉のほうを向いて、それからそのまま頭を逸らして3面犬を見た。

さきほどとは打って変わって、犬は唸る事をやめ、敵意もすでにこちらには向けていない。



「おひさしぶりー。おまえルビウスのワンコだろ?」



にこっと微笑み、1番近くにあった頭をなぜると、くぅーんと随分可愛らしい声を出した。

一応、顔見知りでよかった。

そうでないと、どうなってたかわかったものじゃない。

俺じゃなくて、このワンコが。

動物虐待はいかんと思うのですよ。



「大変だよなぁ・・・お前も。散歩行きたいだろ。」



空間全てを埋め尽くしている大きな身体を見上げて、

くすくすと笑うとべろりと顔をなめられた。

わんこは満足そうにワンと鳴く。



「・・・・べとべとになったぞ、おい。」



髪が額に張り付いて、犬特有のにおいがする。顔なんか湿り気ばっちりだ。

戻ったらまっさきに風呂に入ろう。そう心に誓う。

とりあえず、このワンコには聞かしておかなければいけないことがある。



「・・・そのうちややこしいのが来るから頑張れ。」



きょとんと、3匹っていっていいのかな。全部頭が首を傾げた。

俺は笑みを深めて見せ、ワンコの足もとの扉に視線を向けた。

この奥にあるものの寿命はあとわずか。



「・・・・そのうち分る。さて、俺もそろそろ戻るわー。」



そろそろハリーたちが気付いて心配しだしてくれてる・・・はずだから。

きぃ、と扉を開けるともう一度ワンコを見て微笑む。



「頑張れよ。」



ワンコは大きく一声ないた。











2004/11/06