さくりさくりと草を踏み分ける音が森の中に響く。
立ち入り禁止。
そういった意味合いを持つ禁じられた森。
この時間に。
この場所に。
人がいるということはめったにない。
いるのは自分のように人には言えないことをしているもの。
「あ。いた」
「!?」
突然人の声が聞こえた。
なぜ、この時間。この場所に。
驚いて、後ろを見ると驚くほど綺麗な白い髪の子供。
たしかグリフィンドール生の一人だったような気がする。
学年はポッターと同じく一年。
ポッターばかりにかまっていたので、残念ながら名前は知らない。
・・・・・。
どうやら、また猫をかぶらなくてはいけないらしい。
「き、君。せ、せ、生徒はも、もう就寝のじ、時間ですよ。」
「まぁまぁ、固いこというなって。クィレルせんせ。」
くすくすと笑う目の前の本当にまだ幼い少年。
いったいこの時間に何をしていたのか。
「つーか、どもりすぎ。」
くっくっと、歳に似合わない笑いをこぼし、その少年は近くの手ごろな岩に腰を下ろした。
そして怠惰そうに足を組んで、私に目線をしっかり合わせる。
やましいことをしているからという事もあるのだろうけども、強い金色の光のともった瞳からは目をそらしたくなった。
まるでターバンの下に隠れている主がまるで見つかったような気分になる。
見通されている。というそんな気分さえもする。
「き、君。い、いいかげんに、か、帰らないとグ、グ、グリフィンドールから、げ、減点します!」
「あー。それは勘弁。
せっかくハリーたちががんばって稼いだ点数無駄にすんな。
ま・・・それじゃぁ。言いたいことだけ言って帰りますかねぇ。」
「?」
月光に整いすぎともいえるような顔が照らされる。
睫毛が瞳に影をおとし、その先の瞳が子供とは思えないような表情を作った。
「弱いもんを殺すのはやめとけ。」
「な、なにを、い、いってるの、で、ですか?」
「今のままじゃ自身の身を滅ぼす事になるぜ?クィレル先生?」
「!?」
少年は岩から立ち上がりながらまっすぐに目を合わせてそういった。
まるで自分がしている事を知っているかのような口ぶり。
背後で主の気配が揺らいだ。
「じゃ。せんせー。俺は帰りますんで。減点は勘弁つーことで。」
特に何の説明もなしに本当に言いたいと思ったようなことだけ。
もう用はないということで、すでに足は城のほうへ向いている。
背中を見送っていると、森の中からケンタウロスが現れた。
その少年に近づいて行き一言二言話すと、
あのプライドの高いケンタウロスとは信じられないことにたてがみをその少年におとなしく撫ぜられ共にその場を去った。
「先ほどの奴は誰だ。」
恐ろしい声が背後からした。
背筋に冷たい水が流れたように震え上がる。
「ご主人様。私も存じ上げないのです。ただ、グリフィンドールの一年生としかいえません。」
「・・・あの声・・・・。聞き覚えがある・・・。」
しばらく沈黙があった。
しかし、突然なぜか主の雰囲気がやわらかくなった。
「白い髪に・・・金色の瞳であったか?」
「はっ・・はい!そのとおりでございます!!」
「なるほど・・・生きていたか。くっくっくっ・・・。」
「ご・・・ご主人様?」
楽しそうな主の様子にかるく首を傾げる。
「クィレルよ。気にするな。
俺様はいま機嫌がいいのだ。邪魔をするな。」
くく・・・と不気味な笑いが森に響く。
耳をふさいでもこの声は聞こえるのであろう。
せっかく機嫌がいいのを崩すのは恐ろしいが、
話題を変えたほうがいいのかもしれない。
「ご主人様。今日、ユニコーンの血はどういたしましょうか?」
「あぁ・・・。今日はいいだろう。
たまにはあいつの言うことを聞いてやってもかまわない。
・・・・・のな。」
「・・というのですか?あの少年は。」
「そうだ。・・・・あぁ、クィレルあいつは傷つけるな。」
「は?」
「あれは俺様のものだ。誰がなんと言おうと俺様が決めた。」
楽しそうに主の声が笑いを含む。
ぞくり背中に冷たい汗が流れた。
20041030