クィレル先生がトロールが進入したことを大広間に告げられて

グリフィンドール生がパーシーに引率され、寮に避難する途中

僕はとても重大なことに気がつき、目の前を歩いていたロンの腕を強く掴んだ。



「ロン!」


「え?」



さきほどまでトロールは馬鹿だと話をしていたロンは

突然の僕の行動にきょとんとした表情をしてみせ、小さく首を傾げて見せた。



「ちょっと待って・・・ハーマイオニーだ。」


「あいつがどうかしたかい?」


「トロールのこと知らないよ。」



背中に冷たいものが流れていくのを感じながらそういうと

ロンは唇の端を強く噛んで小さく息を吐き、そしてすいこんだ。


「わかった。だけどパーシーに気付かれないようにしなきゃ」



気付かれたら先生達に任せて、避難しろととめられることは確実だ。

先頭にいるパーシーを見てみると彼の目線はずっと先の方にあり

僕らの方へ向く様子はない。

僕とロンは二人で視線で合図しあってから頷き、列の中に隠れるように屈みこんで

ちょうど反対方向に進んでいたハッフルパフ生の集団に紛れ込んだ。

幸いにも皆トロールのことで頭がいっぱいなのか、ハッフルパフ生は僕達に気付くようすはない。

誰もいなくて薄気味悪いほど静かな廊下を抜けて、僕らは3階のトイレへと急いだ。


廊下の角を曲がった途端背後から随分と急いでるような足音を聞きつけ

僕らは石像の影に身を潜めた。

パーシーが僕たちがいないことに気付き追ってきたのだろうかと思っていたが

そこに現れたのは予想とは違った癖のある黒髪と鉤鼻の教師・・・スネイプだった。

どうしてここに・・・?



「何してるんだろう。どうして他の先生と一緒に地下室に行かないんだ?」


「知るもんか。」



ロンと同じ疑問が頭の中にはよぎったが僕はできる限りあの教師とは関わりたくない。

何故だか敵視されてるし、好んで近づこうとは思えない相手。

・・・ただ、は仲良しみたいだけど。

あ、でも教師と生徒が仲良し。っていう表現はちょっとおかしいかな。


スネイプの足音が聞こえなくなったのを確認してから僕達は石像の影からでて

廊下を足音を立てないようにひっそりと進んでいった。



「スネイプは4階のほうにむかっているよ。」



トロールは地下室。つまり本来は下に向かわなければならない。

だが、なぜその反対の上へむかっているのだろうか。

その疑問を口にしてみるとロンに手で制される。



「何か臭わないか?」



そういわれてみて鼻をひくつかせるととてもひどい悪臭が鼻腔に届く。

例えて言うなら汚れた靴下と一度も掃除したことない公衆トイレのにおいを混ぜた感じ。

混ざった匂いとかかいだことないけど、混ぜたら絶対こんな感じだと思えるぐらい強烈なものだ。

そして次に低く耳につくうなり声、そして何かを引きずるようにして歩く音。

その音が聞こえてくる方向をロンが指差し、僕もそっちを見た。

物陰に身を潜めて、そこに現れるであろう物体を待つ。

大体予想はついている。だがそれはあたって欲しくない。


不自然なほどに。まるでこのために用意されていたのではないだろうかと思える

月明かりが差し込む場所に大きな何かの姿が映し出される。


ひどく恐ろしい光景だった。


こんなに大きく醜いものは見たことがない。

背は4メートルほど。墓石のような鈍い灰色の肌で岩石のようにずんぐりとしたゴツゴツの体。

剥げた頭はその体に似つかわしくないほど小さく、短い足は木の幹のように太い。

異常に長い腕の先では棍棒を引きずるようにしてもっている。


トロールはなぜだか知らないがあるドアの前で立ち止まる。

そして馬鹿だという頭で何かを考えるような仕草をしてから

ノロノロとその中に入った。



「鍵穴に鍵がついたままだ!」



トロールが入っていった扉を見て僕は声を押し殺してロンに告げた。

出来ればこんな場所からは早く逃げ出してしまいたい。

出来ればあんなものとは二度と対峙したくない。



「あいつを閉じ込められる!」


「名案だ!」



ロンも声を押し殺して僕に同意する。

その声はどこか震えているようだった。

トロールが出てこないことを祈りながら僕達は扉へと足を一歩。また一歩と進める。

緊張しすぎて喉がからからだった。

最後の一歩というところで僕はジャンプをして扉に近づき、勢いよく扉を閉めて鍵をかけた。



「やった!」



なんとか見つからずに出来たという喜びを感じながら、当初の目的を忘れ、

もときた廊下を走っていくと目の前に全体的に白い人間離れした綺麗な友人が現れた。



!」


「おー。お前ら、俺置いてくってどう言う事だよ。
 俺を仲間はずれにしたいのか?」


「そんなっ!違うよ、!僕達はハーマイオニーを・・・!」


「じゃぁ、お前らはなんでここにいる?」



どこか不思議な笑みを浮かべられながら言われた言葉に僕達の顔から血の気が引いていく。

そして追い討ちをかけるかのように、鼓膜を切り裂く甲高い女の子の叫び声。

僕達は先程鍵をかけた扉に勢いよく顔を向けた。



「しまった・・・!」


「女子用トイレ!!」


『ハーマイオニーだ!!』


「・・・だろうな。」



二人して叫んだ後にが苦々しげに舌打ちをする。



「ほら、行くぞ。姫を救出する。」



が杖を取り出し、女子トイレの方へ走り出したので僕らもそれに続いて全力疾走した。

扉の前まで来て、鍵をがちゃがちゃと回してみるも、

恐ろしさとハーマイオニーが今どうなっているのかということをみるのが怖くて

手が震えて上手く鍵が回せない。



「ハリー、落ち着け。」



が僕の手にそっと手を重ねると、何故だかわからないけど

焦りが一瞬だけすーっと引いてカチリという音をさせて鍵が回った。



「ハーマイオニー!!」



がまず中に入りハーマイオニーの名前を呼ぶ。

その名前を呼ばれた彼女はトイレの奥のほうの壁に張り付くようにしてトロールを見上げていた。

顔は恐怖で引きつっていて、今にも気を失いそうだった。



「こっちに引きつけろ!」



無我夢中でとロンにそう言うとロンはコクリと頷いたが

はすっとキレながらの瞳を更に細くさせてトロールとハーマイオニーを見た。

何をするつもりだろうかと気が動転する頭で考えていると

がその場を蹴ってハーマイオニーのところへすばやく移動する。

それが華麗すぎて僕は間抜けにも大きな口を開けて、行動することを忘れてしまっていた。

トロールは突然目の前に現れた人物に驚いたのか、歩くのをやめて小さく首をかしげ頭を掻く。



「そうだ。いい子だ。もうこっちにくるな。」



が金色の瞳の色を強くしてやけに落ち着いた声でトロールに言葉をかける。

その言葉を理解しているのかしていないのか。

トロールはその場を動けないでいる。

はトロールから視線を外さない。

まるでその視線を外せばまたトロールが動き出す。とでもいいたげな行動だ。



(今、僕がやるべきことを・・・・)



周りを見渡してみるとトロールがなぎ倒したのであろう洗面台や蛇口が散らばっていた。

その中で、適当なものにあたりをつけて手に持ち、力の限り壁に投げつける。

さすがに馬鹿なトロールでも大きな音は気になったようで小さな瞳を瞬かせて

ドスドスと重たそうな音を鳴らしながら僕の方を向いた。

一瞬ハーマイオニーか僕かにまよったようだが、僕の方を狙うと決めたのか棍棒を振り上げ僕に向かってくる。



「やーい、ウスノロ!」



反対側からロンが蛇口を投げつけて、叫ぶ。

蛇口があたったことはトロールにしては何の効果もないのだろうけど

声は聞こえたようで僕からロンの方に方向転換した。

トロールの注意が僕からロンにそれたことで僕は達のところへ近づくことができた。



!ハーマイオニー!早く!走れ!」


「ハーマイオニー?走れるか?ハーマイオニー?
 ・・・ちっ。ハリー無理だ。気ぃ失いかけてる。」



の腕の中でがたがたと震えているハーマイオニーの焦点は定まっておらず

支えているがいなければ今にも地べたに座り込んでしまいそうだ。

そんなことをしているうちにロンの叫び声と僕の叫び声とがトイレの中でこだまして

それに逆上したのかトロールは低くうなり声をあげ、今一番近い位置にいるロンに襲いかかろうとしていた。



(なんとかしなくちゃ。)



考えるよりもさきに体が動いた。

無我夢中でトロールの首根っこにまとわりつく。

そのとき幸か不幸か。

まとわりつくだけではトロールの気をひきつけるには十分ではなかった。

だが、僕が持っていた杖もいっしょにトロールにまとわりつき

それは上手いことトロールの鼻の穴に突き刺さった。

さすがにそれには痛みを感じるらしくトロールは痛みにうなり声を上げながら、棍棒を振り回した。

周りのトイレの扉が次々に破壊されていく。

僕は振り回されながらも渾身の力でトロールにしがみついて離れなかった。



「ロン!!」



どこか遠くでの声が聞こえる。



「一番最初に思いついた魔法を使え!!」



グラインダーのように振り回されながら目の端でロンが杖を取り出してトロールに向けたのが見えた。

何をしようとしているのかは分からない。

ただ、棍棒を今にも頭に振り下ろされようとしているこの状況から助け出してほしかった。



「ウィンガーディアム レヴィオーサ!」


「へぇ・・。」



が口の端を僅かに上げて楽しそうに微笑んだと思った瞬間

トロールの棍棒が手から飛び出て宙に浮く。

あっけにとられながらそれを見ているとそれは空中高く舞い上がり一回転してから

ボクっと鈍く嫌な音を立ててからその持ち主の頭の上に落ちた。

脳天に突然強烈な一撃を食らったトロールはフラフラとその場で千鳥足を踏んだ後に

大きな音を立ててトイレの床に倒れこむ。その衝撃で部屋が揺れて天井からほこりが落ちてきた。

ギリギリの所でトロールから離れた僕はがたがたと震える体を抱きしめながら乱れた息を整えた。



「これ・・・死んだの?」



の腕の中からようやくハーマイオニーが口を開く。



「違うだろ。アレぐらいじゃ死なねェよ」


「うん。ノックアウトされただけだと思う。」


「ほんと、お前よくやったな、ロン!」



ハーマイオニーはもう大丈夫と判断したのかはロンに近づいていき、

強く抱きついてから彼の額に唇を落とした。



「・・・ふぇっ!?っ!?」



トロールの鼻から自分の杖を引き抜いていた僕はそれを見ながら少しムッとする。

僕も頑張ったのに。

それに気付いたのか否か。は僕のほうをむいてどこか妖艶に微笑んで見せて

僕に近づき、くっと僕の顎を右手で持ち上げて限りなく唇に近い頬に唇を落とした。



「・・・!?」


「お前もよく頑張ったぜ?」



くすくすと楽しそうに笑いながらは僕の持っている杖に視線を落とす。



「あーあ。鼻くそついてんじゃねぇか。それで拭いとけ。んでもって後でちゃんとあらっとけ。」



されたことにいまいち頭がついていかない中で

が指差したソレをトロールのズボンで鼻くそを拭くと同時に大きな音がしてトイレの扉が開いた。

そして同時にばたばたという焦った足音。

戦っている最中は全然気がつかなかったのだが、かなりの騒音を立てていた。

だから先生達に気付かれるのは当然のことで、

マグゴナガル、スネイプ、クィレルの順番で3人がここへ姿を現したのも当然の事だった。


クィレルがトロールをみてひぃっと息を呑み、トイレに屈みこむ。

スネイプはを見て少し安心したような顔をしてからトロールを一目見て、マグゴナガルは僕とロンを見据えた。

こんなに怒っている顔は始めていた。

唇をかみ締めすぎているのかその色はもはや蒼白。

グリフィンドールのために50点もらえるだろうか。という淡い期待はそれで吹っ飛んだ。



「一体全体あなた方はどういうつもりなんですか。」



声は冷静に落ち着いているのだが怒りがひしひしと伝わってきて

思わず体が縮こまる。ロンなんて杖を構えたままの状態で固まってしまっている。



「殺されなかったのは運がよかった。寮にいるべきあなた方がどうしてここにいるんですか?」



スネイプが目を細めて僕をみた。その視線がひどく痛い。

思わずうつむいてしまったそのとき暗がりから小さな声がした。



「マグゴナガル先生。聞いてください――二人とも私を探しにきたんです。」



いつのまにか再び側にもどっていたに支えられながらハーマイオニーは弱々しく声を出す。

その声で初めてハーマイオニーとの存在をマグゴナガルは認識したらしく

大きく瞳を開いて彼女達の方をみた。



「Ms.グレンジャー!・・・Mr.ウィクリフまで!!」


「わ・・私がトロールを探しに来たんです。
 私・・・・私一人でやっつけられると思いました。
 ――あの本で読んでトロールについては色んな事を知っていたので。」



カランと軽い音がした。ロンが杖を落としたらしい。

あのハーマイオニー=グレンジャーが僕たちのために嘘をついている。

その事実に驚きすぎてロンは口をあんぐりと開けた。



「もし3人が見つけてくれなかったら、私、今頃死んでました。は私をトロールから守ってくれて
 ハリーは杖をトロールの鼻に差し込んでくれて、ロンは棍棒でノックアウトしてくれました。
 3人とも誰かを呼びにいく時間がなかったんです。3人が来てくれたとき私はもう殺される寸前で・・・。」



せっかくハーマイオニーが嘘をついてくれているのだ。

ソレを無駄にしてはいけないとそのとおりです。という顔を装った。



「まぁ・・・そういうことでしたら。」



マグゴナガルは僕たちの顔をじっとみつめてからに視線を向けた。

がどこか苦笑いを浮かべるとマグゴナガルは小さく息を吐いてから

ハーマイオニーに視線を向けた。



「Ms.グレンジャーなんと愚かしいことを。たった一人で野生のトロールを捕まえようなんて
 そんなことをどうして考えたのですか?」



ハーマイオニーはとても小さくなってマグゴナガルの言葉を受けた。

声も出ない。規則なんて破ろうとしない彼女が僕たちをかばうために規則を破ったふりをしている。

スネイプがお菓子をみんなに配り始めたぐらいの豹変振りだ。



「Ms.グレンジャー。グリフィンドールから10点減点です。あなたには失望しました。
 怪我がないならグリフィンドール塔に帰ったほうがいいでしょう。
 生徒達がさっき中断したパーティの続きを寮でやっています。」


「一人で帰れるか?」


「・・・大丈夫。」



ハーマイオニーはの問いかけに答えてから目線を下げながら寮への道を歩き出した。

ソレをみんな目線で見送った後にマグゴナガルは僕たちの方をみた。



「先程もいいましたが、あなた達は運が良かった。
 でも大人野生トロールと対決できる一年生はそうざらにいません。
 一人5点ずつあげましょう。ダンブルドア先生にご報告しておきます。
 かえってよろしい。」



僕たちはその言葉に急いでその場を離れた。一刻もはやくその場所から逃げ出したかった。

2つ上の階の階段を上がりきったところでがふと足を止めた。



「悪い。俺、ちょっと寄る場所あるわ。先帰っててくんねぇ?」


「え、いいけど・・・どうして?」


「ちょっとな。」


「そう・・・あ、!ありがとう!
 あのときが魔法使えっていってくれなかったら僕きっと何もできなかった!」



ロンが顔を赤くしながらそういうとは柔らかく笑みを浮かべてロンの頭に手を置いて軽く撫ぜた。



「アレはお前の力だよ、ロン。俺はちょっと力を添えただけだ。
 よくやったって誇って良いと思うぜ?」


「う、うん!」



ロンが力よく頷くとは綺麗に微笑んでから、すっと手を離して寮とはまったく違う方向へ進んでいった。



「・・・でも3人で15点は少ないよな。」



ロンが呟いたのに対して僕は思わず苦笑を漏らす。



「3人で5点だろ。ハーマイオニーの10点を引くと。」


「ああやって、彼女が僕たちを助けてくれたのは確かにありがたかったよ。
 だけど僕たちがアイツを助けたのも確かなんだぜ?」


「僕たちが鍵をかけてヤツをハーマイオニーを一緒に閉じ込めたりしなかったら
 助けはいらなかったかもしれないよ。」



正確な事実を思い出し、ロンがすこし不服そうに頬を膨らませる。

だが次の瞬間二人して笑いだし、グリフィンドール塔の太ったレディの肖像画で合言葉をいってから中に入った。


談話室の中は運ばれてきた食べ物で溢れていて賑やかだったから、

ただ一人ハーマイオニーが静かに扉の所で僕たちを待っていた。

がいないことに一瞬不思議そうな表情をして見せたものの

僕たちは顔をあわせないまま”ありがとう”と互いに言い合い、急いで食べ物をとりに行った。


そしてこの日以来。

ハーマイオニーと僕たちの中は急速に良くなった。





2007/03/01

あとがき

え、友情ですよ。ポタは友情夢なんだよ、一応。
いきすぎた友情です(黙れ)
ポタ久々すぎて、主人公さんがいまいちつかめない
こんな感じの子だったはず。なんせ最強。なんせ美麗。
よし。このまま走ります!