「あー。セブルスじゃん。」


「・・・・・か。」



黒髪の教師は俺の声にうんざりといった雰囲気も込めて振り返った。

しかし、内心は違うはず。すこしだけ表情が穏やかになったのがその証拠。


手にはゴブレットに入った薬湯。

こんなもの完璧に作れるのはホグワーツの教師でも、

ダンブルドアを除けばセブルスだけではないだろうか。



脱狼薬。



魔法薬の成績はぴか一。

あのジェ−ムズとシリウスと張り合えるほどのレベルだった目の前の教師。

しかし、いまは闇の魔術の防衛術とかの教鞭をとりたがっているらしい。

やめときゃいいのに。お前には魔法薬のほうがお似合いだぜ?



「リーマスんとこ、行くのか?」


「あぁ。」


「へぇー。つーことは、配達やさんかよ。」


「そんな風に言うな。今日はたまたまだ。
 ・・・・しかし。」


「んぁ?」


「生徒はもう就寝時間だろう。」


「あー。んなこた、気にすんな。
 俺とお前の仲だろ?」



にぃ。と口の端をあげて見せると、セブルスはめずらしく悪戯気な笑みを浮かべて見せた。



「あぁ。そうだったな。」



帰ってきた返事があまりに意外だったので、思わずあんぐりと口を開けてしまった。

あの優等生のセブルス君が生徒の夜の徘徊を許した。

や、俺だからなんだけどー。

でも、ミネルバなら怒るんだろうな。

自分の寮とか気にせず点数とか引いてくれそうだし。

とりあえず自分自身をとりもどすために、

頭の上を通ったゴーストを目で追ってからセブルスに視線を向けた。



「さぁーて。リーマスんとこいくか。」


「・・・・ついてくるのか?」


「・・・いけねぇの?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・いや。」



すごい長い間沈黙があったんですけど。

元からセブルスは無表情だからわかりにくい。

時たま俺と一緒だと笑ったりもするけど、それは例外。



「気がすすまねぇの?」


「・・・・。」


「ウィークーリーフー。」



名字で呼ばれ、尚且つ昔の名前であったので嫌そうに目を細めた。

こほん。とわざとらしくセブルスは咳払いをして目線を斜め下に落とした。



「・・・・。あいつは狼人間だ。
 それはわかっているのだろう?我輩としては、危険なところにお前を・・・。」


「んな、こた心配しねーでも大丈夫だっつーの。
 いざとなりゃ魔法使ってぶっ飛ばせばいいだろ。」



くるくると宙で人差し指をまわして見せた。

最初のときのような失敗はもうしない。

優等生ぶる必要はもうないのだし。

歩き始めたセブルスの後を急いで追う。

歩幅の違いから、俺とセブルスの間は離れてしまいそうな気もするが

そこはさすがセブルスで俺に合わせて歩いてくれている。

思いやりって言う言葉はセブルスの中にはちゃんとある。

ほかの黒髪二人の顔が頭に浮かんだ。

あいつらの辞書には思いやりという言葉は無い。



「・・・なにを笑っている?」



不機嫌そうにセブルスは眉根を寄せた。

どうやら知らないうちに頬の筋肉が緩んでいたらしい。



「別にー。おー、ついた、ついた。」



中には誰も人がいないリーマスの事務室の扉の前に立った。

セブルスはソレを知らない。

扉を軽くノックして中から返事が無いことに首をかしげている。

ためしにドアノブをまわしてみると中は暗室。

人の気配は皆無。



「・・・・・。」



「ウィクリフ。」


「・・・――っ。
 !」



最初からそう呼べよ。三年も経ってるんだし、そろそろ慣れているはずだろーが。

つーか。ウィクリフって呼びたくないのかよ。

・・・あ。なんかセブルスの目が怖い。



「・・・なぁに?」



きょとんとかわいらしく小首を傾げてみせる。

いつもとのギャップに一瞬セブルスが怯み、嫌そうに眉根をしかめた。

かわいいとか言うのは似合わないのは俺も百も承知なんだから、

そこまで本気で嫌がる事無いだろうに。



「・・・・わかっていたんだろう?」


「YES. Of couse.」



悪戯っ子の笑みを浮かべると、腰に手を当ててセブルスを見上げた。

セブルスは嫌そうに眉間にしわを寄せたが、それ以上は言わない。

へぇ・・・大人ー。


とりあえず、当初の目的。

帰ってくる可能性のほうが高いので机の上にゴブレットをおくと、

セブルスはそこに広げてあった地図に目線を落とした。



「な!?ポッター!」


「は?」



ちょっとわざとらしかったかもしれないが、

意味不明。といったような表情を作って見せた。



「・・・・・。」


「あぁ?」


「お前はここにいろ。
 我輩は野暮用ができた。」


「あー。じゃぁ、これ使え。」



リーマスの机の上にあったハリーのものかと思われる透明マントを指差した。

今からすることには必要なはずだ。



「・・・・・相変わらずだな。」


「?」



透明マントを投げてよこしながら俺は首を傾げた。

今度は本気でわからない。



「お前は・・・・は常に先にいる。」


「・・・・・・。」




無表情でセブルスをみると、セブルスは困ったように苦笑を浮かべた。



「そう、怒ってくれるな。」


「怒ってなんかいねーよ。
 つーか。俺は先になんていねぇし。
 お前らと一緒だから。むしろ、後ろだから。」


「あぁ。そうだったな。」



透明マントを羽織って、セブルスは微笑む。

いつもそうしていたら、もっと人気が出るのにと何回思った事か。

まぁ、俺の特権ということで我慢しておこうかと思う。



「じゃぁ。行ってくる。
 ・・・・あぁ、そうだ。。ベットにもどれ。」



教師の仕事を今更のように思い出したようで、

セブルスは不機嫌そうな顔を作った



「気が向いたら。」


「・・・・・。」



何を言っても無駄だと悟ったのか、セブルスは透明マントを完璧にかぶると、暴れ柳の方向へと動いた。

気配がしたから、多分間違えではない。

リーマスの机の上に座って、しばらく目を閉じる。



いくべきか。


いかぬべきか。



「会いてぇよな・・・。」



本能的には会いたい。

けど、俺が行っても大丈夫だろうか。


俺が行ったところで未来は変わらない。

ただし、俺が無理に動かなければの話。

未来を変えるのは俺の仕事ではい。



「・・・・本能にでもしたがってみるか。」



机から降りて、白い長い髪をゆるく三つ編みにした。

事務所を出てゆっくりと扉を閉める。



目指すは暴れ柳。











2004/11/09