杖をスネイプに向かってまっすぐに構える。
スネイプの顔にはわずかに驚きと焦りの表情が見えた。
「エクスペリアーヌス、武器よ去れ!」
喉が裂けるほどに僕が叫んだと思ったのに実際に叫んだのは僕の後ろにいる親友達だった。
驚きの表情で彼らを見ていると、ものすごい音をさせてスネイプが壁にぶち当たって、
まるで操り人形の糸が切れたようにずるずると壁を伝ってその場に崩れ落ちた。
「・・・・こんなことキミがしてはいけなかった。」
シリウスが僕を見てから、ゆっくりと首を振る。
「わたしに任せておくべきだった・・・・。」
「・・・・本気でな。情けねぇ、ワンコだこと。」
「!?」
突然本日二度目の来訪者のテノールボイスが響いた。
全員の視線がスネイプが飛ばされていった方向。つまり、扉口に集まった。
この薄暗い中でも全体的に光のような存在のその人は、
怠惰そうに壁を背もたれとして腕を組み楽しそうな笑みを浮かべて見せた。
スキャバーズがさらにきぃきぃと大きく鳴き声をあげる。
「・・・・・・・か・・・・?」
ルーピン先生の縄を解いていたシリウスがの声に顔を上げると、
落ち窪んだ目が信じられないといった面持ちで大きく見開かれた。
「リーマス・・・・。どういうことなんだ?説明してくれないか?」
「はここの生徒なんだよ。スネイプ同様ね。」
「いや・・・ここにが・・・こいつがいるはずないだろう・・・・?」
「それがいちゃうんだよね。だから。」
大人二人の不思議な会話が始まる。
どうして、シリウスはあったこともないはずののことを知っているんだ。
そして、どうしてルーピン先生はのことを旧知の仲の様に扱っているんだ?
そんなことを考えているとが横を通り過ぎるときに、
軽く肩に手を置いて「後で話すから」と耳元でなぜか甘い声で僕に囁いてからロンの目の前に立った。
「あらまぁ。ロン。足、怪我してんじゃねぇの。
駄目じゃん、シリウス。俺の姫に怪我させちゃ。
んでもって、お前うるさい。」
べしっ。とはロンがしっかりと抱きしめているスキャバーズの頭を軽くはたいた。
「・・・・。」
ハーマイオニーが鳴きそうな声での名前を呼ぶ。
「私・・・先生を攻撃してしまったわ・・・・先生を攻撃して・・・。
あぁ、私達、ものすごく規則破りになるわ・・・。」
「んなもん、気にすんなって。ダンブルドアならわかってくれるだろ。
それにセブルスもどうにかしてやるから。」
ハーマイオニーが地球の終わりだというほど深刻の顔をしているというのに、
は軽くクスクスと笑って流した。
「・・・・!」
なにやら緊迫したようなシリウスの声に名前を呼ばれ、きょとんとは首をかしげた。
「なぁーに?」
うふvとか言い出しそうなぐらいの甘い声ではシリウスに近づく。
「、危ない!」
思わず僕はそう叫んだが、は止まる様子を見せない。
こつんと、革靴の音をさせてシリウスの前に立ち止まり微笑んだ。
シリウスがゆらり動く。
「!!」
いつもより高い声が僕の喉から出る。
しかし、あろうことかシリウスはを力のない腕で抱きしめた。
「・・・っ・・・!お前どうして言わなかった!」
「えー。だって、お前牢獄いたじゃん。」
俺がこの姿になってからも。
と、軽い調子で言いながら、はシリウスの背中を優しくなぜる。
「違う!そうじゃないだろう!?お前は・・・はわかっていたはずだ!
お前が死ぬ事!ジェームズとリリーが死ぬ事!!そして・・・こいつが裏切る事を!!!」
悲痛の表情でシリウスはから離れるとロンが抱きしめていたスキャバーズを指差した。
はしょうがないとでも言うように、苦笑を浮かべると子供をあやすように自分よりも背の高いシリウスの頭をなぜた。
「それは俺が・・・言いたくても言えないと知った上での発言か?」
「・・・!」
「俺が言いたくなかったとおもうのか?
ジェームズとリリーを見殺しにしたかったとでも?」
には珍しく真剣な顔で非難するようにシリウスを見た。
そして、くるりと踵を返すとロンの方へと歩み寄る。
「・・・・・・すまない・・・。」
シリウスは瞳を伏せて、力なく首を振る。
「まぁ、別に良いけどー。お前単純思考だし。俺はお前の仲間思いのとこ好きだしー。
・・・・それより・・・まずはコイツだ。」
がスキャバーズをみてにんまりと楽しそうに笑う。
そして、ルーピン先生が口を開いた。
「そうだ、ハリー・・・ありがとう。」
スネイプを止めてくれての事だろうか。
その言葉で訳がわからなくなっていた僕の頭に思考力が戻ってきた。
「僕は・・・あなたをまだ信じたわけでは有りません。ルーピン先生。」
「真実を・・・・・話す時が着たようだ。
君――ピーターを渡してくれ。さあ。」
シリウスの言葉にロンはスキャバーズをさらに強く抱きしめた。
はそれを無言で見守りながら、ルーピン先生の隣りに移動する。
「お・・・く・・の・・な・だろ?」
少し場所が離れているので、何を言っているのかは聞こえない。
ただ、ルーピン先生が恐怖の表情と共に目を見開いて首を縦に小さく振ったのが見えた。
「冗談じゃない!!」
ロンが叫んだ。
20040108