中に入るとちぐはぐな古い椅子。

ただ一人低い肘掛け椅子に座っていたのは、やはりセブルスだった。



「うわぁ・・・絶好調ー・・・。」


「何が?」



嫌そうに呟いた言葉にハリーが眉を寄せてたずねた。

気だるい雰囲気のまま、ハリーのほうをいて自分のこめかみ辺りをさした。



「・・・頭痛。」


「え!?大丈夫!?」



言った言葉をそのまま信じてハリーは慌てた表情をした。



「冗談。俺の勘。」


!!」



職員室な事もあって、ハリーは音量は抑えたまま勢いは強いというなかなか器用な声の出し方をした。

からからと笑い、ハリーの頭に手を乗せて、一、二回軽く叩いた。

ハリーは渋々許すといった感じで上目遣いに俺を見た。



「・・・勘って、何が当たったんだい?」



セブルスとルーピン”先生”の会話を気にしながら、こちらに問いかける。

どちらか一つにすればいいのに。と俺は苦笑を浮かべた。



「スネイプ先生が職員室にいることだ。
 魔法学の授業はいま何処のクラスもねぇなぁ。と思ってたら当たった。って程度?」


「そうなの?」


「あぁ。よく当たってただろ?」



話が終わったのか、セブルスは立ち上がり、ドアの方向へ大またで歩いていった。

何を話していたのかは聞いていなかったが、大方ルーピン”先生”に負けたのだろう。

そして、ドアの前で振り向き捨て台詞を吐いた。



「ルーピン、だぶん誰も君に忠告していないと思うが、このクラスにはネビル・ロングボトムがいる。
 この子には難しい課題をあたえないようご申告申し上げておこう。
 Ms.グレンジャーが耳元でひそひそ指図を与えるなら別だがね。」


「うわぁ・・・・。」



ガキかよ。その言葉は何とか飲み込んだ。一応大衆のまえだ。

しかし、ルーピン”先生”がこんなこといわれて黙ってるはずがない。

つーか、黙ってたら、リーマス・J・ルーピンではない。



「術の最初の段階で、ネビルに僕のアシスタントを努めてもらいたいと思ってましてね。
 それに、ネビルはきっとうまくやってくれると思いますよ。」



ほら来た。

やわらかな笑みと共に発せられた言葉は妙な威圧感があって怖い。

セブルスのほうを見てみると、言い返せないようだ。

あきらめろ、セブルス。お前の負けだ。

目があったので目線でそう伝えると、嫌そうに眉根をしかめてセブルスは何も言わずに部屋を出た。



「さぁ、それじゃ。」



あれだけの修羅場をやって、この教師はもうなかった事にしてしまうらしい。

授業時間は確かに大事だけれども・・・・いいのだろうか。


・・・・それにしても。部屋の奥の箪笥がさっきからガタガタ言うのがかなり気になる。

もしかすると、これが実地練習の生け贄・・・いや、教材だろうか。

予想は当たったらしく、ルーピン先生はまね妖怪(ボガート)の説明を始めた。

ハーマイオニーーが相変わらず教師の質問に対して完璧な答えを述べる。

そして、それをルーピンに褒められてハーマイオニーは頬を染めた。

褒めて伸ばす。俺もその考えは良いと思いますよ。

相変わらずルーピン”先生”の説明は続く。

今度の質問にはハリーが質問に答えた。ハーマイオニーの百面相が面白い。

そして、結論的に笑いが必要だという説明に陥った。

相手を滑稽な姿に変える。



「・・・・初めは杖無しで練習しよう。私に続いて言ってみよう。
 リディクラス、ばかばかしい!」


「リディクラス、ばかばかしい!」



・・・・ばかばかしい。っているっけ?

頭の隅で考えながら、ルーピン”先生”に続いて言う。



「そう。とても上手だ。でもここまでは簡単なんだけどね。
 呪文だけでは十分じゃないんだよ。そこで。ネビル君の登場だ。」



がたがた震える箪笥と、がたがた震えるネビル。

震え方ではネビルの勝ち。

ひぃ いず うぃなぁ。



「よーし、ネビル。一つずつ行こうか。君が世界で1番怖いものはなんだい?」



ネビルの口が動くもののそれは俺の耳には聞こえない。

ルーピン”先生”が明るく聞こえないというと、ネビルきょろきょろと助けを求める様に視線を動かした。

視線が合ったのでパッチリとウィンクをしてやる。

そして、ぎりぎり聞き取れるような声でネビルは呟いた。



「スネイプ先生」



――。


だとよ、セブルス。もっとやさしくしてやれよ。

おもいっきり噴出した。周りのやつも全員笑ってるし、別段問題ないだろう。

しかし、ルーピン先生。あの明るい声では確信犯じゃな気がしなくも無い。

でも、いつものポーカーフェイスでルーピン先生は真面目な顔をしている。



「スネイプ先生か・・・フーム・・・ネビル、君はおばあさんと暮らしているね?」



・・・まさか。

ルーピン”先生”。もしや、昔の血が復活したか?

ネビルにおばあさんの服装の質問をして行く。

疑いは確信に変わった。



「よし、それじゃ、ネビル、その服装を、はっきりと思いかべることが出来るかな?
 心の目で見えるかな?」


「はい」



ネビルは自信無さげに答える。

ルーピン”先生”、質問あびせすぎ。ネビルが可哀想だ。



「ネビル、ボガートが洋箪笥からウワーッとでてくるね、そして、君を見るね。
 そうすると、スネイプ先生の姿に変身するんだ。
 そしたら、君は杖を上げて――こうだよ――そして、こう叫ぶんだ。
 『リディクラス、ばかばかしい』――そして、君のおばあさんの服装に精神を集中させる。
 すべて、うまく行けば、ボガート・スネイプ先生は天辺にハゲタカのついた帽子をかぶって、
 緑のドレスを着て、赤いハンドバックを持った姿になってしまう。」



笑いの渦が起こったが、俺は呆れた様に溜息をついた。

こえぇ…ルーピン”先生”のなかの「悪戯仕掛人」の血はいまだ健在の様だ。



「ネビルが首尾よくやっつけたらそのあと、まね妖怪はつぎつぎに君たちに向かってくるだろう。」



どうやら、全員に回すつもりらしい。

隣りでハリーが悶々と頭を悩ませていた。

・・・おそらく、ハリーが怖いのはディメンターだろう。

ルーピン”先生”はヴォルテモートと思ってるかもしれないが、ハリーはきっと違う。

震えている、誰にも気付かれない様にとあたりに視線を向けた。

見て見ぬ振りをしてやる方が言いのだろう。目を閉じている振りをした。



「みんな、いいかい?」



ルーピン先生の言葉にハリーは恐怖の眼差しを箪笥に向けた。

思わずくすくすと、苦笑を漏らしてとん、と肩を叩いてやる。



「いざとなったら、俺が助けてやるって。」



心配すんな。と、

横でロンがブツブツ言うのを笑いながら、ハリーにだけ聞こえる様に呟く。



・・・。」


「さ、ネビルが動くぜ?ちゃんと見てろ。」



何かいいたそうにハリーは口を動かしたが、会話を遮る。

これ以上何か言ったら誰かがハリーの動揺に気付きかねない。

ルーピン先生の指示にネビルを除いた全員が後ろの壁に貼りついた。



「ネビル、三つ数えてからだ。」



杖を箪笥にむけながら、ルーピン先生はがたがたしているネビルに話しかけた。



「いーち、にー、さん、それ!」



火花がほとばしり、箪笥が開いた。

なんだか、いつもどおりのセブルスが箪笥の中から出てくる。



―― 箪笥の中でなにやってたんですか、スネイプ先生ー。



って、叫びたくなるのは多分俺だけだろうな。

あぁ・・・悲しい。



「リ、リディクラス!」



ネビルが上ずった声でそう叫んだ。

あ。やっぱ、”ばかばかしい”いらねーし。

ぱちんと鞭を鳴らすような音がして、セブルスが長い、レースの縁取りをしたドレスと、

あきらかに立ってるのが不思議でたまらない重力に逆らいまくったハゲタカの帽子をかぶり、

手には巨大な深紅のハンドバックをもっている。

セブルス・・・お前ならきっと笑いの金メダルが取れるはずだ。

波に逆らわず、大爆笑の声をあげるとボガート・セブルスをみた。

途方にくれてる、その姿がなんともいえないほど楽しい。



「パーバティ、前へ!」



ルーピン先生が大きな声を出して、生徒の名前を呼ぶ。

どうやら、順番がそのうち回ってくる事になりそうだ。

怖いものからおかしなモノへと。

まね妖怪って実はものすごい楽しいものだと言うことにみんな気がついているだろうか。

さっきから笑いが止まらない。

そして、くるくると勝手にいろんなモノへと形がかわっていく。



「もうすぐだ、ディーン!」



ディーンが前に進み出た。目玉が切断された手首になった。

・・・・なんだろう、これは。

眉根を寄せてそれを見る。裏返しになって、蟹のように床をはい始めた。

うわぁ・・・・キモっ。



「リディクラス!」



ディーンがそう叫ぶ。再び鞭の音がして、ねずみが手にたかった。

エサみてぇ。手がエサのねずみってかなり嫌だけど。

この授業最高かも。



、前へ!」



ついに順番が回ってきた。










20041002