窓の外で綺麗な青い鳥が飛び立って、木の枝がさらさらと揺れるとまだ青い葉が地に落ちた。

もう何日経っただろうか。

法衣のような白い生地に青い唐草模様が刺繍してあるローブを捲し上げて、両足首の自由を奪っている鎖を見た。

ベットに腰をかけて片足だけ上げてみると、じゃらじゃらと不思議な音が鳴る。

普通のものより軽く、走れる程度の長さであるとしても邪魔である事には変わりない。

鳥かごのような場所から連れ出されたかと思えば、次はまるで庭の杭につながれたか犬かのような扱い。

いや、超一級の家具がそろえられているこの部屋で、

一般人じゃ一生食べられないような食事を三食与えられているこの状況は見方からすると贅沢とも映るかもしれない。

しかし、外に出る事は許されない。主人が決めた人物としか会うことができない。

コレでは鎖では繋がれていなかった鳥かごのほうがまだ自由だったかもしれない。

自然と溜息が出た。



様。」


「・・・・だから、様じゃねぇって・・・。何?」



魔法でもあかないように頑丈な鍵で閉められていた扉が重々しく開き、無表情なメイドが戸口に現れた。

ほとんどの魔法使いがしもべ妖精のみをつかっているのにメイドとしもべ妖精両方をを使用するここの主は相当の変わり者だ。

メイドも感情を表さないのだから、こっちも自然と色のない目になる。



「ダンブルドア様がお見えです。」


「・・・・まじ?」


「まじじゃよ。」


「ダンブルドア!!」



無表情なメイドの隣に豊かな白い髭を蓄えた老人が現れる。

その豊かな髭をなでながら老人はにっこりと微笑んだ。

メイドが部屋から退出するのをみてから、俺はダンブルドアにタックルをかけるかのごとく抱きついた。



「ほほ。。大きくなったのぅ?」


「わー・・・ダンブルドアまじで久しぶり。会いたかったぜ。」


「わしもじゃよ。・・・それにしても、また大変な所につれてこられたのぅ・・・。」



ダンブルドアが悲しそうに目を細めた。

俺は抱きついたまま視線を上げると、冗談っぽく笑う。



「おーよ。毎日”ご主人様”のおもちゃよ、俺。」


「・・・つらいじゃろうに。」


「んー・・・どうだろ。」



つらいとかいう感情はもう麻痺してきた。

このごろ自分が人形のようにすら感じる事もある。

そのときにダンブルドアが尋ねてきて本当に良かった。

主人が俺と会うことを許している人物で裏がないのはダンブルドアだけ。

ダンブルドアと話すと人間である事を再び思い出すことができる。

他の奴らは、多分俺を・・俺の能力を欲しがっているような連中ばかりだ。



。悲しそうな顔になっとるぞ?」


「嘘ぉー。俺はダンブルドアにあえて嬉しいぜ?」



ちゃんと笑えていなかったらしい。

ダンブルドアには俺のポーカーフェイスは通じない。

俺は自虐的な笑みを漏らして、ダンブルドアから身を離した。

部屋の中央においてあるテーブルと椅子にダンブルドアを案内して腰を下ろしてもらうと、

しもべ妖精が紅茶とクッキーを机の上においたので俺も真向かいの席に腰を下ろした。



「で。御用は?」


「お主に会いに来ただけじゃ駄目か?」


「いや、ぜんぜん嬉しいけど。
 俺の”ご主人様”はそれじゃお許し出さねぇだろ。」


「・・・それが、出るんじゃがのぅ。」



ダンブルドアは髭を撫ぜながら楽しそうに笑った。



「うっわー・・・ホグワーツ校長ってのはそんなに権限あんのかよ。」


「そうらしいのぉ。
 まぁ、今回は少々のご主人様に用があったんじゃがな。」


「なんの?」



俺がきょとんと首をかしげて見せると、ダンブルドアのきらきらとした瞳が悪戯の色を帯びて輝いた。



のホグワーツへの入学の許可じゃ。」


「・・・・・・・・・・。」



俺は口元に運んでいたカップを一時停止させて目を大きく見開いてダンブルドアの顔を凝視した。

なんていった?

ホグワーツへの入学許可?

この檻から出ることができる・・・?

だけど、あの主人が簡単に俺を手放すとは思えない。



「・・・・”ご主人様”の返事は?」


「OKじゃよ。」


「うそだ・・・許可するはずが・・・。」



紅茶を机の皿の上において俺は信じられないといった面持ちで首を振る。

コレは夢だろうか。期待させるぐらいならばこんな夢は見たくない。

だって・・・9月が始まってからもう2週間も過ぎてる。



「最初から推していたんじゃがのぅ・・・。なかなか、のご主人が許可をくれんで、今日ようやく許可をいただいた。」



随分と前からこの館にダンブルドアは通っていたらしい。

それを思うと何か熱いものが目にこみ上げてきた。



「あれ・・・でも、俺ホグワーツに入学する事なんか知らねぇよ・・・?」


「忘却術をかけられていたんじゃよ。」



小さく嗚咽する俺の頭をダンブルドアが大きな手で優しく撫ぜる。

少しずつホグワーツの景色が頭の中に流れ込んできて、徐々に徐々に情報が増えていく。

そして、何かを境に一気に頭の中に情報が流れ込んだ。



「!?」


「思い出したかのぅ?」



こめかみを押さえて頭痛のする頭を持ち上げて、ダンブルドアの顔を見る。

これは伝えておいたほうがいいことだろう。

いや、伝えておきたい。



「ダンブルドア。」


「なんじゃ?」


「俺、グリフィンドールだわ。
 ・・・・・・・ラッキー?」


「そうか。今年のグリフィンドール生は楽しくなりそうじゃのぅ。」



ほっほっ。とダンブルドアは楽しそうに笑った。









20050105