少し薄暗い階段を上りきると、重そうな扉が目の前に立ちはばかり。
随分と迷った挙句一息おいてから扉をノックした。
「開いておるよ。」
低くて落ち着いた声が扉の向こうから返ってくる。
促されるままに部屋の中に入ると、きらきらとした青色の瞳が柔らかく微笑んだ。
「いい夜じゃな。フランツ。」
「はい。」
手で座るように示されたのでソファに身を沈めると目の前に暖かいダージリンティーを差し出された。
「いただきます。」
軽く礼をして受け取ると、ダンブルドアは微笑みながら軽く頷いた。
「そんなに緊張せんでもいいんじゃよ。」
「・・・すみません。」
そんなコトいわれても、初めて校長室に来たのだから緊張せずにはいられない。
ダンブルドアは苦笑を浮かべ目の前のソファに腰を降ろす。
「さて、本題に移ろうかのぅ?」
「はい。」
そういわれて、両手で包み込むようにして持っていたカップを机において座りなおした。
「だから、そんなに緊張しなくてもいいんじゃがのぉ・・・・。」
ダンブルドアはあいかわらず苦笑を浮かべて、紅茶を一口含んでから机に置いた。
「あ、あの・・・。」
なかなか本題に入らなさそうなダンブルドアに僕は耐え切れなくて自分から口を開いた。
ダンブルドアは不思議そうに目を開きながらも微笑んだ。
笑顔が耐えない老人だと感心する。
「家の事ですか・・・・?」
「ふむ・・・・。関係ないこともないが・・・今日は違う事じゃ。」
その言葉を聴いて安堵の息が漏れた。
入学してまだ3週間足らず。まだ連れ戻されたくはない。
ウィクリフ家は伝統ある純血の魔法使いだから、親からはスリザリンに入ることを期待されていた。
しかし、組み分け帽子が叫んだ名前は
グリフィンドール
よりにもよって、スリザリンと一番敵対する寮に入ってしまった。
僕は友達にも恵まれてるし、お高く留まっているやつが多いスリザリンより楽しい寮だと思う。
しかし、名家はそんなとこにも細かくこだわる。一家の恥だ。と連れ戻されてもしょうがない。
だから、校長室に呼び出されたのならもしやと思って覚悟はしてきていたのだ。
「もし、連れ戻されるとしてもわしが守るからそこまで気にせんでも良いんじゃよ?」
やさしくダンブルドアに微笑まれ、こちらも自然と顔がほころんだ。
なんとなくだけど安心した。確かにダンブルドアなら守ってくれそうな気がする。
「さて。フランツ。」
「はい。」
改めて名前を呼ばれて、背筋を伸ばした。
「明日から転校生が来るから面倒を頼みたいと思ってのぅ。」
「え?」
悪戯のようにあまりに軽い調子で言われて気が抜けてしまった。
長い髭を撫ぜながらダンブルドアは楽しそうに微笑む。
「フランツは二人部屋を一人でつかっとるじゃろぅ?」
「えぇ・・・まぁ。」
親が無理矢理そうしましたから・・・。
その言葉は飲み込んで頷く。
「親御さんとも話し合った結果、お許しがでた。」
「・・・・本当ですか!?」
あの親が許しを出すなんて信じられない。
格が違うのだと見せ付けたくてしょうがないような種類の人間なのに。
「えっと・・・校長先生。その人は・・・。」
有名な家の出の人だろうか。
それなら納得もできる。
「一般家庭の出じゃよ。」
「・・・・?」
その言葉にさらに首を傾げる。
「じゃが・・・。権力を欲しているものには、喉から手が出るほど欲しいと思う一般人じゃ。」
「喉から手が・・・・。」
ダンブルドアの言葉を自分でもう一度噛み締めるように言ってみてから視線を上げる。
きらきらとした青い目と視線が合う。
喉から手が出る欲しい一般人って、どんな一般人だ。
「・・・・だから、両親が許したのでしょうか?」
「・・・ふむ。わしはそのことはご両親には何もいっとらん。
しかし、名前を聞いただけでピンと来たようじゃから・・・。
そうなるんじゃろうかのぅ。」
「えっと・・・その人の名前は?」
「=じゃよ。」
「・・・・・・。」
もしかすると、自分も知ってるかもしれないと思っていたが、聞いたことのない名前だ。
だけど両親。その他、大勢の金持ちには知られているらしい。
「フランツが知らんのもしょうがない事かもしれん。
まぁ・・・ちょっと・・・特殊な子だからのぉ・・・・。」
ダンブルドアが言葉を濁したのできょとんと僕は首をかしげた。
まだ、大人の世界はよくわからない。もうすこし大きくなればわかるだろうか。
20050105