ざわざわといつも以上ににぎやかな大広間。
俺達がそこに現れると一度静かになったもののまた騒がしさがもどってきた。
「なんの騒ぎだ・・・?」
「・・・さぁね。」
親友であるジェームズが眠たそうにあくびをしながら、寝癖のついた黒髪を手で撫ぜつける。
この親友はあまりこの状況に興味を示していないようだ。
俺と同じかそれ以上に自分中心に世界が回っている奴なのでそれも納得できない事はない。
リーマスに関しては起きているのか寝ているのかいまいちわからない表情なので放っておく。
ピーターはいつもどおりオロオロとしているだけ。
この状況に俺以外さして興味を示していない様子に溜息が漏れた。
すこしぐらい興味を示せ。と怒鳴りたくなる。
「おはよう。」
4人連れ立って、朝食の席に座ると、正面からまだ声変わりのしていない少年の声がした。
視線を移してみると、まだあどけない表情の金髪に
どこまでも淡い見方からすれば金色のような茶色の瞳の持ち主と目が合う。
「おぅ。フランツ。」
俺に名前を呼ばれるとフランツは花のように嬉しそうに微笑む。
まるで女かと見まごうほどの美少女の笑み。
「あぁ!フランツじゃないか。」
「おはよう。フランツ。」
「お、おはよう」
その笑みでなにやら電源が入ったように悪友達三人もフランツに挨拶をした。
俺とフランツとは幼い頃から会合などでよく会う幼馴染。
二人ともスリザリンに入る事を望まれていたのに
グリフィンドールにはいった。だけど、それをむしろ喜んでいるという点で妙に気があっている。
「で、この騒ぎは何なのかわかる?」
リーマスが覚醒したようで、辺りの状況を見渡してからフランツに視線を戻した。
確かに今来たばかりの俺達より、先に来たフランツの方が情報は多くもっているだろう。
そういった理由からはリーマスの行動は正しい。
「うん。えっとね・・・朝食が出てないからみんな怒ってるんじゃない・・・かな。」
「ふーん。なんでだろうね。」
確かにない。と机を見た後のジェームズの言葉にフランツは困ったように笑う。
どうやら理由を知っているらしいと俺は判断した。
ジェームズもそれは同様のようだ。
「フランツ・・・どうしてなんだい?」
ジェームズが食えぬ笑みでフランツにずいっと顔を近づけた。
フランツは額に汗を浮かべて、一生懸命ジェームズと視線を合わせないようにしている。
なんていうか、不憫だ。
「えっと・・・えっと・・・・。」
「ジェームズそのへんにしとけ。いじめてるようにしかみえねぇよ。」
俺の静止にジェームズが渋々といった感じに顔を離す。
名家「ウィクリフ」の坊ちゃんとは思えないほど純粋に育ったこの美少年。
それにジェームズが絡んでいると、どうしてもいじめているようにしか見えないのだ。
「僕のどこがいじめてるのさ。」
「そうだよ、シリウス。ぼくはいじめられてないんだけど・・・。」
ただ質問されてただけで・・・。とフランツはきょとんと首をかしげた。
「あ゛ー!!お前がそんなんいうからジェームズが調子に乗るんだろうが!!」
「何を言ってるんだい、シリウス。僕はフランツと友好をだね・・・・。」
何をいっても聞かないこの親友。これ以上言うのは時間の無駄だろうか。
そう思った矢先にダンブルドアが現れて大広間が先ほどの喧騒が嘘だと思えるほど静かになった。
「えー。こほん。とりあえず、席についてくれんかのう?」
わざとらしく咳をしたダンブルドアに全員の視線が集まる。
そして、今更気付いたように各々の寮の席に着いた。
俺の斜め前。つまりフランツの横に空席が一つ。
不自然にあいているその空間はフランツが何かの荷物をおいているようだった。
思いやりという言葉でできているといっても過言ではないフランツにしては随分と珍しい行動だ。
まるで誰かのために席を取っているかのような行動。
それを見たのかジェームズが意味ありげな笑みを浮かべて見せた。
「転校生・・・かな。」
「・・・・この時期にかよ。」
9月に入って3週目。
この時期に転校なんて普通はしない。
「転校じゃなくても、お家の都合で今までココにこれなくて新入生。
ってコトもありえない話じゃないだろ?」
「・・・・まぁな。」
俺にぎりぎり聞こえる声でジェームズは耳元で囁く。
壇上に視線を移すとダンブルドアがまたわざとらしく咳をした。
「さて。朝食がでていなくてびっくりしたじゃろうが、なんと嬉しい知らせがある。
今日から新しい仲間が皆と勉強する事になる。」
広間中がさきほどよりはるかに大きくざわめいた。
なぜこの時期に。どんな子だろうか。
おそらく生徒達の疑問は尽きない。
もちろん俺も例外ではなく興味がかなり湧く。
「=、入ってきなさい。」
ダンブルドアに名前を呼ばれ、一人の少年が広間に現れる。
異常な美しさの人物が現れ、大広間内が針を落としても聞こえるぐらい静かになった。
白い癖のない長い髪を三つ編みでゆるく一つにまとめ、
すこし長めの前髪からは強い光を放つ金色の瞳が覗いている。
顔つきは名匠が作った一世一代の大傑作のようで、表情がない今では人形のようだと思える。
少年がこちらに視線をむけ俺・・・いやフランツを認めると柔らかな笑みを浮かべて見せた。
人形の顔に生気があふれる。すると、まるで氷が解けたようにざわめきが大広間に戻ってきた。
「わー・・・シリウス。ホグワーツ一の色男の名前、返上しなくちゃいけないかもね?」
あー・・・・。
どこかで体験した事のあるような雰囲気だと思ったら、自分が入学してきたときのそれと同じだ。
リーマスがくすくすと笑いながら俺を見た。
「・・・・良い競い相手じゃねぇか。」
俺が入学してきたときと同かそれ以上の、この大広間を静寂に陥れたその少年に組み分け帽子がかぶせられた。
20050113