白く長い髪をめずらしくほどき風に好きなように躍らせてその人は僕の真下の位置に来た。

僕はちょうど真上。そう、今がそのとき。



「シリウス!!」



友人の名を叫ぶと、真下を歩いていた白い髪の少年のうえに大量の水が洪水のように流れでた。

しかし、少年がいたのはどうもついさっきまでだったらしい。

水が流れが止まってその場所を見ると、少年の影は跡形もなく消えていた。



「あれ・・・・?」



突然わずかに甘い香りが僕の鼻腔をくすぐった。



「なにが『あれ?』なんだ?」


「!?」



背後からの声に振り返ると、切れ長の金色の瞳を細め楽しそうに笑っている人形のように綺麗な造作の顔があった。

背中に冷たい汗が流れる。

少年がさっきまでいた場所は外。つまり一階。

そして、今僕がいるこの場所は螺旋階段をのぼった更に上の三階のバルコニーである。

まずありえない出来事だ。



「7回目・・・。」



左の耳元で甘い声がささやく。

ぞくりとしびれる感覚が僕を襲った。



「お前らの負けだ。たいしたことねぇな、悪戯仕掛け人?」



くすっと耳元で笑った気配がして後ろを振り返ると、少年はもうその場所から消えていた。

左の耳をおさえて、しばらくその場で呆然としていると、違う場所で待機していたシリウスが悔しそうな顔をしてこちらにやってきた。



「畜生・・・。あいつどこ行きやがった。」


「ここ。」


「は?」



ぼけたか?とでもいいた気にシリウスは僕の顔を覗き込んだ。

僕は首を横に振る。



「さっきまでここにいて、僕に話してた。」


「・・・・ちっ。あいつ何者だよ。」



悔しそうにシリウスは空を見上げた。

白い髪の少年――とはまた違った綺麗な顔だった。



「綺麗・・・。」


「は!?」



さらにシリウスは眉根を寄せて僕の顔をまじまじと見た。

まるで宇宙人でも見るかのような目つきだ。ちょっと不愉快。



「お前、熱でもあるのか?」


「違うよ。
 君とを並べてみたらきっと綺麗な絵になるんだろうな。って思って。」



少し怒りをこめて額に手を伸ばそうとしたシリウスの手を払いのける。



「・・・・・。
 まぁ、当然だな。」



はっ。とシリウスは鼻で笑う。

綺麗だということを認めてしまった。まぁ確かに文句なしに男前だけど。

その態度も妙に板につくこの目の前の御仁はふ。と目線を窓の外に移した。



「絵・・・絵・・・?」


「?」



シリウスはあごに手を当てて眉根を寄せ考え込むようなしぐさをする。長いまつげが瞳に影を落とした。

これが女子に黄色い声を上げさせる悩めるシリウス君か・・・。

そのシリウス君は突如何かをひらめいたかのような表情をしてから、右手で顔を覆った。



「うわぁ・・・すっげぇ、ヤな事思い出した。」


「・・・・何?」


「・・・いや、いわない。」



力なく首を横に振り、シリウスは足を寮のほうに向けようとした。



「いってよ。」



シリウスの腕をつかみ、ずい。と顔を近づけて目を細め杖を突き出してみせる。

そこまでいわれたら聞きたくなる。というのが人間の性というものだ。



「いわないっていったら、いわない。」



負けじとシリウスも杖を取り出し僕のほうへ向ける。

両者引く気配は見せず。

ここで暴れるとまたフィルチがやってきて罰則。とかいうことになる。

・・・ここは引くべきなのだろう。仲間同士争っても意味がない。

僕は杖をしまい肩を軽くすくめてみせた。



「・・・・そのうちいってよ。」


「気が向いたらな。」



これが僕なりの譲歩だ。







20030313