突然襟元を引っ張られた。

途端一気に後ろに傾く重心。

突然の出来事になす述がなく倒れると目を瞑った瞬間、ふわりと何かに抱きとめられ同時に甘い香りがした。



「大丈夫か?」



上から降って来る声に恐る恐る瞳を開いてみるとまず最初にうつったのは光かと思うほどの純白の糸。

そして太陽の光のようなきつい光を放つ金色の瞳を持った驚くほど整った顔だった。

その姿を見た瞬間、少し自分が赤面していることを感じる。

これほど近くに。これほど整った顔があった経験なんて今までない。

免疫なんてなくて当然だ。



しかしこの相手。僅かに眉を寄せて、少し心配しているような面持ちではあるが。

どう考えても僕の襟首を引っ張ったのはコイツ。つまり倒れる原因となったのもコイツ。



「大丈夫か?ではないだろう?
 そもそも倒れる原因となったのは君だ。」



少し不機嫌を装って、服装を直しながら立ち上がる。

僕のそんな態度に困ったように笑みを浮かべるその相手。

体を反転させて、よくよく見れば最近、奇妙な時期に転校してきた派手な生徒だった。

いや、派手というのは少し違うか。人目を引くと正しておこう。



その色彩といい。

目鼻立ちのはっきりしているところといい。

1学年にしては高めの長身といい。

あいつらに狙われてるというところといい。


なんせ人目をひく存在なのだ。

言って見れば僕とは正反対。

あぁ、あいつらに狙われてるっていうのだけは同じ。



じろじろと見ていると流石に居心地が悪くなったのか、

そいつ・・・は小さく肩をすくめて、微笑んで見せた。



「悪いな。けど、そのまま歩いて進むよりかはまっしだっただろ?」


「え?」



言われた意味がわからなくて首を傾げて見せると

はにたりと悪戯っ子の笑みを浮かべてみせ、俺の背後を指差す。

促されるままに後ろを振り向いてみると、僕がそのまま進行していく予定だった道は

赤や緑、青などに染め上げられていた。



ついさっきまでは普通の石畳。

ここまで不自然にいきなり汚れるということは誰かがなんらかの手を加えたとしか考えられない。

そしてその誰か。というのは決まっている。



きっと鋭い目つきで二階を見上げてみると、予想通り。

楽しそうに頬杖をついて微笑んでいる眼鏡と、どこか不機嫌そうに眉を寄せた黒髪がいた。



悪戯仕掛け人。



入学当初から僕にずっと悪戯をしかけてくる輩。

悪戯というか僕にとってソレは嫌がらせをしてるようにしか感じられないけれど何時も生徒達の中心にいる奴ら。

頭がよく、容姿も整っているからソレはまぁ頷けるが問題は性格の方だと思う。

こいつらに黄色い声をあげている奴らはそこら辺のことはちゃんと分かっているのだろうか。



隣を見てみるとも僕と同じ方向を困ったように微笑みながら見上げている。

よく見ればブラックは僕じゃなくてそのを睨み付けていた。

いったい何があったのかは知らないが、とブラックの間には何かがあるらしい。



一通り楽しそうにその状況を見ることで満足したのか

ポッターはくるりと踵を返してその場を離れた。

一拍後にブラックもそれに続く。

ブラックはまったく僕のことは目に入っていないようだ。



「後片付けぐらい、していけってのなぁ?」



二人を見送ったが呆れたような息を吐きながら

色とりどりに染められた床を見る。

はなはだ面倒だとでもいうようにだらっと力を抜いてから杖を取り出し、すっと真っ直ぐに杖を構えた。



「―Resaigun」



静かに大切なものを呼ぶように唱えられた呪文。

授業では習ったことのない。聞いたことのない呪文だった。

青白い光がの杖の先から放たれて、赤や青のペンキみたいなものにたどりつく。

そのたどりついた光がひときわ輝いてから消え去るとそこにあった汚れは全て払拭されていた。

驚きに目を見開いて、彼の顔をまじまじと見つめると

は楽しそうに笑い、洗練された優雅な仕草で杖をしまう。



「セブルス=スネイプだよな?」


「あ・・・あぁ。そうだ。」


「俺は=な。俺はセブルスのことセブルスって呼ぶからって呼んでくれ。」


「な!?」


「拒否は却下します。
 あー。んでだなぁ。アレあいつらなりのスキンシップなんだ。許容してやってくれ。」


「!」



にそういわれて眉根に力がこもったのを感じた。

なぜあいつらをかばうような発言をするんだ。もしかしてこいつもグルなのだろうか。

僕がそう思っているのを悟ったのか、は一瞬きょとんとした後、口元を押さえて小さく噴出した。



「・・・・くくっ。いっとくけど俺はグルじゃねェぜ?
 グルならセブルスのこと助けねぇし。」



なにをしょうもないことをいっているのだとでも言わんばかりに笑いながら

は僕の顎の下に指を添えた。

ふわりと僅かに細められる瞳。

は壮絶な色気を突然かもし出し、それは優雅に微笑んだ。



「まぁ許容できないなら、できないでもいい。
 それは人それぞれだ。」


「・・・なんだそれは。」



むすっと僅かに頬を膨らませて、を下から上目遣いにじっと見ると

はぱちぱちと何度か瞬きをしてからにっこりと微笑んだ。



「お前、可愛いなー。セブルス。」



なんだか適当な物言いにむかついて、僕はの手を力いっぱい掴んでの瞳をにらみつける。

だが、僕のその苦労はにっこりと微笑むの前では柳に風のようにただ、ただ流されていくだけだ。

こんなに一生懸命をにらみつけている自分が損をしている気分になる。

諦めて、の手を握る力を緩め盛大に溜息をついてみせると

は小さく首をかしげながらにっこりとした笑みを深めて見せた。

その笑みの底にある感情はいまいち読み取れないが、今は気にしても仕方がない。



「とりあえず、ありがとう。というべきなのか?」


「別にー?セブルスが言いたけりゃ、言えばいいし
 言いたくなければ言わなくていいんじゃねぇ?」



質問すると帰ってきた言葉は己で決めろという言葉。

僕から指先を離して、そのまま口元に人差し指をもっていき斜め上に視線をあげ考えるようなポーズをとる。

時折ちらりと此方をみる瞳が確実に何かを催促している。



「・・・、礼を言う。ありがとう。」


「だーかーらぁ、って呼べよ?」


「・・・・。」



そのまま従ってやるのがどうも癪で、苗字の方を再び呼んでやるとはむすっと頬を膨らませた。

今までどこか大人びていて余裕だった態度が突然年相応のそれになったことがひどく不思議で魅力的だった。

しかしその表情もすぐに変わってしまう。



「絶対って呼ばせてやるからな。セブルス。」


「・・・楽しみにしている。」



にっこりと悪戯っ子のような笑みと共に告げられた言葉に

僕はどきどきとした不安と喜びの交じり合った気持ちで、彼から視線をそらして返事をした。




2007/09/05

あとがき

セブルスうっかり萌えwな気持ちで書きました。
セブルス嫌いの人がセブルス好きになってくれればいいな^^
こんなツンデレで可愛い姫いないと思うよ^^d