いたって普通の日だったんだと思う。

いつも通り、授業を受けて。

いつも通り、放課後は図書室で睡眠むさぼって。

リリィに言わせたら授業中寝てるくせにまだ寝るとか信じられないとか。

そういわれても睡眠は俺の体にとてもとても必要なモンなんだ。



「あ、セブルスー。」


か・・・。」



図書館から外に出るとすこしウェーブかかった黒髪の友を見つけた。

走りよると、セブルスは少しだけ空気を柔らかくして見せた。

普通なら気づかないほど些細な変化だったけれども俺にはわかる。伊達にセブルスと仲良くしていない。

この寡黙な友はへたすれば誤解を招きやすい。本当はすごい良いヤツなんだけど。

そんなことを思いながら彼の顔を覗き見ると、彼は何度か目を瞬かせいぶかしげに眉を寄せた。



「僕の顔に何かついているのか?」


「ん?別になんもついてねーよ。」



きょとんとかわいらしく俺は首を傾げてみせる。

辺りから黄色い悲鳴が上がったことはこの際おいておこう。

この学校の過剰反応が非常に面白い。セブルスも心なしか顔が赤いような気がする。



「なにー?セブルス、もしかして俺に・・・ほ・れ・た?」



うふ。と人差し指を口元に持っていって軽く目を細めて妖艶に笑って見せると

今度こそごまかしようの無いくらいセブルスの顔は赤く染まりあがった。



「くっ・・・からかうのも大概にしろ!」



眉根を寄せて口の端を噛み、顔を真っ赤にしながらセブルスは俺から顔をそらして軽く肩を突く。

とても軽く。だけど俺は予想以上にふらつき、よろめいた。どうしてだと思った次の瞬間。

脳裏に一瞬ある映像が映し出され、俺は額を押さえながら倒れないように足を踏ん張った。

眉根を寄せて顔を上げるとセブルスの心配そうな顔が目に入った。辺りから悲鳴が聞こえる。

やべぇ・・・このままじゃセブルス誤解されるし。これはセブルスのせいじゃない。



・・・大丈夫か?」


「・・・俺、乙女だから貧血みたい・・・。」



ぐたーっとセブルスに抱きついてみると、セブルスは慌てた様子を見せて俺を引き離そうと試みた。

しかし俺に離れる気は無い。セブルスは尚も頑張るが俺に力で勝てるわけねぇだろ。



「貴様はっ・・・!僕が心配しているというのにっ!」


「あははー。冗談冗談。ちょっとセブルスからかっただけだって。」



くすくすと笑いながらセブルスから離れると、セブルスは少し睨みをきかせながらローブの前を整えた。

俺はローブのポケットに手を突っ込み、セブルスの一歩前を歩き出す。

寮への帰り道は途中まで同じなため、俺達は特に言い合わせるわけでもなく一緒に帰路に着いた。



「お・・・?」


「どうした?」


「いや・・・。」



これか?ここなのか?

先ほど脳裏に移った風景が今目の前に広がっている。

つまり・・・?俺が上を見上げると悪戯気な笑みを浮かべる黒髪の眼鏡と視線が合った。

先ほどと同じビジョン。ジェームズの手にはなにやら怪しげな液体の入ったビンが握られている。

そして、ジェームズはソレを下にたらした。目標地点は隣の友人。



「・・・ちっ!セブルス!!」



力の限りセブルスを突き飛ばし、俺もその場から離れようとしたが少し遅かった。

俺はその薬を体に浴びる。どくんっと、心臓が大きく波打った。

苦しい・・・!俺はローブの前を強く握りしめて、膝を突いた。



「・・・っあ・・・・けほっ・・・・!」


!!」


「そんなっ!どうして邪魔するんだい!?」



ジェームズが心配そうに眉根を寄せて、上から飛び降り俺に走り寄ってきて俺は小さく笑みを浮かべた。

シリウスがあせった顔で少し遠目から走ってくるのが見えた。



「・・・友達が・・・・けほっ・・悪戯され・・・んの・・・・黙って・・・みて・・・られるかつーの!」



最後は無理やり叫ぶ。息が荒くなる。なんとか呼吸を落ち着かせようと深呼吸を試みるがうまくいかない。

一体何の薬だコレは?起こることは知っていたけど結果を知っているわけじゃない。

いつのまにか辺りに人だかりができてきた。悪戯仕掛け人のことだから死ぬような薬では無いと思う。

じゃぁ、なんだ?



「・・・っ!」



目の前の事態についていけていなかったセブルスははっとわれに返り

唇をかみ締め痛みをこらえて膝を突いている俺を支えた。



「大丈夫か!?なんで、こんなこと・・・!」


「・・っ・・・さっきもいっただろーがー・・・っぅ・・・!」



そういった瞬間にさらに大きな痛みが体を襲い俺の体は弓なりにはねた。

痛みに瞳孔が限界まで開く。そして、次の瞬間辺りをまぶしい閃光が包み込んだ。

体の痛みが治まって、ゆるゆると目を開けるとセブルスもゆっくりと目を開けているところだった。

そして、彼は驚きに目を見開き、俺から手を離した。

ガンッと床に叩きつけられた俺は背中をさすりながら眉根を寄せて首をかしげる。



「うわっ・・・!す、すまない!!」


「・・・どうした?・・・!」



聞こえた音があまりに信じられなくて自分の喉を押さえる。さっきの俺の声・・・?

それにしては随分高くなかったか?

俺は一つの可能性を探り当て、制服の前のボタンをプチプチとはずし始めた。



「ある・・・・。」


!!」



シリウスが俺に近づいてきてきつく声を掛ける。

自分の胸がなんかでかい。手でつかんでみると柔らかく感触もあるので作り物ではないのは確か。

そして、そういえばシャツもぶかぶかだ。え・・・?ということはもしかして?



「うわっ・・・!こっちはねぇよ!!」


「大衆の目の前で触んな、ボケ!!
 つーか、前隠せ!!」



下についているはずのものを確かめているとシリウスからローブをばっさりとかぶせられた。

あいかわらずボンボンの癖に口悪い・・・。あぁ、それより、今のこの状況なに?

俺は目を瞬かせ、シリウスを見上げるとシリウスは眉を下げ顔を赤く染めて視線を俺からそらした。



「誘ってるようにしか見えないから、はやく隠せ!」



誘ってるっていうか、俺ただ自分の体確かめてただけなんですけど。

でも、見ようによってはそうかもしれない。シャツの前が半分ほどはだけてるし。

しかも上目遣い?んで、俺美形だし。

少し頭の整理ができてきて俺はシャツの前をとめながらシリウスを見上げる。

となりでセブルスは口を金魚のようにパクパクしていた。



「なぁ・・・シリウス。俺・・・女になってねぇ?」


「・・・あぁ。そういう薬だからな。」


「・・・・期間どれくらいなんだよ。」


「・・・それは・・・・。」


「・・・2週間だよ。」



リーマスがどこからともなく表れ、苦笑を浮かべて見せた。

はぁ・・・。と小さくため息をついて俺は立ち上がる。

とりあえず同室のアイツに言っておかないとなにかと厄介だ。そして辺りを見渡す。

彼はいない。だとすれば自室の中か。



「誰かー。フランツ呼んで来いー。」



誰かといいつつ、俺の視線はただ一人のほう。

寝癖付きまくりの黒髪をもつ、なかなか整った顔でにっこりと微笑んでいる眼鏡だ。

強制を持った笑みで微笑んでやるとジェームズは参ったとでもいいただけに眉を下げてひらひらと手を振り寮のほうへ消えた。



「セブルス大丈夫か?」



腰を抜かしているセブルスに手を差し出すと、セブルスは瞬きをしてから頭を振って俺に視線を合わせた。

黒い瞳が不安げに揺れている。突然こうなりゃ当たり前か。もしかすると自分の身に降りかかってたかもしんないし。



・・・か?」


「そ、俺。」



セブルスは俺の手をとってゆっくりと立ち上がり、俺をつま先から天辺まで見た。

そして顔を赤く染める。・・・かーわいい。

あ、そうだ。俺、一つわかんねぇことあるよ。



「なぁ、みんな、俺、あいかわらず美人?」



腕を広げて、妖艶な笑みを浮かべながら当たり全員に問いかけると黄色い声を共に皆が頷いた。

美人なら女でも良いかな。って思う辺り俺もそろそろやばいかもしれない。











2006/03/20