あまりに現実離れしている話だと、思わず夢なのじゃないかと疑ってしまうのは当然の事で

僕はまさにいまその状態だった。僕は何度か瞬きして何とか声を絞り出す。



君・・・?」


「おーよ。」



震える手で君の雪のような色の頬に触る。

いつものソレより随分と柔らかい。それ自体が光っているような白色の髪に指を通してみるとソレは触りなれたものだった。



「本当に・・・?」


「なに、しんじらんねぇの?」



いつもより高い声でそういわれて僕は無言で返した。

だって、わからない。この整った顔には君の面影を残しているけれども

妹さんだって可能性もある。みんなして僕をからかっている可能性も考えられる。

それに・・・なにより僕は夢だと思う。だって、君が・・・・女?

ぐるぐると小さな頭で考えている僕の顔を見て君らしき人が意地の悪い笑みを浮かべて、髪をすいていた僕の手をとった。

何をするのかと首をかしげてその様子を見ていると、君は僕に目を合わせたままつかんだ手を口元に持っていき

そのまま手の甲にキスするように吸い付いた。



「!」



吸い付かれる感覚があまりにリアルでコレは夢ではないのだと思い知らされる。

そして、僕に好んでこんなことするのは君意外にいないと。

今更ながらに周りから黄色い声が上がっているのに気がついた。

大衆の目前だったことを思い出し、僕は頬を朱色に染めた。

うわー・・・どうしよう。僕・・・なんかすごい恥ずかしい体制じゃない?

あたふたと回りに視線を泳がせながら僕は君に目線を止めた。



「・・・君・・・なんだね?」


「おぅ。」



にかっと快活に笑う彼・・・じゃなくて彼女に僕は小さくため息をついて見せた。

僕がここに来たいきさつ。話は少しさかのぼる。












「僕の愛しのフランツー!いったいどこにいるんだいー?」


「?」



ベットの上でクッキーをほおばっていて聞こえてきたジェームズの声に、

僕はなんどか目を瞬かせてベットから降りた。

ルームシューズを足に突っかけて、声が聞こえてくるほうを向いてみると

どうやら談話室の方向らしく僕は自室を出て談話室への階段を下った。



「ジェームズ。僕はジェームズのものでもないし、愛しなんていったらリリーに怒られるよ?」



苦笑交じりにそういうと、ジェームズはにっこりと害のなさそうな笑みを浮かべながら両腕をひらいた。



「なにをいってるんだい、フランツ。愛しい人は何人でもいて良いんだよ!もちろんもさ!」



自説を堂々と言い張るジェームズに僕は眉を下げて苦笑を浮かべ、ジェームズに近寄った。

ジェームズは君の事も好き。というか、ほとんどの人が君の事好き。

彼の雰囲気にそうさせるものがあるんだと思う。



「愛しい人は一人で十分だと思うけど・・・。あ、そうだ、ところで僕に何か用?」



きょとんと首を傾げてみせると、ジェームズは広げていた腕を閉じてにっこりと微笑んだ。

腕を閉じたので抱きつかれる可能性が低くなり、僕はジェームズにさらに近寄った。



「うん。がフランツのことよんでるんだ。それで僕が迎えに来たってわけさ!」


「え?君が?」



僕は驚きに目を見開いて、瞬きをした。

なんだろう。その場を離れられない事情でもあるのだろうか?

君が自分で来ずに、人を使うなんて珍しい。



「どうかしたの?」


「うん、それは来てからのお楽しみ。」



人差し指を口元に持ってこられて、僕は目をまるくした。

眼鏡の奥から緑色の瞳が楽しそうに揺れている。

あまり良い予感はしなかったそして現在に至る。











「君達・・・君になにしたいの?」



悪戯仕掛け人のほうを向いてみると、悪戯仕掛け人たちは小さく息をのんだ。

それもそのはず。めったに怒らない僕が小さく震えて眉を上げ睨みつけているのだ。

普段は怒らないからそのエネルギーがどっかに溜まってたらしく。

僕の怒りで辺りの空気が動き、下から風が吹いてくるように魔力が吹き上がって僕の髪が逆立った。



「ねぇ・・・?答えてくれない?」



悪戯仕掛け人たちが少しおびえたような表情になっている。

僕が一歩踏み出すと、それに比例するように悪戯仕掛け人およびギャラリーが一歩下がる。



「ウィ、ウィクリフ・・・!僕のせいだ!僕をかばってが薬を浴びて・・・!」



スネイプ君が一歩進み出てそういうが、僕がそちらを向くと小さく息をのんでまた一歩下がった。

僕は悪戯仕掛人に視線を戻して、にっこりと微笑んでみせる。



「そう・・・。でも・・・周りの人・・・っていうか君巻き込む悪戯ってどうかと・・・思うなぁ?」



にこーっと笑って悪戯仕掛人に杖を向けた。

君は僕の特別。他の人ももちろん大切だけど君はぬきんでて大切。

なんでかはわからない。でも君だから大切なんだ。



「おい、やめろフランツ。」



後ろからやわらかい感触が襲い、重みがかかる。

顔を向けてみて君だと分かった。いまだにこの声にはなれない。

君は穏やかな笑みを浮かべて僕の頭を優しくなぜる。

怒りが徐々に静まっていくのが分かった。



「・・・君はそれでいいの?」


「ん?あー・・・いいってわけじゃねーけど、そのうち戻るし問題ないんじゃねぇ?」


「お気楽だね。
 ・・・・!」



苦笑を浮かべながら、ある重大なことに気がついた。

現在君が僕に抱きついているわけなんだけど背中辺りに柔らかいものが当たるんです!



「・・・・・・・君!む・・・む・・・が!」


「あぁ?はっきりしゃべれよ。」



眉根を寄せて君は不機嫌そうに言うけど僕今、それどころじゃない。

だって、慣れてないもの!こんな状況!いや、状況的にはなれてるんだけど、

それは君が男の場合なのであって、性別転換した場合の話じゃない!

普段は硬い胸板なのに、何この柔らかい感触!?



「・・・胸・・・あたってるから!!」


「あ。」



顔を真っ赤にしながら叫んだセリフに君はぽかんとした表情になってから小さく噴出した。

そして、僕から離れてにっこりと微笑む。

うわー・・・やだ。僕は両手で自分の頬を包み込んだ。絶対、今僕の顔は赤い。

くすくすと笑いながら悪戯仕掛人たちが僕に近寄ってきてシリウスが肩を叩いた。



「なに、うぶな態度とってんだよ。」


「・・・僕、まだ怒ってるから。どうして君・・・じゃないや、スネイプ君にこんなことしようとしたの?」



目を細めてそういうとシリウスは一瞬顔を引きつらせて、視線をジェームズに向けた。

シリウスは付き合いが長いから僕が一度機嫌を損ねるとなかなか直らないことを知っている。

視線を向けられたジェームズも眉根を下げて困ったような笑みを浮かべた。



「あー、それ。俺も聞きてぇ。」



僕の話に乗じるように相変わらず高めの声で君が腕を組んで悪戯仕掛人たちに視線を向けると

シリウスとジェームズは再び視線を合わせて、何かいいにくそうに口をもごもごとさせた。

それに見かねたのかリーマスがシリウスとジェームズのすね辺りをけって、君に近寄ってくる。

二人は痛そうにすねを押さえてその場にうずくまった。



「で、リーマス。なんでよ。」


「うん。再来週末クリスマスパーティーあるじゃない?」


「ん?あぁ。」


「そういえばあったっけ。」



僕と君は視線を合わせて首をかしげた。

ソレが何。先を促すようにリーマスに視線を向けるとリーマスは微笑んで先を続ける。



「スネイプって結構スリザリンで人気あるじゃない?
 だから、ダンスパーティー出れないように嫌がらせ。」


「・・・・あー・・・。」


「ひどいっ・・・。」



なんで、そこまでするの!?

君があきれたような目をリーマスに向けながら、両手で口を押さえた僕の頭をなぜた。



「まー、いつもこんな感じだ。こいつらの思考は。怒んな。怒るだけ無駄だ。
 ・・・・で、だ。」



君はいつもとは違いふっくらとした桜色の唇に人差し指を持っていった。

その動作だけでも随分と妖艶な雰囲気が漂い辺りから息をのむ声が聞こえる。

そしてその人差し指を君はそのままリーマスにむけた。



「リーマス。俺はパーティー、でれねぇってことだな。」



ゆるく首をかしげて君がそう問いかけるとリーマスはコクリと頷く。



「男では・・・だけどね。」


「ん。そういうことだな。
 つーことで、男子諸君よぉくきけ!」


「!?」



君はぱっと両腕を開いてギャラリーたちのほうへ満面の笑みを浮かべた。

女子達の黄色い声がひときわ大きくなる。



「この様をダンスパーティーに誘いてぇヤツはふくろう便でよ・ろ・し・くv」



片方の手を腰に添えて、人差し指を口元に持っていき、片目をつぶって君はそうのたまった。

そして次の瞬間一気に人の波が動く。僕はその空気に思わず圧倒された。

隣にいた悪戯仕掛人も同じような感じで口をぽかんと開けている。



「あ、たーだーしだ。すでに女子ゲットしたやつは申し込み資格なし。女性には優しくな?紳士諸君・・・?」



ふっ・・・。と妖艶な笑みを浮かべ君は動いた波を見渡す。

君はどこかすべてを見通したようなところがあるから、嘘ついてもばれることを彼らは知ってるのだと思う。

半数ぐらいがその場にとどまり、あともう半分が自室へとかけていった。



「うわぁ・・・・。」


「うふふー。楽しみだわ。」



君は髪を手の甲ですくい上げて振り払い微笑む。

元が綺麗なだけにそれだけでもかなり決まった。



君・・・もしかしてこの状況楽しんでる?」


「ん?あぁ、まぁな。」



にかっとわらった彼はいつも通りで僕は思わず笑みを返した。

翌日の朝食時。君のもとに大量のふくろう便がとどいたのはまた別の話。














2006/03/22