「シリウスー!」



女の声が聞こえて俺は不機嫌もあらわに振り向いた。

今はなんだか女相手する気分じゃない。

適当にあしらって離れようと思ったのだが、

その姿を認めた瞬間に俺の考えは払拭された。



「・・・お、おまえ!なんだその格好は!」


「やだぁ。シリウス君たらそんなに見とれなくても良いじゃない?」



美術品を思わすかのような人間味を失った美しさを持つ目の前の少女は

頬に人差し指を添えて、微笑む。

それと同時に発せられるめまいがするほどの色気に周りのヤツが腰砕けになっているのを目の端で確認した。



「・・・どういうつもりだよ。」



俺が嫌そうに半眼になって聞くとそいつは腰に手を当て唇を弧の形にした。

そしてゆるく首をかしげて、光るように白い髪を揺らす。



「愉しめるもんは愉しんでおかねぇと、いけーねぇなぁって。」



くつくつと楽しそうにそいつは普段の言葉遣いにもどってそういう。

その姿でさえ様になっているからなんだか癪だ。



「シリウスー?」



視線をそらした俺の顔を覗き込むようには俺に目線を合わせた。

改めてみてみると似合いすぎて怖い。いや、いまは女だから当たり前なのだが。

別にそこまでしなくて良いと思うのだがの今の格好は女子の制服で

ついでといわんばかりに薄く化粧までしている。

何時かの光景がフラッシュバックするような感覚さえ思い出される。

ちなみに甘い香りは相変わらずのものだ。



「なんでそこまですんだよ。」


「女子に遊ばれたんだよ。こんな美女放っておくわけないだろ?」



この学校の女子が。と耳元ですこしトーンを下げて言われ

俺は小さく身震いをした。恐怖じゃない。きっと快感の方に近い感覚。

まじまじとの顔を見てみると男であった頃の面影を多少なりとも残しているものの

その顔のつくりは女のそれだ。

ふっくらとした桜色の唇をみて思わず手を伸ばし触れると

は視線を上げてきょとんと首をかしげ微笑んだ。



「欲情したか?わんこ。」


「ばーか。お前なんかに欲情するか。」



口ではそういうものの頬が赤く染まるのが分かる。

年不相応な妖艶な笑みを浮かべるそいつには欲情しても仕方がないとは思う。

首筋に手を伸ばしそのまま体に抱きつくと、甘い香りと共に柔らかい感覚を感じる。

いつもの硬い体とは違う。そして本来俺は抱きつかれる方で抱きつく方ではない。

だから今の状態はものすごく希少。



「随分と積極的だな、シリウス。」



にぃっと口の端を上げては微笑む。



「いつもそうだと俺も嬉しいんだけど・・・。ま、いいわ。」


「!?」



は俺の頬を両手で掴み顔を近づけて軽く触れる程度のキスを唇に落とした。

目を見開き驚く俺にはただ楽しそうに微笑む。


まわりの女子が黄色い声を上げてカメラのシャッターを切る音が聞こえた。

俺は顔が整っていると自負しているし、は男であろうと女であろうと魅了する極上と言えるような顔つき。

女子には万々歳な状況だろうと思う。


眉を下げて不機嫌そうにの顔をにらむとはただへらりと笑って返した。

抱きしめていた腕を放し、そのまま手をローブのポケットにつっこむ。



「大衆の目の前だぞ?」


「んなこと俺が気にした事あったかよ?」



冗談だと分かっているのだけれども、

はっ。と馬鹿にするように鼻で笑うそいつがなんとなくむかついて

笑いながら髪をぐしゃぐしゃに撫で回してやるとは楽しそうに笑いながらギブと呟いた。



「ねぇな。気にした事は。」


「だろ?」



手を離してやるとはぐしゃぐしゃになった髪を手櫛で軽くすいて

俺と同じようにローブに手を突っ込んだ。が歩き出したので俺もそれに続く。



「それよりさー、シリウス。」



俺の顔を見ずに視線を前に向けたままはふと呟いた。



「あ?」


「俺、お前からお誘い受けてねぇけど?」


「はぁ!?」



眉を寄せて思わず大きな声を出した俺には楽しそうに微笑み返す。



「ダンスパーティーのお・さ・そ・いv」



一言一言区切りながら、頬の横に手を当ててそういうそいつに

俺はぽかんと口を開けて返した。こいつ、何を言ってる?



「俺、シリウスから愛のラブレター届くの楽しみにしてんたんだけどなぁ?」


「馬鹿かお前。」


「馬鹿で結構。まだ女の子ゲットしてねェだろ?」



中庭にたどりつき、は腰をおって俺をしたから見上げるようにして笑う。

ブラウスのスキマから雪のように白い胸の谷間が見えて多分こいつ下着つけてないんだろうな。

と思う俺は変態だろうか。いや、それどころじゃない。

今の状態なら確実にのほうが変態だと思う。



「決めてねぇだけだよ。」



自慢じゃないが女子からのお誘いの手紙は多数いただいている。

こういうのって普通男から誘うものなのだけれども積極的なのもたまには良いかと。

でもそろそろ決めねぇと。とは思っていた。



「お前は男。で、俺も男。」


「今、女だから関係なくねぇ?」


「精神的に関係あるだろーが!」



の額に人差し指を突きつけてそういうとはくすくすと笑った。

そして腰を折っていた体制から普段の体制に戻す。



「でも、貴重だぜー?俺が女でダンスパーティー開かれるなんてもうこの先、一生ないかもよ?」



その言葉に俺は一瞬詰まる。

をエスコートしてみたくないか?と聞かれて、『したくない』といえば嘘になる。

それに・・・。とに視線を向けてみるとそこにある姿は極上の女以外のなんでもなくて。



「シリウスからこないんだったら俺はリーマスを選ぼうかと思ってるからそこんとこもよろしく。」


「な!?」



あいつを誘ったのかよ!?

たぶん直球で聞いてもただ笑顔でそうだよ、だからなに?と返される事は分かるけれども

何故!?いや・・・俺と同じ理由か?

・・・のただならぬ魅力に惹かれている?



「・・・ん?なぁ、。」


「んー?」



あることが頭の中に引っかかりの方を向いて見るとは楽しそうに首を傾げて見せた。



「俺を一番優先してくれるってことか?」


「・・・んー、どうしよっかなぁ?」


「なんだよそれ!」



言葉の意味を良く考えていったのになんでそこではぐらかされなきゃいけないんだろうか。

はただ楽しそうに笑い俺の頬を人差し指で押した。



「冗談だ。俺はお前を最優先にするぜ?シリウス。」


・・・。」


「だって、お前の反応一番楽しいし。」


「っおい!!」



が頬に手を当てて微笑んだので俺は胸倉を掴んだ。

しかし次の瞬間には俺は手を話してお互い微笑んみあう。



「俺とダンスパーティーに行ってください、姫。」



片膝をついて胸に手を当てて傅くとはにっこりと微笑み手を差し出した。



「喜んで、王子様。」



俺はその手をとって手の甲に唇を落とした。










2006/03/23