――雪の降る街で――





窓の外にちらつく白い雪。

部屋の中には暖かな暖炉の火。

とはいかないが、石油ストーブが暖かな色を放ちながら燃えている。



「・・・・クリスマス?」



まだ10歳にも満たない息子が年につかわしくなく眉根を寄せて

僕の顔を見上げた。



君、しらないの?」


「・・・・いや。もち知ってるけどよ。」



それがどうしたといわんばかりに、興味なさげな態度をとる僕の愛息子。

目線はすでに手元のなにやら難しそうな題名の

黒いハードカバーの分厚い本に移ってしまった。

少しうつむき加減。睫毛が強い金色の瞳に影を落とす。

マッチ棒が乗せられそうなぐらい長い睫毛。

その綺麗な横顔にしばらく見惚れていると、

息子は再び眉根を寄せてこちらをみた。



「・・・・・きしょくわりぃわ、あほめ。」


「な!?君!そんな綺麗な顔でそんな暴言はかないで!」


「んなもん、俺の勝手だろーが。」



確かにそのとおりなのだけども。

僕が不服そうに頬を膨らますと、息子はわざとらしく溜息をつき、

本にしおりを挟むとパタンという音をさせて本を閉じた。



「で。何の用だよ。」


「・・・わかってたなら最初から聞いてくれればいいのに。」


「・・・・なんかいったか?」


「!・・・・なんでもない!!」



なにやら背筋が凍るような黒くて穏やかな笑みを浮かべられたので急いで応えた。

ここで機嫌を損ねては目的を達成できない。



「えっとね・・・君。お父さんいっしょにお買い物に行きたいなぁ・・・・って。」


「あぁ、夕飯か?今日なんにする?」


「違う!違うんだよ・・・。あのね。」



少し視線を斜め下に落とす。

聞き入れてくれるかはわからない。

答えを聞くのが少し怖いから、質問をするときもすこし戸惑ってしまう。

悪い癖だとわかっているのだがなかなか直らない。

痺れをきらせたのか、は僕の顔を覗き込んだ。



「・・・で?」


「・・・クリスマスツリー・・・・買いに行かない?」


「・・・・・・・・・・・・は?」



たっぷりとした間が空いた後、彼には珍しくマヌケな顔で僕の顔を凝視した。

白い髪が彼の肩から一筋落ちると、

それに気付いたように彼は現実に戻ってきた。



「や・・・あるじゃねぇの?」



これぐらいの。とは上下に50センチほどの空間を両手で示して見せた。



「つーか、クリスマス・イヴ明日よ!?」



そういや、何も用意していないと部屋の中を見回す息子。

今更気付くなんて遅いと思うのだが、

あまりそういうことに興味のない子なのかもしれない。



「うん。おっきいの買いたいんだ。僕の背ぐらいの。」


「・・・・。」



息子は顎に片手を添えて、考え込むような表情を見せた。

やはり駄目だっただろうか。

すこし僕の表情に陰りがさしたのをみて、息子はくすくすと笑みを浮かべた。



「そんな。悲しそうな顔すんな。
 いいぜ。行ってやろうじゃねェの。」


「本当!?」


「あぁ。なら、早いほうがいいな。今から行くか?」


「うん!」



満面の笑みで息子に応えた。











20041224