異様なだるさが体を襲っていた。

どうしてこんなにも疲れてるんだっけ。

随分と長い旅をしてきたようにさえ思う。

上になにかのっているように俺の体ははいつくばっている。

目を開けようにも体がうごかなかった。



「おい」



声がかかるが俺は微動だにできない。



「死んでんのか。」



違う。まだ生きてる。



(…生きてる?)



いや、俺はさっき市丸ってやつに殺されたはずだ。

だとすれば今の俺はなんだ?死後の世界って事か?



俺は力を振り絞って瞼をあげる。

目に入ったのは燃えるような赤く長髪と一風変わった眉毛だった。

そいつの瞳が大きくひらく。



「おい!お前大丈夫かよ!?」



あまりに彼が必死なので俺は口の端をあげてみせた。



「笑ってる場合じゃねぇだろ!?」



「なぁ…こ…こ死…後の世…界?」



ヒューヒューと喉元に風が切るような音をさせながら俺はなんとか声をだした。



「お前っ…何…!ちっ…その通りだよ!ここは尸魂街だ!」


「…そ…っか…」



あの市丸がいっていたところにとりあえずついたらしい。

いいのか、悪いのか俺にそれはわからないけど。

再びぐったりと目を閉じようとする俺を赤髪が強くゆすった。



「お前、もしかして死にたてか?」



死にたて。

まるでそれが生まれたて。とでも云うようなニュアンスで。

たしかにこの思うように動かない体は赤ん坊のそれに近いような気もする。



そうだ。と声をだそうとしたがそれは音に成らなくて、俺はただ微笑みながら小さく頷いた。



「…わかった。とりあえず俺の家につれてくぞ。文句は後で言え」



そういいながら赤髪は俺を担ぐ。あ、俺こいつの名前知らねぇ。

だけど聞きたいのに声がでない。

ゆらゆらと担がれながら俺は意識の境をさまよっていた。



そういやこいつ重くないんだろうか。

俺は身長が高い事に比例して体重もそれなりに重いはず。

なのにこの男はまるで俺に重さがないような速度で走っている。

しばらくしてついたのは江戸時代にはあるんだろうな。と思う長屋だった。

乱暴に足で扉をあけ、中に入ってそっと寝かされる。



「ちょっとまってろよ」



そう云って彼はどこかに消えていく。

それを目で追う体力すら俺には残ってないらしく

俺はただ天井を見つめていた。

暫くしてカチャカチャと音をさせて、赤髪の男が帰ってきた。



「喰えるか?」



赤髪の男が俺の上半身を起こし、支えるようにしてれんげを俺の口元に持ってくる。

目線を少し下げてそれをみてみると白粥に溶き卵がのっているものだった。

赤髪の男がれんげに息を吹きかけすっと更に口元に近づけられたので俺は恐る恐る口を開いた。

暖かいモノがすーっと喉を通る。体の中からじんわりと温まってくる事がわかった。

それと同時に体に少しだけ力が戻ってくる。

ゆっくりとそれを何度か噛んで咀嚼する。ふぅ。と息を吐くと。

赤髪の男の顔が安堵の表情になっていった。



「大丈夫か?」


「・・・悪かっ・・・たな。あり・・が・・・とう。」


「いや、俺は当然のことしただけだから。」



赤髪の男はすこし照れたように頭をかいてはにかんだ。

そして再び俺の口元にれんげを持ってくる。

それを何度か繰り返し、茶碗の中身が半分ぐらいになった後

俺は赤髪の男の瞳を見上げた。



「そう・・・いえば・・・な・・まえは?」



まだ少し喋りにくく舌足らずな言葉でそういうと

赤髪の男は少し目を丸くして俺を見た。



「あぁ・・・そういやいってなかったか?
 阿散井・・・阿散井 恋次だ。」


「れん・・・じ・・・恋次・・・?」



なんどか口の中で恋次の名前を呟き、恋次に視線をむける。

恋次は小さく首をかしげて俺の目を覗き込んだ。



「俺・・・は、・・・。恋次・・・ありが・・・と・・・な。」



へらりと微笑みながらそういうと恋次が困ったように微笑んだ。



「だーかーら。当然のことしたまでだって!人が倒れてりゃ誰でも助けるだろ!?
 ・・・くそっ、あ゛ー!もう、いい!寝てろ!」



俺を布団に寝かしつけて恋次は俺の頭をぐしゃぐしゃと撫で付ける。

ちらりと視線を上げると耳まで真っ赤にした恋次がふてくされた顔で俺の方を向いていた。



「あのさ、。」


「?」


「俺、仕事であんまり家にいねぇけど、気が済むまでここにいればいい。」



少し頬を染めて恋次は視線を外しながら俺にそう云い、ちらりともう一度此方に視線を向けた。

俺はクスリと微笑み、まだ十分には動かない口を開く。



「ありが・・・と。」





 

2006/05/15

アトガキ

甘っ・・・!ナニコレ!?私にあるまじき甘さ!
これを本来の相手にもっていくべきだとは分かってるんですけど
なんでこういうときに出るかなぁ(遠い眼)

恋次好きですよ、ヘタレで。
ガンダム種でいうと生え際が危ない彼の位置です。
苛めて苛めて愛すのが彼への愛です(ぉぃ)