「…」



(えぇっと…?)



俺は只今とても危険な状況に陥ってます。

とってもコワモテなお兄さんたちに囲まれたと思ったら、

こんどは頭にたくさん鈴をつけた大柄な男に

真正面から値踏みされるようににらみつけられてます。



(俺、なにしたっけ?)



今日はまたギンに



『見送ってくれな、ボク仕事いかへん』



とかわけのわからない事を言われて

昨日ギンを待っていた瀞霊廷とか言う場所まで見送った。


で。その後が問題だ。

あいつ。そのまま帰ろうとした俺をひきつれて中に入りやがった。

隊舎とかいうそれぞれの隊に与えられるらしい詰め所までつれてこられて

その後はギンは吉良っていうやつにつかまったから、帰ろうとしたんだ。


そして迷った。


通路はまるで迷路かと怒鳴りたくなるほど入り組んでいて

初めてきたことに加え、ギンに引きずられながら歩いていたために

自分がきた道なんて覚えているはずもない。

それでもなんだかそれが口惜しくてこの建物の中をかれこれ2,3時間うろちょろしてた。


建物の中で迷うはずがない。

そんな妙な自信が今日は裏目に出たらしい。

もしかすると、朽木か乱菊さんか・・・日番谷さんに出会うかもしれない。

そんな淡い期待を抱いていたのも悪かったか。


あれ、なんだろ。白に近い銀色の髪をもつ日番谷さんのこと思い出したら

頭ン中にびりって僅かに電流が走るような感覚を感じた。



「おい。」



腹に響くような重低音で声を掛けられ、俺はなんどか目を瞬かせて声を発した相手をみた。



(・・・現実逃避にもほどがあるだろ、俺!)



迷って、迷って。

途方にくれてる時にすれ違った人に肩が当たった。

それが現世でいうチンピラみたいな奴らで絡まれてる最中だったんだ。

しかしチンピラみたいなおっちゃんたちはまだいいほうだった。


目の前にいるこいつは何?

180後半ある俺の身長をはるかにこえるソレ。

しかも髪の毛を逆立ててるものだからさらに身長は高く見えて

まるでライオンのタテガミのようになっているので威嚇にも十分。

しかし、各髪の毛の先についている鈴はなんなんだろう。

眼帯をしているし、そうでなくても強面なのに。

その鈴の所為で可愛いのか怖いのかよく分からない御仁だ。



「お前やるな。」


「ど、どうも・・・。」



上から覗き込まれるような体勢で俺は冷や汗をかきながら

しどろもどろになりながら答えた。

ちなみに俺は何もしてない。



避けて。避けて。避けて。



高校の時はそれなりにやんちゃだったから喧嘩にはなれていた。

ただ俺が慣れているのは獲物をもたない殴りあいのものであって

相手が刀をもっている場合ではない。

たまに卑怯なやつが獲物を持ってくるけど

それは時々であって頻繁にというわけでは無かった。



「あの俺避けてただけなんスけど…」


「あ゛ぁ?」



恐る恐る申告した言葉にドスのきいた声で返される。

強面には慣れているつもりだった。

しかし相手にしてきたのは俺と同じか2,3上という連中ばかりだったので

こんなに背が高く威圧感のあるやつと対峙したのは初めてに近い。
いや訂正、初めてだ。



「あんだけ避けれりゃ、それなりに戦えんだろ。
 なぁ、殺ろうぜ?」



にぃっといっそ凶悪と思えるほどに目の前の御仁は口の端をあげて

腰に携えていた刀に手をかけた。それとともに空気が動く。

男からなにかよく分からない気が風のように強く放たれ

俺の頬を通りにぬけて髪をゆらした。


ぞくりと。背中に悪寒が走る。

じわじわと体の中から溢れてくる寒気にも似たもの。


あぁ、これは。

この男から放たれているのは殺気なんだ。

そして本能的に察知する。



「誰がお前と殺るかっ!」



きっとこいつと殺りあうと命がいくつあっても足りない。

俺は脱兎の如く走り出しその場を離れた。



「あ?」



男は不思議そうな声を出して、一拍おいた後に大きな声を上げて笑った。



「いいぜ!30秒やる!逃げ回れ!!」



背中でソレを聞きながら俺は口の端を噛んだ。

なんでこんなことになっている?



(・・・うん。すべてギンのせいだ)



あとであったら絞めておこう。

それぐらいは許されるはずだ。

何度も角を曲がって、走って。

いつもならこんなに息は上がらないのに

追い詰められているという気持ち的な問題もあるのだろうか。

喉から鉄のような味がしてきた。

すれ違う人たちが不思議そうな目で俺をみる。

全員が同じような格好をしていて、今さらながらにこれが死神の正装なのだと気付く。

そういえば、俺を助けてくれた彼も同じような服装をしていなかっただろうか。

そんなことを頭の端のほうで考えていると

一瞬赤が目の端にうつった。



「噂をすれば・・・ってか!
 おい、恋次!!」


「は?」



俺の声に振り返った恋次はぽかんと間抜けた顔をしていた。

しかし俺の姿を認めると目が驚愕に見開かれる。



!?お前!何でここに!?っていうか、お前いままでどこいってたんだ!」


「わりぃ!ソレ後!!かくまえ!」


「はぁ!?誰からだよ!」


「よくわかんねェ、男!なんせ俺、今、追われてんだよ!」



肩で息をしながらそういうと恋次は眉間に皺を寄せながら

頭をかいて、深く息をはいた。



「事情はわかんねぇけど、とりあえず俺の隊舎来るか?」



俺は首がもぎとれると思うほどこくこくと頷いた。

とりあえず逃げれるならどこでもいい。

恋次が数歩歩いて、十一と大きく書かれた扉を開ける。

そこに広がっていた光景はどっかの剣道場かと思われるようなところだった。



「なんかギンのところと違うな・・・。」


「市丸隊長?あぁ、参番隊とここじゃ隊風が違うからな。
 でもなんで市丸隊長なんだよ。」


「あぁ、それは・・・。」



中に一歩足を踏み入れた瞬間に背後からぞくりとした気配を感じた。

俺の動きが止まる。恋次が不思議そうに俺の後ろを見た。



「あれ、隊長。どうしたんすか?」



俺もまるでロボットかとつっこまれそうなほどぎしぎしと音を立てて振り返る。

予想通りそこには先程の大柄な男。



「よぅ。」


「ど・・・どうも。」



(こいつ恋次んとこの隊長だったのかよ!?)



にぃっと口の端を上げるその男に俺はなぜか愛想笑いを返してしまった。




2006/10/03
 

あとがき

剣八っちゃん大好きです!!
あ、そういえばまだ名前出してなかった
恋次が最後に隊長っていってるからいいよな(汗)
やちるも出したいなー。出せるかなー?

恋次にまだ突然消えた理由いってないから
そろそろ再会させてあげてもいいだろう。ということで
再会させてみました。不幸人でいいんだよ、恋次は(待)
そんな彼が大好きです(笑)

ついでにいうと彼とも再会させるつもりです。