「あぁ゛?死神じゃねぇ。だと?」
「だからー。着てるもんが違うだろ?俺は一般人なの!」
「ちっ。そうかよ。」
恋次を盾にするようにして彼の背の後ろに隠れながら
かなり身長の高い男に死神ではないと切につげてみたところ
男はさもつまらなさそうに眉をひそめて、俺から視線をそらした。
それをみて俺は少しほっとして息を吐く。
しかし安心したのもつかの間。
男はそんな俺を横目でみてにぃっと口の端をあげた。
「俺はそんなこと本当はどうでもいいんだよ。気にしねぇ。
ようは楽しめるか楽しめないかだ。」
「ちょっ!ヤメロよ!」
男が一歩前に足を踏み出したので、俺は頬をひきつらせて一歩後ろに足を引いた。
殺気でびりびりと空気が震える。ピクリと頬が痙攣を起こした。
(頼むからそこら辺は気にしてくれ!)
「剣ちゃん駄目だよー?やっくん怖がってるじゃん。」
俺が再び走り出そうとした瞬間にこの場に酷く不釣合いな高めの小さな女の子の声がした。
不思議に思い後ろを振り向いてみると
男の肩から桃のように柔らかなピンク色の髪をした女の子が顔をのぞかせている。
しかしその子が着ているものは恋次や男と同じで黒いもの。
それは死神の制服ってことで、つまりこの子も死神ということになる。
そしてさっきの言葉に少し気にある点があったので俺は頑張ってそこに踏みとどまる。
「…剣ちゃん…?」
「おぅ」
おそるおそる男を指差してみると、腰にくるような低い声で男は頷く。そっか。
剣ちゃんっていうんだ。こんな怖い顔なのにそんな可愛い名前ってありなのか。
や、それよりだ。
「やっくん…ってもしかして俺?」
「あはは。なにいってるの?やっくんはやっくんじゃん!」
ピンク色の髪の可愛らしい子が俺を指差しながら楽しそうに笑う。
…やっくん…やっくん。
なんだろう。どこかのお笑い芸人のような気がしなくもないが、
それより由来はいったいどこからだ。
「なんでやっくん?」
「そりゃ、お前の髪の色からだろ。」
女の子のかわりに剣ちゃんが俺の頭をがしっとつかんで言う。
俺はげんなりとしながら、自分の前髪を指で掴み、上目使いにそれをみた。
つまり漢字で書くと夜っくん。読みにくいことこの上ないけど。
「ところで」
「ん?」
恋次に名前を呼ばれたので、俺は剣ちゃんに頭を捕まれたまま振り向いた。一瞬
恋次がひくっと口元をひきつらせたけどそんなの気にしてはいられない。
目をキョトンとさせて首を傾げてみせると恋次は諦めたように息をはいた。
「お前、なんで突然いなくなった?」
「あー…」
そっか。そういやそうだった。
ギンに突然連れだされたからその後も恋次に会いにいく暇がなかった。
コイツは俺が今、誰の家にいるのか。
なんで出ていったのか。
まったく知らない状況なんだ。
「あんなぁ。俺、狐に拐われたんだよ」
「はぁ!?」
「んで、今、狐の家に軟禁状態なの」
「市丸か?」
「うん。剣ちゃん当たり。」
「市丸隊長?!」
頭をつかんでいた手をはがしながらさらっといった剣ちゃんに対し、
恋次は必要以上に目をむいて驚いてみせる。
「うん。だからな、抜けだせなかったんだ、悪ぃっ!けど許せw」
語尾に音符がつきそうなくらい弾ませて可愛くいってみせると
恋次はかなり嫌そうに眉間を痙攣させてがくりと肩の力を抜いてうなだれた。
「そんなに落ち込むなよ」
「誰のせいだ!」
牙をむく勢いで叫ぶ恋次に俺はケラケラと笑ってみせる。
それをみて剣ちゃんが恋次の背中を結構強めに叩いた。
「まぁ、頑張れや。」
「隊長…」
「どうした?入口のところでかたまってなにかあったのか?」
恋次が叩かれた背中を痛そうに抑えて剣ちゃんを見上げたその時、
剣ちゃんの背中に乗っている女の子は除いて
このむさい男だらけのこの隊舎には不釣り合いな声変わり前の少年の声が響いた。
その場にいた全員の視線がいっきにそちらにむく。
俺もそっちに目をやったわけなんだけど、
そこに居たのは白に近い銀髪をもった少年だった。
「おぅ、日番谷どうした。」
「どうしたじゃないだろう。昼までに持ってこいといった書類はどうした?。」
「あー。あったか?そんなもん?」
日番谷さんが視線をかなり高くあげ、剣ちゃんがかなり視線を下ろし
身長差がある二人が対等な言葉で話しあってるその風景はなんだか異様だった。
日番谷さんって本当に隊長なんだ。
狐とはなんか違う。外見は幼くてもちゃんと隊長なんだって思える。
視線に気付いたらしい日番谷さんがこちらに目をむけ、
俺がいたのがそんなに予想外だったのかその目をいっぱいまで見開いた。
「…?」
「ども。」
ペコっと少しだけ会釈してみると日番谷さんは少しだけ眉根を寄せてから悲しそうな顔をして見せた。
いったい何が日番谷さんにこんな表情にさせるのか。
俺は何か悲しませるようなことしただろうかと考えてみるが思いあたることは残念ながらない。
「あ、もしかして日番谷さん、俺誰かに似てるのか?」
もう会えない誰かと。とか思いついたままに口にしてみると、
日番谷さんは小さく息をのんで眉間に皺をさらに強く寄せる。
そして俺から勢いよく視線をそらし、剣ちゃんに向けた。
剣ちゃんは一瞬顔を引きつらせて頭をかく。
「おらよ。これだろ?」
奥のほうに申し訳程度に設置された机で剣ちゃんはなにか一生懸命筆を動かした後
一枚書類をもってきて日番谷さんの前に突き出してみせる。
「あぁ、悪かったな。」
書類を確認すると日番谷さんは結局、俺に視線をくれることなくこの隊舎をでていった。
「・・・図星だったらしいぞ。。」
「・・・。」
隊舎の扉を見ながらぽつりと言った恋次の言葉に俺はただ無言で返すしかなかった。
20071018
あとがき
知らないうちに傷つける。
無知っていろんな意味で怖い。
無知だって知らない無知も怖い。
ひっつん可哀想だけどそれをしてるのは自分だったりする事実 待