なんでだろう。
無償にイラツク。
知らないのだから。
忘れてるはずなのだから。
昨日11番隊の隊舎でに言われたことは気にするべきではない。
そういうことはわかっている。
けれど、もしかしてわかってやっているのではないのかと
心の中のもう一人の俺が叫んで。その所為で無償に腹の虫が騒いだ。
「たーいちょ。」
後ろから軽く衝撃が襲い、俺は軽く前のめりになる。
うらめしく後ろを向いてみるとまったく悪いとは思ってはいなさそうな楽しそうな表情の松本がいた。
「今日はまた一段とココ深いですよぉ」
松本が皺ひとつよっていない自らの眉間を指さしながら能天気にいう。
知らずのうちに再び眉間に深く皺が寄ってくるのを感じながら俺は息を吐き、
机上の書類の片付けを再開した。
「あー。隊長ひどぉい。なんで無視するんですか!」
こういう時は無視に限る。
松本は聡いから一言二言話してしまうと俺が思ってることなんて直ぐにわかってしまいそうだ。
「すんませーん」
「あら。じゃない」
ガラガラと引き戸が開けられる音と共に松本の呼んだ名前に俺はピクリと肩を揺らした
松本が十番隊隊舎の入り口まですたすたと歩いていく。
「あ、乱菊さんども。」
それに気付いた彼は人好きのする笑みを浮かべて見せた。
そしてそれから俺の方に視線を向けて一つの紙をひらりと俺の前に差し出した。
「えっと…日番谷さん。剣ちゃんがこの書類に署名欲しいって。」
「よこせ。」
自分でも随分とぶっきらぼうに言ったと思う。
俺と会ったことがあると気付かれないようにと。
逆に意識しすぎて態度がおかしい。
松本はそれに気がついたのか目を丸くして俺達をおもしろそうにみた。
「松本」
「はぁい。」
怒りを滲ませて名前を呼ぶと松本は一応わかったと了解の意をしめしてみせた
ただ状況がわからないらしいだけが眉をさげて困ったような笑みを浮かべている。
俺はに渡された書類にさらさらと署名して、にそれを渡した。
「えっと・・・ども。じゃあ、俺戻ります。」
がスチャっと敬礼のような事をしてみせ、少しだけ小走りで部屋を出て行った。
は死神の正装とでもいっていい黒の着物ではなく
裾の辺りは白で上に行くほど紺になるという着物を着ている。
ここで黒を着ていないのは享楽隊長ぐらい。
だからというわけか着物自体は落ち着いた色なのには人目を引いていた。
隊員たちが興味深そうにの後ろ姿を視線で追っていた。
「たいちょー。とどっかでなんかあったんでしょー?」
俺の机に両腕で頬杖をつき、松本は俺を上目使いにみた。
書類に落としていた視線を一度だけちらりと松本にむけてから、俺は再び視線を書類にもどす。
「ねぇー。隊長ってばー。さっき目で約束したじゃないですかぁー。
だから私、には言わなかったんですよぉ?」
「なんのことだ?」
確かに松本は俺のに対する微妙な空気を感じていてたが
それを感じていることを言葉に載せることを後にしろ。と。
俺が目で制した。
しかし松本が俺の意図を100パーセント正確に読み取れるなんてことはない。
今回は正しいけれど、人が考えていることなんて普通はわからない。
違うことを考えていたのだとシラをきってもまぁ、いいわけだ。
(人間的には良くないことは百も承知だけどな。)
俺は大袈裟にため息をついて松本と視線を合わせた。
「誰にも言うなよ。」
「当然ですよー。」
イマイチ信頼には足らない言葉だが今はそれを信頼するしかない。
「2週間前、俺が現世にいったこと覚えてるか?」
「あー行ってましたねぇ。」
松本は頬に軽く人指し指を添え首を傾げてみせた。
「帰ってきたあとやけにウキウキしてたり落ち込んでたりしてましたっけ?
そっかぁ。あれ、のせいだったんだ」
「…せいというわけでは無いが…」
言葉を濁すと松本はしごく楽しそうな笑みを浮かべて俺をみた。
「隊長、乙女みたいでしたもん絶対のせいですって。可愛いですもんねぇ」
わざとらしく頬に手を添えて松本は目線だけこちらにむけた。
俺はきょとんとめをしばたかせてみせる。そして軽く首を傾げた。
身長180cm後半。俺の目線より遥か上に頭があって
どうしても可愛いという感じはしない。松本の感覚がよくわからない。
「…可愛いか?」
「大型犬みたいで可愛いじゃないですかっ!」
松本は俺の机にどんと力強く手を置いた。
その衝撃で机の上の書類が軽く宙に浮き、俺の机の上の茶がゆらゆらと強く波を立てた。
同時に音に反応して十番隊舎の視線が全てこちらに向く。そして書類を片付ける動作がとまった。
「松本…」
「はい?」
「この話はここで終りだ!全員仕事に戻れ!」
一喝してやると十番隊、隊舎にいたもの肩がピクリと震えて、松本以外の筆が再びうごきだした。
「松本…」
一向に動き出しそうにない松本を強くにらんでやると
松本は目線を斜め上にして考えるように顎に手を添えた。
「えー。ということはあれですよね。
後処理ってことでの記憶を消したのは隊長ってことですよね?」
「…そうだ」
「報われないですねぇ」
松本は俺の頭の上に軽く手をおいて撫ぜた。
振り払うのも面倒なので俺はそれをただ見上げる。
「そのはどっかの狐の家に居候中だし。ほんとに報われない。」
「別に俺には関係ないだろ」
眉ねを寄せてそういうと松本は小さく苦笑をもらした
2007/10/18
あとがき
報われないひっつん。
そんなひっつんを応援する松本ねぇさん。
乱菊さん大好きです^^