平和なんて崩れるのは一瞬で。

しばらく何が起こったのかわからなかった。



「わーっ!これかわいいっ!!」



工業カレッジで授業をとっていないためぽっかりと明いた時間。

その時間にジェシカたちと来ているこの店は私の好きなタイプの服がたくさんあって、お気に入りの店のひとつだ。

フレアタイプのスカートとかそういうまさに女の子!って感じのかわいい服。

コレを買ってみようかとレジにもって行こうとしたその瞬間。

地震のような大きな揺れが体に襲った。

しかしここが宇宙コロニーであることを考えると、地震などありえないことがすぐにわかる。

だとしたら、まず考えられるのは隕石が衝突したことだろう。



「ザフトだ!ザフトのジンが降りてきてる!!」


「ザ・・・フト?」



店の通路を走ってきた男性の声に耳を疑った。てっきり隕石だと思っていた。

なぜならここは中立国の宇宙コロニーだから、敵の侵入なんてあるはずがなかったのだ。

店員がシェルターへの避難をよびかけている。



「ジェシカっ!!」



一緒にいたはずの友達の一人の名前を呼んでみるが、辺りからの返事はない。

しかし、探している時間などない。私はその店を駆け出して人の波に乗った。

だってあいつらが来る。あいつらが。

自分たちより優れていて強いやつらなんて怖いに決まっている。

私はブルーコスモスじゃないけど、これは人として、いや動物としての本能だろう。

走っていくと人の波がどんどん大きくなっていく。遠くで銃声が聞こえた。

時たま爆音もそれに混じる。

悲鳴と。銃声と。爆音と。

一人でいるのが怖くて心細い。



「・・・フレイ!」



人ごみの中からやわらかい声が聞こえ、腕を強くつかまれた。

必要以上に大きくおどろいて後ろを振り向くと、驚いたような緑と粟生の瞳と目が合った。



さんっ!!」



ようやく見知った顔にあい、思わず抱きついた。



「フレイ、どうしたの?一人?」


「私・・・っ!ジェシカたちとはぐれちゃって!!」



近くで大きな爆音がして、そちらを目を見開いてみた。

さんが強く腕をつかんである方向へひっぱていく。



「とりあえず、シェルターに!ここは危ない!!」



その言葉に私は無言で大きく頷き、さんの顔を盗み見た。はじめてみたときもそう思ったのだけど、本当に綺麗だ。

こんなときに不謹慎だけどそうおもった。シェルターにたどり着き、

扉の前で息を整えながらボタンを押して、地下へとおりる箱を呼ぶ。



「一段落・・・かな?」



さんは力なくわらい、私の顔を覗き込んだ。同じくらい走ったのにさんはまったく息が乱れていなかった。

ピピっと音が鳴り、下のシェルターから通信が入った。



「どうしたんですか?」


「悪いっ!ここのシェルターはもう満員なんだ!!横のブロックに行ってくれないか!?」


「っ・・・!」



さんは苦々しげに眉をひそめて、歯を食いしばった。



「わかりました。」


「すまん!!」


「フレイ!こっち!!」



不安げに顔を覗き込むと、さんは驚いたような顔になってから私を安心させるかのように微笑んでから腕をつかんだ。



「この人ごみから考えて・・・17シェルターももう駄目か・・・?」



さんは隣でポツリとつぶやき、人の波の流れから少し外れた方向に走り出した。



「ちょっ!・・・さん!どこに!?」


「多分、居住区のほうが今の時間帯なら空いてるからっ!!フレイもうすこし頑張って!!」



必死なさんの表情を見て、私は無言で頷いた。息があがってきて喉が痛い。

足ももつれかけている。何かに足をひっかけ転びそうになったところをさんが支えてくれて何とか乗り切る。



「もう少しだから!!」



コクリと頷き再び走り出そうとすると、さんが何か信じられないものを見たような表情で私の真上を見上げた。

何かと思って私もそちらをみてみると、三機のMSが空へと飛び上がっていくところだった。



・・・さん?」


「ザフトのMSじゃない・・・まさかモルゲンレーテ!?」



さんは小さく舌打ちして、あせったように私の腕をさらに強くつかみ、走り出した。



「った・・・!」


「あっ、ごめん!!でも急がないと本当に危ない!!」



なんとか居住区にたどり着き、シェルターを見つける。下との通信ボタンを押すと中年ぐらいの低い声が返ってきた。



「まだいたのか!?」


「はいっ!二人なんですけど、大丈夫ですか!?


「大丈夫だ!早く中にっ!!」



ブォンと音がして、下からエレベーターが上ってきた。すばやく扉を開けてそこに乗り込むと、

その箱は一度衝撃を私たちに与えてから下へ滑り降りた。

シェルターへの扉が音を立てて開いた。これでひとまず安心。そう思ったとたんに足の力が抜けて、視界がガクンとしたに落ちた。



「あ・・・。」


「大丈夫?」



さんがしゃがみこんで、私と目を合わせた。私はなんだか恥ずかしくなり思わず顔を背けた。



「つ・・・疲れただけよ!さんがあんなに走らせるから!!」


「ごめん。フレイ。」



俺も必死だったから・・・。と苦笑いを浮かべながらさんは私を抱き上げた。

いわゆるお姫様抱っことか言うやつで。



「・・・さん!?」



くすくすとさんは笑い、あいてる席に私を座らせて、自分もその隣に座った。



「最初の・・・。」


「?」


「や。・・・最初のシェルターで”君だけでも”って頼んだほうがよかったかな。と。」



もしかすると、私のさっきの発言を気にしての言葉だろうか?

でも私はさんを困らせたくてあんなことをいったわけではない。それに・・・。



「嫌よ。そんなの嫌。誰も・・・知ってる人が、誰も知ってる人がいないなんて嫌だもの。
 ・・・一人にしないでよ。」



ぎゅっと子供のようにさんの服の袖をつかむ。大分遠まわしにいったけれど伝わっただろうか、

恐る恐る瞳をあげてみると、穏やかに微笑むオッドアイと視線があった。



「ありがとう。」



この人はちゃんと理解してくれる。そう思って、笑みを返すとシェルターを大きな揺れが襲った。

警戒レベルが10に達したとアナウンスが告げる。



「大丈夫・・・だから。」



さんはやさしく私の手を握り、頷いてみせた。

大丈夫。

まるで自分に言い聞かせるようにさんはもう一度つぶやいた。






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2006/01/08