一方からは赤の機体。もう一方からは三つの機体。
そうとなれば、おのずと担当は決まってくる。
「キラ!!」
無線の回線を開き、キラに呼びかけるとモニターの中でキラは不安そうに顔をあげた。
しかし、今はそれを気遣っている余裕など無い。
「俺は、後方に行くから!前方・・・よろしく頼むよ!」
<は、はい!>
アクセルを踏み込み、艦の後方へと回る。さすが最新鋭の艦といったところで、AAはかなりよい武装だった。
ビームライフルを構え、向かってくる三機に対面するとその三機はわずかに動きを鈍らせた。
そりゃそうだと思う。なんせMSが一機増えたのだから。
威嚇のために三機のスレスレにライフルをはなつと、三機はそれぞれ別の方向にちり、白と青の機体が前方に向かった。
ピピっ。とモニターが反応して、その機体を照合させる。
「GAT-X102 デュエル・・・っ!これも地球軍の!?」
そういえば、俺がヘリオポリスでみた機体の中にあれがあったような気がする。
前方に行かせるとキラが二機と相手することになる。
それはなんとしてでも避けたい。ライフルの照準をデュエルに定めた瞬間コックピット内にアラームが響く。
なにかとモニターに目を走らせて見ると黒の機体のライフルがこちらを狙っていた。
「・・・っ!キラっ!!ごめん!デュエルがそっち行った!」
くるりとコクーンを旋回させ、攻撃を避けながらキラに通信を入れる。
<はいっ!わかりました!!>
「きついと思うけど、頑張って!!」
俺もすぐあちらに向かわなければ。モニターで残りの二機も照合する。
あらかた予想はついているが、どっちがどっちかはいまいちわからない。
「黒がGAT-X207 ブリッツ。緑っぽいのがGAT-X103 バスター。
・・・。バスターは中距離からの攻撃も可能・・・か!!」
攻撃をかわしつつ、ライフルをかする程度のところで狙いをつけて放つ。
―― ちゃんとおさえなきゃ、駄目だよ?
「わかってるよ・・・!!」
親友の言葉が頭の中をよぎり、奥歯を噛み、レバーを握りなおした。
ブリッツが艦底へと潜りこむところをみて、そちらにライフルを構える。
<させるかよっ!!>
「・・・!」
一つを撃とうとすればもう一つが来る。
とっさに標的を代え、バスターのライフルを狙って撃ち、ブリッツを追う。
<お前、やる気あるのかよっ!!>
「・・・・・・・?」
一瞬どこかで聞いたことあるような声がした。
このコクーンはあらゆる通信を拾うことにも長けているらしい。だから、バスターの声を拾ったのだろうだけれども。
しかし今はそれどころではない。
艦に取り付こうとしているブリッツに的を定めつつ、AAからの迎撃を避ける。
<後ろががら空きだぜ!!>
アラームが鳴り響く。詰め寄ってきたバスターがこちらにライフルをむける。
しかし、ブリッツはAAに近づく一方でそちらへの攻撃を優先させなければAAが危ない。
まちがいなくブリッツはAAを沈めるだろう。
「せめてもう一つライフルがあれば!!」
ブリッツの肩辺りに一発お見舞いし、急いでキーボードをたたいて、コクーン独特の機能を展開する。
バスターからのビームが来ると思われる位置に、コクーンの背中についている羽のようなものをあてがう。
バスターの攻撃がその羽に触れた、その刹那。その辺りの大気がゆがみ、次の瞬間、ビームはバスターに跳ね返った。
”コクーンの繭”
そう呼ばれる、この機体の後方についている武装は実弾、レーザーさえも跳ね返す。
<なっ・・・!?>
先ほど入射角、反射角ともに計算していたのでバスターは軽く傷を負う。
<ディアッカ!!>
「!?」
通信で漏れてきた声に目を見開く。
しかし、頭の隅のほうでやはりと納得する自分がいた。そもそも”アスラン”の名を聞いた時点で予想していたのかもしれない。
「ニコル・・・。ディアッカ・・・。じゃぁ、あれはイザークかラスティ・・・?」
軽く傷を負ったバスターを支えるためブリッツが船底から離れた隙に俺は前方に向かった。
いってみると、キラはデュエルと交戦中でただやみくもにライフルを放っているようだった。
「駄目だ・・・キラ!!エネルギーが・・・っ!」
シュンっと目の前にビームの光が横切る。
<っち・・・まだいたのか!?報告では五機のはずだろっ!?>
赤の機体・・・イージスから悪態ともとれる言葉が流れてきた。
先ほどまでストライクとデュエルが戦闘していても、敵であるストライクを狙うこともせず
ただそこにいた彼はキラを大切に思う人で、やはりアスランなのだと確信する。
イージスの放つビームを避けながら、こちらもライフルをかまえ、イージスのライフルを持っている手の部分を狙う。
ビームでライフルを弾き飛ばすと、イージスからの攻撃がやむ。
しかしイージスはなおもビームサーベルを取り出して攻撃を仕掛けようとしてきた。
「っ・・・・!アスランもうやめて!!俺は君を殺したくないっ!!」
俺のその言葉にイージスは一度動きを止めたが、通信からはイライラとした声が返ってきた。
<誰だ!お前は!キラから俺の名前を聞いたのか!?
惑わそうとしても無駄だ!!>
「・・・。」
再び切りかかろうとしたイージスが再度動きを止めた。
それと丁度かさなるようにAAから帰還信号が打ち上げられる。
大尉が前方のナスカ級をうつのに成功したらしい。
それを横目にみてから再びイージスに目を向けた。
「=だよ。アスラン。それとももう忘れたかな?」
<そっ・・・んな!!お前がさんのはずが無いっ!!>
我を失ったようにイージスはビームサーベルを振り下ろす。
ギリギリのところでそれをさけ、再び距離をとりながら、やはりそう簡単には信じてもらえないかと苦笑する。
混乱させている。ここで自分の名を名乗ったのは迂闊すぎたか。
攻撃を一向にやめる気配の無いイージスから逃げながら、さてどうしたものかと思う。
今の彼は自制心を失っていて、何を言っても火に油を注ぐようなものだろう。
「・・・自制心?」
そういえば、キラもデュエルと必死になって・・・。
少しあせりを覚え、ストライクとデュエルをみるとストライクのPS装甲が落ちていくところだった。
後方からはバスターがストライクを狙っている。ブリッツもいつの間にかこちらに来ていた。
「っ!!キラっ!!」
<!?>
俺のその言葉にイージスも動きを止める。
<イザーク!!撤退命令だぞ!!>
我を取り戻したアスランがデュエルに通信を入れる。
やはり、デュエルはイザークだったかと思う。
<うるさい!!腰抜けっ!!>
<!!>
ストライクに乗っているのはナチュラルだと思っているのだろう。
プライドの高い彼のことだ。ナチュラルに負けるなど、彼にとって屈辱以外のなんでもない。
とすると、おのずと次の行動は決まってくる。
「キラッ!!」
サーベルをストライクに振り落とそうとするデュエルに近づこうとしたがバスターのランチャーが進路をふさぐ。
しまった。そう思ってストライクの方向をみると目を疑うかのような光景が広がっていた。
「アス・・・ラン?」
PS装甲のおちたストライクとそれに絡みつくような形のイージス。
デュエルが振り下ろしたサーベルはただ宙を切るだけで・・・。
<なにをする!!・・・アスラァン!!>
<この機体。捕獲する!!>
<なんだとぉ!?>
<命令は撃破だぞ!!勝手なことをするな!!>
<捕獲できるものならばそのほうがいい!!撤退する!>
<アスラァン!!>
通信からもれてくる声に俺は正直戸惑った。
キラはあのままアスランにつれていかれたら、ZAFTにいけば。
アスランと同胞であるコーディネーターと戦わずにすむ。
多分殺されることも無いだろう。キラはストライクに乗っているとはいえ民間人だ。
そしてアスランがキラを殺させるはずは無い。
もしかするとキラにとってそちらのほうが良い運命なのかもしれない。
<アスラン・・・!どういうつもりだ!?>
キラの声が通信から流れ、ピクリと反応する。
・・・キラはどう思うだろうか?
<このまま”ガモフ”へ連行する。>
<ふざけるなっ!僕はザフトの艦になんか行かないっ!!>
<お前はコーディネーターだ。俺たちの仲間なんだ!>
「・・・っ!」
キラの意思とアスランの意思が反している。
しかし、キラが行きたくないと望むなら。俺は彼を見捨てるわけには行かない。
ストライクへと近づくためにアクセルを踏むと、バスター、ブリッツがこちらへとライフルを放ってくる。
それを回避しながら、バスター、ブリッツのライフルを持っている手をライフルで狙い返す。
通信がうまく聞き取れなくてアスランとキラが何をいっているのかわからない。
ただ、”血のバレンタイン”の言葉が聞こえたような気がした。
「――っ!!邪魔しないで!!」
これ以上やると、本気になってしまう。
そうなると・・・・俺はバスターとブリッツを落としかねない。
ちょうどそのときオレンジMA・・・大尉のゼロがガンバレルでイージスを四方から攻撃し、
ストライクとイージスが離れて、とりあえず安堵の息を吐く。
大尉とキラの通信から、どうやらストライクは換装にAAに向かうらしい。
<キラっ・・・!!>
アスランの悲痛の声が通信から流れてきた。
前線を離脱するストライクをデュエルが追う。
「――行かせてやって!!」
バスター、ブリッツの攻撃をさけつつ、デュエルにライフルをはなつとデュエルはそれを避ける。
「ちっ!!」
追っていくにもバスターとブリッツの対応をしなければMA一機とMS三機なんて、戦局はあまりにも明確すぎる。
「お願いだから・・・間に合って!!」
宙を旋回して、攻撃をさけながら迎撃を返す。
まぶしい閃光がAAの方からほとばしった。
どうやらデュエルがランチャーを放ったらしい。
「キラ!?」
ランチャーの換装は済んだだろうか?もし・・・済んでいなければ?
ぞくりと悪寒のようなものが走った。
閃光が徐々に晴れていく。しかし新たな閃光が宙を切り裂いた。
光の中にPS装甲のストライクがいた。
「・・・!」
<ひけ!!イザーク、ディアッカ!!これ以上の追撃は無理だ!!>
<アスランの言う通りです!!このままだと今度はこっちのパワーが危ない!>
アスランとニコルからの通信にイザークが悔しそうな声をあげる。
こちらへ攻撃するようなそぶりはもうないので、俺はそこで前線を離脱した。
「アスラン、イザーク、ディアッカ、ニコル・・・。」
4人の少年たちの顔が頭の中に浮かび上がり、目を伏せた。
「くそっ!」
ガンッとコックピットの壁をたたくと俺は去っていく4機のMSを横目に見つつ、AAに帰還した。
◆◆◆
ヘルメットをはずし、頭を一度振ってからコックピットを出る。
外の空気はコックピット内よりも涼しくて、新鮮な感じがした。
「おぉい!!坊主ー!!」
「・・・?」
たしか、整備士のマードックさんの声がした。
最初から向かうつもりだったストライクの方へ向かってみると、
ストライクのコックピットの周りに数人の整備士たちが集まっていた。
「。」
「あ・・・フラガ大尉。」
ストライクに行く途中、フラガ大尉と合流する。
「あれ、どうしたんだろうね?」
「さぁな。」
ストライクの方を目で示して見せると、フラガ大尉も軽く肩をすくめて見せた。
「どうした?」
「いや、坊主がでてこねぇんで。」
大尉の言葉にマードックさんが答える。
「おやまぁ。」
そういい大尉は外から無理やりコックピットを空けた。
「こら、何やってんだ?おい。キラ=ヤマト。」
コックピットを覗き込む。大尉の後ろから俺もその中を覗き込む。
「キラ・・・?」
激しく肩を揺らし、呼吸をするキラから返答は無い。
瞳はどこか一点をみつめていて、虚ろだった。
「キラ。」
コックピットの中に入り、キラの名を呼ぶと、キラはびくりと身を硬くした。
「ほら、もう終わったから。」
「そうだぞ。んー・・・もう!とっとと出てこいよ。」
大尉はレバーを固く握り締めていたキラの手を一つずつはずして、優しく声をかけた。
俺ももう一方の手に手をそえ、そこからキラの手を離す。
「ねぇ、キラ?だれも・・・死ななかったから。大丈夫だから。」
キラの手を両手で包み込みそうささやく。
「艦も無事だ。・・・上出来だったぜ?」
その言葉に俺も小さく微笑みをうかべ、頷く。
そういえばキラにとってはコレが初陣だったのだ。
キラは自由になった両手をみて細かく震えた。
「大丈夫・・・よくやったよ。」
「―――っ!」
そう言葉をかけるとキラは瞳を伏せた。
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2006/01/15