「やってしまった・・・。」
食堂から逃げ出すように廊下を歩いてきて、近くの壁にもたれかかって頭を預けた。
アレではキラに不安を与えるだけだ。俺がしっかりしとかないとキラが寄りかかる場所がなくなるのに。
「俺もまだまだだよね・・・。」
ため息をつきながらブリッジに入ると中がなにやら騒がしい。
「・・・?」
不思議に思いながら中に入るとパル伍長の周りに人が集まっていた。
「追えるのか!?」
「やってますよ!」
バジルール少尉が彼女にしては珍しく声を弾ませている。
なにやら吉報があったのだろう。
俺が操舵のほうへ近づくとノイマン曹長がこちらをむいて微笑んだ。
「どうしたんですか?」
「地球軍第8艦隊の暗号パルスをパル伍長がひろったんだよ。」
「解析します!」
パル伍長の声がひときわ大きく響き渡る。
『・・・こちら・・・第8・・ん隊・・・せ・・遣隊・・・モ・・ンドゴメリ・・
ア、ア・・・クエンジェ・・ル・・・お・・うとう・・・』
ノイズが入って随分と聞き取りにくいがどうやらこちらを探しているということは判断できた。
ラミアス艦長の瞳がうれしそうに輝く。先遣隊ということは合流することになるのだろう。
「ハルバートン准将貴下の部隊だわ!」
バジルール少尉がやわらかく笑みを浮かべる。
彼女もこんな不安定な状況で神経を張り詰めていたことが伺える。
「探しているのか!?俺達を!」
隣にいたノイマン曹長は我慢しきれないといった様子で席を離れパル伍長の辺りに集まる。
CICにいたトノムラ伍長も上に上がってきた。そして、ノイマン曹長と手を叩き合わせた。
「ホフマン少佐の隊か!?」
「待ってください。まだ大分距離があるものと思われますが・・・。」
「だが・・合流できれば!」
「あぁ。やっと少しは安心できるぜ!」
ノイマン曹長とチャンドラ伍長が肩を抱き合う。
ブリッジの空気が随分と陽気なものになった。
それを見てから、俺は瞼を下ろした。
「そっか・・・。」
うまく合流できれば民間人とMSはそちらに引き渡されるだろう。
これでキラは戦わなくてすむ。アスランとも。
ただ・・・ラクスの事が気がかりだ。彼女が民間人だからといって簡単に船を降ろしてもらえるとは思えない。
シーゲル=クラインの娘はそれほどに利用価値がある。
そして俺はどうなるのだろう?階級というものを与えられてしまった俺は?
俺ってもしかしてもう軍人になってる?
・・・手放しに喜んでいい状態ではないことだけは確かだ。
「あ、中尉。マードック軍曹が呼んでましたよ。
なんかの比率を変えたからチェックして欲しいらしいです。」
「わかりました。」
名前を呼ばれて瞳を開くとトノムラ伍長が笑いながら声をかけた。
それに頷き、再びブリッジを出る。
このメンテナンスでコクーンとはもう別れるだろうか?
しかしラクスの行方も気になる。場合によっては地球軍に残ろう。
残らざるを得ない可能性もあるけど。
「・・・でもそうなるとキラとはお別れか・・・。」
もやもやとしてよく分からないんだけれど
・・・悲しいんだろうな。胸に沈むこの気持ちは。
自分を兄のように慕ってくれるあの少年とは別れたくない。
その思いが心のどこかにある。
「俺が残るならキラも一緒に残ってくれないかなー・・・・。」
言葉にしてから、はっと口を押さえる。
自分は何を言っている?これはわがままだ。
キラに戦って欲しくないと望んだのは自分だ。なのにこの矛盾した気持ち。
「・・・どうなってるんだろ、俺。」
額を手で覆いながら歩いていくと、格納庫にたどり着いた。
床をけってコンテナの上にいるマードック軍曹に近寄る。
「マードック軍曹。」
「おぅ。。比率ジオメトリの比率変えたから見といてくれや。」
「はい。わかりました。」
「坊主しらねぇか?まだ来てねぇんだが・・・。」
「さぁ・・・でももうすぐくると思いますよ。」
ストライクのとなりにあるコクーンのハッチを開き、なかに入ってOSを起動させるとキラの声が耳に届く。
「すみません。遅れました!」
「あぁ、比率ジオメトリの比率変えといたからちょっと見といてくれ。」
「はい。」
「ま、もう用はないかもしれないがな。こいつも。」
本当にそうだったらどんなにいいだろうか。いや、そうあってほしい。
キーボードに指を走らせ細かい調整をしていきながら頭の隅でそういうことを考える。
争いなど。もうしたくないのは誰も同じだ。
細やかな調整が終わり、狭いコックピット内で小さく手を上げて伸びをする。
ハッチの入り口を掴んで外に出ると、ストライクのハッチはまだ開いたままで
中からはカタカタとキーボードを打つ音が聞こえた。
「・・・キラ。」
思わずそう呼ぶとキーボードを打つ音が消えて、暫くするとキラはコックピットから顔を覗かせた。
「・・・さん?どうしたん・・ですか?」
大きなアメジストの瞳に困惑の色を浮かべて、キラは小さく首を傾げる。
それに苦笑で返して、俺は格納庫の床を蹴ってキラに近づいた。
「・・・ごめんね。」
「・・・なにがですか?」
「さっき・・・俺、自分がつらいからって逃げた。」
小さく唇をかんで俺はキラから目を逸らした。
キラもラクスもつらかったのに。まるで俺だけつらいみたいに。
ラクスのこともキラに任せて。俺はあの時ブリッジに逃げた。
「かっこ悪いね。ごめん。」
目線を恐る恐るキラに戻してみるとキラはただでさえ大きいのに
それをさらに大きくするように目を見開いて俺を見ていた。
「な・・・んで?」
「え?」
「・・・さんが謝る必要ない・・・ですよ・・・?
それなのにどうして・・・?」
「どうしてって・・・。」
だってキラもつらいのに。自分のことしか考えてなかったから。
俺はキラの寄りかかる場所にならなきゃいけないんだから。
俺がしっかりしてなきゃいけないんだから。
俺が・・・。
「・・・あ・・・自己満かも。」
「え?」
キラを守りたいという気持ちから。
守るって決めたのにさっきは守ってあげられなかった。
キラに謝る事で・・・それで自分で自分自身を許すつもりだったんだと思う。
「うぅん。なんでもない。
ただ俺はキラを放っていったから謝りたかっただけ。
ごめんね。キラも辛いのに何も言ってあげられなくて。」
「そんなっ・・・さんもつらかったんでしょ?」
半分偽りの言葉に返したキラの言葉に俺はただ穏やかな笑みを浮かべた。
曖昧だけど一応肯定。
キラははぐらかされたような気分にもなってると思うけど。
「・・・俺、シャワーにいくよ。キラは?」
「あ、僕はオフセット値に合わせてもうちょっと調整していきます。」
「そう。頑張ってね。」
軽く微笑んで別れを告げると俺は格納庫の出口に向かった。
その途中でマードック軍曹にあって、調整が終わったことを告げる。
艦内の廊下にきたので、地に足をつけた。
やはりモンゴメリと合流できる事もあってか、艦内の雰囲気は随分と明るいものになっていた。
このまま何もなければ良い。キラが戦う事にならなければ良い。
部屋から着替えを取ってシャワールームに向かう途中でミリアリアと合流した。
お互いの姿を確認して微笑みあうと、言い合わせるわけでもなく並んで歩き出す。
「ミリィもシャワー?」
「はい。今、休憩なんでちょうど良いかなって。」
「ふふ、そうだね。」
ゆっくりと歩きながらシャワールームにたどりつき、男性と女性をそれぞれの部屋に分かれた。
てっきり誰かいると思っていたのだが、シャワールームには人の影は見えず
どうやら男性用は俺の貸切のよう。
「フラガ大尉は・・・仮眠中かな。」
確かフラガ大尉も休憩の時間だったような気がするのだが、
格納庫にもいないし、ここにいないのでその可能性が高い。
「あ、食堂の可能性もあるか・・・。」
でも今、食堂は民間人でごった返してたような気がする。
じゃぁ、やっぱり仮眠の線が妥当。
衣服を一つ一つ、脱いでいって籠に入れていく。
バスタオルを個室の扉にかけて小さめのタオルだけ持って、個室の中に入る。
先程までコクーンの中に居たせいか、体に機械の匂いが染み付いているような気もした。
「鉄・・・とはちょっと違うか・・・。」
鉄というよりやはり機械のにおい。
無機質には変わりないけど、鉄の匂いよりはまだまっしか。鉄は血を連想させるから。
持って入った小さめのタオルを使い石鹸をあわ立てて体を洗っていく。
ゆっくりした時間というのが本当に久々な気もする。
ラクスがまさか乗ってくるとは思わなかったから。精神的も結構忙しかった。
蛇口をひねって泡を洗い落とす。
水を出したままシャンプーを手に取り、髪を洗ってそのまま洗い流した。
瞳をとじて水を顔面に浴びる。
水があたっては流れ落ちていく、その感覚にしばらく身をゆだねてから蛇口を閉めた。
軽く頭をふって水気を払うと扉にかけておいたバスタオルで体をふいて外に出た。
白いジーンズと黒のTシャツ。その上から茶色のVネックセーターを着衣した。
ここに乗り込んできた時の服。洗濯はしたけれども乾燥機で乾かしたためなんとなく嫌だ。
洗濯物は太陽の下で干したい。
「・・・贅沢かな。」
普段はそう感じないんだけれども
平穏ってないときにその有難さをかんじる。
「喫茶店つぶれちゃったんだよね・・・。」
先程まで来ていた軍服をかばんの中につめながら一人呟く。
穏やかな時間が流れていた、あの場所。
ほんの少しの間だったけれどとても楽しかった平穏の時間。
今は壊れてしまった宇宙コロニー。
歩いて自室に戻り、ベットに横たわる。
右手を開いてそのまま天井に突き出してみた。
俺、このままどうするつもりなんだろう。
もし合流できたとしても、ラクスが心配だからそのままここには残ると思う。
でもラクスが連合の本部に連れて行かれるというのは困る。
「どうしようかなー・・・。」
そんな事を考えていると突然大音量のアラームが鳴り響いた。
「第一戦闘配備!?」
どうして・・・?あと少しで合流なのに。どうして邪魔をするんだろう?
俺は私服のままロッカールームへと向かった。
民間人達がアラームに驚きの表情で廊下に出てきていたので
何度か人とぶつかりそうになりながらロッカールームにたどりつくと
フラガ大尉が既に来ていて、パイロットスーツに着替えているところだった。
「?・・・って私服か?」
「それは気にしなくて良いだろ?
それより戦闘?」
「みたいだな。」
手をせわしく動かしながらパイロットスーツに着替える。
ヘルメットをとって、フラガ大尉に少しおくれてロッカールームを出た。
格納庫に向かう前に廊下でフレイと話しているキラの姿を見つけた。
「キラ!早くしないと!!」
「はい!」
「キラッ!!大丈夫だよね?
・・・パパの船・・・やられたりしないわよね?
・・・ね?」
哀願に満ちた声でフレイはキラの肩を掴んでそういう。
フレイのお父さん来てるんだ・・・。
そういえばフレイのお父さんって事務次官だっけ?
「大丈夫だよ、フレイ。僕達も行くから。」
キラは小さく微笑んでフレイから離れる
行くという言葉に俺も今は戦闘配備中だったということに気がついてとめていた足を進めた。
「!こっちだ!!」
格納庫に入るとマードック軍曹がコクーンのハッチのところで待っていた。
「はフラガ大尉とは逆のカタパルトからだ。わかったな!?」
「はい!」
急いでコックピットの中に入ってシートベルトを締めてOSを起動させる。
特に異常がないことを確認して、ハッチを閉めようとした瞬間にキラが格納庫に入ってくるが見えた。
・・・必要ないと思っていたのにまた戦う事になった。
俺、キラには戦わせたくないのに。でも戦うなっていえない自分がいる。
戦闘になったらキラは止めても出ちゃうからしょうがないって思っている自分がいる。
「矛盾だらけ・・・。」
俺は小さく息を吐いてコクーンをカタパルトへと移動させた。
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2006/02/22
あとがき
11日間あいての久々の更新だったので主人公さんの話かたいまいち分かりませんでした。
題名はむしろ私の心境みたいな感じですよ(待)
主人公さんの気持ち矛盾しまくってるのは私の文才がないからです・・・。
もっとまとまった話をかけるようにがんばろう・・・うん。