ひとたび戦場に赴いてみるとそこはひどい有様だった。
ジンがMAをどんどん落としていて、力の差は歴然としていた。
やはりMSとMAでは戦力の差がはっきりとしすぎている。
先程ミリィからの通信によると相手はジン3機とイージス・・・つまりアスラン。
コクーンのPSを起動させてMAにあたりそうな砲弾をライフルで打ち落としていく。
あたりに視線をめぐらしてアスランを探していると、キラもちょうど此方にやってきて
キラは真っ先にアスランを見つけ、二人は戦い始めた。
「・・・っ!」
駄目だ。君達が戦っては。
本当は戦う必要なんてないのに。戦ってもただ哀しいだけなのに。
きっと二人はまだ漠然とした思いで戦っている。
自分の手で大切な人を殺すっていう意味をまだちゃんと分かっていない。
まだ気付くはずがない。気付くのは簡単そうで難しいことだ。
あまりに普通の状況からは想像できない事だから。
心配した面持ちで二人を見守っていると突然コックピット内にアラームが響き渡った。
どうやらボーっとしすぎていたらしい。
振り向いて、ジンのライフルに狙いをさだめてトリガーを引いた。
暫く貯めるような間があってから、ライフルが爆発する。
しかし、ジンは懲りずにサーベルを取り出した。
間合いを詰めて切りかかってきた一振りをかわし、ジンに踵落しをしてから
ライフルを持っているのとは別の手でサーベルを取り出してジンの腕の連結部分を切り落とした。
足も切り落とそうとした瞬間フラガ大尉のメビウスが被弾したのが視界の端に映った。
「大尉っ!」
ジンをナスカ級の方に蹴ってから、大尉の周りに居たジンにライフルを放つ。
「!悪いっ!助かった!」
「うん!後は俺とキラで何とかするから大尉は戻って!」
「すまんっ!」
展開していたガンバレルを収束させて大尉はAAの方へ戻っていく。
それを少し見送ってから、ジン2機と攻防戦を展開する。
目の端に先遣隊のロウが落ちるのをみた。
「くっ・・・!」
キラとアスランを見遣るとやはり激しい戦闘になっていた。
互いに銃を撃ち合い、落としあおうとしている。
「もう・・やめて欲しいのに・・・!」
哀しい。哀しいだけ。
それを早く分かって欲しい。
コクーンの繭を展開させてジン2機にカウンターを返してキラとアスランに近づこうとしたその刹那
一際大きな光が当たり一面を覆いつくした。
何事かとそちらに視線を向けてみると、モンゴメリが大きな音を立てて崩れていく途中だった。
「・・しまっ・・・た・・・。」
あれには・・・確かフレイのお父さんが乗っていた。脱出できた可能性は0に等しい。
救命ポッドを探してあたりを見回しても、ただ壊れた艦の破片しか見つからなかった。
・・・キラとアスランに気をとられすぎた。
そうだ。相手はあのナスカ級。あのラウがいる艦なんだ。
あれを撃たなければ戦闘は終わらない。
ジン2機とナスカ級がAAに向かう。このままではAAはやられてしまう。
・・・こうなればスイッチを入れるしかない。力の抑制を取り去るしか。
すっと目を閉じようとすると、友人の声が頭の中を響き渡った。
――抑えなきゃ駄目っていってるでしょ?
「――っ!どうして邪魔するんだ!カイ!!」
頭を振って友人の言葉を消そうとするがそれは頭から離れない。
お願いだからやらせて欲しい。こんなことにしか自分の力は役立たないのだから。
しかし、その時突然AAから通信が入った。
『ZAFT軍に告ぐ、こちら地球軍所属連合隊AA
当艦は現在、プラント最高評議会議長シーゲル=クラインの令嬢
ラクス=クラインを保護している。』
「な・・にを・・・?」
言葉は疑問の形をとっているが、バジルール少尉が取ろうとしている行動は手に取るように分かる。
しかし・・・なんてことを。あたり一体の戦闘が時を止めた。
『偶発的に救命ポッドを発見し、人道的立場から保護したものであるが
以降、当艦への攻撃が加えられた場合。
それは貴艦のラクス=クライン嬢に対する責任放棄と判断し、
当方は自由意志でこの件を処理するつもりであることをお伝えする。』
「・・・・・・。」
『卑怯なっ!!』
俺が何も言えずに固まっているとアスランの声が通信から漏れた。
『救助した民間人を人質に取る・・・!
そんなやつと戦うのがお前の正義か!キラっ!!』
「アス・・・ラン・・・。」
違う。違うんだ。アスラン。こうしないと生き延びれないから。
この方法しか生き残る方法がないからAAはこの方法をとったんだ。
きっとバジルール少尉だって苦汁の選択だったはず。
アスランにそういって、キラを責めるのを止めてやりたい。
だけど、今はうかつに動ける状態ではない。
『アスラン・・・。』
キラの哀しそうな声が通信から漏れた。
『彼女は助け出す。必ずな・・・!』
アスランのその一言ともにイージスはその場を去る。
ストライクは動かない。まるで突き放されたような、そんなイメージさえ受ける。
「キラ・・・。」
通信を繋げて呼びかけるとキラはモニターの中で恐る恐る顔を上げた。
あぁ、この顔はきっと・・・。
『どうして・・・どうしてですか!?』
「キラ・・・。」
『はぐらかさないでください!どうしてなんですか!!?』
「キラ!!」
混乱しているらしいキラに強く言葉をかけるとキラは押し黙った。
「とりあえず艦に戻ろう。行くよ。」
今はAAに戻るのが何よりも大切な事だ。このままじっとしていても埒が明かない。
先にその場を離脱してAAに戻る。
格納庫に戻ってきてコックピットを解放して外の空気を吸い込み、
シートベルトを外して背もたれに深く体を預けた。
キラが気になる。でも今は精神的に疲れた。多分原因は・・・。
「なんで・・・スイッチ入らないんだろ・・・。」
異様に精神が・・・友人の言葉がそれを拒否する。
無理にスイッチ入れようとしたから何時もの倍以上に疲れた。
「急いでくれよぉ?これで終わったわけじゃないんだからさ。」
「わかってますよぉ!」
あ・・・大尉達だ。
瞳を閉じて、大尉とマードック軍曹の話に耳を傾ける。
そう。まだ終わったわけじゃない。
ラクスのおかげでひとまず戦闘は収束したものの、終わったわけじゃない。
多分ナスカ級は後ろにピッタリとくっついてくるだろう。
そして、月本部へラクスを連れて行くことを邪魔するはずだ。
・・・ラクス?
「あ・・・。」
俺、なにぼーっとしてるんだろ。
ラクスのところにも早く行かなきゃ。ヘルメットを外してコックピットの外にでる。
「しかし、疫病神なんじゃないすかねぇ?この船は。」
「クルーゼのほうだろ・・・!そりゃ!」
「どういうことですか!?」
あ、キラが加わった。
そういえばキラ、混乱してたんだっけ・・・。
いや、混乱とは違うか。あれは・・・怒ってた。
どうやら相当疲れているらしい、脳が上手く働かない。
ラクスのところに行かなきゃと思いつつも足は思うようにすぐには動いてくれない。
「どうもこうも、聞いたろ?そういうことさ。」
「あの子を人質にとって脅して・・・っ!そうやって逃げるのが地球軍って軍隊なんですか!?」
俺、今あそこにいって何か言ってやれることあるのかな・・・。
これはもしかすると大尉に任せておいた方が良いかもしれない・・・?
格納庫の床を蹴って離れていく大尉にキラは詰め寄った。
そして、大尉に顔を向けられて一瞬ひるんだように押し黙る。
「そういう情けねぇことしか出来ないのは俺達が弱ぇからだろ?
俺にもお前にも、もちろんにも艦長や副長を批難する権利はないさ。」
キラは唇をかんで大尉から目線を逸らした・・・そうなんだ。
力が・・・あれば。ラクスを人質にしなくてすんだのに。
俺が抑えて戦わなければきっと・・・。
格納庫の天井を見上げて俺は首を傾げた。
「なんでかなー・・・。」
スイッチ入らないの。
◆◆◆
私服に着替えた後、シャワールームで汗を流してから軍服を着込んだ。
その後にラクスの部屋に行ったのだが、彼女は不在。
やはりお出かけ中らしい。
でも、お出かけするぐらいなら彼女は案外大丈夫なのかもしれない。
見た目はあぁだけど中身は驚くほどしっかりと芯が通っている。
「・・・・・・・・フレイ?」
ラクスの部屋の前で立ち尽くしていると少し遠くから大きな泣き声が聞こえた。
・・・そうだ、彼女はお父さんを亡くして・・・。
「俺、どうして気付かないんだろ・・・。」
キラが大切。ラクスが大切。フレイが大切。全員大切。
たくさん持ちすぎた?でも・・・あの子達はまだ子供だから支えてあげないといけない。
「嘘つき!!」
フレイの部屋に駆け寄っていくとさらに大きな声が聞こえた。
俺は思わずそこで足を止める。
嘘つき・・・?なぜこの状況下でその言葉が出てくる?
「大丈夫だっていったじゃない!僕達もいくから大丈夫だって!!」
これは・・・もしかしてキラに向けた言葉?
戦闘に行く前のあの会話のこと?
あぁ・・・駄目だ。恐れていた事が起こってしまった。
自分の感情に正直すぎる彼女は人を傷つけてしまう。
このままでは。キラが傷つくのは目に見えている。再び足を進めた。
「なんでパパの船を守ってくれなかったの!?
なんであいつらをやっつけてくれなかったのよ!!?」
「フレイ!キラだって必死に・・・!」
「あんたっ!!自分もコーディネーターだからって・・・!
本気で戦ってないんでしょ!!?」
部屋につくほんの少し手前でその言葉が聞こえ、ぴくんっと神経が反応した。
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2006/02/23
あとがき
色々もどかしいです。色々と。
スイッチって言うのは普通にいうと種割れです。
種割れなんて言葉多分誰も知らないと思うんです。多分。
種割れ主人公さんは、また次の機会に出します。
というかUPしてないだけでその場面は書き終わりましたので
近々UP予定です