・・・フレイは何を言った?



目の前が一瞬真っ暗になったような気がした。

額に手を当てる動機が早い。

扉が開いてキラが飛び出してきた。その大きなアメジストの瞳は今にも泣き出しそうに濡れていた。



「キラ・・っ!!」



俺の言葉も聞こえないようで、キラは走っていってしまう。

追いかけなきゃ。でも今は先に・・・。



「・・・フレイ。」



心の中はぐちゃぐちゃだけどあくまで平常を装ってフレイに声をかける。

フレイは俺が入ってきたのに気がついて、一度目を開いてから俺をにらみつけた。

あぁ・・・きっと俺もこの子の敵と認識されてしまっている。




「さっきの言いすぎだよ。」


さんも・・・さんよ・・・!
 あなたも本気じゃないんでしょう!?
 私達なんかより同じコーディネーターのほうが大切なんでしょう!?」



・・・ダメだ。この子は・・・正直すぎて人をきっと傷つけたことなんてわかっていない。

前の時もそうだった。キラに謝ったといってもサイに言われたからだ。



「・・・本気で戦ってるよ、君達を守るために。
 俺は知らないコーディネーターより君達のほうが大切だ。
 それはキラも同じ。お願いだから分かってあげて。
 君の言葉がキラを傷つけてるって分かってあげて。」



それだけ言うと俺はキラが走っていったほうへ走り出した。答えは聞かない。聞けない。

否定されたら俺もつぶれてしまう。

一瞬リフトで上がっていくのが見えたから方向からして多分あそこだろう。

宇宙を展望できるようになっている場所。途中から低重力の中浮いたままキラを追い、

少し探してから予想通りの場所にキラがいてくれて俺は思わず肩の力を抜いた。



「キラっ!」



少し強めに名前を呼ぶとキラは泣くのを堪えた様な表情で此方に視線を向けた。



「・・・っ・・・さ・・・ん。」


「・・・おいで。泣いていいから。」



両手を広げるとキラは胸に飛び込んできて、そのまま子供のように大きな声で泣き出した。

それを包み込むように抱きしめて、背を撫ぜる。

平常を装っているうちに俺もだんだん落ち着いてきた。

フレイに言われて、流石に俺も傷ついた。

彼女は気が動転している。それは分かっている。

だけど、彼女は今憎しみでいっぱいで、

その憎しみは敵ではなく一番当てやすいキラに向いてしまっている。

この際俺に向けられる感情は良いことにしよう。

俺だけなら・・・多分耐えられる。多分大丈夫。

問題はキラとフレイだ。どうしたら・・・両方を救えるだろうか?



「どうなさいましたの?」



柔らかい声がかかりいつの間にか伏せていた瞳を開けてみると

そこには予想通りピンク色の髪のお姫様が居た。

腕の中のキラも驚いて顔をあげ、ラクスの顔を見たとたん驚きに目を見開いた。

ラクスは小さく笑みを浮かべ、キラの顔を覗き込みキラと同じように目を見開く。

そして、指の甲でキラの涙をぬぐい、キラはそれに照れたように目を軍服の袖でこすった。

俺は苦笑しながらキラを包み込んでいた手を離し、壁に背をついた。



「・・・なにやってるんですか・・・こんなところで!
 さんもっ・・・何か言ってあげてください!」


「だそうですけど・・?ラクス?」



必死なキラに俺は苦笑を浮かべ、ラクスを見遣る。

ラクスはにっこりと笑い壁を蹴り、俺達とは反対方向に浮遊した。



「お散歩をしてましたらこちらから大きなお声が聞こえたものですから。」



ラクスの言葉にキラは視線を逸らして、顔を赤く染めた。




「駄目ですよっ・・・!勝手に出歩いちゃ・・・。
 スパイだと思われますよ!」


「ラクスがスパイ・・・か・・・。」


「あら。」



ラクスは楽しそうに声をあげて、向こう側の壁を蹴って此方に来る。

キラはその手をとってラクスの動きを止めた。

二人してその手をみて、顔を見合わせる。

なんだか微笑ましい。



「でも、このピンクちゃんはお散歩が好きで
 というか、鍵がかかっていると必ず開けて出てしまいますの。」



顎に手をあてて、視線を斜め上にして言うラクスに俺は苦笑を浮かべた。

やっぱりコイツの仕業だったか。アスランはハロになかなか良い機能をつけたみたいだ。

キラはただ絶句している。

ラクスは自分のペースで生きているから、なれないうちは少し大変かもしれない。



「・・・とにかくもどりましょう。さぁ。」



手を差し出すキラにラクスは悪戯気な笑みをうかべ、逃げるように俺の方にやってきた。

キラが一瞬傷ついたような顔をした。このお嬢様は悪戯が好きだっただろうか?

不思議そうな表情をする俺をラクスは見上げてにっこりと笑う。そしてキラに視線を向けた。



「戦いは終わりましたのね。」


「・・・・えぇ、まぁ。・・・あなたの・・・おかげで。」



キラは良いにくそうに視線を逸らした。やはりまだ気にしている。

そして自分はこの件についてはキラには何も言っていない。



「・・・ラクス。すみません。」


「いいえ。。お気になさらず。私は気にしておりません。
 でも・・・キラ様は戦いは終わりましたのに哀しそうなお顔をしてらっしゃる。」



キラの方をむいて、ラクスは哀しそうに声をかける。

それは別の理由があるからなのだけれどもキラの前で傷をえぐるような真似はしたくない。



「僕は・・・僕は本当は戦いたくなんてないんです。
 僕だってコーディネーターなんだし・・・。アスランとだって戦いたくないんです。」


「アスラン・・・?」



キラの言った名前にラクスがピクリと反応して、俺を見た。

あ、そういえばラクスにはキラのこと言ってなかったっけ。

天井を仰いで苦笑してから、ラクスをみるとラクスはきょとんと首を傾げた。



「アスラン=ザラ・・・。彼があのMSイージスのパイロットだなんて・・・・!」



キラが悲痛の思いで言葉を打ち明ける。

その時俺は人の気配を感じて入り口あたりに視線をやった。

するとそこにはカズイがいて、俺に気付かれたとは露知らずその場を去っていく。

・・・俺が行って口止めすることもできないことはないが・・・彼らに判断を委ねよう。

きっと彼らの方がキラとは付き合いが長いのだからわかってくれると思う。きっと。



「そうでしたの・・・。」



ラクスはそういって俺の元を離れて、キラの方に近づいた。

そしてキラはラクスの手をとった。ラクスは気まぐれなお姫様だ。



「彼もあなたも良い人ですもの。
 それは哀しい事ですわね・・・。」



ラクスは視線を下へと落とした。

俺と同じようにラクスは考えてくれるらしい。

いや、この二人ともを知っているなら誰でもそう思うだろう。

戦争の犠牲者以外のなんでもない。



「アスランを知っているんですか!?」


「アスラン=ザラは私がいずれ結婚する方ですわ。」


「えぇ・・・!」



キラ、驚いてる・・・。

そういえば俺もアスランと知り合いだってキラにいってなかったような気がする。

でも・・・なんとなく言えない。

なんでだろ。なんとなくだけど、重荷になる・・・気がする。キラの。



「優しいんですけれども、とても無口な人。」



ラクスが微笑みながら言うのに対して、キラは戸惑ったような表情をして俺に視線を向けた。

俺は微笑み返して、ラクスの方を見るように視線で示す。

共通の友達の話題を話すのは良いことだ。だから、今は二人で話しておいて欲しい。

俺はアスランのことをそんなに深く知ってるわけじゃないから。



「でも、このハロをくださいましたの。
 私がとても気に入りました。と申し上げましたら、その次もまたハロを。」



あら、びっくり。というような表情をしてみせてからラクスは穏やかに笑みを深める。



「そっか、相変わらずなんだな・・・アスラン。」



アスランのことを思い出したのか、キラの表情も自然と柔らかくなった。

・・・良く知っている友達って本当に良い。少し羨ましくなった。

俺も・・・なにも包み隠さず話し合える友人達に会いたくなる。



「僕のトリィも彼が作ってくれたものなんです。」


「まぁ。そうですの?」


「でも・・・。」



キラは悲しそうに目を伏せた。その仲のいい友達と殺り合わなければいけない運命にある。



「お二人が・・・戦わずにすむようになれば良いですわね。」



ラクスが伏し目がちになって呟いた言葉に俺は静かに頷いた。




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2006/02/24

あとがき

キラ様何か飲まされましたか!?な回のお話。
一瞬一人で泣かせようかとも思ったんですが、あまりに絡みが少なすぎて・・・。
ついでにいうと二人の仲を深めなきゃいけないわけなんですよ(?)
ということで思う存分胸の中でないていただきました。
主人公さんは多分キラに頼られたいんだと思う、今日この頃。
自分で書いておきながら、分からなくなることがよくあります