約束はできない。
さんにそういわれたときは哀しかったけどそれと同時に嬉かった。
僕のこと大切だといってくれたことは本当に嬉しい。
でもさんにあんなこともうして欲しくない。
そんな気持ちが織り交ざって現在僕の心の中は複雑だ。
「・・・このごろ抱きしめられてばっかりかも・・・。」
そっと告げられた言葉。そのとき強く抱きしめられたことを思い出すと
顔に熱が上って僕は自分の手で頬を包み込んだ。
優しくて哀しい笑顔。
・・・さんを思い出すと暖かい気持ちになる。
あの戦闘の後、艦の窮地を救ったということでその功績を認められ、
さんはもう少しで第8艦隊と合流というところで独房から出ることが決定した。
その事を伝えるため独房に迎えにいくと、さんは穏やかな寝息を立てていた。
「さん・・・?」
僕の声にピクリと反応し、眠たそうに瞬きをしてから僕の顔を認めると
さんはへらりと優しい笑顔を浮かべた。
「どうしたの、キラ?」
「釈放です。さっきの・・・戦闘の功績が認められたらしいです。」
「そう・・・わざわざありがとう。」
さんは一度瞳を閉じてからベットから立ち上がった。
先程受け取った鍵で錠をあける。
戦闘が終わってから一時間程仮眠していたらしく足取りはあの時と比べるとずっとしっかりしていた。
「功績・・・か。あんまり嬉しくないな・・・。」
さんは自嘲気味に呟いて苦笑を浮かべた。
なんだか見ていられなくて僕は視線を逸らした。
「結果的には・・・さんのおかげでこの船はまだあるんです。
だから・・・功績であってるんだとおもいます。」
僕もあまり納得してないけど。
まだ僕が生きているのはさんのおかげだという事実は変わらない。
「・・・えっと夕食、食べれそうですか?」
「うん。大丈夫。」
恐る恐る顔を見上げていった言葉にさんは笑顔で頷く。
つれだって食堂に入るとサイとカズイがどこか気まずそうに此方をみた。
・・・イージスに乗っているのがアスランだといったのをまだ気にしているのかもしれない。
なんかいやだな・・・こういったギクシャクした空気。
「あ、さん。釈放されたんですね。」
「うん。心配かけてごめんね。」
「いえ。無理しないでください。」
「ありがとう。」
さんがサイと話しているうちに僕はセルフになっている水を汲みにいった。
後からさんもくるだろうから、二人分。
自分のを入れ終わって、さんの分のコップを手に取ろうとした瞬間
サイの驚いたような声が食堂に響いた。
「フレイ・・・?」
はじかれたように僕は食堂の入り口を見た。
そこには彼女が胸に手をあてた状態でどこか虚ろな目つきで立っていた。
「フレイ・・・?もう大丈夫なの?」
「えぇ。さん心配かけてごめんなさい。もう大丈夫よ。」
「まだ休んでたほうが・・・。」
さんとサイがフレイに近寄り声をかけるがフレイは柔らかく頭をふった。
・・・多分この二人は遠巻きにフレイに部屋に戻るように行って、僕に気を使ってくれている。
またフレイが僕に何かを言って僕が傷つく事を心配してくれているんだ。
「大丈夫よ・・・サイ。」
フレイが歩き出して、心配そうな視線がさん達から向けられる。
僕はつばを飲み込んだ。
『コーディネーターだからって本気で戦っていないんでしょう!?』
フレイの言葉が頭のなかでリフレインした。
今度は・・・・何をいわれる・・・?
しかし身構えた僕にフレイがかけた言葉はあまりにも意外なものだった。
「キラ・・・・あの時はごめんなさい。」
一度視線を下に向けてフレイは弱々しい言葉を述べる。
僕は驚いて小さく息を呑んだ。
そしてフレイは一度視線をさんに向けた。
さんは僕と同じように・・・いやそれ以上に驚いたような顔をしていた。
「さんも・・・ごめんなさい。
私・・・あの時はパニックになっちゃって・・・。凄いひどいこといっちゃった・・・。
本当にごめんなさい。」
「フレイ・・・!」
僕が名前を呼びかけるとフレイは眉を下げて、気まずそうに僕から視線を逸らす。
その悲痛そうな面持ちの瞳の端には涙が浮かんでいた。
「あなたは一生懸命戦って私達を守ってくれたのに・・・私っ・・・・!」
「フレイっ!!そんなっ・・!いいんだよ、そんなことは。あの時は・・・。」
泣きそうになられて僕は焦って声をかけた。
あの時は僕の力不足だった・・・んだ。フレイのお父さんを守って上げられなかった。
フレイは僕の言葉にさらに泣きそうに瞳をぬらし体を乗り出して、僕は驚きに目を見開いた。
「私にもちゃんとわかっているの!あなたは頑張ってくれてるって・・・
なのに・・・。」
フレイは乗り出した体を戻し、お腹の前辺りで手を組んで目線を床に落とした。
えっと・・・僕はどうしたらいいんだろう。
でも今は純粋に嬉しい。フレイが僕のことを憎んでいなくてちゃんと認めてくれてるってことが分かって。
僕は瞳を緩めてなるべく優しい笑顔を浮かべた。
「ありがとう・・・フレイ。
僕の方こそお父さんを守れなくて・・・・。」
モンゴメリが爆発した時を思い出して僕も視線を床に落とした。
フレイが暗い面持ちで唇を開いた。
「戦争って嫌よね・・・。早く終われば良いのに・・・。」
「そうだね・・・。」
僕は顔を上げて僅かに微笑んだ。
本当にそう思う。戦争なんてあってはいけないことなんだ。哀しい事を生み出すだけ。
きっとさんも同意してくれるはずと思いさんの方を向いてみたが
なぜかさんは眉を下げてどこか悲しそうな顔をしていた。
・・・どうしたんだろう?
「フレイ・・・君は――。」
さんが言葉を続けようとした瞬間艦内に大音量のアラームが鳴り響いた。
そして第一戦闘配備が知らされる。僕達は急いで駆け出して食堂を出た。
「戦争よー!また戦争よー!・・・きゃぁっ!」
食堂を出たところでどこか舌足らずな言葉の少女とぶつかってしまった。
少女は痛そうに目を硬く閉じて僕を見上げた。
さんがそれに気がついたようで足を止め、僕のところに戻ってきた。
「あぁっ・・・大丈夫かい?さぁ。」
少女に手を差し出すと横からフレイがやってきて、その少女を抱き起こした。
「ごめんね。お兄ちゃん急いでたから。」
そしてフレイはやさしく少女に微笑みかける。
「また戦争だけど、大丈夫このおにいちゃんが戦って守ってくれるからね。」
「本当・・・?」
不安そうな面持ちでいう少女にフレイは可憐な笑みを浮かべて頷いた。
フレイ・・・お父さんが死んで変わった・・・?以前まではこんな事をするような子ではなかったのに。
「悪いやつはみーんなやっつけてくれるから。」
その言葉に僕は彼女達を守らなければならないことを再認識した。
そうだ。敵は倒さなければ。
フレイみたいに悲しむ人がこれ以上増えないように。
僕が守らなきゃいけないんだ。
「・・・フレイ・・・。」
さんが眉を寄せて、不安そうな声を出した。
「君もしかして・・・」
「なに?さん?」
「・・・うぅん。やっぱりなんでもない。」
「キラ!さん!」
サイたちが痺れを切らしたのかリフトのところから僕達の名前を呼んだ。
フレイの方に視線を残しながら、急いで合流して上の階へと上がる。
僕とさんはロッカールームのほうへ、サイとカズイはブリッジの方へ向かった。
「さん・・・フレイになに言おうとしてたんですか?」
パイロットスーツに着替えながら、僕は気になっていた事を聞いた。
明らかにさんの様子はいつもとは違っていた。
なにか哀しい事があったようなそんな雰囲気さえ漂わせているもの。
「・・・いや、多分気のせいだと思うから、気にしないで。
それよりキラ。」
どうやら言いたくないらしい。さんは話題を切り替え申し訳無さそうな笑みを浮かべた。
そして、ロッカールームを出て格納庫へと走り出した。
「?」
「俺、今回多分出られない。」
「え・・・?」
「一応行ってみるけどね・・・。」
そうこういっているうちに格納庫にたどりつき、
僕達の姿をみつけたマードックさんがこちらに駆け寄ってきた。
「!コクーンは無理だ!さっきの戦闘で負荷かけすぎだ!」
さんの方を向いてみるとしょうがないとでも言うように
眉を下げて苦笑いを浮かべていた。
「じゃぁ、俺はブリッジに行きます。」
そして僕がさんの方を向いている事に気がつくとさんは微笑みながら小さく首を傾げた。
「キラ、ごめんね。無理させる・・・かな。
でも、早く行かないと。」
「はい・・・。さんは気にしないで・・・ください。」
さんは僕の肩をストライクのコックピットの方に押して、格納庫を出た。
離れていくさんを目で追って、なんとなく哀しくなった。
頭を振って気持ちを切り替えて、僕はストライクに乗り込みOSを起動させた。
今回はさんもAAにいる。絶対にAAは沈めさせやしない。僕が守りきってみせる。
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2006/02/28
あとがき
フレイ様、動き出されました。
彼女をどのように動かすかを、色々迷ってますが
やつら勝手に動くからなぁ・・・(待)
たまに制御できなくなります。あぁ、力不足。
とりあえず、キラ様にはさんざん苦悩していただきます。(ぇ)