キラと別れてから俺はロッカールームにいって軍服に着替え
そして戦闘時には入ったことのないブリッジに足を踏み入れた。
「・・・さん!?」
ラミアス艦長が俺に気付き、目を見開いた。
コクーンの情報はきているはずだけど、やはり俺が出ないということは戦力が減るということになるので
彼女にとっては信じたくなくて避けたい事態だったのだろう。
ラミアス艦長は渋い顔をしてみせた。俺はそれに苦笑を返す。
「コクーンの修理が終わっていないので此方にいます。」
「・・・わかりました。ではさんはCICについてください。」
「はい。」
あいていたCICの席に滑り込むように座り
キーボードを叩いて集まってくる情報を処理し、バジルール少尉の指令どおりに射撃を入力する。
モニターに目を走らせながらキーボードを叩いていく。どうやら俺の主な仕事は座標計算のようだ。
相手はデュエル、バスター、ブリッツ。それとローラシア級。
「・・・イザーク、ディアッカ、ニコル・・・。」
機体からそれにのっているアカデミーで会った三人の少年達の顔が頭に浮かぶ。
屈託のない笑顔。使命感に燃えた瞳。
今、彼らはどのような表情をしているのだろうか。
ブリッジの中の大きなモニターに視線をやると
くるくると3機が旋回しているところで、こちらからローラシア級が見えなくなった。
なにをしている・・・?
しかし次の瞬間その意図に気づき、操舵者であるノイマン曹長のほうを向いた。
「ノイマン曹長!!舵切ってください!!」
「え!?」
気づいたときにはすでに遅く、ローラシア級からの攻撃によりAA内が激しく揺れた。
「くっ・・・。」
急いで破損箇所を調べて整備士たちにデーターを送る。
大丈夫だ。これぐらいならAAは壊れない。
モニターに目を移すとフラガ大尉がバスターに攻撃しているところだった。
ガンバレルを使用するもPS装甲の前ではそれは意味をなさないもので、バスターからの反撃を受けていた。
フラガ大尉も旋回してその攻撃を避ける。
そこにキラがビームライフルをもって加わった。
ソレを引き離すように威嚇射撃をデュエルが放ち、その2機はAAから離れていく。
デュエルは元からそれが目的だったらしい。
ダメだ・・・キラは完全にイザークの思い通りに動いてしまっている。
こちらにバスターとブリッツ向かってきて、フラガ大尉がそれを阻もうと銃撃をしたが
すんでのところでバスターとブリッツはその攻撃を避けた。
そして、バスターはランチャーをフラガ大尉に放つ。
・・・どちらも俺にとっては大切な人でどちらも墜ちて欲しくない。
どうすればいいだろう。
モニターに目を移すとデュエルとストライクの攻防が激しくなってきた。
「バリアント撃てぇ!!」
ナタルさんの声に今は自分も戦闘中だったことに気がついて、キーボードーを叩く。
・・・戦闘中だというのに気を散らすなんて。
ここがブリッジだからよかったもののMSに乗っていたら命が危険だったかもしれない。
しかし気にしないというほうが無理だ。俺にとっては誰にも死んで欲しくない状況。
バリアントがAAから放たれ、ブリッツの姿が消える。
「ブリッツ、ロスト!」
「ミラージュコロイドを展開したんだわ。」
「・・・やっかいな。」
俺は小さく息をはいてロストした位置を確認した。
先ほどの移動速度からして大体の位置は分かるが、移動速度を変えていることも考えられる。
さてどうするか。AAに取り付かれてこっちがやられるのは困る。
あ、そうだ。ミラージュコロイドを解除せざるをえなくすればいい。
「・・・ラミアス艦長!アンチビーム爆雷を!」
俺の意図に気づいたのか、ラミアス艦長は一瞬目を見開いてから唇をきつく閉めて頷いた。
「アンチビーム爆雷。対空硫酸弾頭を!」
「アンチビーム爆雷発射!艦尾ミサイルを対空硫酸用弾頭に換装!」
周りの学生達が情報を入力していったので、俺は座標の細かな修正を行った。
ブリッツから放たれたと思われるビームがアンチビーム爆雷によってゆがんだ。
その座標を計算して割り出し、大体ブリッツがどこ辺りにいるのかを予測付ける。
「硫酸弾頭撃てぇ!!」
4つの弾が打ち込まれ、その中から更にいくつもの筋となって多くの弾が排出される。
ミラージュコロイドを展開していてはPS装甲は展開できない。
PS装甲を展開していないと、あの弾の雨をしのぐことはできない。
そして予想通り、ニコルはミラージュコロイドからPS装甲に切り替えた。
再びブリッツの姿が消える。
「イーゲルシュテルン、自動追尾解除!弾幕を張れ!」
バジルール少尉の指示に従って回りは動き出した。
弾幕ということで俺は仕事をする必要が今のところはない。
モニターに目を移し、各機の位置を肉眼で確認した。
弾幕を張られてはブリッツもミラージュコロイドを展開するわけにはいかない。
おかげでどこに誰がいるかは大体把握できた。
「キラ・・・。」
キラはデュエルに向かってビームライフルを放っていたが、
シールドに阻まれてソレが意味をなさないことを知るとライフルを投げ捨て、サーベルを取った。
さらにデュエルとストライクの攻防が激しさを増す。バスターとフラガ大尉のゼロも交戦中だ。
それをさえぎるようにローラシア級からAAに光線が放たれる。
「ランダム回避!」
「ゴットフリート撃てぇ!!」
丁度、相手の射撃口であると思われる位置を計算して座標を入力した。
メインの射撃口ではなかったが、別の射撃口を破壊することには成功したようだ。
小さな爆発のような熱源が近くのモニターで表示されている。
AAは回避しながら攻撃を続ける。なんどかローラシア級からの攻撃をかすりながらもなんとか持ちこたえている。
・・・コクーンで出ていれば、ローラシア級の射撃口を破壊するぐらいはできたのに・・・。
だけど、それを今悔やんでもしょうがない。俺は今できることをするだけ。
ローラシア級の座標を計算しなおして、微調整を行った。
「第6センサー被弾!ラミネート装甲内温度上昇!
これでは装甲、廃熱追いつきません!装甲内温度更に上昇!」
チャンドラ伍長の声があせりに満ちている。
俺の額にも汗が流れた。そういえばブリッツの動向はどうなっている?
「あと、2発もうけたら持たないわ。櫂等面舵20!」
「ブリッツ接近!!」
トノムラ伍長の声に俺はブリッツの座標計算を始めた。
・・・撃ちたくない。なんていってる暇じゃないんだ。
そうじゃないとこちらがやられる。
だけど・・・だけど、彼らを撃ちたくないという気持ちが消えるはずもない。
「ストライクとゼロはなにをしている!?」
「デュエル、バスターと交戦中です!!」
ブリッツがAAに取り付いてその銃撃の衝撃でブリッジ内が揺れた。
椅子の肘掛をつかんでその衝撃をやり過ごす。
取り付かれたとなっては容易に攻撃できない。下手すれば自滅することになってしまう。
・・・十分に動かないとはいってもコクーンで出たほうがいいだろうか?
「艦砲が使えん!ストライクは!?」
「以前、デュエルと交戦中です!
・・・キラ!キラ!!戻って!!ブリッツに取り付かれたわ!!」
ミリィがインカムを抑えてキラに呼びかける。
キラはAAのほうを向いて少し動きを止めた。
・・・混乱させてしまった?ブリッツからの攻撃でゆれる中俺は眉を下げた。
キラの実力では・・・もうダメかもしれない。
デュエルを・・・イザークを足止めしてこちらにやってくるころにはAAは沈んでしまう。
やはり、十分に動けないとはいえコクーンで出たほうがいいかもしれない。
そう思って立ち上がった瞬間にモニターのなかで
ストライクはデュエルが切り裂こうとした攻撃を今までからは考えられないような速度で避け
デュエルの胴辺りにビームサーベルで攻撃を入れた。びりびりとデュエルから漏電がほとばしる。
そしてこちらに向かうストライクはデュエルからのビームを神がかった動きで避けた。
「・・・・キラ・・・?」
俺はただその場に呆然と立ち尽くす。
もしかして、キラもスイッチがはいってしまった?
ブリッツからの攻撃で船内がひときわ大きく揺れた。
ストライクがブリッツに切りかかり、そして膝蹴りを入れると、ブリッツの体が吹き飛ぶ。
「・・・キラ。」
背後からデュエルが切りかかるが、キラは振り向いて実剣でデュエルのコックピットを突き刺した。
「・・・っ!」
イザーク・・・!思わず俺は片手で口を覆って声を飲み込む。
ここで彼の名を呼んではいけない。
動かなくなって、ただ宙をながれていったデュエルをブリッツが抱える。
イザークは大丈夫なんだろうか?俺はモニターをまっすぐに見つめた。
ニコルがいったのか、バスターもゼロとの交戦をとめた。
ストライクがAAに着艦し、ふと、モニターを見てみると多くの熱源が接近してきていた。
・・・第8艦隊だ。このタイミングで表れてくれて本当によかった。
このままいっていたらキラはもしかしたら彼らを殺してたかもしれない。
・・・・・・スイッチが入った俺みたいに。
それだけはどうしても避けたかった。
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2006/03/01
あとがき
キラ様初種割れ話。主人公さんは相変わらずスイッチといってますけどね。
いいんです、スイッチで(待)
MSで出てると自分の事で精一杯だけど
ブリッジに入ると周りがよく見えると思うんです。
だから、心中ものすごく複雑だとおもいます主人公さん。
・・・あ、私キャラ追い詰めるの好きかもしれない(ぇ)