「ラミアス艦長!」



メネラウスからのシャトルに乗ったハルバートン閣下がAAに来るというので

俺達は格納庫に集まることになっていた。今までつけたことのない帽子までかぶって。

廊下を歩いていたラミアス艦長とバジルール少尉を見つけて、俺は声をかけた。

二人の士官は不思議そうに俺のほうを振り向いた。



・・・さん。どうしたのかしら?」


「えぇ。・・・少し話しておかなければいけないことが。
 あ、バジルール少尉も聞いてください。」



ラミアス艦長が気遣わしげにバジルール少尉の事を見たので俺は小さく微笑んだ。

コレは士官の人には言っておいたほうがいい。きっと後々問題になる。

・・・今、言うのも遅すぎるけど、どうしても言い出せなかったこと。



「なにかしら?」


「・・・俺、実はZAFTの脱走兵なんです。だからMSの操作にも慣れてて・・・。
 フラガ大尉には最初に言っていたのですが・・・お二人には今まで黙っていてすみません。」


「なにをっ・・・!?」



深々と頭を下げながら言った俺の言葉にラミアス艦長は目を見開いて大きく息をのむ。

バジルール少尉も同じように目を大きく見開き、俺をまじまじと見つめた。

多分、この二人は薄々ながらに勘付いていたと思う。

俺のMSの操縦は正規の訓練を受けたもののソレだ。



さん・・・いや、まさか!ソレは大変なことですよ!?わかってるんですか!!?」


「もちろんわかっています。」



頭を上げながら俺は小さく微笑む。

多分。コレは彼女なりに心配してかけてくれている言葉なんだろう。

と思いながらバジルール少尉のほうをみる。

笑顔を向けると、バジルール少尉は一瞬ひるんだように眉をしかめた。

そして、ラミアス艦長に視線を移す。



「ですから・・・俺が降りれないときは降りれないって言ってください。
 これ以上、ラミアス艦長たちに迷惑をかけるわけにはいきませんから。」


さん・・・。」


「俺が言いたいことはそれだけです。黙っていてすみませんでした。」



ラミアス艦長がわずかに瞳をぬらして俺を見上げた。

それに俺は笑顔で返す。キラたちが降りれればそれでいい。

ZAFTから逃がしてくれた友人達には申し訳ないけど

彼らを守れるなら俺はもうどうなってもいい。殺されることは・・・多分ないだろう。



「・・・降ろしてみせます。だから心配しないで。さん。」



ラミアス艦長の言葉に俺はただ曖昧な笑みを返した。

上から言われたらラミアス艦長になす術はない。

ハルバートン閣下が言えば、俺の身柄はどうにでもなる。


そのあと格納庫への道のりはただ静かなものだった。

お互い何も話さない。ラミアス艦長とバジルール少尉はただ困ったような表情を浮かべていた。

格納庫でキラたちと落ち合ったが士官は閣下の出迎えをしなければいけないということで

俺はキラ達とは別でフラガ大尉とバジルール少尉の間にたって閣下の到着を待つ。

・・・多分俺の正体ばれてるんだろうな。

大佐クラスなら俺のファイル見れるって事は准将閣下となれば確実に知っているだろう。

多分、俺は降りれない可能性が高い。


シャトルの扉が開いて、ひげを蓄えた大らかな表情の将校がタラップに降りてくる。

そしてラミアス艦長の姿を認めると表情を柔らかくした。



「おぉ!いやぁ、ヘリオポリス崩壊の知らせを聞いたときはもう駄目かと思ったぞ。
 それが・・・ここで君達とあえるとは!」


「ありがとうございます。お久しぶりです。閣下。」



ラミアス艦長が嬉々とした言葉を敬礼をしながら閣下にむける。

それにハルバートン准将が穏やかな笑みと共に敬礼で返した。



「さきも戦闘中との報告を受けて、気をもんだ。
 あー・・・大丈夫か?」



ハルバートン准将は辺りに視線をめぐらせる。

話し口調からして随分と友好的な人柄だということが分かった。

この人に・・・俺が降りれるかどうかはかかっている。

バジルール少尉が一歩進み出て敬礼をした。



「ナタル=バジルールであります!」


「第7機動艦隊、ムウ=ラ=フラガであります!」



バジルール少尉に続いて、フラガ大尉が前に進み出た。



「おぉ、君がいてくれて幸いだった。」


「いえ、さして役に立ちませんで。」



ハルバートン准将はフラガ大尉と握手を交わし、俺に視線を向けた。

俺は背筋を伸ばして大尉達にならい一歩前に出て、敬礼をする。

心なしか周りの三人の空気も張り詰めたものになったような気がする。

どうやら心配してくれているようだ。本当に迷惑をかけている。



「・・・であります。准将閣下。」


「そうか・・・君が・・・。」



俺の名前を聞いてハルバートン准将の表情が柔らかくなる。

その場で拘束されることも覚悟していたのに、あまりに予想外の行動で俺は目を丸くした。



「・・・君とは後でゆっくり話がしたい。」


「はい・・・。」



責める風でもなくただ穏やかに言葉をかけられ、俺は反射的に頷いた。

ハルバートン准将は穏やかに微笑みながら、更に視線をあたりに向けた。

そして、キラ達のところで視線を止め笑みを深めた。



「おぉ、そして彼らが!」


「はい!艦を手伝ってくれました、ヘリオポリスの学生達です。」



ハルバートン准将はバジルール少尉を押しのけるようにして、キラ達のほうに浮遊した。



「君達のご家族の消息も確認してきたぞ。
 皆さんご無事だ!」



キラ達の雰囲気がとても柔らかく嬉しそうなものになる。

みているとこちらが嬉しくなってきて思わず口元を緩めた。



「とんでもない状況の中、よくがんばってくれたな。
 私からも礼を言う。」


「閣下、お時間があまり・・・。」


「うむ・・・また後で君たちともゆっくり話がしたいものだなぁ。」



ハルバートン准将が艦内に入っていきそれにバジルール少尉、ラミアス艦長が続く。



。お前は来なくていい。」


「・・・いいの?」


「あぁ、シャトルに乗れるように着替えて来い。
 俺はお前が降りれるように全力でサポートするから。」


「大尉・・・。」



フラガ大尉は片目をつぶってみせて、ラミアス艦長たちに続いた。

行かなくていい・・・けれど俺は果たして降りれるんだろうか?



さん・・・。」


「え・・・?」



フラガ大尉の背中を視線で追っていたので

突然声をかけられ俺は目を丸くして声をかけられた方向を見た。

そこには少し不安げにゆれた大きな紫の瞳があった。

サイ達はすでに格納庫を出てしまったらしく、姿はなかった。



「行きましょう?」


「・・・うん。」


さん・・・大丈夫ですか?」


「え・・・?」


「不安そう・・・です。」


「・・・不安・・・かも知れないな。」



はじかれたようにキラは顔を上げた。俺は苦笑を浮かべて歩き出す。

降りられないということは軍に残るか軍の保護下に置かれるということ。

つまりキラ達とは会えなくなる可能性が高い。それを考えると不安だ。



「キラ・・・俺、元ZAFTっていったよね。」


「・・・はい。」


「こんな階級ももらっちゃってるし、俺降りられないかもしれない。」


「!?」



キラは眉を下げ悲しそうに瞳を揺らした。



「でも降りられたら、キラとまたゆっくり話したい。」



戦闘などで忙しすぎてキラとゆっくり話す時間もなかった。

だからゆっくり話したい。俺のZAFTを抜けた昔の事とか。

俺の事すべて知った上で受け入れて欲しい。わがままかもしれないけどキラに俺の事分かってもらいたい。



「いいかな?こんな約束して。」



笑ってキラのほうを見るとキラは泣きそうになりながら頷いた。

降りられたならソレぐらいのご褒美をくれてもいいと思う。

・・・・きっと降りられる。そう信じたい。


そうこうしているうちに、自室にたどり着きキラとわかれた。

ヘリオポリスが崩壊していたときの服に着替えて、簡単に部屋の掃除をしてから俺は格納庫に向かった。

少し覗いてみるとまだ避難民達がシャトルに乗り込んでいる途中で順番はなかなか回ってきそうにない。



君。」


「?」



時間つぶしにコクーンのほうにでも行こうかと思っていたら後ろからフルネームで名を呼ばれる。

振り返ってみるとそこには穏やかな笑みを浮かべたハルバートン准将がいた。



「准将閣下・・・。あの・・・自分の処置はどうなりましたか?」


「君はちゃんと降りられる。ただ、しばらく軍の監視下には身を置いてもらうがな。」



しばらくの間は行動が制限されるが、自由になれるらしい。

腹の奥のほうから喜びがあふれてきて、思わず口元を緩める。



「・・・すみません。ご迷惑をおかけします。閣下。」


「いや、なに。こちらは君がZAFTにいたという裏づけが取れないのでね。
 キラ=ヤマトとほぼ同じ処置を取らしてもらった。」


「・・・?」



不思議におもい小さく首をかしげるとハルバートン准将はどこか面白そうに笑う。

裏づけが取れないとはどういうことだろう?



「君がZAFTにいたというデーターはすべて消えているよ。ZAFTからも地球連合からも。」


「!?」



消えている・・・?そんなことがありえるだろうか?

いや、でもフラガ大尉が確かある日突然俺のデーターが消えたといっていた。

そして、俺はソレができる人物を知っている。だとすれば答えは簡単に出てきてしまう。



「そうですか・・・。ありがとうございました。」


「気にするな。そうだ。先ほどキラ=ヤマト君と会ったが
 ・・・・できる力があるならできることをやれ。といわれたと言っていた。
 君がいったのかね?」


「いえ・・・自分ではありません。フラガ大尉のお言葉ですよ。
 俺・・・あ、自分はソレは意思あってこそのものだと思っています。」


「うむ。その通りだ。」



ハルバートン准将は腕の時計を見てから俺にもう一度視線を向けた。



「しばらく窮屈な思いをするかも知れんが我慢してくれ。
 では、また後で会おう。」


「はい。」



敬礼をされたのでソレに返して俺はコクーンの場所に向かった。

最後にアレを見ていこう。一緒に戦った、俺と皆を守ってくれた機体を。



「・・・キラ。」


「あ、さん。」



コクーンの収納場所に来るとそこにはストライクを見上げるキラの姿があった

思わず駆け寄って名前を呼ぶとキラは不思議そうに首をかしげた。



「どうしたんですか?はしゃいでますよ?」


「わかる?・・・俺、降りられることなったよ。」


「本当ですか!?」


「うん。・・・あとでゆっくり話そう?」


「はい!」



穏やかに微笑みながら言うとキラは笑いながら頷いた。

今更ながらに気がついたがキラも私服だ。随分と久しぶりに見たような気がする。

そしてつい先ほどまで戦争をしていたというのに平穏な生活を思い浮かべている自分がいて驚いた。

キラとシャトルの置いてある場所まで来ると依然、人が多く並んでいた。

しかしあたりを見回してみてもヘリオポリスの学生達の姿は見えない。



「サイたち遅いね・・・。」


「そうですね・・・どうしたんだろ。」



キラも不安そうに視線をあたりに泳がせる。

俺も見落としているのだろうかと思って、回りに視線を泳がせた。

すると一人の少女と視線が合った。

その少女は隣にいたキラを見つけると嬉しそうに微笑んでこちらに浮遊してき、

キラにつかまってその場に止まった。そしてごそごそと鞄を探ると

一輪の折り紙の花を取り出しソレをキラに手渡した。



「いままで、まもってくれてありがとう。」



どこか舌足らずのその言葉にキラは驚きに目を見張り、息をのんだ。

そして花を受け取って優しく微笑むキラはとても綺麗だった。



「ありがとう。」


「おにいちゃんもわたしたちをまもってくれたんだよね?ありがとう。」



俺を見上げてそういう少女に俺は笑みを浮かべた。



「どういたしまして。こちらこそ怖い思いさせてごめんね。」


「うぅん。いいの。じゃぁね。」



少女はそういうとすぐに母親のほうに浮遊して言ってしまった。

あまりにもあっさりしていてキラはすこし驚いたような顔をした。

少女が飛んでいったほうを目で追うと彼女の母親がこちらに小さく会釈をしていた。

少女がひらひらと手を振る。



「・・・守ってあげられたんですよね。」


「うん。キラのおかげだよ。」


さんも。ですよ。」



お互い顔を見合わせて小さくほほえんだ。

しばらくすると俺達の前の避難民達の列が徐々に短くなってきた。

しかしサイたちは一向に現れない。



「・・・サイたち本当にどうしたんだろう・・・。」



キラが心配そうに辺りを見回した。

俺達の前の避難民はあと少しとなっていた。



「キラ!さん!!」



知っている声が聞こえて、俺とキラと喜びに顔を見合わせてから、

格納庫の入り口を見た。しかし喜びの表情はすぐに驚きの表情に変わる



「・・・あれ?」



サイたちの格好は私服ではなく軍服。

もうほとんどがシャトルに収容されているというのにまだ着替えていない・・・?



「なに・・・みんな、いないから。」


「これもってけって。除隊許可書。さんも。」



キラの言葉をさえぎるようににして、トールがキラに巻いてある紙を無理やり渡し

俺にも同じように紙を渡した。

開いてみるとたしかにそれは除隊許可書でハルバートン准将のサインも入っている。



「トール・・・君達は・・・?」



一つの不安が思いつき、俺は恐る恐る学生達の顔を見回す。

まさか・・・?



「俺達さ、残ることにしたからさ。」


「AA。軍にさ。」



眉をさげてトールとサイが言う。

予想通りの言葉に俺は言葉を失った。

そんなこと・・・なぜ?なにが彼らの心境を変えた?

キラが息をのんで目を見開く。



「残るって・・・どういう・・・。」


「フレイ・・・軍に志願したんだ。」


「・・・!」



カズイが苦笑を浮かべながらそういう。

フレイが・・・?

父親が死んで、少ししてからの彼女の様子はおかしかった。

まるでキラに戦わすことを仕向けるように。そんな態度さえみてとれた。

それが自分も戦う・・・?いったい何を考えている・・・?

キラはさらに驚きに目を見張る。決意を固めた学生達。

眉を下げながらも笑みを浮かべている。



「それで俺達も・・・。」



カズイがそういうと同時にアラームが格納庫に響き渡り第一戦闘配備が告げられる。



「!?」


「おい、そこの!出すぞ!!」



シャトルから軍人の声がかかり俺とキラがそちらを見た。



「あ、待ってください!この人とこいつ!」


「トール・・・!」



トールたちが残るなら、俺は彼らを守らなければいけない。

彼達を置いてなんていけない・・・っ!



さん。あなたはちゃんと降りてください。」



トールが俺の口元に指を持ってきて言葉をさえぎる。

そして強い笑顔を浮かべた。



「キラ。コレも運命だ。
 じゃぁな、お前、無事に地球に降りろよ。さんも無事で!」



トールはキラの肩に手を置いて笑みを浮かべ、キラと俺をシャトルのほうに押しやった。



「生きてろよ!」


「なにがあってもZAFTには入んないでくれよな!」



サイとカズイがそういう。ブリッジに向かう彼らに俺は手を伸ばした。

駄目だ・・・俺も残らないと・・・っ!

キラと離れるのは嫌だ。

でもっ・・・彼らだけを戦場に放り込むなんてことっ・・・!

しかし横にいたキラの呼吸が荒くなっているのに気がついた。



「・・・キラ?」



キラは除隊許可書を見てから先ほど少女にもらった花をみて、眉根を下げて俺を見る。

そして決意したように格納庫の入り口をみて除隊許可書を握り締めた。

この表情は・・・キラも残る?



さん、僕行きます。」


「キラ・・・俺も残るよ。」


さん・・・あなたはっ・・・!」


「え!?」



強い力でキラに突き飛ばされ、シャトルの中に放り込まれる。



「キラ!!」


さん・・・好きです。」


「!?」


「だから・・・だからあなたは戦場なんて場所からは遠ざかって生き抜いてください!!
 ・・・その人、絶対に降ろさないでください!!」



キラは近くにいた軍人にそう告げる。俺は背筋が凍った。

・・・俺だけ?俺だけ戦場から遠ざかるの?



「キラ!!」



シャトルの外に出ようとした瞬間に扉付近にいた軍人に中に押し込まれ、シャトルの扉が閉まった。



「キラぁっ!!!」



シャトルの窓から外を見るとキラが眉根を下げて微笑み、

それを残して格納庫から出て行ってしまうところだった。



「キ・・・ラ・・・?」



どうして・・・?どうして・・・!?

動き出してしまったシャトルの中で俺の頭の中ではソレばかりが回り

何も考えられなくて、その場で俺はひざをついた。









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2006/03/04


あとがき

主人公さんとキラ様ひとまずお別れです。
残してもよかったんですが、まぁこんな感じで(笑)
キラ様の告白ちょっと弱かったかもしれないけど、結構私の精一杯だったりします。
傍にいなくても相手に生きていてくれるだけでいい。っていうのはすごい愛情だと思うんですよ><