熱にやられて頭が朦朧とする。

白い壁が目に映ったと思えば、その次は宇宙の中を漂うような感覚に襲われる

フレイとミリィの声が聞こえる。みんなが僕の名前を呼ぶ声も。

ソレが交じり合っては消え、なんだか変な気分だ。



―まもってくれてありがとう。



少女の顔が浮かび、まるで洞窟の中にいるように声が響いて反復する。



―キラ!



僕に向かって泣きそうに声を上げるさん。彼に触れたくて手を伸ばした。

しかし、その瞬間目の前が真っ赤に染まり爆風が体をなでる。

一瞬目をつぶり、次に瞳を開いたときにはその少女は血まみれの姿で微笑んでいた。



―わたし、おにいちゃんのせいでしんじゃったんだよ?
  おにいちゃんまもってくれなかったんだね。




「違っ!僕はっ・・・!」



手を伸ばすと少女の姿が霧のように分散して消えて、その次に頭から血を流したさんの姿が現れる。

僕は小さく息をのんだ。



さんっ・・・!」



―キラ・・・。俺は君を恨むよ?



「!?」



にっこりといつものように穏やかに微笑んで言われた言葉に僕は意識をさらに闇の奥へと引きずりこまれる。



――トリィ



「トリィ・・・。」



うっすらとぼやけがかかって、徐々に緑色のロボット鳥の姿がはっきりとしてきた。

夢だったらしい。夢の中でさんに言われた信じたくない言葉。

言われるはずがない。言われることができるはずがない言葉。

・・・さんはもういない。僕が・・・あのときシャトルに無理やり乗せたからさんは・・・。



「気がついた?」


「フレイ・・・。」



視界を遮っていた仕切りがフレイによって開かれる。

そこにはフレイの優しい笑顔があった。起き上がろうと体を持ち上げると体に痛みが走る。



「あ、駄目よ。いきなり起きちゃ。」



フレイが僕の体を支えて、もう一度僕をベットに横たえる。



「ここって・・・。」



仕切りが取り払われて、視界がクリアになったのであたりを見回してみると

見覚えがない場所だった。トリィが部屋の中を旋回している。



「艦の医務室。キラ、着艦したときにはもう意識がなかったって言うから。
 覚えてないんでしょ?」


「あ・・・じゃぁ、ここは・・・。」


「地球よ。砂漠。昨日の夜降りたの。」



・・・そっか。僕の知らないうちにAAは地球に降りたんだ。

僕・・・・AAだけは守れたんだ。

穏やかな笑みを浮かべていたフレイから視線をそらし、僕は無機質な天井を見上げた。



「そうだ、キラ。ゆっくりでいいから起きれる?」


「うん?」



フレイに視線をむけて僕は首をかしげながらゆっくりと起き上がった。

そして、フレイに手を差し出されて、その手をとって僕はベットから立ち上がる。

一瞬めまいがしたが、なんとかソレをやり過ごすと倦怠感はあるものの動けないというわけではなかった。



「キラ、部屋変わったのよ。案内するわ。昼食もそっちで食べましょう?」


「え・・・?」



不思議そうな声を出す僕にフレイは華やかに微笑んだ。



「ハルバートン准将のご好意でみんな一つずつ階級が上がったの。
 キラは少尉だから、一人部屋よ。」


「・・・そうなんだ。」



感想がそれしか浮かばなかった。

嬉しくもないし、いやだとも思わない。

ただ、そうなんだと事実を受け入れるだけだ。

フレイに連れてこられた部屋は以前までさんが使っていた部屋の隣だった。

隣の部屋を見て涙が寸前までこみ上げてくる。・・・今ここで泣いちゃ駄目だ。

扉を開けてフレイは先に中に入り、僕を中に促した。



「座って、キラ。」


「・・・ありがとう。」



椅子を引いてもらったのでお礼を言ってからそこに座ると目の前に食事のトレーをおかれて

フレイは僕の目の前に座った。



「・・・食べられる?」


「うん、多分大丈夫だよ。」



しかしスプーンを口に運んで、食べものをかみ締めてみるが

それを4,5回繰り返した時点ですでに胃は食べ物を受け付けなくなっていた。

食欲がないのかもしれない。



「・・・キラ?」


「大丈夫だよ、フレイ。もうお腹一杯なだけだから。」



いきなりたくさん食べると危険だから体がセーブしているのかも知れない。

眉を下げて心配そうに僕の顔を覗き込んでくるフレイに対して、僕は笑みを浮かべた。



「そう・・・まだ起きたばかりだしね。
 ・・・・あ、私お水とって来るわ。」


「うん、ありがとう。」



フレイはにっこりと微笑み、僕の分とフレイの分のトレイをもって部屋を出た。

僕はソレを見送ってからベットに横たわる。

この部屋は食堂から少し離れた位置にあるためフレイはすぐには帰ってこないだろう。

さん・・・僕を恨んでいるだろうか。

瞳を閉じる、僕の頭の上にトリィがのった。意識が少し遠のいていく。

しかし、部屋の扉が開いて僕はゆるゆると瞳をあけた。



「キラ?」


「フレイ・・・。」



目に映る燃えるような赤い髪。

僕は力なく微笑んだ。



「まだ眠いの?」


「・・・わからない。」


「・・・そう。とりあえずシャワー浴びてきたら?
 寝汗で体気持ち悪いでしょ?」


「うん・・・。」



体を起こしてフレイから水を受け取って、それを口に含んでから僕はベットから立ち上がった。



「あ、フレイ・・・。ありがとう。ずっとついててくれたんでしょ?」


「そんなのいいのよ。キラは私を守ってくれたんだから。」



華やかな笑みに僕は苦笑を漏らして着替えを取り、フレイのほうを向く。

フレイの事は守れたんだ・・・。



「フレイも休んで。・・・僕は大丈夫だから。」


「・・・わかったわ。」



二人で部屋をでて、別々の方向へ歩き出す。

僕はシャワールームに向かい、服を脱いでから頭からお湯をかぶった。

・・・確かに寝汗をじっとりとかいて気持ち悪い。

壁に手をついて視線を落とす。



―キラは私を守ってくれたんだから。



・・・フレイは守れた。しかし・・・多くの人の命を守れなかった。

夢の中でさんは僕は恨むといった。もしかするとアレは本当の事かもしれない。

あと・・・僕にできること。



「・・・もう誰も死なせない。」



AAは守りきってみせる。もう・・・誰も死なせない。

そう考えると鼻の奥がつんと痛くなって、喉に何かがこみ上げてきた。



「・・・っ!」



いろいろあって考える暇が無くて、今更ながらにさんはもういないのだと再び実感する。

頬に流れるものがシャワーの水なのか自分の涙なのか分からない。

ただ、心が痛い。だから僕は泣いてるんだと思う。

やっとさんの事が好きだと自覚したのに。すぐに離れてしまった。

僕が無理やりシャトルに乗せたばっかりに。



「・・・あ、返事聞いてない。」



返事を期待していった言葉ではない。

だが、今となってはそれも気にかかる。



さ・・・ん・・・ごめ・・・んな・・・さい・・・。」



僕は声を押し殺して泣きながら、壁に頭を押し付けた。

僕の罪は許されることは無いだろう。

誰が許しても・・・この僕自身が許さない。






◆◆◆






シャワーを浴び終わって、部屋にもどりトリィを手に乗せていると

部屋の中に呼び出し音がかかる。



「キラ?」


「はい。」



扉が開いてそこにたっていたのはフレイだった。



「これ、整備の人に渡してくれって頼まれたんだけど。」



トリィが僕の手の中から飛び立った。

何か整備の人から渡されるものなんてあっただろうか?

僕は首をかしげてフレイのほうをみやった。



「ストライクのコックピットにあったからキラのだろって。」


「!?」



目の高さまでフレイがあげたものに僕は目を見開いてそれを凝視した。

・・・折り紙の花。

あのシャトルの乗っていた少女が僕にくれたものだ。



―まもってくれてありがとう。



そう微笑んで渡されたもの。喉が震える。

デュエルのビームライフルによって貫かれ宇宙に散った命。

その状況が鮮明に頭の中によみがえる。

手を伸ばしても届かない。僕が守れなかった人たち。

・・・そしてさんも・・・・!


息が上手く吸えない。なにも考えたくない。



「・・・キラ?」



フレイが不思議そうに小首をかしげて僕の名前を呼んだ。

僕ははっと気がつき、平静を装ってフレイに笑顔をむけ、ベットからたちあがる。



「ありが・・・。」



折り紙の花を受け取りながらそういう。

駄目だ、いくら平静を装うとしても声が震える。

僕はフレイに背を向けて、花を胸の中に抱え込んだ。

・・・・ごめんなさい・・・僕は守れなかった。



「キラ・・・!どうしたの?」



フレイが心配そうに僕の顔を覗き込んできたが、僕は顔をそらす。

涙が流れそうでそれをこらえるために瞳を硬く閉じた。

でも意味は無く、頬に涙が伝った。

それを境に言葉が次々とあふれ出る。とどめておくには心が痛すぎる。



・・・さん・・・も!!あの子もっ・・・!僕は!!守れなかっ・・・!!
 さ・・・んを・・・殺し・・・たのは・・・ぼ・・・くだ!!」



痛い。言葉にしてみるとソレはさらに僕の心に食い込んでくる。

心が痛すぎて。耐えることなどできなくて。

僕は膝を折って床に座り込んだ。

嗚咽交じりの声が漏れる。肩が震えた。



「キラ!」



フレイが僕の前に回りこんで、僕を肩を優しく手で包み込んだ。

涙がとどめなく流れた。



「僕はっ・・・!!」


「キラ・・・。」



フレイは両手を僕の頭と頬に添えて優しく声を掛ける。

温かい・・・・また・・・僕は誰かに甘えてしまう?



「私がいるわ。・・・・大丈夫。私がいるから。」



僕はフレイを守ることができた。そういって慰めてくれる。

フレイが優しく頬をなぜてくれるので、僕は涙をとどめることができない。

顔を上げてフレイの顔を見るとフレイは優しく微笑んだ。

僕は自分で自分自身を抱きしめて、一度硬く目を閉じてフレイに抱きつき、そのまま涙を流した。



「・・・大丈夫。私の思いが・・・あなたを守るから・・・。」



フレイは僕と額を合わせて間近で瞳を覗き込んだ。

視線を合わせると、フレイは目を閉じて僕に唇を重ねた。

僕は目を見開いたが、次の瞬間には目を閉じる。

・・・甘えている。それは痛いほど分かっている。

守れなかった人たちの分まで・・・フレイを守る。

それが償いにならないとしても・・・。

僕とフレイはそのままベットに移動して、キスを交わした。

フレイは僕に覆いかぶさる。



「フレイ・・・?」


「大丈夫。怖がらないで。」



一瞬、躊躇したものの僕は目を閉じてそのまま身をゆだねた。

僕は・・・よりかかる場所がないと生きていけないのだろうか。

・・・さん、こんな僕を許してください。

わがままだけど、お願いです。

こんな僕を。









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2006/03/07


あとがき

むしろ私が許してください(ぇ)
もはや夢小説じゃありません。主人公出てこないよ!
や、一応空想の中で出てきてますが、偽者ですからね^^;
主人公さんあんなこといいません。キラ様の罪の意識からです。
キラ様は散々悩んでくれればいいと思う。