真っ黒な世界から意識が浮上して、瞳をあけるとそこには真っ白な高い天井が広がっていた。
そして、次に目に入ったのは日の光のような強い金髪を持った、美術品のように信じられないほど整った顔だった。
「カ・・イ・・・。」
俺の声にカイは本に落としていた視線を俺に向けて柔らかく微笑んだ。
「おはよう・・・。」
「・・・っ!」
あまりにその言葉が日常過ぎて、俺は嬉しくて涙が出そうになる。
瞳をゆがめてから俺は微笑むとカイは小さく首をかしげた。
「泣いたら?」
優しい笑顔で髪を優しくなぜられて折角押しとどめていたというのに俺はその弾みで涙を流した。
涙の鍵を一度開けてしまうとそれはとどまることを知らない。
起き上がろうとしても、体には力が入らなくてただ頭をなぜてくれている手を強くつかんだ。
それにやれやれとでもいうようにカイは眉を下げて、俺に覆いかぶさるように抱きしめて髪をなぜる。
まるでそれが親のようで温かさで俺の感情はさらに高まり、声を上げて涙を流した。
「・・・まったくいつから泣いてなかったの?」
あきれたような顔でそういわれて以前いつ泣いたかを思い出そうとするが、
なかなかそこにたどり着かない。しかし、ある場面を思い出して俺は嗚咽を漏らしながら呟いた。
「・・・カイ・・・た・・・ちと別・・・れ・・・たと・・・き・・・。」
「それあほでしょ、。」
クスクスと笑いながらカイは俺から離れる。そのときにふと香る鉄の臭い。
今まで気づかなかったが、カイからは血のにおいがする。
俺がZAFT抜けてから暗部に所属したということは聞いていたけど
もしかして、ソレって俺のせいなんだろうか・・・?
不安げな瞳でカイを見上げると、カイは悪戯気な笑みを浮かべて俺の額を人差し指で押した。
「なーに考えてんの?
にしても・・・本当は甘えたで泣き虫なくせに、無理しちゃ駄目じゃない?」
「そんなことっ・・・!」
「顔に出てるよ。」
「っ・・・!」
カイが楽しそうに笑い、俺は恥ずかしくなって顔を染めた。
確かにキラが・・・年下の子達が兵士として頑張っていて、俺が支えなきゃ。ってそう思って。
甘えるなんて・・・そんなことできなかった。俺自身がソレを良しとしなかった。
しかも俺がいた場所は地球軍ですべてを預けて泣ける場所なんて・・・無かった。
フラガ大尉には確かに気を許していたのだけれども、彼もすべてを知っているわけではない。
「それにしても、も無茶するよねー。
あんなポッドで降りてくるなんて、連絡受けたとき僕信じられなかったし。」
そういわれて、俺ははたとあることに気がつく。
「俺と一緒に乗ってた子は!?あ、そういえばここはどこ?」
カイは苦笑気味に微笑んで窓の外を見た。
外は少し薄暗い。夜明け前といったところだろうか。
「見える?・・・砂漠。」
「あ・・・。」
窓の外にはどこまで続くかわからないような一面の砂漠が広がっていた。
現在カイが白のZAFTの隊長服を着ていることから考えるとここはZAFTの施設内ということになる。
そして、俺の事情を分かっててその上でカイに連絡できる人。
「アンディ・・・の基地?」
「そう当たり。アンディは残念ながら趣味の悪い遊びに行ってるから
今はいないけどじきに合えるよ。」
「そっか・・・。」
「あ、それと・・・あのポッドの中の温度知ってる?」
「・・・?」
「ナチュラルならまず生きられないだろうね。」
「そんなっ・・・!?」
じゃあ・・・あの子は・・・・死んだ?
再び目の端に涙が溜まる。俺、あの子の事守れなかった・・・?
しかし、カイは苦笑をもらして、俺の頭をなぜた。
「そんな顔しないで。・・・生きてるよ、ちゃんと。」
「!」
「あの子、コーディネーターとナチュラルのハーフだったみたい。珍しいよねー。
あ、フィーちゃんが見てくれてるから。今はまだ気失ってるけど命に別状は無いって。」
「・・・よかった。・・・フィーラも来てるんだ。」
「・・・僕が呼ばれたの、フィーちゃん連れてくるためだったんだけど。」
「・・・。」
カイは少しむくれて、どかっと椅子の背もたれに背を預けた。
そして、頭をふって金の髪を揺らし、深緑の瞳を俺に向けた。
「ZAFT一の医療技術が必要でしかも公にできない人の治療だからー。
ってアンディに呼ばれてさ。まぁ、勘でだろうって分かったんだけど・・・。」
カイはちらりと僕をみてから腕組みをして、わざとらしくため息をついてみせた。
「ソレからが大変。僕の仕事、軍のシステム弄って
無理やりこの辺りにターゲットがいることにして降下して来たんだけど
降下した後にまた新しい仕事が入って、本当にこの辺りで二人一組の仕事することになって、
フィーちゃんをこっちおいて僕一人で二人分片付けてきたってわけです。
感謝してよね?君と・・・特にあの男の子。フィーちゃんじゃなかったら危なかったんだから。」
副官は基本的に隊長と行動を共にする。
つまりフィーラが降りるにはカイが降りる必要もあったらしい。
「あり・・・がとう・・・。」
「いいえー。」
人差し指で額を押されて俺は目を見開きながらお礼をいうとカイはにっこりと微笑んだ。
「まぁ、僕も君に会いたかったことだしね。本当久しぶりだね。」
「うん・・・。久しぶり。あえて嬉しいよ・・・カイ。」
「もー・・・は相変わらず可愛いんだから。
あ、そーだ。。僕の暗示破ったでしょ?」
「え・・・?」
「種割れしたでしょ?」
「種割れ?」
小首を傾げて言われた言葉に俺はきょとんとして見せた。
聞きなれない単語だ、種割れってなに?
「君がスイッチっていってたやつ。
マルキオ導師に聞いたところ種が割れるっていうらしいよ。略して種割れ。」
「あ・・・。」
スイッチを入れようとしたらカイの声が邪魔をしてソレを阻まれていた。
アレは暗示だったのか・・・。
そういえばこの友人は小さい頃から催眠術とかそういった類にも長けていた気がする。
「君が自分のしたことをせめて壊れないように・・・
終わった後につらいだろうって思って、暗示かけてたのに壊すなんてねー。」
「うん・・・。」
カイなりの思いやり。
それを裏切ってしまった事に罪悪感も覚えるが、同時にアレでよかったのだと思う。
そうでなければ俺はキラを守れなかった。
「あ、新しく暗示かけといたから。」
「!?・・・いらないよ、カイ・・・。」
「んー・・・まぁそういわないで。このまえのは種割れをただ押さえるものだったけど、
今回は闘争本能をの制御できる範囲内に抑えるものだから。
・・・力、必要なんでしょ?」
「・・・うん。」
守りたい人たちができた。特にキラ。お互い守って、守られて。
微笑んで頷くと、カイは柔らかく笑顔を浮かべて再び俺の頭をなぜた。
「・・・まったくいい顔して・・・恋でもした?AAに可愛い女の子とかいたの?」
「!?」
まずカイがAAに俺がいたことを知っていたことに驚いたが
この友人はすべて見通しているようなところがあるので、それはまぁいい。
それより・・・俺が恋?
一瞬あせったということは微妙に心当たりがあるということでソレは間違えなくキラの事だと思う。
でも、あれは好き?・・・女の子にもつ恋愛感情のようなもの?
「・・・カイ。・・・好・・・き・・・ってどんな気持ち・・・?」
小さな俺の言葉にカイは一瞬目を見開いたものの穏やかに微笑んでみせた。
「そーか。奥手の君がついに恋に芽生えたか。」
「そんなっ!まだ、俺、好きかどうかわかんなくて、むしろ弟かな・・・って。」
「弟・・・相手、男なの?」
「しまっ・・・!?」
慌てて口を覆うものの時すでに遅し、てっきり反対するかと思ったがカイはただ妖艶な笑みを浮かべただけだった。
「ふふっ。相手が同姓だろうが好きになるのはいいことだよ。
僕はなんであろうと君の味方をするから。
・・・んー、好きねぇ・・・。そうだなぁ・・・。」
カイは人差し指であごをトントンと叩いて目線を斜め上に上げた。
「人それぞれだと思うんだけど・・・ある日突然、どうしようもなく好きだー!って自覚すると思うよ。
まぁ、僕の場合は独占したいって思うけど・・・・
そうだなぁ・・・例えばずっと傍にいたいとか、傍にいなくてもどこかで生きていてくれればそれで良いとか、いろいろ。」
「・・・傍に・・・。」
キラの顔を思い浮かべる。そうだ俺は彼の傍にいたい。俺の事すべて受け入れてもらいたい。
そしてキラの事を考えると胸が締め付けられるように思う。
・・・・あぁ、これなのか。好きという感情は。
いつの間にか伏せていた瞳をあけると微笑んでいたカイと目線があった。
「まとまった?」
「うん・・・。」
・・・俺はキラの事が好きだ。
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2006/03/08
あとがき
主人公さん御自覚なさったの回。好きって概念は人それぞれだと思います。
私は主人公さんと同じタイプ・・・だと思う。
カイさんがー・・・勝手に出てくる。
あんまり出さないように気をつけてるのにめちゃくちゃ出張る。なぜだ。