どこまでも続く砂漠のなかで静かにたたずむ白い大天使。

ただ何にも妨げられず。静かに、静かに。

砂丘の陰からひとのみにしようと敵が牙をむいているのにも気付かずに。

そんな様子を見て俺は思わず口元に笑みがのぼらせた。



「どうかなー?うわさの大天使の様子は?」


「はっ。依然何の動きもありません。」



双眼鏡を覗き込んでいた赤髪の部下は俺に視線を向ける。



「地上はNジャマーの影響で電波状況が無茶苦茶だからなー。
 彼女はいまだすやすやとお休み・・・か。」



そう、気づかなくていい。奇襲だからこそ面白い反応が見れる。

先日、俺のところにやってきた友人が今まで乗っていたもの。

あのクルーゼでさえ落とせなかった艦。とても面白い素材だ。

俺は満足げに微笑んで、コーヒーを口に含んだ。



「ん・・・?」


「っ!何かっ!?」


「いやっ・・・今回はモカモタリを5パーセント減らしてみたんだがねー。
 これはいいな。」



俺の言葉に急いで双眼鏡を再び覗き込む部下に嬉しい発見を告げると

部下はあっけにとられたような顔つきになった。

ダコスタは根が真面目で面白い。

・・・いや本来俺がおかしいのか?まぁ、それはどうでもいい。

戦場ではずっと緊張の糸を張り詰めてるんだからたまには緩めてやることも大切だ。

俺がとめてある車の方向に歩き出すとダコスタもソレに続く。

少し遠めにバクゥと待機している部下達の姿が認められた。

俺はダコスタのほうへ空になったカップを投げやる。後ろで驚いたような声とちゃんと受け取った音が聞こえた。



(ナイスキャッチだ、ダコスタ)



コートのポケットに手を突っ込んで、整列している兵士達の前に立った。



「ではこれより地球軍新造艦AAに対する作戦を開始する。
 目的は敵艦、及び搭載MSの戦力評価である。」



部下達を見回してみると、どいつもこいつも楽しそうな面をしてやがる。

自分としても部下が楽しそうだと楽しい気分になる。



「倒してはいけないのでありますか?」



部下の一人が冗談交じりに言った言葉に皆、笑みを浮かべる。

俺は小さく首をひねった。



「うーん。まぁそのときはそのときだがぁ・・・・。アレはついにクルーゼ隊が仕留められず
 ハルバートンの第8艦隊がその身を犠牲にしてまで地上に降ろした艦だぞ?
 ソレを忘れるな。・・・・一応な。」



うちの部下は血の気が多い。それもとても気に入っている。

部下を信頼しているし、地上ではクルーゼ隊に劣っているという気はしない。

そして、今あの艦にははいない。戦力が落ちているのは確実だ。

俺は緩めていた表情を再び引き締めた。



「では、諸君の無事と健闘を祈る。」



一様に部下達は敬礼をしたので俺もそれに答えてから車のほうに向かうと

ダコスタがパイロットたちにトバクゥに搭乗の指示をだした。

バクゥとヘリが動き出す。その状況に満足して俺は車に乗り込み腕を組んだ。



「うぅん。コーヒーが旨いと気分がいい。さぁ・・・戦争をしにいくぞ。」



俺は口元に笑みを上らせた。

車が動き出すと同時に無線がなり、ダコスタはソレをとると一瞬慌てたような表情になってから

いろいろと話してから俺に受話器を差し出した。



「ん?誰だ?」


「・・・ヒプノウシス隊長です。」


「・・・。」



きっとあいつのことだからダコスタをからかったんだろう。

小さくため息をついて俺は受話器を受け取った。



「俺だ。」


『あー。アンディ?今大丈夫?』



受話器から低くも高くも無い中性的な耳障りのよい声が漏れた。

その声は聞き知ったソレだ。



「あぁ。まだ・・・な。」


『ふぅん。じゃぁ手短に言うよ。
 、起きたから。アンディに会いたくて仕方ないって。』


『なっ!?カイ!!俺はそんなこと!!』



カイより少し低めの聞くに心地よい声が漏れる。

俺はそのやり取りがおかしくて俺は思わず笑った。

それに笑い返す声があってさらに後ろでが怒っているような声が聞こえる。

思ったより元気そうで安心した。砂漠でポッドを見つけたときは正直大丈夫かと心配したのだ。



「カイ。には代わってくれないのか?」


『はっ。甘いよ、アンディ。僕がそんなに優しいことすると思うの?』


「うーん。そうだなぁ。君は場合によりけりだな。」


『あはは、当たりだね。だけど、今日は駄目。帰ってきてか――って!』


『ごめんね、アンディ。』


か。」



申し訳なさそうな声が受話器から漏れて俺は笑みを漏らした。

どうやら受話器を奪い取ったらしい。

最後に会ったときから本当に変わっていない声。



『俺の事は気にしなくていいから、作戦に集中して?』


「あぁ。」


『あ・・・それとお願いAAは――』


。」


『?』


「俺はZAFTなんだけどな。」


『うん・・・ごめん。じゃぁもう切るね。』


「あぁ、また後で。」



悲しそうな声。AAには手を出して欲しくないというのだろう。

は優しい人間だからAAに滞在している間にあの艦の人間と仲良くなってしまって、もすうでに敵としては見れないのだろう。

だが、俺はZAFTであって地球軍所属のAAは敵なのだ。

いくらの頼みであろうとAAを撃つなということは聞き入れられない。

世間はそんなに甘くない。



「じゃぁ、まずはご挨拶と行くか。」



俺はダコスタにそう告げる。

レセップスがレーザーの標準をAAにむけた。

さぁ・・・が抜けてもいかほどのものか力を見せてもらおうか。

ミサイルを放つとAAも弾幕を張って応戦しだす。



「うーん・・・なかなかいい武装だな。」



双眼鏡で覗きながらそうつぶやく。

おそらくあちらにこちらの位置は分からないだろう。

砂漠には砂漠の戦いがある。



「よぉし、始めよう。」


「航空隊射、攻撃開始。」



ヘリがAAのほうに向かう。ミサイルを放ちそのまま砂丘の陰へ。

そのうち母艦で対処するにも限界がくるだろう。

そうすればMSを出さざるを得なくなる。

この目で見てみたい。クルーゼ隊のトップガンですら落とせなかったMSを。

しばらくすると予想通り、ランチャーらしきものを装備したMSがAAから発進させられた。

それは灰色の機体だったが次の瞬間には白と赤と青の装甲に変わる。

どうやらあれが噂のPS装甲らしい。

だが、ヘリがミサイルで攻撃すると、なす術なくただ砂に沈んでいく。

宇宙での戦闘とここでの戦闘は違う。俺は口元に笑みを上らせた。なかなか面白い。



「出てきました!あれがX-105 ストライクですね」



ダコスタが双眼鏡を覗きながらそういう。



「バクゥをだせ。反応を見たい。」



バクゥが砂丘の陰からストライクに飛び掛る。

ストライクはそのまま後ろに倒れた。

この砂漠では人型よりも獣型のほうが明らかに有利だ。

ストライクがランチャーをはなつ。報告どおりなかなかすごい威力。

あたるとやばいかもしれないが、俺の部下達は難なくソレを避ける。



(・・・がいなければこの程度か。)



ならば沈めてしまえるかもしれない。砂漠の塵と化させようか?

そう思っていると、さすがにあちらもヤバイと思ったのかスイッチハマーをうってくる。

双眼鏡で覗いてみるとそれはバクゥにはあたらずストライクにあたった。



「あーあー。パイロットに優しくない指揮官だなぁ。
 それとも・・・信頼しているのか?」



バクゥは引き続き攻撃を仕掛ける。

ストライクもこのままではいけないと思ったのか、飛び上がった状態からランチャーを放った。

なかなかいい腕をしている。だが、あんな攻撃ではうちの部下はやられない。

着陸して膝を追った瞬間をねらいバクゥはストライクに攻撃を仕掛けた。



「確かにいいMSだ。パイロットの腕もそう悪くは無い。 
 ・・・が、所詮人型。この砂漠でバクゥには勝てん。」



よほどのことが無い限りあちらに勝機は無い。こちらの勝ちだろう。

再びストライクが飛び上がる。



(・・・何度も同じ事を・・・)



そろそろ幕引きだろうか。

しかし、そう思った瞬間にストライクは砂に沈むことなく着地した。



「!」



まさかあの飛び上がった瞬間にプログラムを書き換えたのか・・・?

飛び掛るバクゥにストライクは膝蹴りを食らわせる。

俺は目を見開いた。これは一体どういうことだ?

突然ストライクの動きがよくなるなんて・・・本当にあれはナチュラルか?

もう一方から飛び掛ってきたバクゥをランチャーで殴ると、そのまま足でバクゥを押さえつけて間近でランチャーを放射した。



「メイラム・・・!この短時間で運動プログラムを砂地に対応させた・・・・あれが本当にナチュラルか・・・?」



燃え盛る火の中にたつストライク。

あれは危険な存在だと本能が訴える。

・・・悪いがアレを生かしておくわけにはいかないな。



「レセップスに打電だ。主砲で敵艦を攻撃させろ。」



バクゥからの攻撃をストライクはバルカンで打ち落としていく。

見れば見るほどナチュラルだなんて思えない。

・・・これは後でに聞いてみなければならないな。

レセップスからの攻撃がAAに命中する。AAが動き出した。

宇宙でも地上でも飛べるとは・・・あれもいい艦だ。ただ敵であるなら邪魔なだけ。



「ん・・・?」



AAから一機のMAが発射される。

頭の中にある情報と照らし合わせてみるが、覚えが無い。



「報告には無かった機体だな・・・。」



宇宙で第8艦隊と接触したということだから、そのときに搬入したのかもしれない。

報告にない分、どんなものか分からないから少々厄介だ。

レセップスから第2派が放たれると、ストライクはバルカンで砂塵をおこしそのまま飛び上がる。

そしてソレを予想し飛び掛ってきたバクゥを殴りつけ、そのままレセップスからのミサイルに当てた。

ストライクはランチャーを放って、それを見事にミサイルに当ててすべて落としてしまう。



「・・・!」



パイロットがコーディネーターであることは間違いない。

あんなコントロールナチュラルができるはずが無い。

いや・・・コーディネーターでも難しい。・・・なんなんだ、一体。



「確かにとんでもないやつのようだが・・・
 情報ではそろそろパワーダウンのはずだ。」



報告書を見ながら俺は呟く。がいなくともこの戦力。

これにが加わるとなるとクルーゼ隊が落とせなかったことも頷ける。

・・・ZAFTにとってあのMSとパイロットは脅威だ。



「悪いが沈めさせてもらう・・・メイラムの敵だ!」



陽気な部下の顔を思い浮かべる。メイラムのほかにも信頼していた部下を失った。

彼が死んだのに、あのパイロットを生かしておけるものか。

ヘリとバクゥがストライクを取り囲む。さぁ、終焉だ。

しかし、そのときあらぬ方向からひとつのミサイルが放射され、ヘリに当たって爆発した。



「!」



驚いてそちらの方向を向いてみると、いくつかの車がこちらに向かってくる。

何発も続けてミサイルを発射するその車。

見覚えがあるアレは・・・。

ひとつの車がストライクの横に着けた。何をするつもりだ?



「隊長!”明けの砂漠”のやつらです!」



ZAFTと敵対しているレジスタンスの名前を挙げられ俺は小さく舌打ちをした。

まったく、厄介なときに。



「地球軍のMSを助けるつもりか?」



あのレジスタンスはZAFTには明らかに抵抗していたが、

地球軍とも手を組んではいなかったはずだ。それがなぜ?

ストライクが動き出し、バクゥがソレを追う。



「・・・?」



なんだろう、なぜかいやな予感がする。

しばらくして、少し遠くで大きな爆発が起こった。

おそらくレジスタンスが仕掛けていたもの。どうやらしてやられたらしい。

まるで部下達の悲鳴が聞こえてくるようだ。

あの時追うなといっておけば・・・。俺は双眼鏡を下げて、顔を引き締めた。

これ以上追撃しても意味は無い。



(・・・お前達の命、無駄にはしない)



「撤収する。この戦闘の目的は達成した。残存部隊をまとめろ。」


「了解!」



ひとまず撤収。

・・・一つ分かった。あれは敵である以上落とさなければいけない。

死んでいった部下達のためにもそう決意した。









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2006/03/09


あとがき

毎度のごとく名前の変換少なすぎるかもしれない・・・。
タイトルそのまま砂漠の虎にしてみました。
視点が虎さんだからねぇ。