砂漠の虎の本拠地である町に来てAAからの買出し。
メモを片手に様々な店を回りに回って、今ようやくひと段落着いたところ。
キラなんてもうこれ以上持てないんじゃないかと思うほどの荷物を持っている。
ここは賑やかで活気に溢れていて。
ぱっと見、とても砂漠の虎の本拠地だなんて思えない。
だけど逆らえば殺される。従うしかない。
裏側はやはり恐怖政治。
こんなに表は平和そうなのに裏では武力が支配している。そんな町。
「これで大体そろったな。
・・・・このフレイってやつの無茶だぞ。
エリザイの乳液だの、化粧水だの・・・。」
私はメモから目を上げて町を見回した。
砂が巻き散るこの土地。
生活必需品はあってもそういった贅沢な品物はほとんど無いに等しい。
「こんなところにあるもんか。」
「おまたせねー。」
男性にしては少し高めの声とともに、私とキラの目の前にコトリと音をさせて皿が置かれる。
キラがそれを不思議そうな瞳で見つめた。
「なに・・・これ?」
「ドーネルケバブさ。あー。疲れたし、腹も減った。」
ケバブから漂ってくる匂いをかいで、自然と顔がほころぶ。
美味しいものが食べれることはとても幸せなことだ。
「さぁ、お前も喰えよ。このチリソースをかけ―」
「あいよ!待ったぁ!ちょっと待ったぁ!!」
その声が自分たちにかけられていると気付き、驚いて視線を上げると
そこには派手なアロハシャツを着たいかにも怪しいサングラスの男がいた。
「ケバブにチリソースなんて何をいってるんだ。このヨーグルトソースをかけるのが常識だろうが。」
男はヨーグルトソースの入った容器を持ちそう高らかに言い放つ。
私はその物言いが頭にきて、眉を顰める。
「いや、常識というよりも・・・んぁ・・・そう!
ヨーグルトソースをかけないなんてこの料理に対する冒涜だよ!」
その意味の分からないケバブについての説教に
私はチリソースの容器を握り締めたまま乱暴に言葉を投げた。
「なんなんだ、お前は!」
意味の分からない男を無視してチリソースをケバブに遠慮ナシにかけると
男からあぁっ!と驚愕の声が上がった。
「見ず知らずの男に私の食べ方をとやかく言われる筋合いはない!」
チリソースの容器を机にガンっと音を立てておき、ケバブを包み込んでそのままほおばる。
口の中に広がる、少しピリッとした感覚。ケバブはやはりこうでないといけない。
「あぁ、なんという・・・!」
まるで世界の終わりだと言うかのように男は目をそむけて頭に手をやる。
しかしケバブにはなんといってもチリソースだ。ヨーグルトソースなんて邪道。
「うまぁいー!ほら、お前もケバブにはチリソースが当たり前だ!」
「あぁ、待ちたまえ!彼まで邪道に落とす気か!?」
「何をするんだ!?」
キラにチリソースの容器を突き出すと、男も対抗するようにヨーグルトソースを突き出した。
何が邪道だ。むしろそっちが邪道だろうが。
決めた。この男には絶対に譲らない。
「お前はひっこんでろ!」
「キミこそ何をするんだ!」
相手も譲らない気らしい。ならば先にかけてしまえば手出しはできない。
そう思いチリソースを思いっきりキラのケバブにかけたのだが
相手も同じようなことを考えていたのか同時にヨーグルトソースもかかってしまった。
しまったと想い、キラの様子を伺うとものすごく嫌そうな顔をしていた。
「・・・お前のせいだぞ!?」
「なにぃ!?引かなかったお嬢ちゃんのせいだろ!?」
「なんだと!?」
「・・・あの、もうやめませんか、僕これ食べるんで。」
キラが眉を下げて困ったように微笑みながらそういう。
私と男は顔を見合わせて、無言のままキラに視線を向けた。
この中では一番キラが大人かもしれない。
男は近くから椅子を引っ張ってきて私達のテーブルについた。
「いやぁ、悪かったね。」
「いえ・・・ミックスもなかなか・・・。」
男が大して悪くも思っていないような口ぶりでそう言い
キラはケバブをほおばりながらもお茶でそれを流し込むようにしていった。
眉を下げながら笑っているところを見ると、多分美味しくないのだろうと思う。
「しかし、すごい買い物だねぇ。パーティでもやるの?」
男が椅子にだらーっともたれかかり、荷物を見ながらそういう。
ばれると厄介。ついでにこいつとは速く離れたかったので私は眉間に皺を寄せた。
「っるさいな!大体お前はなんなんだ?
勝手に座り込んであーだこーだと・・・」
「ふせろ!!」
「!?」
突然の真剣な色の声に私は驚いて体が固まる。
目の前で机が蹴り飛ばされ、ケバブのチリソースが私にかかってきた。
その次にキラが飛んできて私をかばうように腕の中に入れる。
近くで響く爆発音。一体何が起こった?
銃撃音が聞こえそちらに視線を向けると3,4人の男がこちらに向かって走ってくるところだった。
「無事かー?キミ達?」
こんな状況だというのにわりと呑気な声で男はそう言いながら
護身銃にしては随分と大きな銃を取り出した。
「な、なんなんだ?一体!」
あたりを見てみると先程まで普通にケバブを頬張っていた客達が
銃で男達に応戦している。しかもその動きは明らかに一般市民のものではない。
どこか計画的にさえ見える。
「死ねぇ!コーディネーター!!空の化け物め!!」
「青き正常なる世界のために!!」
その言葉に聞き覚えがあって私は小さくしたうちをした。
厄介な相手だ。コーディネーターは敵だと言い張る過激派。
「ブルーコスモスか!」
私のその言葉を聞いて、男が頷いてから立ち上がり銃で応戦する。
「構わん!全て排除しろ!!」
近くで男が撃たれ、銃が此方に転がってくる。
キラが少し視線をあたりにやり、その銃を取りに走った。
何をするのかと驚きながらも見ていると彼は軽い身のこなしで銃をとり
そのまま隣にいる変な男を狙っていた男に投げつけた。
そして、走ってそいつをけりとばす。
「よし!終わったか?」
やはり計画的な響きを受ける。
とりあえず立ち上がりキラの元へ行く途中、彼が蹴り飛ばした男が止めを刺され
彼は目をそらしてどこかいたそうな表情をした。
「お前、銃の使い方知ってるか?」
そういうと少し鋭い目つきで此方を見られる。
私はそれ以上何もいえないが、今は少し急を要することがある。
変な男の方に視線をやるとキラもそちらをむいた。
「それにしても・・・。」
「隊長!ご無事で!?」
緑の軍服を着た男が変な男に近寄ってそういう。
隊長?コーディネーターで多分ZAFT。そして隊長・・・?
まさか・・・?
「あぁ。私は平気だ。彼のおかげでな。」
男はそう言いながら私達に視線を向け、帽子とサングラスを外した。
そして現れた顔に私は息を飲む。それは知った顔だった。
「ア、アンドリュー=バルトフェルド・・・。」
「え?」
「砂漠の・・・虎・・・。」
「やぁ、助かったよ、ありがとう。」
男はにこやかに微笑みながら私達に近づいてくる。
「うぅん・・・迷惑を掛けてしまったな。どうだね、キミ達。私のうちに来ないか。」
「は?」
「うん、そうだな。それがいい。おい、ダコスタ君。二人をジープにお連れしろ。」
「!?」
「いえ!結構です!」
「ははは。遠慮なんてしなくていい。さー。行くぞー。」
有無を言わせぬままジープに乗せられ、私とキラは少し戸惑う。
しかしそうこうしているうちにジープは発進し、降りるに降りられない状況になっていた。
私はその場でじっと沈黙して目線を落とす。
この男は私達をただの民間人だと思っているんだろう。
ならば危害を加えられる心配は無いかもしれないが、ばれると厄介だ。
ちらりと前に座っている砂漠の虎に視線を向ける。この男何を考えているのか分からない。
困った。どうすれば良いのかわからない。
「さ、どうぞ。」
「いえ、僕たちは本当にもう・・。」
「いやいやお茶を台無しにした上に助けてもらって。
彼女なんか服ぐちゃぐちゃじゃないの。
それをそのまま返すわけには行かないでしょ?僕としては。」
親切心から行っているのか、はたまた単に気まぐれなのか。
明けの砂漠の仲間達の仇であるこの男。
何を言っても聞きそうに無い。大人しく従ったほうが身のためだろうか?
ここはZAFTの砂漠の虎の本拠地。
もしここでコイツを殺ろうものなら、逃げ場は無い。
砂漠の虎が屋敷の中に入り、私たちは兵に促されて中に入った。
扉を一枚抜けるとそこには黒い髪に金色のメッシュの入った綺麗な人が立っていた。
私達は思わずあっけにとられ口をぽかんと開ける。
「この子ですノ?アンディ?」
どこか舌足らずな言葉。
それに応答して隣の部屋から砂漠の虎の声が聞こえる。
「あぁ、彼女をどうにかしてやってくれ。
チリソースとヨーグルトソースとお茶を被っちまったんだ」
そういわれて、私は凄いものを被ったのだと今更ながらに認識した。
女性が私に近づいてきて顔を覗き込む。
「あらあらケバブねー?」
品定めをするかのような視線で見られコクリと頷かれる。
なんだろう?私としてはこのチリソースとかを落として虎の気が済んだらすぐにも帰りたいのだが。
「さぁ、いらっしゃイ?」
肩を抱かれ私は多分シャワールームへと導かれる。
私がキラのほうを向きながら足を進めると、キラが少し不安そうな顔で私を見た。
「カ、カガリ・・・!」
「大丈夫ヨ。すぐ済むワ。
アンディといっしょにまってテ?」
女性が優しい微笑を浮かべながらキラにそう言い、キラも足を止めた。
「おぉい、キミはこっちだ。」
隣の部屋から虎の声が聞こえキラはそちらに視線を向けた。
キラの姿が私の視界から消え、私は不安になって女性の顔をみた。
女性はにっこりと微笑んで私の顔をのぞき見る。
「私はアイシャよ。よろしくネ?」
「よ、よろしくおねがいします。」
ふふ。と楽しそうに微笑まれて私は苦笑を返す。
「さ、ここヨ。服はそこに入れといテ。洗濯しておくワ。」
シャワールームというよりはバスルームに連れてこられ、
アイシャはそれだけいうと部屋を出て行った。
私はしばらく扉の向こうをみてから、
服を脱いで籠に入れシャワーを頭からかぶった。
バスタブの中にたまるのは赤色の水で
激しくチリソースを被ったらしいということが分かった。
赤い水が透明に変わり、髪の毛のべたべたがなくなってから
バスタブに湯を張りその中に体を浸す。
口元まで浸かり、ぶくぶくと口から空気を吐いて気泡を浮かべる。
一体私は何をしているんだろうか。
みんなの仇である砂漠の虎の住居でこんな呑気にバスタブにつかっているなんて。
じんわりと体があったまってきてバスタブから出て、
用意されていたバスタオルで体を拭いているとアイシャがこちらに戻ってきた。
そして手に持っているものを見て私は目をまるくする。
「そ、それは!?」
「着替えヨ。」
「そんなっ、私は・・!」
「いいかラいいかラ。きっと似合うワ。それにアナタの服は洗濯中だものノ。」
そういわれて私は言葉に詰まる。
そしてアイシャの手にある緑色のドレスに目を向けた。
BACK NEXT
2006/05/13
あとがき
うん。前編。
あまりに長くなったから途中できりました。
もう夢じゃない。
これじゃ書き起こしてるだけだ><
いっその事なくしてしまおうかとおもったのですが
時間かかってるから
すみません。次も主人公さん出てこないんです(待)