「両名とも、無事にジブラルタルに入ったと聞き安堵している。
 先の戦闘ではご苦労だった。」



モニターの向こうで俺達の上官である仮面の男が色のない声でそういう。

安堵しているなんて多分形式上のことなんだろう。

凄い人だとはおもうけど、冷たい人だとも思う。



「死にそうになりましたけど。」



嘲笑とも取れる笑みを浮かべてそういっても、彼は表情を変えない。

しかも視線は俺達とは別の方向を向いている。



「残念ながら、足つきとストライクを仕留めることはできなかったが
 キミらが不本意とはいえ共に降りたのは幸いかもしれん。
 足つきは今後、地球駐留部隊の標的となるだろうな。」



足つきという単語を聞き、後ろでイザークの気配がざわついたのが分かった。



「キミ達も暫くの間、ジブラルタルにとどまり、共に奴らを追ってくれ。
 無論・・・。」



そこで初めてクルーゼ隊長の口元が笑みの形になり、俺達の方向に視線が向いた。



「機会があれば、撃ってくれて構わんよ。」



笑みを残し、モニターがここいら一体の地形図に変わる。

俺は椅子を回転して背後にいるイザークに口の端を上げながら声をかけた。



「宇宙には戻ってくるなってこと?
 俺達に駐留軍と一緒に足つき探して地べたを這いずり回れっていうのかよ」



そういうと、いつも不機嫌そうな顔を更に不機嫌そうにして

彼は目線だけ此方に向けた。

そこから憎悪が読み取れて、俺は不快感を感じ眉をよせる。



「あぁん?」



どうして俺がそんな表情を向けられなければならない。

八つ当たりなのだろうけど、むかつくもんはむかつく。

イザークはもう一度俺を見てから瞳を伏せ、頭に巻いていた包帯を外し始めた。



「おい!?イザーク!!?」



彼の傷は完治していない。

その状態で包帯を外すなど危険以外のなんでもない。

俺は思わず椅子から立ち上がり、イザークに手を伸ばす。

しかし、包帯を外して現れた彼の表情に俺は手を引っ込めた。



「機会があればだと・・・?」



怒りとか憎しみとか。そういった感情でイザークの声が小刻みに震え

目には負の光が宿っている。俺は目を見開き瞳を揺らす。

彼の憎しみは予想以上に強い。



「撃ってやるさ!次こそ必ず・・・!この俺がな!!」


「イザーク・・・。」



今のイザークにはあまり関わりたくないかもしれない。

誰かに助けを求めようとあたりに視線をめぐらせたが、誰も目をあわせようとしなかった。



(なんだよ、それ。)



さて、どうやってイザークをなだめようかとおもった瞬間

緑服の兵士に案内されて黒服が室内に入ってきた。

その服をみて俺は目を丸くする。

始めてみる軍服。副官のそれとはラインの色が違う。



(どこの部隊だ?)



不思議に思い、その人物に視線を移すとその人はにっこりと血のような赤い双眸を緩ませた。

長めの黒髪をもつその青年は俺の姿を認めると、隣にいた緑服の兵士に声を掛け此方に歩み寄ってくる。

イザークもそれに気付いたのかその青年の方を向いた。

ただし瞳に警戒の色を滲ませ、眉間に皺を寄せながら、だが。



「イザーク=ジュール、ディアッカ=エルスマン?」


「あぁ、そうですけど?」



俺は軽く肩を竦めておどけるような調子でそういうと、

その人は此方を向き、くすりと微笑みながらイザークにも視線を向けた。

イザークの眉間に皺が寄る。それと対照的にその人は楽しそうに笑みを深めた。



「どうも虫の居所が悪いみたいだけど・・・まぁ僕も仕事だから我慢してね。
 ヒプノウシス隊副官のフィーラ=クリムズンです。隊長命令によって君たちを迎えに来た。」


「副官・・・?」



副官ときいてイザークが渋々ながらも敬礼をする。変なところで律儀。

その様子をみ、俺も慌てて立ち上がりクリムズン副官に敬礼をした。



「クルーゼ隊所属、イザーク=ジュールであります。」


「同じくディアッカ=エルスマンであります。」


「うん。よろしくね。それで急なんだけど
 君たち今すぐ来て。どうせ荷物とかないでしょ?」


「は?」



本当に急なその用件に俺は口をあんぐりとあける。

イザークは更に機嫌が悪そうな顔になり、クリムズン副官の笑みが更に楽しそうになった。

どうしてここまで正反対なんだこの二人。



「クリムズン副官・・・お言葉ですが自分達は地球残留部隊と共に・・・。」


「それはラウから聞いてるよ。でも、うちの隊長は結構権力があってね。
 君達にはバルトフェルド隊にとりあえず身をおいてもらう事になったから。」


「砂漠の虎の!?」



隊長の事をラウとファーストネームで呼んだ事も驚いたが

それ以上にいろいろと有名な砂漠の虎の元に身をおくことになったということが俺を驚かせた。



「そう。砂漠の虎。それに君たちにも都合がいいはずだよ?
 君たちが追ってきたとか言う・・・・AAも今あそこにいるしね?」


「おい、まじか?それ!?」



AAという単語を聞いて俺は思わず聞き返し、イザークの片眉が跳ね上がる。

クリムズン副官はにっこりと微笑みくるりと踵を返して顔だけをこちらに向けた。



「やっぱりAAには食いついたみたいだね?・・・いこうか?」



イザークが何か言いたげに口を動かすがそれは言葉にならなかったようで

悔しそうに下を向いて小さく舌打ちをした。


プライドが高いイザークにとってはああいう人をからかう人物は苦手なのかもしれない。

でもそういう人に限ってこういうプライドが高い人物をいじるのが大好きだったりする。

・・・イザークにものすごく同情したくなった。

ちなみに俺は結構ああいう人は好きだったりするのだが。


クリムズン副官につれてこられたのはヘリポートで

俺達は止めてあったヘリに乗り込みとりあえず腰をシートに落ち着けた。



「で、なんでヒプノウシス隊長は俺達を呼んでんですか?」



敬語とか苦手だからつぎはぎだらけの言葉になる。

でも一応この人副官ってことだから敬語使わないとあとあと面倒だし。

ま、俺が知らない隊長の隊なんだからたいしたことはないとは思うけど?



「僕と隊長の友達がね、今ちょっと入院してて元気があんまりないんだ。
 で、君達が降りてきてるのラウに聞いて
 もしかして君達にあったら多分元気になるんじゃないかなって思って。」



ヘリがヘリポートを離れていく中でクリムズン副官が

グラスにこぽこぽとよく冷えていそうな水を注ぎながら微笑む。

それを差し出され俺とイザークはおそるおそる受け取った。

実はこんな熱く乾燥した気候は初めてで喉がかなり渇いていたため、

それをためらわず口に含んだ。

喉に冷たい液体が流れ込み、それが胃に到達する感覚を覚える。

なんだか生き返ったような気さえした。



「その・・・副官のご友人というのは自分達の知り合いなのでありますか?」


「あぁ、そうだよ。」



イザークの質問にクリムズン副官はそう云い窓の外に目をやる。

釣られるようにして窓の外に目線をやるとどこまでも砂の大地が広がっていた。



「もうつく。・・・ほらあそこ。」



クリムズン副官がぴたりと窓に人差し指をつけてそう云う。

その指の先には砂漠の中にぽつんと不自然にある街が見えた。


ヘリの高度がどんどんと落ち、ヘリポートにヘリが着地する。

クリムズン副官に導かれて俺とイザークは地に降り立った。

熱い焼けるような風が身を撫ぜる。

眩しい光に目を細め隣の友人を見るとおそらく暑いだろうに

それを我慢してなんでもないかのように装っている顔があった。

妙な所で意地っ張り。でもそれもこの友人の面白いところであるとも思う。


ひとたび室内に入ると、ひんやりとした空気に再び身を包まれた。

入り口で身分証明をしてクリムズン副官についていくとある扉の前で足が止まった。



ー。入るよー。」



俺達の肩がピクリと反応する。

クリムズン副官が俺達の知り合いがいるといった。


なんて名前世の中捜せばいくらでもいるだろうけれども

俺達がしっているは一人しかいない。


信じられないような面持ちでイザークに視線を向けると

イザークもアイスブルーの瞳を大きく見開いていた。


ガチャリと音をさせて扉が開く。

その向こうでベットに上半身だけ起こしていたその人は

柔らかな空気を持つとてもとても綺麗な人。

すこし癖のある銀髪のその人は綺麗なエメラルドグリーンとアイスブルーの瞳をまん丸にして俺達を見ていた。

その人の唇がゆっくりとうごく。



「・・・ディ・・アッカ・・・イ・・・ザーク・・・?」



穏やかな優しい声が耳に届く。

死んだと思っていたのに。

目の前にいるその人は息をしていて、存在していて。

気がつくと俺の体は何も考えずにその人に飛びついていた。



・・・!」


!貴様!!」



驚いたことにイザークも同じことをしていたようでの体に俺達二人はぴったりとくっついていた。

嫌そうな顔一つ見せずには微笑んで俺達の頭を撫ぜる。

そんなところも全く変わっていなくて、は今もなのだと。そう感じられた。

後ろでクリムズン副官が苦笑を漏らしていた。



「ディアッカ、イザーク。嬉しいのはわかるんだけど
 そいつ今、一応病人だから。」



クリムズン副官がを指差しながらそう云うと俺達は慌ててからはなれた。



「わ、わりぃ!!!そのっ・・・体大丈夫か?」


「うん。ありがとう。心配しなくていいよ、ディアッカ。
 それにしても・・・イザークとディアッカはなんでここに?」



さんがきょとんと首をかしげながらクリムズン副官の方を向く。

クリムズン副官が楽しそうにイザークと俺に視線をやりながら微笑んだ。



「うちの隊長さんのご命令。嬉しいでしょ?。」


「・・・うん。」



柔らかくとても穏やかにその綺麗な人は微笑む。


会えたことが嬉しい。


そういってもらえただけでこんなに心が温かくなるような気がするのはなんでだ。

俺がこんなこと思うなんておかしいだろうか?

でももしかしたらこれはこの人がなせる業なのかもしれない。



「久しぶり・・・だね。イザーク、ディアッカ。」


「あぁ。」


「本当だ!貴様・・・!連絡もよこさずによくのこのこと俺達の前に現れたものだ!」



イザークはそう言いながらも声には嬉しさが紛れていて、心なしか目が少し潤んでいるような気もする。

以前あったのは俺達がまだアカデミーを卒業する前で2度目の講師に来てくれたときだったと思う。

今と変わらず相変わらず優しくて、綺麗で、強くて。

憧れの念を抱かなかったやつはいなかったと思う。

あ、でも、イザークは最初対抗心をもってたっけ?



「元気そうで・・・よかった。」



本当に安心したような声でそういわれ俺は肩をすくめる。

どうして素直な反応できないかな、俺は。



・・・も元気そうでなにより。ってわけにはいかないよな。」



俺がそう云うとが困ったように微笑み、イザークの眉間に皺が寄った。

思わぬ再会は俺にとって、とても喜ばしいものだった。




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2006/05/14


あとがき


イザークとディアッカがアンディのところにきたいきさつ(待)
嘘です。ごめんなさい。

久々に夢っぽかった気がする。
オリキャラ出てきてるけど(笑)

ディアッカ偽者ですね、これは。
きっと彼はアホそうに見えて中でいろいろ考えてるんだろうとおもいます。多分。
でも至らない点がディアッカの可愛いところだとは思うのですが、どうですか?(聞くな)

次も多分こっちサイドです。
というか絶対こっちしか書けませんが(ぇ)