「そういえば、アンディのところには行ったの?」



ふとした疑問を俺が口にした瞬間、二人の表情が固まった。

それをみて”行ってないんだ。”と思うのは当然のことで

俺もその結論に容易にたどりついた。



「やべ・・・。」


「まぁ、アンディはそんなに気にしないとは思うけど・・・
 そうだ。俺も行くよ。」



ディアッカがしまったとでも言うように呟いた言葉に小さく首をかしげながらそういうと

イザークが一瞬あっけにとられたような顔をしてからすっと眉間の皺を深くした。



「貴様は病人だろうが!」


「別に大丈夫だけど?もうさして問題ない。あとは体の疲労だけで・・・」


「そこが問題なんだろ!?」


「・・・俺はイザークがなんと言おうが行くから。
 アンディにも会いたいし。」


 
にっこりと微笑みながらそういうと、イザークは両手を体の横で握り締めて唇をかんだ。

ソレを見てディアッカが小さく噴出し、俺に視線を向けた。

イザークが心外そうに眉を顰めて踵を返す。



「勝手にしろ!いくぞ!ディアッカ!!」


「はいはい。ー。行くって。」


「うん。」



お茶らけてディアッカが微笑んで

俺を手招いたので俺は柔らかく笑みを浮かべてソレに続いた。




◆◆◆



外に出ると一陣の風が吹いて、俺たちに砂の嵐をかぶせた。

イザークとディアッカが眼を閉じてソレをやり過ごす。

砂漠に出るのなんて・・・いや、地球の本物の外に出るのなんていつ振りだろうか。

地球に下りてきてからも体調が悪いから駄目だ。とフィーラに止められていたから初めての空だ。

照りつける太陽は肌を焦がしていきそうで俺は目を細めて空から降り注ぐ光を仰いだ。



「うわっ・・・なんだよ、コレ!ひでぇところだな!」



ディアッカがぽつりと感想を漏らす。

フィーラにつれてこられた時は砂塵は吹かなかったのだろうか?

ヘリで連れてこられたとかいう話だけれども

生憎ここのヘリポートがどこにあるかとかは俺が知るはずもない。



「砂漠はその身で知ってこそ。ってね。
 まったく。機体だけ届けるなんて、どんなパイロットかと思ったがね。」


「アンディ。二人が遅れたのは俺の所為だから・・・。」



苦笑を浮かべつつアンディに声をかけると

アンディは小さく肩をすくめ笑みを浮かべてからクルーゼ隊の二人に視線を向けた。



「ま、今回はに免じて見逃そうかねぇ。
 ようこそ、レセップスへ。指揮官のアンドリュー=バルトフェルドだ。」


「失礼いたしました!クルーゼ隊、イザーク=ジュールです。」


「同じくディアッカ=エルスマンです。」



敬礼をした二人に対してアンディとダコスタもZAFT式の敬礼を返した。

こんなところをみると俺は今ZAFTの中にいるってことイヤでも思い知らされる。

帰ってくる予定なんてなかったのに、どんな運命のめぐり合わせかしらないが

俺はいまここに・・・ZAFTにいる。



「空から大変だったな。歓迎する。」


「ありがとうございます。」



その性格の通り真っ直ぐに眼を合わせて敬礼をするイザークをみて

アンディは僅かに微笑んだ。



「戦士が消せる傷を消さないのはそれに誓ったものがあるからかと思うがね。」



一種挑発的ともいえるその言葉にイザークは視線をそらした。

久しぶりに再会した時から気になってはいた。だけど大方の予想はついていた。

きっとあの時キラがつけた傷だ。スイッチ・・・いや種が割れたときのキラが。

俺が視線を斜め下に向けると、ふむ。とアンディが隣で小さく声を漏らす。



「そういわれて視線をそらすのは屈辱の証とでもいうところかな?」


「そんなことより!足つきの動きは!?」


「あの船なら・・・」



アンディの挑発をなんとか流して、イザークは話を違う方向に向ける。

俺の隣から離れていったアンディを見て、俺はディアッカに近づいた。



「ディアッカ・・・イザークの傷って・・・。」


「あぁ、アレはな、足つきのストライクに付けられた傷だ。
 アイツを倒すまでイザークはアレを消さないつもりらしいぜ?」



ディアッカが苦々しげに言葉を吐く。

彼も・・・キラのことを憎んでいる?

戦場だから。戦争だから仕方が無いといえば仕方がないのかもしれない。

命のやり取りがあって、互いを傷つけること。それが戦い。

だけどそう簡単に割り切れるほど感情は簡単ではないようだ。

自然と表情が曇ってくる。



「なるほど・・・同系統の機体だ。あいつとよく似ている。」



アンディのその言葉に俺はふと顔を上げた。

彼の目線の先にはデュエルとバスター。

同系統の機体。それを暗に示すものを感じ俺は一瞬肩を震わせた。

ディアッカがソレに目ざとく気がつき俺に視線を向ける。



「おい大丈夫か、
 やっぱまだ休んでたほうが・・・。」


「大丈夫。・・・平気だから。」



動揺するな。俺が動揺したらディアッカとイザークに不安を与えることになる。

ソレは駄目だ。本来彼らは俺が守るべき対象なんだから。

その俺が彼らの不安の種になってどうする。

俺は瞳を閉じて、息を吐いた。

そして笑みを作ってソレをディアッカに向ける。



「心配しないで。」


「・・・わかった。
 バルトフェルド隊長は既に連合のMSと交戦されたと聞きましたが。」



アンディはMSに向けていた視線を此方に向けた。

瞳を閉じて苦笑じみた笑みを浮かべて見せて小さく首を傾げる。



「あぁ、そうだな。
 僕もクルーゼ隊のことを笑えんよ。」


「隊長!」



その時を狙っていたかのように緑服の兵士がこちらに駆け寄ってきた。



「やつらが動き出しました!」



やつらと聞いて神経が反応する。

現時点で最重要なのはAA。つまりキラのいる艦。

今からアンディたちと交戦?

だけど、駄目だ。表に出しては。

焦る表情を隠して無表情を作り出す。

大丈夫。少なくともイザークとディアッカは気付いていない。

アンディは・・・気付いてるかもしれないけど。



「よしわかった。」



アンディが緑服の兵士に続いて走り出す。

その後を追うようにイザークとディアッカが走り出したので俺もその後に続く。

が、そこで腕を強くつかまれ俺はこけそうになったがなんとか持ちこたえた。



「何!?」


「何?じゃないだろ?疲労しきったその体にここの気温は堪えるから
 外出禁止って僕言わなかったっけ?」



すこし怒りを混ぜて振り向いたその先には漆黒の髪と血のような赤い双眸を持つ友人がいた。

そしてその表情は有無を言わさぬ笑み。下手したら怒りの表情よりもどこか怖さを感じる。

俺は思わず小さな悲鳴と共に息を吸った。



「それにどこ行こうとしてたんだい?」


「どこって・・・アンディたちといっしょに・・・。」


「駄目。」



どこか言いづらくて目線を逸らしながらつぶやくようにして言った言葉に

フィーラは間髪いれず拒否の言葉を述べる。

俺はそれに視線を戻し目を見開いてフィーラを凝視する、



「どうして!?カイが整備士としてならいいって!」


「それは体調が戻ってからの話。
 それまでは医者としての僕の意見を優先させてもらうから。
 ほら、戻るよ。それと・・・君が助けたあの子の意識ようやく戻ったから。会ってあげて。」


「え?」



一瞬わけが分からず、目を丸くして聞き返した俺にフィーラはただ柔らかく笑みを返した。




◆◆◆




フィーラにつれてこられた病室はどこもかしこも真っ白で。

清潔感を感じる前に俺は閉塞感を感じてしまった。



「あ、、来た。」



常緑のどこまでも深い緑の瞳と闇のような漆黒の瞳が此方を向いていた。

漆黒の瞳をもつその少年の肌は健康そうな色をしていて元気だと思えるものだった。



「何はなしてたの?」


「まぁ、それは後でいいじゃない?
 それより・・・。」



カイが少年に視線を向ける。

少年はぴくっとそれに反応し背筋を正して俺を見てから少し頬を赤らめ

視線を逸らしてから眉を下げて俺を伺うように見た。



「おーい・・・君が綺麗で声掛けにくいのは十分わかったから早く言いなさい。」



カイがカラカラと笑って少年の肩を叩く。

少年は一度カイのほうをみてから俺に再び視線を向けた。



「ありがとう・・・ございました。」



恥ずかしそうに微笑んでそういう少年にどこかキラの面影が重なって俺は小さく息を呑んだ。



?」



フィーラが心配そうに声をかける。

それで意識を引き戻されて俺はフィーラの顔を見て表情を笑みの形へと変える。



「大丈夫。なんでもないよ。
 えっと・・・」


「ルークです。」


「そう。ルーク。元気になってよかったね。
 君が元気になって俺も嬉しい。」



微笑を形作るとルークは嬉しそうに少年らしい笑みを浮かべた。

・・・戦争から離れたら年相応のこんな笑顔を見せるんだ。

AAの彼らにも、イザークたちにもこの笑みを取り戻させてあげることは出来るんだろうか。



「でね、。ルークとも話し合ったんだけど
 この子オーブに連れて行くことにしたから」



ね?とでもいうようにカイがルークに向けて微笑んだので

ルークは顔を赤らめてこくこくと何度も頷いた。



「そう。それがいいね。オーブならルークもやっていけると思うよ。」



地球のオーブとは違うけどヘリオポリスという今は亡きコロニーで

俺もオーブには世話になっていた。

ナチュラルとかコーディネーターとか。そんなことはあまり気にしない

他国の戦争に関与しない国。

あそこならきっと大丈夫。



「ところで誰が連れていくことに?」


「あぁ、それは・・・。」


「フィーラ!」



ノックもそこそこに血相を変えた医師が部屋に入ってきた。

中にいたカイの姿を認めると敬礼をして見せたが、その視線はすぐにフィーラに向く。



「けが人が続出している!手伝ってくれ!」



今、アンディたちは戦闘中。

それを知らされたような気がした。









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あとがき

アンディたちが戦闘中だけどそこから視線をそらすように今更に助けた少年を出してみました。
お名前はルーク君。コーディネーターとナチュラルのハーフです。遺伝子はいじってないです。
でもこの設定ってどうなるんだろう。厳密に言うとナチュラルになるんかなぁ。

さて、主人公さんにはこれからちょっと苦悩していただきます。