私の一期下のアカデミーには天才が3人いた。
MSの天才と。
医療の天才と。
なんでもこなす天才と。
類は友を呼ぶという。
その言葉どおりに天才3人は一緒にいることが多く仲がよかったらしい。
初めて実物を見たのは入軍の儀の折だった。
噂には聞いていたが、元から見目麗しいコーディネーターの中でも
抜きん出てその3人がそろった姿は美しかった。
特に私が目を引かれたのは銀髪の青年だった。
周りの空気がえらく透明で穏やかな色。
此方を向いた時に見えたアイスブルーとエメラルドのオッドアイと
王子と形容されてもおかしくない甘い顔立ちが強烈な印象を与えた。
生まれてからコレまで見たなかで一番綺麗な存在だった。
外見の美しさだけで言ってしまえば金髪の性別不詳な人物には見劣りするだろう。
だが私はアレを人間として認めていない。
本人が言ってる通りアレは人間じゃなくて芸術品に近い。
だからがもっとも美しいと思う。
こんなこといったらフィーラが土俵にも上げさせないのかと怒るだろうか?
いや、彼ならあの二人と一緒にするなとただ笑うだろう。
そう自嘲気味に微笑を浮かべてしまったところで部屋のブザーが鳴り響いた。
「どうぞ。」
仮面の位置を人差し指で正してから扉に向けて声をかけると
一拍おいた後に空気が抜ける音がして扉が開いた。
「お久しぶりです。隊長。」
席を立ち敬礼をして迎えると中に入ってきた人物は
一瞬困ったような顔をしてからくすくすと楽しそうに微笑んだ。
ZAFTの緑。しかも整備士の服装をした人物に
白の隊長服を着ている私が敬礼するのは端からみればさぞおかしな光景だろう。
「その隊長っていうの何なの?」
どこか温かみを感じさせるアイスブルーと少しだけ濃いエメラルドグリーンの瞳を細めて
は小さく首を傾げて見せた。
私は敬礼していた手を下ろして口元に笑みを浮かべる。
「私の中では今でもは私の隊長です。」
そういうワリには自分の執務室に彼を呼び出してしまったが
自分が出向くということは彼に注目を集めてしまうことになるので
それは避けようと思い至ったうえでの行動だった。
もそれをわかっているのかその点に関してはつっこんだことは言わない。
もとより優しい人物であるので理由がなくともそんなこと気にもとめないだろうが。
「・・・敬語もいいっていったのに。」
「癖ですから。」
「そうなの?」
「はい。」
アナタに対してだけの。
彼がZAFTを抜けた後、なんどか情報をやり取りしているうちに
懇願されて呼び方だけは隊長からに代わったものの
初めて直に触れ合った時が隊長と部下という関係だったもので
なかなか切り替えることが出来ない。
もしかすると自分がその関係でいたいと望んでいるのかもしれない。
「それにしてもカイ達とうまくすれ違って降りてきたんだね、ラウ。」
「カイ達が此方に来てたのですか?」
「あれ?知らなかったんだ?」
オッドアイの目を丸くして発せられた言葉にコクリと頷いてみせる。
基本的にお互い忙しい身だから連絡はあまり取れない。
つい先日までの休暇の折も、一応連絡はしてみたのだが
仕事中ということで連絡をとることは出来なかった。
なるほど。その仕事中というのは地球に降下していたのか。
例の如く、仕事柄ゆえに行き先も目的も知らされなかった。
だからカイとフィーラが地球にいるという情報を私は知らなかった。
「・・・それで俺のことカイから聞いた?」
「はい。イザーク、ディアッカたちと共に行動させろ。と伝書が来ました。」
「うん。そうなんだ。迷惑かけてしまうと思うけどよろしくね、ラウ。」
イザークとディアッカ。伝書にはクルーゼ隊の赤服たちと行動させること。
と記してあった。だが、それは結論的に言ってしまうとクルーゼ隊に置く事と同じになる。
隊長と部下。その関係が逆転する。不思議な気分だ。
「こちらこそお願いします。・・・機体は用意させましょう。」
少し瞳を伏せてから言った言葉には目を見開いた。
そして眉間に皺を寄せてから眉を下げる。
「俺・・・戦っちゃいけないってカイが・・・。」
「わかっています。伝書にも記してありました。
だけど、が何かを守りたいと思ったときにその力がなければ
。あなたが傷つくんです。
私はにそんな思いをさせたくない。
もっとも目立たないことを考えて普通のジンしか用意は出来ませんが・・・。」
ココに金髪の友人がいたら確実に殴られているだろう。
は優しいから。力があれば出て行くに決まっているだろうと。
だからこそ整備士という役職を与え、戦闘禁止と言い残したのだろう。
彼女は戦いでの心が痛むのを嫌っている。
だが、私は戦わずしての心が痛むのを嫌う。
カイもを私に預けた時点でこうなることはある程度は予想していたはずだ。
あまりに動揺して瞳が始終揺れているに優しく笑みを浮かべてみせる。
もっとも口元しか見えないだろうけれど。
「選ぶも選ばないもあなた次第です。。」
そういっておきながら私はが戦う道を選ぶということを確信している。
退いていた戦場に戻ってきた。
は力を持っていなければならない存在。
力を持たずにはいられない存在。
「じっくりと考えてください。まだ時間はあります。」
困惑し続けるの肩に手を置くと
は辛そうに眉根を寄せて、私の瞳と視線をしっかりと合わせる。
「ラウ。」
「はい。」
「・・・ありがとう。選択をくれて。」
「・・・はい。」
困ったような表情を浮かべながらも感謝を述べる。
いまきっとは心の中で二つの気持ちがせめぎあっている。
友人の言葉に従うべきか、従わぬべきか。
戦うも
戦わぬも
決めるのはすべて。あなた次第。
私はきっかけを与えるだけ。
ただ。
戦場にいるとどちらをとっても優しいには
辛い気持ちを体験させることだけは事実だ。
BACK NEXT
あとがき
主人公さん苦悩の日々を送っていただいてます。
ずっといってますが
難産でした。
きっとラウ視点で書いたのがまずかった。
もうとっくに壊れてるけど主人公さんに対してだけは!
でも恨みが強くて無意識のうちに微妙に利用。な感じか?
どうすんの?どうするんだ、俺!?(某CM風)
あー・・・しんどかった。ラウ視点じゃなかったら
もっと楽だったろうけどここんとこ主人公さん視点ばっかりだったから
初ラウに挑戦。きっとそれが問題なんだ。
さっき気がついたんだけどガンダムの夢更新したの2ヶ月以上ぶりなのか!?