「あみだくじ?」
「はい。それでさんは僕のシャトルで一緒にいくことになったんですよ。」
「そうなんだ。」
現在俺は空のうえにいる。
空の上といっても輸送機にのってだが。
この小型のシャトルでは一度に運べる機体が1つずつなので
全員が分かれてシャトルに乗ることになったが
機体を持っていない俺がどこに乗るかという討論が赤服4人のうちでなされたらしい。
そしてあみだくじという可愛く尚且つ平等なやり方で決まったのがニコルであって
俺はニコルのシャトルに乗ってカーペンタリアへと向かっていた。
「僕、あれからピアノ練習してもっと上手になったんですよ。
また聞いてくださいね?」
「本当?楽しみにしてるよ。」
とても嬉しそうに。花が咲くような笑顔でニコルは俺に話しかける。
ニコルのピアノは講師に行ったときに一度アカデミー内のグランドピアノで聞かせてもらった。
彼の性格通り優しい音を奏でたピアノ。
気持ちが落ち着くようなそんな音を奏でる少年。
「あ、そういえば気になってたんだけど・・・。」
アカデミーで自分が教えた赤服は5人。
アスランはシャトルの調子がおかしいとかで現在は一緒に移動しているわけではないが
現在一緒に3人とは行動中。
あと一人。そして緑服の彼。この6人でクルーゼ隊。二人かけている・・・?
「ねぇ、ニコル。ラスティとミゲルは別働隊?」
何気なしにふといった言葉にニコルは氷のように動きをとめて目を見開いた。
その反応をみて嫌な予感が駆け巡る。
今、俺たちがいるところは戦場だ。そして俺たちは命のやり取りをしている。
一つの可能性が頭の中に浮かび上がる。
そしてその可能性はとても高い。
「聞いて・・・ませんか?」
「聞いてないよ。」
「ラスティと・・・ミゲルは・・・殉職・・・しました。」
「・・・そっか。」
ニコルは下を向いて俺から視線をそらす。
膝の上で握る拳は小さく震えていて、かなりの力が入っていることが伺えた。
殉職・・・もう手の届かないところまでいってしまったらしい。
「・・・さん?そっか・・・ってそれだけ・・・ですか?」
「もちろん哀しい。でもしょうがない。
俺たちは戦争をしているんだから。」
しょうがない。なんて嘘だ。
そんな言葉では片付けられない気持ちが心の中を渦巻いている。
でも・・・この子の前でそんな姿は見せたくない。見せられない。
俺が迷っている姿なんて見せたら、後に続く彼らも迷うしかなくなる。
「・・・強いですね、さんは。」
「強くなんてないよ。」
本当に。
「でもね、ニコル。」
「?」
「覚えていてあげて。ラスティとミゲルのこと。
覚えていたら。その人の心の中に死んだ人は生き続ける。
想い出は消えない。思い出の中に生き続けることが出来る。
だからお願い。覚えていてあげて」
「・・・はい。」
どこか泣きそうな笑顔でニコルは少しだけ嬉しそうに頷いた。
俺もそうやって救われてるから。ニコルもそれで救われて欲しい。
もちろんラスティとミゲルも。一生俺の中で生かすつもりだ。死なせない。絶対に。
◇◇◇
カーペンタリアについて暫く立ってもアスランの輸送機は到着せず
ザラ隊に与えられた待機室で適当に時間を潰していたところ
電子音がして部屋の扉が開いた。
緑服の兵士が部屋の中にはいってきて、一番近くにいた俺に小さく耳打ちをする。
「アスランが行方不明?」
その言葉をもらした瞬間に部屋の中にいた3人の視線が一気に俺に向く。
隣で兵士が頷いて、礼をして部屋から出て行った。
そして少しの間、部屋の中に沈黙が訪れたあとに放送がはいる。
ザラ隊の代表者一名を呼び出すものだった。
イザークが苦々しく舌打ちをして部屋を出て行く。
ソレを目線で送って、少し沈黙の時間があった。
「アスランどうしたんでしょう・・・。」
ニコルが顎に手を当てて、心配そうに窓の外を眺める。
空はすでに赤みを帯びてきていて、建物の影が黒く長く伸びていた。
「戦闘に巻き込まれてなければいいんですが・・・。」
「大丈夫。イージスも一緒だしアスランなら生きてる。」
「どーだかねぇ?」
「ディアッカ。」
ニコルと俺を困らせようと思って言ったのであろうディアッカに声をかけると
ディアッカは小さく肩をすくめてみせた。
少ししてから空気が抜けるような音がして扉が開く。
室内の視線が扉に向く。呼び出しを受けたイザークが部屋に戻ってきた。
伺うようにイザークの顔を覗き込むとイザークはふっとどこか楽しそうに笑みを浮かべてみせる。
「イザーク!アスランの消息・・・!」
ニコルが焦ったようにイザークに声をかけるとイザークは後ろで手をくみ
姿勢を正して見せた。
「ザラ隊の諸君。さて、栄えある我が隊の初任務の内容を伝える。
それはこれ以上無いという重大な・・・隊長の捜索である。」
近寄って来ていたニコルに対してイザークが視線をやりながらそういうと
ディアッカがこれ以上に面白いことはないとでもいうように楽しそうに声を上げて笑う。
ニコルがソレをむっとした表情でみて、その注意をそらすようにイザークが口を開いた。
「ま、輸送機が落っこちまったんじゃしょうがないが
本部もいろいろ忙しいということでね。自分達の隊長は自分達で探せとさ」
「やれやれ、なかなか幸先のいいスタートだねェ。」
「とはいっても、もう日が落ちる。捜索は明日かな?」
隣でニコルの肩がピクリと反応する。
「そんな!」
「イージスに乗ってるんだ。落ちたって言ったってそんなに心配することでもないさ。
もいってただろ?俺も賛成するね。大気圏落ちたってわけでもないし。」
ディアッカがちらりと俺のほうを向いたので俺はコクリと頷いてみせる。
「今捜索にいってニコルまで失うわけには行かない。君はZAFTの赤なんだから。
今すぐにでも探しに行きたい気持ちは分かる。
だけどお願いだから、ニコル。ソレをわかって。」
「ま、そういうことだ。今日は宿舎でお休み。
明日になれば母艦の準備も終わるということだからな。それからだな。」
イザークに止めを言い渡されたニコルは視線を落として暗い表情を浮かべた。
オレンジ色の光が3人を照らして影が長く伸びている。
ディアッカがまず座っていた椅子から立ち上がって扉に向かった。
「さてと。俺は宿舎にいくかな。、どうする?」
「俺はあとで向かうよ。」
「わかった。お前も早めに休めよ。明日は初任務なんだからな。」
ひらひらと手を振ってディアッカは部屋を出て行く。
イザークもなぜか不服そうに鼻を鳴らしてディアッカの後に続いた。
再び空気が抜ける音がして部屋の扉が閉まる。
俺は1,2拍おいてからニコルと向き合った。
不安そうに若葉のような黄緑の瞳が揺れている。
「さん・・・。」
俺の名を呼ぶその声も震えていて、まだ少年なんだと思い知らされた。
彼を元気付けるように俺は笑みを浮かべてみせる。
元気付けれたかは定かではないが少しでも不安な気持ちが飛んでいるといい。
「俺もできる限りのことはするからニコルも今は休んで。
心配すぎて。寝不足で。明日捜索できない。なんてことにはしたくないだろ?」
「・・・でも僕は!」
「わかってる。」
ニコルの頭を自分の胸に預けさせて、頭を軽く撫ぜる。
すぐにでも動き出したい。その気持ちはとてもよく分かる。
現に俺もすぐにでも探しに行きたい。
だけど一人を探すために出て行ってその出て行った者達までも
行方不明になってしまうと、とても困った状況に陥る。
理性が感情を押しとどめる。軍人になってイヤでも身についた業。
「わかってるから、落ち着いて。頭を冷やして。」
「・・・はい。」
どこか消え入りそうな声でニコルは頷き俺から離れる。
にっこりと微笑んで見せるとぎこちないながらもニコルも微笑を返してくれた。
少しは・・・消えたかな。
「僕、宿舎に戻ります。」
「うん。」
ひらひらと手をふって部屋を出るニコルを見送る。
それをみてニコルは目を丸くした。
「さんは?」
「俺は後で行くよ。」
ディアッカに言ったモノとまったく同じ言葉を述べると
ニコルは少し困ったように微笑み部屋を出た。
「さてと・・・。」
俺は室内にあったパソコンのOSを立ち上げて椅子に腰を落ち着ける。
「やりますか。」
誰もいないその部屋で一人呟いて、キーボードに指を走らせた。
◆◆◆
夢と現実のハザマを彷徨っていて、
ドアが開くときの独特の空気が抜ける音がしてゆるゆると瞳を開くと
そこには深紅の軍服をきた癖のある若葉のような色の髪をもった少年がいた。
「おはようございます・・・ってさん!?」
「あ、おはよう・・・ニコル、早いね。」
「おはようじゃありませんよ!?宿舎にもどらなかったんですか!?」
ニコルが慌てているのは俺が昨日いた部屋に夜が明けた現在でもいるから。
しかもソファの上で寝ぼけ眼。
宿舎にもどってないのは一目で明らかだ。
「徹夜じゃないよ。ちゃんと仮眠とったから。」
「そういう問題じゃないですよ!?
あなた、僕に寝不足で動けなくなったら困るっていった張本人でしょ!?」
もっともなところをつかれ返す言葉がなく俺は苦笑いを浮かべる。
ソレを見てニコルはしょうがないとでも言うように溜息をつく。
クスクスと笑みを浮かべてから立ち上がり部屋に取り付けられていた水道設備で顔を洗った。
「イザークたちはまだだよね。」
「あ、はい。早朝の訓練をしてからこっちに来るっていってましたから。」
「そう。じゃぁ、ニコルといこうかな。
俺をコクピットに乗せてくれる?」
「え?」
「救難信号発見したんだ。もしかするとコレかもしれない。
地球はNジャマーの影響が強いから、無線が通じればいいんだけど・・・。」
ほら。とパソコンを立ち上げて示して見せると
ニコルは目を見開いて画面と俺を見比べた。
「一晩中これを・・・?」
「だからちゃんと仮眠はしたって。」
「・・・さん。」
「ん?」
「連れて行きません。」
「え?どうして?」
「寝てください。」
裏に怒りを滲ませて笑顔のままそういうニコルはどこかとても怖くて
それがどこか黒髪の友人を思い出させた。
俺は浮かべた笑顔を思わず引きつらせて頷いてしまった。
あとがき
そんな他人優先な主人公さん。
この主人公さんの目標は優しいなのですが、これがまたムズイ。
優しさっていろいろあるから。
私が書いてるから矛盾もたくさんあると思いますが
優しさを追求していけたらいいなと思います。
ニコルさん灰色です。灰色。黒じゃないです。
この夢ギャグじゃないから!黒にしづらいんです!
準備中のもう一個のほうはニコルさん黒にする予定です。
あくまで予定です。
さて、ここでようやくDVD6巻までが終了いたしました。
45話かよ・・・!本編でいっちゃえば後5話で終わりやん!?
クライマックス間近!(笑)
あと5話で終わらせようと思ったら主人公さんはZAFTに完璧に戻って英雄になりましたとさ★
って感じですか?うわぁ・・・イヤだ (>▼<。)ノシ 爆笑
次は7巻かぁ。オーブかぁ。
またぼちぼち借りてきますー。