アスランとも無事合流して母艦を与えられて海に出て少しした後。
見知った顔を見つけて俺はそちらに近寄った。
「戦闘・・・?」
彼の服装を見て軽く首を傾げてみせる。
「あぁ。オーブの近くでAAを見つけたんだ。
それで追撃することにしたのさ。
まぁ、あと1時間ぐらいで接触するんじゃない?」
「そっか・・・。」
パイロットスーツに身を包んだディアッカはへらっと軽い笑みを浮かべてみせた。
AAと戦闘。
つまりキラとディアッカ達が傷つけあうことになる。
俺にとって大切な人たちが傷つけあうことになる。
その事実を頭の中で想像して
黒く重いものが上から降りかかってきたように感じ
俺は思わず視線を下に降ろしてしまった。
「?」
ディアッカは赤服4人の中で一番聡いと思う。
他人の心を読むのに長けている。
俺は慌てて笑顔を作って、取り繕った。
俺が不安そうにしていたらディアッカまで不安になる。
だからこんな顔してては。
俺の心の中を気付かせては駄目だ。
もう間に合わないかもしれないけど。でもできるだけ。
「あ、ごめん。・・・死なないで。ディアッカ。」
「あたりまえじゃん?何言ってんの?」
ディアッカはへらへらっと笑みを浮かべて俺の肩を軽く叩いた。
そして何か考えるように目線を上に上げてから俺の顔をまじまじと見つめる。
「さぁ。もしかしてまだ戦闘嫌い?」
「・・・どうして?」
どうしてそんなことを聞くのだろう。
目を丸くして彼の顔を見つめてみると
ディアッカは少しだけ居心地が悪そうに
眉を下げて笑みを浮かべた。
「アカデミーの講師に来てたときからさ、
なんかどっかで納得してないって顔してたから。
とくにMSで狙うもっとも効率の良い場所教える時とかー?」
「ディアッカ・・・。」
気付かれてる。
確かにアカデミーに講師に行った時は既に迷いができていた時期だった。
敵とはいえ、相手の命を奪っていいものかと。
相手の命を奪っておいて俺は生きておいていいのかと。
だけど、それは言っちゃいけないこと。
戦場にいる彼らに教えてはあまりに残酷なこと。
迷いを生み出させちゃいけない。
「何言ってるの?俺はZAFTの銀のツバサだよ?
・・・君達がちゃんと帰ってくるか心配なだけ。」
「ふぅん。」
なるべく穏やかに笑みを浮かべて見せると
ディアッカはそれにどこか余裕の感じさせる笑みを返す。
「まぁ、がそういいたいなら、別にそれでいいけど。
だけどそれも戦闘嫌いってことになるんだぜ?」
俺はわかってるから。とでもいいたげな強い笑みを彼は浮かべる。
・・・駄目だ。敵わないかもしれない。
そして確実に悟られてる。
「ディアッカー!」
ふいに少し神経質そうな叫び声が聞こえた。
声のしたほうこうを向いて見ると
予想通りにプラチナの肩辺りで綺麗にそろえられた髪をもつ少年。
表情は相変わらず不機嫌そう。笑ったら可愛い顔なのにもったいない。
「貴様!着替えたらブリーフィングルームで作戦を練るといっただろう!?」
「ごめん、イザーク!俺の所為だから!
ディアッカ責めないで上げて?」
「そーそー。俺はZAFTの元英雄様に呼び止められてただけだしぃ。」
語尾を異様に上げてそういうディアッカに俺は苦笑を浮かべた。
元英雄。俺って一応そうなるんだ。
ふとイザークの方に視線を移してみると
イザークは不機嫌そうに眉をよせ、握った拳を体の横の方で震わせていた。
「えぇぃ、うるさいぃっ!
ディアッカ!貴様少しは反省しろ!
そして!無駄にかばうな!こいつが付け上がる!!」
俺のほうをにらみながら
びしっととても美しく人差し指を伸ばしてイザークはディアッカを指差す。
なんでだろう。異様にゴメンナサイといいたくなってしまった。
「まぁまぁ。そんな怒んなってイザーク。」
「うるさいっ!」
牙をむき出しそうな勢いでイザークはディアッカの方を振り向いた。
それには流石のディアッカも困ったようでここから逃げ出すようにブリーフィングルームへと足を向けた。
イザークがふんと鼻を鳴らしてその姿を見送ると俺に視線を移す。
なにかと首を傾げてみるとイザークは一瞬ぴくっと反応をみせ
なぜか俺から視線をそらした。
「イザーク?」
「な、なんでもない!
!貴様、整備士だったらはやくドックに行け!」
結局俺に視線を戻さないままイザークはそそくさとブリーフィングルームに向かってしまった。
一人残された俺はイザークが言ったとおりにドックの方に足を向ける。
別に良く考えなくても整備士の仕事なんて始めてだ。
一応一通りの訓練は受けている。
MSの操縦ほどではないけれどもそれなりに良い成績も貰っていた。
だけど演習と現実は違う。
「俺、出来るのかな・・・。」
整備士の仕事って実はとても大切なものなんだと思う。
少しでも間違えればそれがパイロットの生死にかかわることだってあるのだから。
つまり俺が間違えればアスランたちの命が危なくなる。
慎重に取り掛からなければいけない。
アスランたちには死んでほしくないから。
(でも、そしたらキラの命は・・・?)
そこまで考えて俺は頭を振って考えを打ち消した。
駄目だ。そこまで考えちゃ駄目だ。
思わず逃げ出したくなる。
(俺、どうすればいいんだろう・・・。)
そんな気持ち戦争じゃ振り払わなきゃ駄目なのに。
でも一個人として。どうしても考えてしまう。
「・・・会いたい。」
キラに会いたい。無性にそう思う。
まだ告白の返事を返していない。
会って俺も好きだと伝えたい。
無意識のうちに足を進めながら俺は自嘲気味な笑みを浮かべた。
そんなこと無理に決まってる。俺がAAに戻る術なんてない。
「会いたいよ・・・キラ。」
(けど・・・)
明るい廊下から少し油と鉄のにおいのする薄暗いドックに足を踏み入れて
俺は一度瞳を閉じてから立ち並ぶXナンバーシリーズを見た。
そして銀色に塗られたジンが目に入る。
アレは・・・俺の機体なんだろう。
昔の記憶が僅かに頭に甦る。
そう俺は今はZAFTだ。頭を切り替えろ。
昔もそうしてきた。出来ないはずはない。
だから切り替えろ。
◆◆◆
オーブ近海でのAA戦は思ったよりも激しいものになった。
アスラン達ZAFTレッドはグールに乗って空を自由に飛びまわっている。
ドックにあるモニターでそれを見ているとこちら側の被害はまだそんなにはなく
どちらかというとAAが押されている。
真っ白な。
大天使と呼ばれるにふさわしい美しい機体のあちこちから黒い煙があがり、
どこか全体的に薄汚れて見えて、それが堕天使のようにも見えてしまう。
そしてその天使の甲板で動くひとつのMS。
「っ・・・!」
名前を呼びたくなるのを必死で堪える。
AAの姿自体見たのが随分と久しぶりだ。
砂漠でAAがアンディ達と戦っている時、俺はベットの上だったので戦闘の様子を伺いしることはできなかった。
手の届きそうな場所にAA・・・いやキラがいる。
ぐっと奥歯をかみ締め、体の横で強く拳を握った。
ずっとストライクの動きを目で追っていると
ストライクがビームライフルを放つ。
「イザーク・・・!」
ライフルの先にはイザーク。
しかしライフルはMSを狙ったものではなく、MSが乗っているグールを狙ったものだった。
(よかった・・・。)
デュエルは爆発するグーンを蹴り、それから離れてそのままAAの方に向かう。
あのままとり付くのだろうか?キラもソレに気がついたようでブースターをふかして
AAの甲板から飛び上がった。そしてイザークの持っていたビームサーベルを切り落とす。
そしてそのままデュエルを海に蹴りおとし、デュエルから放たれるライフルをよけながら
ブリッツに向かい、ブリッツのグールまでをも破壊してしまった。
(・・・なんて。)
なんて戦闘が上手くなってしまったのだろうか。
少し見ないうちに戦闘技術が確実に上がっている。
彼をそうさせてしまったのは何か。
いや俺はソレを知っている。間違いなく経験だ。
俺がいない分。その分がキラの負担になっている。
口の端を噛んで俺はモニターをにらみつけてから、ドックに繋がるハッチをみた。
そろそろイザークとニコルが補給に一度戻ってくるはずだ。
そしてまた戦場に赴く。
キラがいくら強くて頑張っていると言えども
戦力の違いは歴然でAAは今にも海に落ちてしまいそうに見える。
「・・・?」
デュエルとブリッツが戦線離脱して戻ってきたのでソレの整備をしていると
モニターの端に不意に動く影が見えた。
よく目を凝らしてみるとそれは艦隊のようだった。
「オーブ・・・?」
そういえばココはオーブ近海だったか。
そう思っていると艦内にオーブからの通信が入った。
その内容はAAが領海に接近しすぎているため進路の変更を警告するものだった。
(マリュ−さん、どうするんだろう。)
オーブは中立。だが、かといって友軍でもない。
他国を侵略せず。他国の侵略を許さず。他国の戦争に参加しない。
AAはオーブ製といえども地球軍。
領海に入ればオーブに討たれ、転進すればZAFT・・・アスランたちに討たれる。
どくんと心臓が大きく脈打った。
AAが落ちてしまう・・・?
キラがいなくなってしまう・・・?
心臓の音が耳に直接うるさく大きく響く。
俺は今はZAFTなんだ。ZAFTなんだから。
だから出て行っちゃ駄目なんだ。
頭の中ではそう思っていても気持ちはついていかない
俺の足は知らずのうちに銀色のジンの方向を向いていた。
しかしそのとき艦内の少女の声が響く。
その声にどこか聞き覚えがあって
俺は突如我に戻り足を止めた。
”お前では判断できんというなら行政府へ繋げ!
父をウズミ・ナラ・アスハを呼べ!
私は・・・私はカガリ・ユラ・アスハだ!”
「カガリ・・・?」
ウズミ・ナラ・アスハといえば元オーブ代表。
そのご息女なんてあったことがないはず。
だけど聞いたことがある声。聞いたことがある名前。
(あぁ、そうだ。)
あの日喫茶店にきてくれて俺がカレッジまで送っていった子だ。
太陽のようなキツイ金髪と豊かなオレンジ色の瞳を持つ少女。
乱暴な言葉遣いの癖にどこか毛並みの良い子。
(そっか、オーブのお姫様だったんだ・・・)
カガリの声で一時戦闘が中断されていたが
ディアッカが再びAAに攻撃を加え始めた。
しかしソレがオーブ艦隊にあたりそうなのを、アスランにでも咎められたのか
ディアッカが動きを止めた瞬間、キラにグーンを撃ち抜かれる。
俺はその様子に眉を顰めて瞳を伏せた。
戦ってほしくないのに俺はこの子達を戦いに送り出している。
モニターの中では先程のディアッカの攻撃によりAAがオーブ領海に落ちていくところだった。
とりあえずどちらも落とされなかった。
それにほっとしている俺がいて頭を切り替えられていないのだと思い知らされた。
あとがき
うわぁ・・・。鬱陶しいぐらい気持ちが揺れてる。
なんかね、あれよね。はっきりせぇよ。ってつっこみたくなるよね。
で、そんな感じで私の頭の中でも主人公さんと同じような状況になってます。
どっちかの方につかなくちゃ。でもつけないんだコノヤロー。的な。
でもって無理してしっかりしてるように。抱擁力があるようにみせかける。
なんてめんどくさい性格っ・・・!
もっと自由に生きて欲しいなー・・・と思ってみたりします(待) ←作者
これからどうなるのか私にも分からなくなってきましたが!
とりあえず。3ヶ月弱空いてしまってすいません<(_)>
多分今週末にはもう一話上げられると思います。ごめんなさい(涙)