なぜ一人で行動したいといったのか。
そう聞かれたならば俺はなんとなく。としか答えられない。
本当の胸のうちは明かしてはならない。
敵軍にいるある少年に会いたいからなんて。
そんなこと。本当はいってはいけないことなんだ。
・・・アスランには言ってしまったけど。
「・・・ん・・・さん・・・お客さん?」
「え・・?」
不意に耳に入ってきた声に俺は何度か瞬きをして
その声の方向へと視線をむけた。
「大丈夫かい?」
恰幅のいいおばさんが俺の顔を心配そうに覗き込む。
状況からしてどうやらかなりの時間考え込んでいたらしい。
最後に見た時からすでに20ほど時計の針は動いていた。
「おやおや、折角のコーヒーが冷めちゃってるじゃないか。」
「すみません。」
朝早くからやっている喫茶店をみつけ、情報も集まるだろうと想い俺はとりあえずコーヒーを頼んだ。
出した方としては当然温かいうちに。美味しいうちに飲んでもらいたかっただろう。
同業者なんだから俺にもそれは十二分にわかる。
申し訳なさを感じ、俺は眉を下げて苦笑のような笑みを浮かべた。
ここの店主らしきおばさんは俺を見ながら腰に手をあててふぅっと息を吐き
カウンターの方へ顔を向けた。
「あんた。このおにいちゃんにコーヒーもう1杯サービスしてやんな。」
「え、そんな・・・!」
悪いからいいです。
そんな言葉を遮るかのようにおばさんは俺の方へ向き直り言葉を発した。
「遠慮するんじゃないよ。
何があったのかは知らないけどね、元気出しな!」
快活な太陽のような笑みを浮かべておばさんは俺の背中を力強く叩く。
その強さに一瞬前のめりになりながら俺は自嘲気味に笑みを浮かべた。
「やっぱり元気がなさそうに見えますか?」
ただぼーっとしてるだけ。という可能性もなくはないだろう。
一人で喫茶店に入ってくる客はそっちの方が多い。
「あぁ、見えるね。あたしは毎日いろんなお客さんの顔をみてきてるんだよ?
こう長年やってりゃ、元気があるか、ないかなんてすぐ見分けがつくよ。」
からからと笑いを浮かべながらおばさんはカウンターから
湯気がのぼる温かいコーヒーを持ってきてくれた。
「コーヒーはね、入れたてが一番美味いんだ。」
「ありがとうございます。」
心遣いに感謝しながら俺はコーヒーカップを手に取り一口それを含んだ。
舌の上に苦味とほのかな酸味が広がる。
そして胸の中心に落ちていくような温かみに肩の力がゆっくりと抜けて
どこか気分が落ち着いた。
「おいしい・・。」
「だろう?」
そういって笑ったおばさんの顔はとてもまぶしいものだった。
冷めてしまったコーヒーも空にしてから俺は早朝のオーブの街中へと足を踏み出した。
現在の時刻0936。海岸で落ち合う時間まで約9時間半。
まずはどこから探そう。
たしかAAとストライクはオーブのモルゲンレーテ製。
だとしたら一番可能性が高いのはやはりモルゲンレーテ社だろうか。
しかしそれはアスランたちも考えていることだろう。
もし万が一、俺がキラと出会っているところを彼らが見つければどうなるのだろう。
多分俺にはそんな余裕は生まれない。
俺が以前までAAにいたことを知っているのはアスランだけであるけど
イザークたちにさっきの相手は誰だと聞かれて言いつくろえる自身はない。
そこまで考えて俺は額に手をあてて息を吐き出した。
(俺はどっちの味方なんだろう・・・)
はっきりさせなきゃいけない。でもはっきりさせられない。
この立ち位置はとても危険だなんて事とっくに分かっている。
だけど心が。
奥のほうにある心が。
どっちかにつく。という行為を良しとしない。
しかしとりあえず今は目の前のことだ。
視界にタイミングよく入ってきた看板を見つけ、
俺は苦笑じみたものを浮かべてその店の中にはいった。
店の種類はネットカフェ。
ほんとうに都合よく存在していたものだと思う。
お金を払い、自分に与えられたほとんど個室のようなブースに向かう。
パソコンのスイッチを押すと機械音とともにOSが起動し始めた。
「モルゲンレーテ・・・。」
キーボードの上に手を置き、俺はキーを叩いた。
俗に言うハッキング。というもの。
一応ZAFTのアカデミーでは常にTOP5にはいっていた分野だから
足跡を残さずに情報を見ることができる。
こんなところで役に立つとは思わなかったけど。
何重にもなっていたロックを解除して
モルゲンレーテ内の動きをみてみると、一昨日とは確実に変わった動きがある。
あるドッグへの大幅な人員の配置。
そこで作業していることはある艦の整備。
名前はAAではない。ただ”戦艦の整備”と銘打ってあるだけ。
だがモルゲンレーテの出航記録をみてみてもそれらしき艦はない。
間違いない。
ここだ。
ここにAAが・・・キラがいる。
後処理をして俺はパソコンの電源を落とした。
居場所はわかった。予想通りだ。だがどう動こう。
考えをめぐらせながらふらふらと外にでると
前から歩いてきていた誰かと結構強くぶつかった。
「ごめん!君、大丈夫!?」
「いたい・・・。」
俺と同じように少し癖のある緑色の髪の16歳ぐらいと思える子が肩を押さえて俺をじっとみた。
「えっと・・・そのごめ」
「ぶわぁーか!ぼぅっとしてるから、そうなんだよ!シャニ!」
焦ってもう一度謝罪の言葉をかけようとすると隣から
赤色の髪の少年がシャニと呼ばれた少年に言葉を投げかけた。
どうしようかと困っていると金髪の少年が彼らをちらりと見てから俺をみた。
「別に気にしなくていいから。」
「でも前を見てなかったのは俺だから。」
困ったように微笑むと金髪の少年は小さく息を吐き、
片眉を上げてシャニという子のほうにきつく視線を投げた。
「おい、シャニ。わざとだろ。」
「え?」
「はぁっ!?お前ばかじゃねーの!」
赤い髪の少年が食いつくようにいった。
シャニっていう子を目を丸くしてみると彼は小さく頬を膨らませて俺をみた。
「だって・・・綺麗だから。」
「・・・え?」
「確かに綺麗・・・だな。」
「いや・・・何言ってるの?」
金髪の少年まで俺の顔をまじまじとみて言うもんだから
俺は脚を何歩か後ろに引いた。
赤髪の少年までも俺を食い入るようにみている。
こんなにまじまじ見られることには俺は慣れていない。
知らないうちに頬に熱が上がってきて、俺は苦笑を浮かべるしかなかった。
「ねぇ、名前。」
「え?」
「お前の名前教えろっていってんだよ!わかんねぇのか?」
緑の子が聞いたのに赤の子が怒鳴る。
困惑しながらも俺は自分の名前を名乗った。
「。・・・=。」
「ふぅん。俺、オルガ。こっちのうるさいのがクロト、でこっちが・・・。」
「シャニ。」
シャニが俺に近寄ってきて、両手でそれぞれの腕を掴んで俺をしたから見上げた。
うるさいの。といわれたクロトはかなり不服そうにオルガに食って掛かっている。
そしてそのオルガは目を丸くして俺たちの様子を伺っていた。
「シャニ・・・?」
さっそく教えてもらった名前で呼んでみるとシャニは少しだけ嬉しそうな表情を見せた。
「は・・・ここの人?」
「ごめんけど、違うんだ。」
どこかだるそうなだけど嬉々とした声。
それについ思わず正直に答えて彼の頭を優しく撫ぜてしまう。
「ふぅん。じゃぁ俺たちがまたオーブにきても
。あんたには会えないんだ。」
「そうなるね。」
オルガの質問に俺は苦笑を交えて答えた。
モルゲンレーテの整備士の格好してるのに
そこをつっこまれなかったのはよかったかもしれない。
「別になんでもいーじゃん。俺はお前のこと絶対見つけてやる!」
とても綺麗に人差し指を伸ばして、クロトは俺を指差す。
これは遠まわしに俺にまた会いたいと言ってくれてるのだろうか。
「ありがとう。」
柔らかく笑みを浮かべるとクロトは何度か瞬きをしてから
俺から視線を勢いよくそらした。
「なんでそうなんだよっ!」
「俺にも」
シャニが下から俺を覗き込んで、こてりと首を傾げて見せた。
「ありがとう、シャニ。」
「なんなんだよ、お前ら・・・。」
くすくすと笑う俺をよそ目にオルガの呆れた声が通りに残った。
2007/01/23
あとがき
いや、なにしてんのあんた。
さっさとキラ様と再会させよーぜ、自分。とつっこみつつ薬中トリオと出会わせてみました(笑)
シャニこんな性格ちゃうやろ!ってつっこみは甘んじて受けます。
なぜかこうなりました!すみません(平伏し)
とりあえずキラ様との再会は近づいてます。うん。あともうちょっと。
ねー。そういえば、主人公さんの軍服の色言ってなかった。
文脈からわかるといいな・・・当然ながら赤でした。
あ゛ー!本気でアカデミー書きたいっ!でもほかに書かなあかんこといっぱいあるから無理!(待)