「あ、そろそろ帰る時間じゃん!」
あの後、彼らの趣味なのか知らないが
かなり強引に本屋、ゲームショップ、CDショップと連れまわされ
いつの間にか、かなりの時間が立っていた。
こんなときになんだけど。
だめなことなんだけれど。
結構楽しいと思ってしまった。
戦いばかりの場所にいて。
日常なんてこと、このごろは忘れていたから。
ZAFTと連合の板ばさみ。
・・・いや、違う。
キラとアスラン達。
どっちにもつけない。そんな俺の弱さのせい。
「じゃぁありがとうなっ!」
「うん。じゃぁね。」
一緒に店を回っているうちにクロトは随分と素直になって
もう今ではシャニとともに俺の腕にまとわりついていた状態。
わりとあっさり離れたクロトと
名残惜しそうに俺にひっついたままだったシャニを
オルガが無理矢理引き離して
三人は俺に手を振りながら俺が知らないどこかに帰っていった。
「1時か・・・。」
腕につけていた時計の針に目を落とし俺は息をはいた。
断る暇を与えられなかったとはいえ
無駄に時間を費やしてしまったのは自業自得だ。
でも全てが無駄というわけではない。
街の中には情報が溢れかえっていて
耳を澄ませば先日のオーブ近海での戦闘についての話はいくつもあった。
そしてそれを統合していくとかなり高い確率で
AAがモルゲンレーテのドックにいるという結論に陥った。
近くにあったエレカポートでエレカに乗り込み、モルゲンレーテ社に向かう。
すこしねっとりとした潮風が頬を撫ぜた。
入り口で偽造IDを提示し、エレカのまま工場エリアに入る。
このIDで入れるのは第一エリアまで。
先程ハッキングしたときに第一エリアの場所は頭にたたきこんだが
AAがいると思しきドックは当然ながらその第一エリアには含まれていなかった。
そのドックに一番近いエリアでエレカを降りて、
フェンスに阻まれた、俺が立ち入ることのできないエリアをみた。
ここの地下に今AAのいるドックがあるはずだ。
地上では何人かの人が作業しているものの
AAの乗組員と思われる人はいない。
俺は自嘲気味に笑みがのぼってくるのを感じた。
(そんな偶然転がっているわけがない)
偶然誰かが地上に出てきてて、俺がその人を見つけるなんて。
そこまで考えて、俺は瞳を閉じた。
「・・・俺、どうしたいんだろう。」
もしAAの誰かを見つけたら声をかけるのだろうか。
それとも声をかけずにアスランたちにAAはここにいると告げるのだろうか。
あ・・・でもアスラン以外は俺がAAにいたこと知らないから
AAの乗組員をみたから。だからAAはここに確実にいるとは言えないのか。
彼らに隠しておく必要はないかもしれないけどただなんとなく言い出しにくい。
だとすればもう一つの選択肢・・・?
(そしたら俺はAAに戻ることになるのかな?)
だけど、俺が時間に入り江に戻らなければアスラン達は困惑してしまうだろう。
俺を探しに戻って作戦に支障をきたしてしまう可能性も考えられないことではない。
「駄目だな・・・。」
結局俺はもとの位置に戻ってきてしまう。
どっちにもつけない。そんな中途半端な位置。
設置されていたベンチに腰をおろして俺は目を閉じ、
随分と長い間あっていないチョコレートのような色の髪を持つ少年を思い浮かべた。
もし。
もし彼が地上に出てきたら。
俺が見つけられたなら。
きっと俺は声をかけてしまう。
こんなぐだぐだ考えているけど
多分、その時になれば理性が持たないと思う。
だってこんなに会いたいと心が叫んでる。
アスランに無理言ってまでついてきた。
それほどまでにキラに会いたい。
水面にうつるオレンジ色の光。
何度か移動しながら、フェンスの向こう側をみていると
太陽は既に随分と低い位置にきていた。
「1820・・・。」
そろそろ戻り始めないと入り江の集合時間に間に合わなくなる。
結局AAの乗組員を見つけることはできなかった。
もう少し。と粘りたい気持ちに後ろ髪を引かれながらも
俺はエレカポートの方ヘ足を進め始めた。
「!」
ふと後ろから聞きなれた声に呼ばれたような気がして振り向くと
プラチナブロンドの肩口で綺麗に切りそろえられた髪と
澄んだアイスブルーの瞳をもった少年がエレカにのって俺の名前を呼んでいた。
「イザーク・・・。」
そのエレカには他の3人も乗車している。
入り江でわざわざ集合しなくてもここで集合することが出来てしまった。
苦笑を浮かべながらも手を上げて応じると俺のすぐ隣でエレカが停まる。
「やっぱもここに来たわけ?」
運転席に座っていたディアッカが小さく肩をすくめてみせる。
俺は眉をさげて微笑みエレカにのりこんだ。
「色々調べてみてここがいちばん可能性が高いってわかったんだよ。」
「行き着く先は同じってこと?」
ディアッカは語尾を上げて楽しそうに笑いエレカを発進させた。
行きと同じように潮風が頬を撫でる。
キラキラと光る水面。
世界は戦争の渦の中だというのに自然はそんなことまったく気にせず、綺麗なまま。
車外から車内へ視線を戻すと俺はある異変に気付いた。
それはとても些細で見逃しそうなことだったのだけれども
艦に戻ってからそれは顕著に現れた。
「アスラン・・・ボタン掛け間違えてますよ?」
「へ?」
ニコルが声を掛けたことにアスランは必要以上に目を丸くして
軍服のボタンを留めていた自らの指先をみた。
「大丈夫ですか?疲れてるんじゃないですか?」
ニコルが心配そうに眉を下げてアスランに問いかける。
アスランはどこか哀しそうに笑うと緩やかに首を横にふった。
「大丈夫だ。疲れてなんかいないさ。」
「アスラン。」
「はい。なんでしょうか?」
「おいで。」
「え?」
半分強制的に俺はアスランの腕を引っ張って
俺にあてがわれた部屋へと向かった。
彼の今の状態はかなり不安定だ。
安定させなければ彼は戦場で命を落としてしまうかもしれない。
・・・それを逆の立場から考えることは今は止めておこう。
「・・・・・・さん?」
かなり困惑した声でアスランが俺の名前を呼ぶ。
俺はそれに振り向かず、ただ脚を進めた。
緑服の整備士がZAFTのエリートである赤服
しかも国防長官のご子息を引っ張って歩いている姿に
艦内の多くのものが不思議そうにこちらを見る。
俺にあてがわれた部屋の前まで来ると
空気が抜ける音がして扉が開いた。
今の時間帯、同室の仲間は仕事中で当分帰ってこない。
アスランを中に招き入れてベットに座らせ
俺はアスランの肩をもって彼の翡翠のような瞳を覗き込んだ。
「何があったのか教えてくれる?」
「っ・・・何も・・・ないです。」
俺の質問に小さく息を漏らして、眉を寄せて視線をそらす。
しかしこの反応では何かあったと肯定しているのと同じようなものだと思う。
「キラにあったんだろ?」
「・・・どうしてそれを!?」
ここまで動揺するのだからと。
適当にめぼしをつけて言ってみたら案の定あたりらしく
アスランは思わず言ってしまった後に自らの口を手で覆った。
「会ったんだ・・・。」
アスランの肩から手を離して、俺は部屋の中へと視線をながした。
あったとしたら、アスランたちと落ち合ったあの場所でだろう。
俺は会えなかったけどアスランは会えたんだ。
「・・・いいなぁ。」
無意識のうちに口から漏れた言葉に少し頭が混乱する。
今度は俺が自分の口を押さえる番だった。
困ったように微笑んでアスランの方をみると
アスランの瞳がどこか哀しそうに揺らいでいた。
「アスラン・・・?」
名前を呼んでみると彼は俺がいることに改めて気付いたように目を開いて
そして口を固く結ぶと、斜め下。つまり床の方へと視線を落とした。
「さんは・・・キラが好きなんですね。」
「!」
小さく息をのみ、一歩退く。とても直接的な言葉に頬に熱が上がってくる。
確かに俺の行動にはわかりやすくでていたかもしれない。
だが、なぜこの子はそのことを口の載せて言うんだろう。
困惑していると翡翠の瞳が強い意志をもった色でもう一度俺に向けられた。
「どうして・・・そんなこというの?」
「以前カイさんにあったときに言われました。
”これから俺は大変なことになる”
と。それが今分かりました。」
カイの言葉・・・つまり百発百中の黒翼の勘の事?
だけどアスランの言いたいことが分からない。
ただ、ただ目を丸くして、首を傾げた。
「・・・何を言ってるの、アスラン?」
「キラは俺の友達です。
だけどキラにただ譲るなんて諦めのいいことも出来ない。
俺はそんなに大人じゃないんです。」
そこまで聞いて彼が何を言いたいのか、おのずと分かってしまった。
分かるべきではなかったのかもしれない。
だが、ここまで言われて気付かないほど俺は鈍感じゃない。
ぐっと唇の端をかんでアスランは苦しそうな視線を一度そらしてから、
もう一度俺に向けた。
「さん。俺はあなたのことを愛しています。」
まっすぐに翡翠の瞳が俺を貫く。
何か言葉にしようと考えをめぐらすのだけれどなにも言葉が出てこない。
「だから・・・さんがキラのことをいくら思っているとわかっても
俺はあなたをキラの元に返したくない。」
意志をもった強い視線で俺を見て、アスランはベットから立ち上がる。
そして扉の方へ歩いていき、部屋をでるというその間際にこちらに声をかけた。
「俺はあなたを愛している。それをわかってください。」
空気がすばやく抜ける音がして扉が開き、再び同じような音がしてから
俺はアスランがいたベットの場所にずっと釘付けだった視線を扉の方に向け
そして彼のいた場所に肘から倒れこんだ。
膝を強く床で打ったが今は痛みなど気にならない。
「どうして・・・なんで?」
彼の精神をただ安定させてあげたかった。
ただそれだけなのに。
どうしてこんなことになった?
どちらかにきっぱりと割り切らなければいけない。
だけど頭で分かっていても心がどちらにもつけない。
どちらかにつけば相手を殺す。その思いが俺の意思を鈍らせる。
ぐるぐる。ぐるぐると同じところを回り続ける。
感情を捨て去れれば悩まずにすむかもしれない。
キラを好きだという感情を。
アスランたちを守りたいという感情を。
だけど捨てられない。
捨ててはいけない。と心が拒絶する。
「俺・・・どうしたらいい?」
その呟きは誰に向けて発せられたものなのかはわからない。
ただ誰かに答えをすがったことだけは確かだった。
2007/01/24
あとがき
三角関係完全に勃発しました(笑)
あいかわらず同じ所でぐるぐる回ってたら、
アスランがその円から一歩前に踏み出しちゃいました。
あー・・・崩れていく(ぇ)
ヅラはね。好き。っていうより愛してる。っていいそうな気がしたので
愛してる。って言わせてみました。
ヅラ言うなって突っ込まれそうですが、
私はアスランはいぢめていぢめて愛しむ子なので温かい目で見てあげてください(待)
作品ではそんなにいぢめないけど日常ではものすっごいいぢめてるよな(笑)
うん。そんなこんなです。
ついに50話まできました。これも読んでくださる皆様がいるおかげです!
ありがとうございます!
さて、50話。50話です。アニメであれば最終回です。
ここで終わるのもありか?いや終わりませんが(当然)
あいかわらず突然書き出したり、突然止まったりのペースで進むと思いますが
これからもよろしくお願いいたします<(_)>