「なんだ、坊主?どうした?
 まだ何も命令でてねぇぞ?」



パイロットスーツを着てドックに向かうと

ストライクのハッチに手をかけたマードックさんが僕のことを不思議そうに見た。



「領海をでればZAFTの攻撃、始まります。」


「あぁ?」



理由のない言葉にマードックさんは腑に落ちないといった表情で

コックピットに乗り込む僕を見た。


オーブのモルゲンレーテでアスランとあった。

パイロットスーツを着ていない彼の顔をみたのは久々だった。

小さな頃から随分ともてていた端正な顔立ちはさらに綺麗になっていて

性格は相変わらずなんだろうと思うそんな空気をまとっていた。


あの状況で何を話せばいいのか。

何なら言ってもいいのか。

全然分からなくて、声が途切れ途切れになった。


ようやく言葉にした声は僕が彼を大切に思っていた。というもので

相手に何を期待して言った言葉なのかはわからなかった。


しかしアスランと出合ったことにはなんら変わりない。

彼は迷ったすえにもこのAAがオーブにいると分かったからには

網を張って待ち構えているだろうということが簡単に想像できた。

あのまじめなアスランのことだ。僕とは違い軍務はちゃんと果たすんだろう。


AAがオーブ艦隊から離脱してまもなく

Xナンバーシリーズがこちらに向かっていることをレーダーが捕えた。



(やっぱりきたね・・・アスラン。)



深く息を吸い込んで、そして吐いて。

僕は瞳を閉じて操縦レバーにおいた手をもう一度置きなおした。


ランチャーを装備してストライクで甲板に上がり、

インパルス砲にコンジットを接続して

僕はXナンバー・・・アスランたちが来ると思われる方向に銃口を向ける。



「スタンバイ完了!」



AAの周りに煙幕が立ち上り、真っ白な世界に囲まれる。

相手から此方の位置は特定しにくいが、此方も相手の位置を特定しにくいのも事実だ。



『こちらスカイグラスパー、ケーニヒ!
 ストライク、聞こえるか?敵の座標と射撃データーを送る!』



通信から友人の声が聞こえる。

彼もこんな危ない戦場の前線という位置にいる。

こんな役目僕だけで十分なのに。

しかし迷ってなどいられない!



「トール・・・。了解っ!」



モニターに相手の座標が映し出される。

4機それぞれの位置。それに僕はインパルス砲を放った。



「くっ・・・。」



やはり相手もZAFTのトップガン。

そう簡単には当たってくれないらしく爆発のような痕跡は見えない。

インパルス砲に接続していたコンジットを引き抜いて、僕はPS装甲を展開させた。

ブースターをふかして空に飛び上がると、デュエルとバスターが目に入る。

両機が容赦なく、僕に向かって銃撃を浴びせた。

それを避けながらバスターのグゥルを打ち抜くと、

攻撃されたことで体制を崩したバスターにそのまま飛び掛り、蹴りを入れて海面に落とした。


その直後にデュエルが報復とでも言うように僕に銃撃を浴びせる。

しかしPS装甲のためにそれはあまり気にすることはない。

それは相手も同じ。僕はPS装甲の施されていないグゥンに狙いをさだめて銃撃を放った。

グゥンの噴出孔が小さく爆発し、黒い煙を吐き出しだす。

デュエルもそれに伴って海上に落ちていった。



(これであの二機はもう戦えない。)



相手の方に視線を向けてみると残りは2機。

そのうち一つは赤い機体。イージス。つまりアスランだった。



(どうして出て来るんだ・・・!)



無理な願いと分かりつつも出てきて欲しくはなかった。

イージス、ブリッツが容赦なくビームライフルを放つ。

ブースター的にもそろそろ限界なので僕はAAの方へと一度着地した。


AAからの砲撃にイージス、ブリッツがライフルを放ち応戦すると

空が真っ赤に燃えるように赤く染まった。

・・・実際燃えているといった方が正しいのだけれど。


コックピット内にアラームが鳴り響く。

インパルス砲を放ちすぎたのかストライクのPS装甲が落ちていき、僕はランチャー装備を外した。



『フラガ機、来ます!』


『ストライク!エールへの換装スタンバイです!』



トールの声に続いて、ミリィの声が聞こえる。

僕は少佐の座標をモニターで確認した。



『プレゼントを落とすなよ!』


「少佐・・・!どうぞ!」



ブースターをふかして、僕はその場を飛び上がる。

タイミングピッタリにエールがストライクに換装され、PS装甲が復活した。

真上をイージスとブリッツが通る。



「アスラン・・・!」



僕は口の端を噛んで空を見上げ、更に高く飛び上がった。

ブリッツが仕掛けてきた攻撃をビームサーベルで受け流して

シールドとサーベルで応戦する。

そのとき突然空からビームが放たれ、ブリッツの右腕をかすった。



『キラっ!』


「トール!」



名前を呼ばれビームが飛んできた方向を見るとトールのスカイグラスパーがあった。

駄目だ。早くしないとブリッツがトールに狙いをさだめてしまう。

僕は唇をかみ、トールに気をとられているブリッツの右腕をめがけてサーベルを振り下ろし

グゥンから叩き落した。


これであとはアスランのみ。

飛べない状況では不利なことは明らかなので、僕はグゥンにそのまま飛び乗った。

イージスからビームライフルが放たれる。

シールドでかばいながら、僕もライフルを放った。



敵なんだ。

僕は彼の敵で、彼は僕の敵なんだ。

しかし頭によぎるのは夕暮れのオーブでの出会い。



(アスラン・・・)



向かってくるイージスのグゥンにライフルを放ち、

爆発させるとそれをあっさりと捨ててイージスはグゥンから離れる。

持ち主のいなくなったグゥンは真っ直ぐに僕がいま乗っているグゥンに向かってきて

僕はそのグゥンから足を離した。グゥン同士が衝突して爆風がストライクを撫ぜる。

その途端にイージスがMAに変形して、強力なビームを放った。

それを間一髪の所でよけて僕はAAの甲板に着地する。

イージスはAAからの攻撃を避けて、

何の草花も生えていない岩ばかりの小島のような場所へと着地した。



「ぁっ・・・!」



どうしよう。追うべきか。追わぬべきか。



『キラっ!ソードを射出するぞ!』


「トール!」



イージスはAAからの砲撃を浴びている。

PS装甲があるから傷つきはしないが

そろそろイージスのPS装甲が落ちる頃だ。



(僕が行けばAAの攻撃も止むはず。)



早く引いてくれと言いに行こう。

討たなくていいならばそれが一番言い。

手早くソードに換装して、僕はアスランにソードで切りかかった。



「アスラーン!」



彼の銃を破壊すると、イージスは後ろに飛びのく。



「もう下がれ!君達の負けだ!」


『何を・・・!』



口惜しそうに声を漏らして、アスランは小型のビームサーベルを取り出す。



「やめろっアスラン!これ以上戦いたくない!」



僕の言葉は聞こえているはずだが、アスランは追撃を止めない。

やめて欲しい。だけどやめてくれない。

僕は飛び上がって大きくサーベルを振り下ろした。

イージスはそれを腕で防御して、少し距離を置く。



『何を今さらっ!討てばいいだろう!?
 お前もそういったはずだ!!』



その言葉に僕は奥らへんの歯を強くかむ。



『お前も俺を討つと!言ったはずだ!!』



怒りか。焦りか。戸惑いか。

アスランは攻撃を一向にやめない。

僕はその攻撃をガードしながらイージスを蹴り飛ばした。

蹴り飛ばした後のイージスのPS装甲が落ちていく。



「アスラン!」



もう負けだ!ヤメロ!とビームサーベルを振り上げた瞬間にモニターの端に反応があった。



『アスラン下がって!』



何もない場所が徐々にゆがんで黒い装甲のガンダムが現れる。

ブリッツ・・・たしか微量の粒子をばら撒き一時的に透明になることが出来る機体だ。

片手に程長い鋭利な棒を持ち此方に向かってくる。

迷いのない切っ先。

僕は息を小さく呑んで、その切っ先を交わし、サーベルをそのままコックピットにたたきつけた。



『うわぁぁぁ!!』



片手に武器を持ったまま、僕がたたきつけたサーベルの部分から火花を飛ばすブリッツ。

避けきれなかった。こうするしかなかった。でも・・・。



(・・・僕・・・また人を・・・殺す?)



その事実を想い当てた時に、頭の中でぐちゃぐちゃと黒い針金みたいなものが動く。

時間は戻せない。だけど僕はまた・・・!

体は動かなかった。事実と心がついていかない。

じりじりと視界が白く染まっていく。

光が一層強く光る一瞬前に見えたのは

爆発しそうなブリッツに飛びつく銀色の機体だった。



「・・・新手・・・?」



目を覆う激しい光の後に大きな爆発音。

あたりを埋め尽くす黒い煙。



『ニコルー!!』



アスランの悲痛な声が耳に届いた。

体が震える。自分の両手を眼の前まで持ってきて強く握り締めた。


煙が徐々に薄れていく。

最初に目に入ったのは地面に突き刺さった僕自身のソード。

そしてほとんど原型をとどめていないブリッツと思しきものと

ぼろぼろになったみたこともない銀色のジンが倒れていた。



(殺してしまった・・・?アスランの友達を・・・?)



困惑する頭でイージスの方を見ると

いつの間にか上陸していたバスターとデュエルが僕に砲撃を放ってきた。

それを避けながら岩場に移動する。

そこからは突然乱入してきた銀色のジンが良く見えた。

注意深くみてみるとコックピットが壊れて中に乗っている人の顔が見えた。

この人も・・・死んで・・・いや僕が殺してしまったのだろうか?

カメラを拡大していくとその姿にどこか見覚えがあって

僕の気持ちが妙に早まった。



(あれは・・・!)



『ヤマト少尉!何をやっている!
 戻れ!深追いする必要はないといったはずだ!』



前に足を踏み出そうとした瞬間バジルール中尉の声が耳に届いた。

確かめたい気持ちが高まったがこの状況では僕がやられてしまう。

2機からの砲撃をなんとか避けるために僕はAAへと飛び移った。

AAはデュエルとバスターに銃撃を浴びせた。

デュエル、バスターがそれから逃げるために下がる。

しかしアスランは少しの間動かず、そして銀色のジンに近づいた。



「っ・・・!」



僕はAAからイージスに向けて威嚇射撃を行う。

なんでかは分からない。だけどもしかすると。


僕が銃口を向けていることをアスランは確認して

AAからも狙われていると確証したアスランはその岩場からおそらく母艦の方へと帰った。



「・・・・。艦長!!」



ブリッジへ通信を繋ぎ、僕は声を張り上げた。



『な、なにかしら?ヤマト少尉。』


「岩場に人がいるんです!確認しにいきます!」


『ヤマト少尉!ZAFTの兵だ!放っておけ!』



バジルール中尉の声が聞こえたが、

僕はAAを飛び降りて先程のジンの近くに降り立ちコックピットを出た。

歩くたびにじゃりじゃりと砂と岩場がすれる音がする。

みるも無残な姿になったジンのコックピットを覗き込むと

血にぬれた見慣れた、もう見る事は出来ないと思っていた綺麗な顔があった。



・・・・さん。
 どうしてあなたが・・・?」




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2007/02/07

あとがき

お疲れ様でした(笑)
戦闘シーンって読んでるとめんどくさいですよね。
思わず飛ばして読みたくなっちゃいます。うん。
頭の中で絵を思い浮かべるのが大変なんだよなぁ。
一応思い描けるように文章表現できるように頑張ってますがまだまだです
精進します!

さて、いかがだったでしょうか、52話 銀色。
ようやく再会しましたー。長かった。それは長かった。
何話ぶりなんだろう、キラ様と再会したの(笑)
・・・あ、24話ぶりです(いっそ逝ってしまえ)
ALL夢としてはうまいこと連合、ZAFT半々で。
キラ夢としては最低な感じですね(待)
次は甘くなるのかなー・・・?