なぜだか理由は知らないけれどもZAFTの緑色の整備士の服をきたさんを
慎重にストライクの手の上に乗せて僕はAAへと帰艦した。
着艦するとすぐに医療班がさんを担架で連れて行ってしまって
僕がコックピットから降りたときにはすでにドック内にはさんの姿はなかった。
「おっしゃー。お疲れさん!」
急いで追いかけようとすれば、僕の周りにマードックさんたちが集まってきて
僕はそこから抜け出せなくなってしまう。
早くいかないと。と焦る気持ちとは裏腹に周りの整備士さんたちは僕を逃がそうとしない。
「ついに一機やったって?」
「ブリッツだってなぁ!」
「おぉ!よくやった!」
「すげぇじゃねーか!!」
僕の肩に手を回したり、頭をなぜたりして
うれしそうにそういう整備士さんたちの声が遠くのほうで聞こえる。
それとともにちりちりと積もっていく何か。
「ほんとココんとこ凄いじゃねぇか、坊主・・じゃねぇか、少尉はよ!」
「もう向かうとこ敵ナシだな!」
マードックさんが豪快な笑みを浮かべながら僕の頭をがしがしと撫ぜて
他の整備したちも僕の肩をつついたりもした。
自然とヘルメットを持つ手に力が入る。
「・・・やめてください!!
人を殺したんですよ!?
そんな・・・よくやっただなんて・・・!」
思わず叫んだ僕にぎょっとするかのようにマードックさんたちは一歩足を引いた。
「なんだよ・・・今まで散々やってきたくせに・・・。」
誰かがポツリと呟き、今さらながらにその事実を突きつけられて
僕は目を見開き、小さく息を呑んだ。
「よせよ!」
僕を囲んだ整備士さんたちの群れを掻き分けて
少し怒気をはらんだ声でフラガ少佐が僕の目の前までやってきた。
「キラも疲れてるんだ。ほら、キラ。」
僕を円の外に押しやって、ドックを出てから
フラガ少佐は後ろから走り寄って来て声をかけた。
「悪気はないんだ。
皆・・・お前を仲間だと思っている。」
「わかってます。」
目線をあわさずに絞り出すように僕は答えた。
そんなことわかってる。
相手は敵なんだから倒さなくてはいけないことなんて。
だけど僕は人殺しになりたくて戦ってるわけじゃないんだ。
「キラ。」
後ろから強い力で肩を掴まれる。
止まって視線を向けるとフラガ少佐が厳しい顔つきで僕を見ていた。
「俺たちは軍人なんだ。人殺しじゃない!
戦争をしているんだ!」
言い聞かせるようにフラガ少佐は僕に言葉を投げかけてくる。
わかってる。わかってるけど。
僕は少しずつフラガ少佐から視線を外して行き、斜め下の床を見つめた。
「討たなければ討たれる!
俺も、お前も!みんな!!」
「知ってます!!」
思わず声を張り上げて、キツイ視線をフラガ少佐に向けた。
それにフラガ少佐は厳しい表情で返した。
「なら迷うな!命取りになるぞ!!」
僕は暫くフラガ少佐の瞳とにらみ合った後、手を振り払ってその場をあとにした。
足を向けた先は医務室。
とにかくこの空気がいやだった。
早く、包みこむような優しい空気を持つあの人のところへいきたかった。
扉の前に立つと、その扉が開く事さえ遅く感じて
僕は体を斜めにして医務室へ入り込んだ。
「もっと包帯をっ…!」
室内では医者がせわしなく動いていて、
床には血をたっぷりすぎるほど吸い込んだガーゼが転がっていた。
「さん!」
その様子に血の気がひいて思わず声をあらげ、
さんの顔を覗きこむと呼吸器をつけたさんは苦しそうに瞳を僅かにひらいた。
「キ・・・ラ・・・・?」
ジンに乗っていたというのになぜか、パイロットスーツは着ていなくて
整備士が着ていると思われる緑色の軍服を着ているさんは
苦しそうに呼吸をしながらも柔らかく笑みを浮かべて見せた。
(僕のせいでこんな怪我したのに・・・!)
僕は唇の端を強くかんだ。
「無理・・・っしないでください!」
「ご・・・めん。」
「君!ちょっと退いて!」
体を医者に追いやられて僕は少し遠くからさんをみた。
相変わらず優しい笑みを浮かべて僕を見てから、
さんは天井を見上げて眉をきつくよせて瞳を閉じ、苦しそうに声を漏らした。
額から流れ出る血はとどまることを知らず、
医者が抑えているガーゼは白から深紅へと色を変えていく。
肩と腹辺りからの血は随分と止まっているものの
巻かれている包帯は点々と赤が滲んでいた。
それからどれだけ時間がたったかは分からない。
僕はタダ手を出せずにさんを見守っていただけだった。
何も出来ない。それがとても歯がゆかった。
やっと状態が落ち着いた頃には医者も疲労しきっていて
さんの横には僕がつくことになった。
少しだけ濃いエメラルドグリーンとどこか温かみを感じさせるアイスブルーのオッドアイは
今は閉じられていて、上下する胸は規則正しく穏やかだ。
「よかった・・・。」
さんの片手に両手を添えて僕は静かに息を吐く。
生きていてくれてよかった。
しかしそこまで考えて急に震えが体のそこから上がってくる。
さんはブリッツを助けようとしてこんな重傷を負った。
そしてブリッツを討ったのは僕だ。
下手すれば僕がさんを殺していたんだ。
そんな簡単な事実。ブリッツ・・・アスランの友達を殺してしまったからとはいえ
今まで気がつくことが出来なかったなんて・・・。
手が震えてくる。
自分で自分の一番大切な人を殺そうとしていたんだ。
いや一度は本当に殺したと思った。
生きて欲しいと思って送り出したポッドがデュエルによって落とされた。
あの時、この人を失ってしまったのだと自分が殺してしまったのと同然だと思っていた。
二度も・・・。二度もこの人を僕は殺そうとしたんだ。
「・・・キラ。」
「!」
僕の名前を呼ぶ柔らかな声にはじかれたように顔を上げる。
うっすらと開いた綺麗なオッドアイが僕を見つめていた。
さんだ・・・。さんがここにいる。
「さん!」
思わず名前を呼ぶとさんは柔らかく微笑んで、
僕が両手を重ねていた手を返し、僕の手を握った。
「・・・震えてる。どうしたの?」
「どうしたの・・・じゃないですよ!
僕は・・・僕はアナタを殺しかけたんですよ!?」
「気にしなくていいよ。」
「そんなこと出来ませんっ!」
叫んだ勢いで立ち上がるとさんはくすくすと笑みを漏らす。
そして僕に向けていた視線を天井に向けた。
「俺が勝手に飛び出していっただけだから。」
「でも僕は第8艦隊の時もさんを・・・!」
続きを言おうとすれば
さんが僕の口元に人差し指を持ってきてそれを制した。
「あれはただタイミングが悪かっただけでしょ?
キラは俺を生かそうとした。安全な場所に逃がしたかった。
ただそれだけ。ちがう?」
にっこりと微笑まれて、僕は返す言葉を失ってしまう。
そうなんだ。その通りなんだけど
でも・・・だめだ。言葉が出てこない。
だけど自分の心の中では納得してないのは事実だ。
「キラと離れてしまったのは哀しかったけど
でもキラが俺に生きて欲しいと思ってくれた気持ちはとても嬉しかった。
それに・・・。」
さんが僕の口元に持ってきていた人差し指を外して、
僕から視線をはずし、穏やかに笑みを浮かべる。
「君が俺を好きだと言ってくれた気持ちも嬉しかったよ。」
「・・・っ!」
その言葉を聞いて僕は小さく息を呑む。
だめだ。涙が溢れてきそうだ。
その続きを早く聞きたくて、でもそれを聞くのがひどく怖くて。
さんが不思議そうに僕に視線を合わせた。
「・・・キラ?」
僕はなんでもないと首を振る。
さんは少し困ったように笑い僕の頬に片手を添えた。
「俺の気持ち。言ってなかったよね?」
「・・・はい。」
触れて感じるさんの体温に知らずと自分の体が反応して顔に熱が上がってくる。
傷ついて、包帯を巻いて、尚さんは綺麗だ。
もし、この人に拒絶されたら・・・?やっぱり続きを聞くのが怖い。
「離れてみて。失ってみて。ようやく気がついたんだ。
キラ・・・・俺は・・・・君の事が好きだよ、キラ。」
大切な宝石でも扱うかのように、丁寧に名前を呼ばれる。
あぁ・・・それだけで・・・。
「え、キラ!?」
「大丈夫・・・大丈夫です。」
零れ落ちる涙は限りを知らない。
さんの寝転んでいるベットにいくつものしみを残していく。
困ったように眉を下げるさんに僕は涙を流したまま、眉を下げて小さく微笑んだ。
「嬉しくて涙が止まらないなんて初めてなんです。」
「・・・そう。」
優しく、嬉しそうにさんが微笑んで
こんな時なのに。
今この時だけはとても幸せな気分だった。
2007/02/08
あとがき
・・・甘いのか?
甘いの書くの極端に苦手だからなぁ(汗)
うん。そんなこんなで再会でした。
そして告白。問題山積みだけど。
フレイとのこと。とか、なんでZAFTにおったのか。とか。
うぉぅ・・・どうしよう、コレ。