『君。キミねェ。ZAFTやめなさい。』
まるで天気の話をするかのように極自然に
白服を着た恐ろしいほど美麗な友人にさらりと言われた。
突然のこと過ぎて思わず、俺は目が点になりなんどか瞬きを繰り返す。
『どういうこと・・・?』
『えー。だって君向いてない。優しすぎる。』
『っ・・・・!』
そんなこと分かってる。
戦いに出向いて敵の命を奪って。
そのたびに自責の念にとらわれて。
相手は敵なんだからと割り切ってしまえばいいとは分かっている。
だけど俺にはそれが出来ない。
『それにこのごろ暴走しすぎでしょ?』
『それはっ・・・!』
俺は一小隊を任される隊長となり
今は目の前の友人と同じように白服に身を包んでいる。
自分一人ならなんとかなった。
だが、自分の小隊全てを守ろうとすれば
頭の中で何かがはじけるような感覚を覚えるスイッチをいれて
敵を殲滅するしか方法がなかったんだ。
それがこの友人のいう俺の暴走。
ZAFTの勝利という結果を多々挙げてきているとは言え
奪い去った敵の命は数え切れないもの。
味方のなかにも失った命はいくつもある。
この目の前の友人の恋人を含め。
じっと相手の深緑のようにどこまでも深い瞳を見つめると
彼女はきょとんとした表情をつくってみせ、『あぁ』と呟きをもらし
穏やかに微笑んで見せた。
『まぁた、あのこと考えてるでしょ?
本当には優しいねぇ。僕は恨んでない。っていったでしょ?
もしハルキのこと忘れたら本気で怒るけどね。』
『そんなっ!忘れない!ハルキのことは絶対忘れない!!』
『うん。そうして。』
カイはとても嬉しそうに微笑み俺の頭を優しく撫ぜた。
そして考え込むように人差し指を口元に持ってきて
一度視線を斜めに上げてから、何を考えているのか分からない瞳を俺に向けた。
『国防長官殿が大艦隊作ろうとしてるのしってる?』
『え・・・?あ、うん。』
近々行われるであろう地球連合との対戦のために
大規模な艦隊を作ろうという計画がたてられているというのは
噂程度に聞いていた。
『それのトップにキミが抜擢されてることは?』
『!?』
驚きを隠せず、目を大きく見開きカイの顔をまじまじとみた。
冗談なら冗談と言って欲しい。俺はすがるように眉を下ろすが
今、冗談を言うような状況ではないということは痛いほど分かる。
『そんなっ・・・!俺はっ・・・!』
『そうだよねぇ。そんな大艦隊。
いくら天才だといっても一人の力じゃ全員を守ることは出来ない。
こっち側の犠牲も少なからず出てくるだろうね。』
自分のもとに集まる兵士達が自分の手の届かないところで死んでいく。
それを想像してみると思わず怖くなって俺は視線を斜めに降ろし、
首を軽く横に振った。
カイの手がすっと伸びてきて俺の頭を優しく包み込む。
そして息が触れそうなぐらい近づき、額同士を合わせた。
『そしてキミが指揮すれば敵もそれは多く死ぬだろうね。キミは天才だ。僕が認める。
・・・でも僕はがそれを嫌うのをしっている。』
『・・・。』
至近距離にある綺麗な顔。
不安に揺れる瞳で視線をあわせれば、
カイはふわりと微笑み、俺の額に唇を落とし離れる。
なぜだろう。小さい頃からこの動作をしてもらうと心が少し落ち着く。
本人はおまじないだと言っていたけれど。
『それにね。当然といえば当然なんだけど保守派は反対してるんだ。
いくら天才でエースで英雄だけど若い子に大艦隊1つ。
ポンとくれてやるわけにはいかないからね。』
困ったように笑いカイは僕の頭を弱くポンポンと2回手を置いた。
『暗殺の魔の手がもしかすると僕の愛しの君に伸びてくるかもしれない。
ということで。』
『・・・カイ?』
カイがこんな風に言う時は何かとんでもないことが起きる。
不安に想い名前を呼ぶとただ笑みを返された。
『僕はキミを逃がすことにしたよ。』
『なに・・・それ!?』
『えー。だって退役とかお偉いさん絶対許さないしー。
こんな大エースするっと退役させるやついたら見てみたい。
いや、絶対いないね。』
腕を組んで人差し指を立てて、妙に自信に溢れた態度でカイはそういう。
自分だってZAFTの大エースのくせに
どうして俺だけが大エースだとでもいうような言い方をするのだろう。
『カイは・・・いいの?こんな場所にいて。』
『え、僕?』
そう聞かれたことが予想外だというようにカイは目を丸くして見せた。
しかしその表情はすぐに微笑みに変わる。
『僕は大丈夫。残念ながら精神が軍人にそまりきってる。
相手は・・・地球連合は敵って思うからね。
非情なんだよ。君とは違って冷たい人間なんだ。』
どこか哀しそうにいうカイに俺は下を向いて強く首を横にふった。
『カイは冷たくなんてない・・・っ!
冷たい人だったら俺のことこんなに考えてくれない!!』
なんでだろう。泣きそうだ。
くっと唇の端をかんで、俺は流れてきそうなものを押しとどめる。
カイの手が俺の頬を優しく撫ぜた。
『僕はのためならなんでも出来るんだ。それほどまでにキミは僕にとって大切だ。
だからキミには非情に見えないだけだよ。
勝利のために僕が部下をどれだけ見殺しにしてしまったか分かる?
キミなら助けようとする状況でも僕は残りを優先して助けにいかないような人間だ。』
それが軍人にとっては当然のことなのだろう。
だが、その決断をするにはかなりの精神力がいる。
そして俺はそれが出来ない人間。
軍人に向いてない。本当にそうなんだろう。
『本当・・・俺って・・・向いてないんだね。』
『うん。言ってるでしょ?もう手配は進んでる。
キミは戦火から遠ざかるべき人種だよ。』
『でも俺だけ逃げるなんて・・そんなのっ・・・!
カイは・・・・!カイはいつになったら戦場から遠ざかるの?』
『・・・またキミは困る質問をするねぇ・・・。
は今すぐ逃げるべきなの。僕は別にいま逃げなくても大丈夫なの。
僕が戦場から消えるのはまぁ、そのうち。とでもいっとこうかな?
あと戦争が終われば当然ってとこだね。』
『・・・。』
平和が・・・早く訪れればいいのに。
俺のためとかいってこの友人が非情な決断をしなくていいように。
だれも苦しむことがないように。
『予定は4月14日。覚悟しといて。』
『・・・わかった。』
早く戦争が終わればいいのに。
2007/02/14
あとがき
ここであえて過去編。
夢の中ってことにしてあげてください。
ちょうど意識失ってるし(待)
子どもっぽい主人公さん可愛いなぁっ!
書いてて楽しい!(笑)
しかしバレンタインでこの話(…)