少佐と別れて最初に出会ったサイに独房につれてきてもらった。
サイに独房に連れて行って欲しいと頼めば、サイはそんな必要ないといいながら随分と悲しそうな表情をして見せた。
そういってくれるのは嬉しいのだけれども俺の身の上は一応捕虜ってことになっていて
その捕虜が艦内を自由に歩き回ってるなんてことがアラスカ本部にしれたらAAの立場が悪くなるのは目に見えて明らかだ。
アラスカ本部についてからすぐにそうすればよかったのだけれども
怪我してたことと発砲事件があったこと。ディアッカがこちらにつかまったこと。
その他モロモロが積み重なって、将校達が本部に出向いている今まで先延ばしにすることになってしまった。
言い訳にすぎないけど。
「あれ??」
ほとんど明かりがともらない、暗く寂しい独房について、通路を歩いていると俺に声がかかった。
声のしたほうを見てみると蜂蜜色の髪をもつZAFTのアカデミーの教え子。
「ディアッカ・・・もうこっちにきてたんだ。」
「あぁ。つか当然だろ?お前が遅いの。」
ご尤もな意見に俺は思わず苦笑を浮かべて見せた。
多分発砲事件があってその後すぐに移動したんだろう。
独房だというのに既に簡易ベットの上でくつろいでいる。
やることがないから当然か。
「さんこっちです。」
困ったようにディアッカをみて笑っていると
サイが少し不服そうな表情をしてから俺の腕を引っ張ってもう少し独房の奥のほうへと連れて行った。
結構とディアッカと離れてしまったみたいだ。
「えっと・・・サイ?」
不安げに声を掛けてみるとサイははっとしたような表情を見せてから
少し斜め下を向いた。体から申し訳ないとでも言いたげな空気があふれ出ている。
あれ?なんだろう。小さく首をかしげるとサイは俺の方を見て口を開いた。
「すみません。多分嫉妬です。」
「嫉妬?」
「俺が知らないさんをアイツが知ってるっていうことの嫉妬。」
どこか他の少年達より大人びているサイがまさかそんなことを言い出すなんて思わなくて
俺は思わずサイの顔を見ながら瞬きを数回繰り返した。
サイはソレを見てあわせてたような表情になり、胸の前で両手を広げて左右に振った。
「すみませんっ!なんでもないです!忘れてください!」
その慌てぶりがなんだかおかしくて俺は思わず噴出し、サイの頭に柔らかく手を置いた。
少しびっくりしたように体を竦ませてからサイは俺の手が置いてある自分の頭の上を見上げる。
「ディアッカは確かにサイが知らない俺を知ってるかもしれないけど
サイはディアッカが知らない俺を知っている。だから二人とも同じじゃないかな?」
その人と知り合った期間なんて人それぞれだし、
何かをみて感じたり、思うことも人それぞれだ。
その人に関してまったく同じことを知ってる人なんていない。
だから本来は嫉妬する必要はない。
「ありがとう。サイ。」
「え?」
「嫉妬するってことは君が俺のこと大切に思ってくれてるってことだよね?
俺はそれが嬉しい。」
にっこりと微笑むとサイは恥らったように頬を染めて俺から視線をそらしてから
真剣な表情をして俺の瞳と真っ直ぐに視線を合わせた。
「さん・・・キラのこと思い出してくださいね。絶対に。」
「・・・うん。がんばるよ。」
キラという単語にずきんと心が痛んだが、ソレを表に出さないように
なんとか表情をつくろって独房の中に入る。
サイが痛そうな表情をしながら独房の鉄の柵で出来ている扉を閉め、そして鍵をかけた。
「すみません。」
「どうして謝るの?俺が頼んだんだから謝る必要はないよ。」
「・・・はい。じゃぁ、俺はやることがあるんで失礼します。」
「うん。ありがとう。」
にっこりと微笑んで手をふるとサイは軽く俺に礼をしてからその場を後にした。
暗い独房の中で白く浮いている簡易ベットに倒れこんだ。
本当に人によってそれぞれ。
少佐は忘れろといった。
サイは思い出せといった。
俺はどっちを求めてるんだろう。
綺麗にそのキラっていう子の存在が記憶の中から消えてしまってるから
忘れたいのか思い出したいのかそれすらわからなくてソレにひどく心が痛む。
見えるところに人がいなくなったこの暗く寂しい空間は本来以上に寒く感じる。
北の大地アラスカといえどもAAの中は暖房がきいていて、それはこの独房にも供給されているはずだ。
だが息が白くなるのではないかと思うぐらい寒く感じる。
自分の体を抱くように腕を交差して、手でこすれば、気持ちだけまっしになったような気がした。
「ー。」
「・・・!なに?ディアッカ?」
少し離れた場所から声がして一瞬驚いてから言葉を返すと
なんだか笑われたような気配がしてから再び言葉が返ってくる。
独房の中では声がよく響く。少しだけ反響するような音が聞こえた。
「お前相変わらず色んなヤツに好かれるんだな。」
「みんなが良い子なだけだよ。」
「ふーん・・・まぁそういうことにしとくか。」
この状況だというのにディアッカはどこか楽しそうにそういう。
俺はいろいろ複雑だから無理だろうけど、ディアッカだけでも何とか解放できないだろうか。
捕虜の扱いだから殺されることはないにしても、この状況は嬉しいものではない。
「ねぇ、ディア・・・」
ディアッカと呼ぼうとしたそのときガチャンと大きな音がして、俺は口を紡ぐ。
いくつかの革靴の音がこの独房に入ってくる事を知らせた。
何事だろうとベットから起き上がって柵の扉の方へ向う。
カツンカツンと固い床と革靴の底がぶつかりあう音は俺の独房の前で停止した。
見たことがない将校達。おそらくアラスカ本部の将校。
まだ査問会議は終わってないだろうから、AAの将校がいないときを見計らってやって来たのだろう。
そしてわざわざこんな薄暗く寒い独房に来るぐらいだ。俺にとって良い内容であるはずがない。
「ほう。コレがZAFTの銀のツバサか。」
おそらく一番階級が高いと思われる、髭を蓄えた将校が片手を腰に当てて俺を見た。
コレ。と明らかにモノでも扱うかのような言い方にピクリと眉がよってしまう。
彼らにとって俺はただの取引材料でモノと同じような存在であるということはわかっているけど
やはり実際聞いてみると気分がいいものではない。
「開けろ。」
やはり知らない将校が俺の独房の鍵を開ける。
先程の髭を蓄えた将校が一人独房の中に入ってきて、
にたりと舐めるような視線で俺を見、俺の肩を強く突き飛ばした。
「っ!!」
背中が独房の壁にぶつかり、鈍い痛みが走る。
その痛みがひかないうちに今度は腹に強い衝撃が来た。
耐え切れなくて床に膝をつく。
「!!」
遠くからディアッカの心配そうに名前を呼ぶ声が聞こえる。大丈夫。そういおうとしたのだけれども
内臓が圧迫されるような感じがして一瞬息が詰まった後、嗚咽感が口元にのぼってきた。
吐きはしなかったものの、なんどか喉が焼けそうな咳をして
痛みに眉をしかめながら将校を見上げると将校は随分といやらしい笑みを浮かべて俺を見下した。
「さすが、噂に聞く以上にお綺麗だ。たとえ苦痛に表情がゆがんでも・・・なぁ、銀のツバサよ。
コーディネーター嫌いのあの人がコーディネーターでありながらお前を欲しがるわけだ。
おい。やれ。」
将校が手を上げて腕から前に倒すと2,3人が再び独房内に入ってきて
膝を追っている俺を仰向けに押したおし、両手を後ろに持っていき、そこで手錠を掛けられる。
押し倒された衝撃で顔を固い床でしたたかにうち、口の端が切れた。
口の中で血の味がする。
頭の上に重力を感じる。どうやら俺は誰かに踏まれているらしい。
「いい格好だ。英雄がこんな姿になるなんてZAFTが見たらさぞ悲しむだろうな?」
捕虜だから抵抗なんてするつもりなかった。
だがここまで乱暴にことを運んでいくのは、
捕虜である敵を。抗う力のないものを痛めつけたいという欲望がこいつらの中にあるからだろう。
髪をつかまれ乱暴に上を向かされる。髭を蓄えた将校と視線が合った。
「お前を今からある方のところに連れて行く。抵抗してくれるなよ?」
まだ少し痛む体を無理矢理起こされて、俺は独房から出される。
ディアッカがいる独房があるところを通り過ぎる時、ディアッカと目があった。
口の端から血を流している俺を見て随分と驚いたような表情をしていた。
俺は大丈夫とでも言うように微笑を浮かべると、すぐに表情を戻して前を向く。
この顔をずっと見せていてはいけない。
幸いにAA内では誰にも会うことがなかった。
AAの外に出ると半そで、ハーフパンツの俺にとっては少し冷たい気温にさらされる。
室内とはいえこれだけ広いドックであれば暖房は十分にきかないようだ。
暫く歩いていって、奥まった部屋につれてこられる。こういう部屋は大抵重要人物がいる場所だ。
俺の前を歩いていた将校が部屋の扉をノックする。
どうぞ。と部屋の中からそれに答える声がして、目の前の扉がゆっくりと開かれる。
大きな重そうな机の向こう。
机の上に両肘をつけて両手を組み、その上に顎を乗せてにたりと微笑んでいる
水色のスーツを着込んだやわらかそうな金髪と碧眼をもつ男。
「こんにちは。銀のツバサ。僕の名前はムルタ=アズラエルです。」
2007/08/28
アトガキ
どうだ!激しすぎる移動だろ!!
オフではよくお前はSだといわれます^^
ごめんなさい orz 名目が一応ALLなのです・・・