「作戦はわかった?」

ZAFT本部の寮。自室で地図を広げながらカイは確認するように回りを見渡した。

俺を含め4つの影がソレに頷く。その人物たちは俺とラウとアンディとフィーラ。

他の4人の部屋ではなくカイの自室で作戦会議ってことになったのは

いろいろ功績を挙げてるカイの部屋は他の部屋より広く、プライバシーも絶対的に保護されているため。

俺の部屋もカイと似たような感じなのだが、もし今回の作戦がばれた時、

逃がされる俺の部屋がまっさきに取り調べられるだろうから、俺の部屋で会合があったなんてしれたらまずいからとのこと。

ちなみにカイの部屋に集合。っていうのはカイが酒盛りするからとかいう理由で

この面子がこの部屋によく集まるため、このような集まりも不自然に思われる可能性はほとんどないっていう利点もあるから。



「じゃぁ確認。まず、アンディはA地点にMSで待機。」


「あぁ、了解だ。」



「今回の作戦では隊はヒプノウシス隊の指揮下で戦ってもらう。
 そこらへんの許可は上にもうとってある。
 はMSにのってラウと行動。途中MSの不調のため整備するっていう名目でMSをA地点に着地。
 そこで待機しているアンディと合流。はMSをおりてアンディのMSに乗り込んで。」



カイはそこで一度言葉を区切った。

誰も言葉を発しない。緊張感が部屋の中に漂っている。

この部屋でこんなに緊張感が漂ったのは初めてのことなんじゃないだろか?



「で、MSの遠隔操作が出来る機械を作ったからそれではおりたMSを操作して。
 ここは出来るだけスムーズにちょっと難しいけど君ならできるでしょ?」



地図を指差しながら説明していたカイが俺に視線をあげる。

説明はわかる。だが、少し気になる点。



「・・・ねぇ、カイ。」


「ん?何?」


「その機械どうやって作ったの?」



MSの遠隔操作が出来る機械とかきいたことがない。

先程の説明からMS降りた後どうするのか少し気になってたんだけど

まさか、そんな機械があるなんて。



「クライン嬢に頼んで彼女の家の専属のMSドックで作ってもらった。
 アカデミーの時から作ってみたい。って思ってたから設計図はあったし。
 心配しなくてもテストも良好だったから大丈夫だよ。」



遠隔操作の機械なんて今まで聴いたことがない。

しかも実用化されてるなんて人たちはしらない。だから俺がMSに乗っていないなんて夢にも思わないだろう。

しかし、どうして俺なんかのためにこの友人はここまでやってくれるのか。

じっと彼女の顔を見つめてみるが彼女はそれに答えてくれるつもりはなさそうだ。

俺の視線を受け流して、そのまま地図に視線を落としてしまう。



「で、ラウはMSの乗り換えまで不自然じゃない程度にについていて。
 その後遠隔操作ののMSのサポート。作戦まで絶対落とさせるな。」


「了解。」



随分と強い光を瞳に宿してカイはラウの瞳を伺い見て、作戦内容の確認を続ける。

ラウはまるでそれに気圧されたように表情を引き締めて頷いた。


「フィーちゃんは僕の母艦で指揮をとって。
 アンディたちがいるA地点に出来る限り味方を近づけさせないように。
 僕もそこには導かせないから。」


「わかった。」


「そして僕はMSで出る。
 途中、ちょっとしたコネで手に入れた地球軍のMAを
 MSの中から操作しての操縦しているMSを落とす。
 MSが不調だったっていう理由つければ”銀の翼”が落とされても不思議じゃない。」


「ちょっとカイ!?一度に2つも操作するつもりなの!?」



ぎゅっとカイの腕を握り締めると、真剣な表情をしていたカイがふんわりと俺に笑みを浮かべた。

それが異様に安心を与えてしまうもので、安心してはいけないとわかっていても

一度は不安に駆られた俺の心は落ち着きを取り戻し始めてしまっている。



「片手でMSを操作するぐらいわけない。遠隔操作の機械も片手で操作できるように改良した。
 何か邪魔さえ入らなければ普通に上手くできる。
 ラウ。そこのサポートは頼んだよ。下手すれば僕が落ちる。」


「わかっている。」


「まぁ、落ちてもが逃げれたらそれでよし。
 が遠隔操作しているMSが大気圏に落ちた後はそのMAは僕が落とす。」


「一人芝居ってこと?」


「そうなるね。不調とはいえ銀の翼を落とすぐらいのMAだから僕レベルじゃないと落とせないでしょ?」



なにをいってるのかと。誰も突っ込めないほどカイのMS操作はすごい。

ZAFTの英雄とか言われてる俺でさえも少し気を抜けば落とされてしまうだろう。

自分のMS操作の腕には結構自信を持っている。

だけどもし自分を落とせる可能性がある人物を挙げろといわれれば俺は間違いなくカイをあげるだろう。


「あぁ、それからフィーちゃんはA地点の近くを中心に戦陣を引いて。
 どれだけ地球軍がきても僕とラウがつぶすから。
 熱源が混在してきた時を見計らってアンディとは戦場離脱。
 少し離れたところにクライン家の秘密MSドックがあるからそこに着陸。
 アンディははを降ろし次第、熱源が混在してる間に僕の艦に戻ってくる。
 は戦闘が収まった後でクラインの小型機でヘリオポリスにむかう。
 ・・・以上。わかった?」



作戦内容を頭に入れてなんとか頷く。

部屋にいる全員が真剣な表情をして、同じように頷いた。



「全てにおいてタイミングが大事。絶対にしくじるな。」



『了解』




◆◆◆




地球連合から戦線布告されたのはその作戦の次の日。

カイが予想したその通りの位置で戦闘の布陣がひかれることになった。

あいかわらずカイの勘は見事だ。


作戦指揮は違う艦隊の提督にあるものの、

黒翼が率いる俺の部隊は自由に動いていいという指示が出された。

更衣室でパイロットスーツに着替えブリーフィングルームに向うと

黒いパイロットスーツを着込んだカイが既に椅子に座って待っていた。



「ラウは?」



首をかしげて問いかけるとカイはドックの方に視線を向けた。



「もうMSに行ってる。
 隊長に生で会うと引き止めそうになるからだって。」



美麗な友人はくすくすと楽しそうに笑いながらそういう。

ちなみに防犯カメラには口がうつらないような位置に顔を背けながら。



(引き止めそう・・・か)



あぁ、俺はここからもうすぐいなくなるんだ。

その事実を今さらながらに感じて俺は視線を下に落としてしまう。

それに目ざとく気がついたカイは俺の頬を両手で挟み、上に向けた。

少しだけ。目の前がぼやけてくる。

ふんわりと柔らかな笑みを浮かべる友人の顔がぼやけて見えなくなってくる。



「カイは・・・。」


「ん?」


「・・・引き止めてくれないの?」



甘えるように眉を下げて問いかける。

するとカイは困ったような表情を見せて俺の頭を撫ぜた。



「引き止めたくない。って言ったらうそになる。けれどね、
 この作戦を考えたのは僕だ。君を逃がそうっていったのは僕だ。
 その僕がゆらいでどうするの?」



わかる?とでも言うように小さく首をかしげてカイは言う。

わかるんだ。わかるんだけど。

なんだか聞きたくなくて嫌だ嫌だと頭を横に振る。


この友人と離れてしまうのが嫌だ。

ラウとフィーラとアンディが手の届かない場所に行ってしまうのが嫌だ。



俺を逃してくれるのが優しさなんだってわかってる。

けれど俺は皆と離れてしまうのが辛い。

離れてしまうんだ。それが怖くなって体が少し震えてくる。



「・・・まったく甘えただねぇ、キミは。」


「!」


「僕の加護をあげる。黒翼の加護をね。」



頭を両手で掴まれて、額に唇を落とされる。

小さい頃からカイが俺にやってくれるおまじない。

これをされると体が勝手に落ち着くようになってしまっている。

震えが止まり、ゆがんでいた視界が元に戻る。



「死ぬな。僕が逃がした命を無駄にするな。」


「・・・うん。」



強い意志を持った瞳にまっすぐに見つめられ、気圧されそうになりながらも俺は頷く。

カイの瞳は抗うことを許さない。だから、俺はソレを真っ直ぐに見つめ返した。



「あと戦場には出てくるな。
 いくら僕といえどもそうなるとを助けることは出来ない。わかった?」


「わかった。・・・約束するよ。
 ・・・・カイ。また会えるよね?」



首をかしげて伺うように問いかける。

そうするとカイは華のように可憐な笑みを浮かべて俺を抱きしめた。



「僕は死なない。だからが生きていれば必ず。」


「うん。」



とくんとくん。と落ち着いたカイの鼓動が俺に伝わってきて気持ちが落ち着いてくる。

絶対失敗しない。

絶対生きてもう一度みんなと会うんだ。




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2007/09/25

あとがき

過去話。そろそろ終わりに近づいてきたのでちょこちょこ入れています。
お気づきかもしれないですが、黒背景のときは過去の話になってます^^
甘えたに甘えたに・・・!と心の中で祈ってかいたけどちゃんとできてるかなー。