「アズラエル・・・?」



僕の名乗りに目の前の驚くほど美麗なむかつく人種は不可解そうに眉を寄せてそして小さく首をかしげて見せた。

それがなんだかおかしくてこみ上げてくる笑いを抑えながら、

彼をココにつれてくるためについてきた男達ににっこりと笑みを向けると彼らは静かに腰を追って室内から出て行く。



ぱたりと扉が閉まる音の後、暫くの沈黙があった。

しまった扉を暫く見ていたどこかの皇族かと思えるほど甘いマスクを持った彼が

ゆっくりと此方を向いて、彼の視線が僕をまっすぐにとらえる。

拘束具をつけられ、両手が後ろに回った状態でこちらに近づいてくる姿は妙に蠱惑的で

ゾクゾクと歓喜と知れない何かが背中のほうからのぼってくる。



「アズラエルって・・・ブルーコスモスの?」


「おや。よくお知りですね。」



口元に手を持っていって僕は恍惚に笑みを浮かべる。

ぴくりと彼の眉が寄った。不快感が表情に溢れている。



「知っていてもらえるとはなんという光栄のきわみ。」



まさかZAFTの英雄にまで名が届くほど有名になっているとは。

この仕事も思わぬところで利益が返ってきた。



(やってて損はなかった・・・と)



冷静を装っているが、瞳の奥に僅かに不安を持っているこの青年を

こういった形であれ、手に入れることが出来たのだから。

そう。それが忌み嫌うコーディネーターでも。



「さすがですね。」


「なにがですか。」



単調に返ってくる答え。僕などと話したくないと態度にありありと出ている。

僕はそれを意図的に無視してゆったりと笑みを浮かべて足を組みかえた。

薄暗い室内の中で一際光るパソコンのモニターの光。

その光を彼の方に向けて、僕は肘を机について手を組み、その上に顎を乗せた。



「このような状況下でも光が失われないことです。
 とりあえずそこにおかけください?」



ソファを見ながらそういうと彼は大人しくソレに従う。

薄暗くて見えづらいが、モニターの光に照らされた彼の顔は殴られでもしたのか

酸化して赤黒くなった血が口の端から流れていた。



「彼らがご迷惑をおかけしたようで。」


「それは嫌味ですか?」


「どうとっていただいても構いません。」



わざと相手の逆鱗にふれるように笑みを浮かべて、語尾を上げる。

そうすれば思ったとおりに彼の機嫌が低下していくのが目に見て取れた。

ZAFTの英雄は思ったより素直らしい。感情を隠しきれていない。

隠そうとしてないというのもあるだろうけど。

絶えずにこにこと笑みを浮かべていると彼は嫌そうに目をそむけてから、小さく息を吐く。



「こんなやりとりをするために俺をここに呼んだわけじゃないでしょう?
 御用はなんですか?」



用件だけ済ませてさっさと帰らせてほしい。

暗にそういって、=はオッドアイの美しい双眸を僕に向けた。



「そうですね。さっさとお話しましょうか。
 端的に言います。最近噂されてるパナマ作戦についてです。」


「・・・。」



ピクリと肩眉がはねる。

いくら捕虜としてAAにいたといっても少しぐらいは噂に聞いているだろう。

ZAFTがパナマに攻めてくるらしいという噂。

それに地球軍が備えているということも。



「それが捕虜の俺になんの関係が?」


「簡単に言いますとあなたココにいると死にます。」


「は?」



与えた情報が少なすぎて彼は眉を寄せ、僕を見た。

確かにコレだけの情報から意味を想像しろといわれれば僕だってわからない。




「パナマ作戦っていうのは仮面のようなもの。つまり嘘。偽り。
 そうですね。正しく名前をつけるとするなら・・・
 アラスカ作戦ってとこですかね。」


「・・・!
 どこからそんなっ・・・!」


「情報は漏れるものです。
 そしてこの情報は地球軍のTOPにも漏れている。」



焦る彼に悠然と笑みを深めると、さらにその焦りは目に見えてくる。

予想以上にこの子は白い。軍の黒い部分にあまり触れていない。

前線に出て活躍しているからなのか、それとも誰かが意図的にその部分を見せようとしなかったのか。

まぁ、今はそんなこと関係ない。ココに彼がいる。ただそれだけで自分にとっては十分だ。



「AAはアラスカの所属になるそうです。
 つまり・・・捨て駒になるんですよ。」


「!?」



一瞬彼の動きが止まり、その後に彼はソファから勢いよく立ち上がる。

AAに行くこと以外何も考えていないようにそのまま扉の方に駆け出して

この部屋の外に出ようとするが、生憎この部屋は中からも暗証キーを押さないと出れないようになっている。

こういうことを考えてこの部屋にしていてもらってよかった。

自然と口元に笑みがのぼってくる。



「おやおや、どこに行かれるのです?」



わざとらしい言い回しかたで僕は椅子から立ち上がり彼のほうへ向う。

彼は悔しそうに口の端を噛んで、僕のほうをにらみつけた。



「両手が使えれれば、ココから逃げ出すことも可能だったでしょう。あなたならね?
 けれど、今回は僕の勝ちです。」



ゆったりとした足取りで彼の方に足を進めながら

にっこりと微笑み、手に持っているリモコン式のボタンのスイッチを押した。



「っ!?」



彼の瞳が極限まで開かれて、そのまま体が床に崩れ落ちる。

痛みに体が痙攣をおこしてなお、彼は僕のことをにらみ続けていた。

そんなことされてもこの状況ではまったく怖くなんてないのに。

逆に加虐心を煽るだけ。



(意味のないことを・・・)



「手錠にね、このボタンを押せば電気が流れるようになってるんです。ほら。」


「うぁっ・・・!!」


「・・・あ、失礼しました。間違って押してしまいましたよ。」



再び彼の体がピクリとはねた。息遣いが荒く、強く瞳を閉じる。

言葉で謝罪を示してもまったく悪気なんてない。

コーディネーターの最高峰といっても過言ではない彼をこうやっていたぶれるなんて

僕が待ち望んでいたことの他ならない。

僕を落ちぶれと呼んだ、彼らへの昔の仕返し・・・。

彼に当たるのはお門違いだという言葉が振ってきそうだが

そんなことはどうでもいい。あのときから自分の忌み嫌う相手はコーディネーター全てなのだ。

ガンっと、力強く彼の背中に足を乗せて踏みつけると彼はくぐもった声をもらした。



「こうなってみると・・・ZAFTの英雄も哀れですね。」


「・・・が・・・」


「はい?」


「何が目的でAAを・・・!」


「さぁ?命令を下したのは僕ではありませんし・・・。」



唇に指を添えて目線を上にしながらポツリと呟く。

そうしながら、背中においている足にぐりぐりと力を加えると

彼の口から苦しそうな声が漏れた。



「僕が望んだのはあなただけ・・・・。AAのことにはまったく興味なんてありません。
 僕が興味があるのはあなただけなのですから。」



彼の背中から足を降ろし、その場にしゃがみこんで彼の髪を掴み

無理矢理僕の方を向かせる。

彼のオッドアイが完璧に僕の方へ向いたことを確認すると

僕はポケットから注射器状の入れ物に入った薬品を取り出した。

ソレを彼のくび元に突きつける。不安の色が彼の瞳の奥に見て取れた。



「僕の可愛いマリオネットになってください。。」


「な・・・にを・・・!?」



指先に力を込めると、注射器の中から薬品が消えていき

ソレと同時に彼の瞼も落ちていく。



「いい夢を。」




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2007/09/25

あとがき

ごめんなさい。すっごい楽しかったです 笑
いいな、ムルタ。キャラを散々いじめられる^^
主人公さん。まさか情報を流してるのが自分の元部下だなんて思わないんだろうね。
優しい子だからなぁ。