少し指を動かせばまるで自分の体のように、思ったとおりに機体が動く。
ストライクを基盤として作った機体らしいがストライクとは性能が桁違いだ。
なにより違うのはこの機体にはニュートロンジャマーキャンセラーが搭載されていること。
血のバレンタインで地球軍によって使用された核。
そして核を使えないようにとニュートロンジャマーを地球に埋め込んだZAFT。
核を戦闘行為においてはもう使わない。という意志。
そしてこの機体はその強い意志を壊すもの。
それを託されたという意味。
僕はこのことをよく理解しなくてはいけない。
青い地球の中に雪によって白く見えるアラスカの形が見えた。
僕はブースターをふかしてスピードをさらに上げ宇宙空間の中をまっすぐと突き進む。
隣をすれ違うかのようにシャトルが飛んでいった。
大気圏に突入し始め、機体に強い抵抗を感じ始める。
摩擦により周りの粒子が赤く燃え始めた。
気休め程度にしかならないがシールドをコックピットの前に持ってきてそのまま大気圏に突入を始める。
一度ストライクでも大気圏突入を行ったとはいえあれはAAも一緒だった。
恐れが無いといえばうそになる。
だが、今はこの機体を信じるしかない。
コックピット内の温度が少し上昇してくる。それに伴い、アラーム音が鳴り響いた。
しかし以前と比べるとかなり軽度のものであまり体には負担にならない。
気がつけば、あたりはうっすらと白く雲の中に突入していた。
機体の外の温度はずいぶんと低い気温をさしていて、空気が堅そうな気配さえした。
高度をどんどん下げていくにつれ、地上でチカチカと光るものが見える。
だけどそれは星といった綺麗な類の物ではない。
人が人を殺す。
それがさも当然かのように行われている戦争の光。
ひときわ光が強くなったと思えば、そこから黒い煙が立ち昇る。
こんなことを当たり前のように行うこの世界を僕は変えなければいけない。
今は小さな光だが、僕はソレを成し遂げるためにこの機体を預かったのだから。
アラスカ本部の上空まで来てひときわ目を引く懐かしい白い艦。AAを見つける。
「くっ・・・!」
カメラをズームにした途端AAがZAFTのMSによってうち抜かれそうになっていることを悟り
僕はライフルをかまえ、敵のライフルに標準を合わせて放った。
そこは駄目だ。僕の大切な人がそこにはいるのだから。
一拍後に敵のライフルが破裂し、MSがライフルを捨てる。
ひとまず大丈夫。僕は小さく息を吐いてからAAの前にまっすぐ降下しながらサーベルを引き抜いて
相手の目にあたる頭部を切りはなした。
そしてAAを背にかばうようにその空間に停止する。
僕は目を閉じてからすっと息を吸う。
大丈夫。神経は高ぶったりしていない。
ゆっくりと目を開いて、通信回線を開いた。
「こちらキラ=ヤマト!援護します!今のうちに退艦を!!」
通信から僕の名前を呟く声が聞こえてくる。
きっと死んだと思われていた。思わせていた。
心配させて、ごめんなさい。
言葉には述べず心の中で謝って、僕は視線を前へと向けた。
ただ、あの人の声が聞こえないことが少し気になった。
いれば僕の名前をすぐに呼んでくれそうなのに。
なぜ彼の声が僕の耳に届かないんだろう。
もし叫んでいれば僕は絶対にその声に気づく。だってあの人の声なんだから。
いくつものZAFTのMSがこちらに向けて銃を連射してくる。
頭の中で何かはじけるイメージがあって、その後に頭が一気にクリアになる。
目でMSの座標を追い、つぎつぎと標的をロックしていく。
大きく振りかぶり、フリーダムに無数についている噴射口を構えそのままビームを放った。
コックピットは狙わずにカメラやライフルのみに狙いを定め、降りかかる銃弾の雨から逃れるように回避行動をとる。
しかしいつまでたってもAAは動こうとしない。
早くしないとAAは落ちてしまう。いくら僕といえども無限に守れるわけではない。
「マリューさん!早く退艦を!!」
『あ、いえ、あの・・・!』
画面の中の彼女はずいぶんと歯切れが悪い。
どうしたのだろうと話の続きを聞いてみるとひどく残酷な現実を思い知らされた。
『本部の地下にサイクロプスがあって・・・!私たちはおとりに・・・!
作戦なの!しらなかったのよ!!だからここからでは退艦できないわ!!
もっと基地から離れないと・・・!』
振り絞るように叫ばれた言葉に僕は無意識のうちに息を大きく吸い込んだ。
トカゲは自らを守るために尻尾を自ら切り落とす。
地球軍にとってAAは尻尾ということらしい。
ヘリオポリスから命がけで情報を運んできたAAに対してそれはあまりに無情な仕打ち。
ちらりと頭の中で黒い感情が生まれたが、僕はその考えを気のせいだと言うことにして頭を切り替えた。
「・・・っわかりました!」
『え?』
そう返事をしたとたんにコックピットの中でアラームが鳴り響く。
弾道を避けるためにその場から移動して、全域に回線を開いた。
「ZAFT、連合、両軍に告げます。
アラスカ基地はまもなくサイクロプスを稼動させて自爆します!
両軍とも直ちに戦闘を停止し撤退してください!!」
こんな言葉すぐに信じるものはそういないだろう。
僕だってこんな通信を拾っても信用する気にはならない。
なおも僕に向かって銃弾を浴びせて来ようとするMSのカメラやライフルを打ち壊し、
力ずくで戦闘行為をとめようと働きかけた。
しかしその攻撃をぬって僕にビームライフルを放ってくる機体があった。
シールドで防ぎながらカメラをそちらのほうへ向けてみると宇宙でなんども見かけた
見慣れた機体である、デュエルがこちらに向かってくるところだった。
頭の中に折り紙をくれた少女、爆破された民間機。
大好きな彼を失ってしまったと思った気持ちが思い浮かび
腹の置くからふつふつとどす黒い感情が上ってくる。
だけど・・これでは戦争は終わらない。こんな気持ちが戦争を長引かせている。
僕はその気持ちを抑えながら迷いなく振り下ろされるサーベルをシールドで防いで、迫りくるこぶしをこぶしで防ぐ。
「やめろといったろ!?死にたいのか!!?」
『なにぃ!?』
デュエルが肩辺りに装備していたライフルを起動させる。
それを身をひねることでよけ、くるりと空中で回転してからビームサーベルを引き抜き
そのままデュエルに突っ込む。軌道はコックピット。いつかの・・・ブリッツと同じ軌道。
耳の奥にデュエルのパイロットの叫び声が聞こえる。
僕は奥歯を強くかんで指を動かした。
「早く脱出しろ!もうやめるんだ!」
胴体と足を切り離し、もう空を飛べないようにして海にデュエルを突き落とす。
彼はおそらくZAFTのエース。放っておいても助けがくる。
予想通り海面すれすれでZAFTのMSが彼を拾っていった。
『サイクロプス起動!!』
AAからの通信がサイの声で入り、僕は目を見開く。
いったい彼らはこの犠牲の上に何をつくろうとしているんだろうか。
犠牲は戦争の火を大きくするだけだ。
どうしてそれがわからないんだろう。
『機関全速!退避!!』
マリューさんの声を合図とするように周りの船がどんどんアラスカ基地を離れていく。
サイクロプスの波動により赤くはじけて消えていくMSや艦を目の端に移し、操縦桿に置いた手を強く握り締めた。
どうしてこんな悲しいことをするんだろう。これでは後に残るのは憎しみだけだ。
すぐ近くで爆発が起こる、ZAFTのMSが手を伸ばしながら海上に落ちていこうとする。
「つかまれっ!」
もう誰も死んで欲しくない。
すぐ後ろまでサイクロプスの波動は迫ってきていた。
その手をとって僕はブースターをさらにふかした。
なんとかサイクロプスの波動から逃げ切って、
安全な岩場に降り立ちZAFTのMSに乗っていたパイロットを救護するために外に運び出した。
「しっかりしてください!大丈夫ですか?」
「君があのMSを・・?」
「・・・はい」
彼はくぐもった声をだしながら、なんとか僕のほうへと視線を投げかける。
熱で喉がやられてしまったのだろう。ひどく喋り辛そうだ。
「なぜ・・・助けた・・・?」
「そうしたかったからです。」
この答えは何も考えずにすぐに口に出てきた。
彼を助けたのは何か利益を得るために助けたわけではない。
体が勝手に動いていた、ただそれだけなんだ。
「殺したほうが・・・早かっただろうに・・・」
ゆっくりと彼のまぶたが落ちていく。
そして首の力が抜け、ガクリと首が折れて彼は息を引き取った。
言い切れないような悔しさを胸の中に感じ、
僕は力を入れすぎて出た息を小さくもらしながら、地面をにらみつける。
「くそぉっ!!」
また助けられ無かった。人一人救うことができなかった。
自分の不甲斐無さに腹が立ち、僕は地面を思いっきり殴りつけた。
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あとがき
この話絶対いらなかった。と書き終えてから気がつきました ´p`
でもせっかく頑張ったのでのせます。
焦らして焦らして進んでるけど、ちょっと構想飛んでるからまた練り直さないといけない orz
さーせん・・・