一歩校舎から出ると、一面は鮮やかなピンクだった。
一年の二人と話してからまもなく。
イザークはを探すことを諦め俺たちは帰ることになった。
イザークと別れた俺は彼の姿が彼の家の車の中に消えたことを見届けた後
きらびやかな背の高い正門アーチのほうでなくひっそりとした裏門へと真っ直ぐに足を向けた。
ひっそりしているといっても、防犯上守衛が駐在しているちゃんとした出入り口だ。
この金持ちばっかりの学校の正門と比べると小さいってだけ。大きさは普通の学校の正門とそう変わらない。
迎えの車が来るには不向きの場所なので
大抵の生徒が正門を使っているからひっそりとしているってだけの場所だ。
今日は入学式ということもあって、既に校内には生徒はほとんどいない。
そのために守衛の詰め所は空になっている。
今は無気質な防犯カメラがじーっと静かな起動音をさせて俺を監視しているだけだ。
門を一歩出て、それに一瞥してから俺は壁に背を預けて瞳を閉じた。
乾いた風が吹き俺の髪をゆらした。
ソレと共にコツコツと革靴の足音と黒い影が俺に近づいてくる。
「・・・どうしてここにいる?」
俺の姿を認めるなり、赤っぽい茶色の瞳を丸くしてから眉根を寄せて発せられた言葉はそれ。
同時に桜の匂いと混じりバラの香りが鼻腔をくすぐった。
随分とつめたい言葉に俺は苦笑を漏らしながら軽く肩を竦めて見せた。
「別にィ?、待ってただけ。」
「・・・。俺より後じゃなかったのか?」
「ん?は俺達に見つからないように色々迂回してきたんだろ?
そのせいじゃない?」
校舎を出て行くのは確かに俺達の方が後だっただろう。
だけど俺は一目につくことをはばからずに真っ直ぐに裏門へ。
は誰にも会わないように正門なんて絶対使わずに
いろいろと迂回して裏門に回ってきたはずだ。
ならば必然的に俺のほうが先に裏門に着く。
俺たちが捕まえるということをもう諦めたとしらないの瞳が剣呑に細められた。
「連れて行く気か?」
「や。もうイザークが諦めたし。
ほら、俺も帰るところ。」
通学用の鞄を少し上に持ち上げての視線をひいてみると
無関心そうにそれを見てから、俺の顔に視線をあげて
とても不服そうに端正な顔に眉を寄せ歩みを再開させた。
俺は僅かに笑いながら、少し小走りになってその隣に並ぶ。
「・・・どうしてついてくる?」
「のバイト先でなんか食べようと思って。」
「・・・ひやかしなら帰れ。」
「違うってー。そもそもおまえんとこひやかしでいって帰れるような場所じゃねぇだろ。」
そんなのただの理由。本当は理由なんてない。単にと一緒にいたいだけ。
コイツといるとなんか楽しいし落ち着くから。
「車・・・来てるんじゃないのか?」
いつもは使用人が運転する車で移動する俺が一緒に歩いていることに疑問をもったらしく
が顔をこちらにむけて問いかける。ふわりと蜂蜜のような淡い金色の髪が揺れた。
は歩きでそのままいって。俺はいまから車を呼び寄せ別行動。
そしてのバイト先にって勝手に食事しろ。ってことだろうけど。
を置いていくようなことは俺はしない。
そもそもと一緒じゃなければ行く意味がない。
追い払いたい。と言外に言われてる気もするがそこは気にしない。
「車は帰らせたから問題ないけど?」
「徒歩40分だが?エルスマンの御子息。」
「いーんじゃね?俺、体力はあるし。」
おどけるように言って見せるとは僅かに口の端をあげて
視線を俺から外した。
が軽く笑った。その事実が妙に嬉しい。
「御子息ならソレらしくすればいいものを。」
「俺はそんな体裁気にしねぇし?」
そんな体裁よりといたい。
こんな身分だから俺に媚売って近づいてこようとするやつはかなりいる。
そうでなくても俺の間に壁があるとでもいうような態度をとるやつがほとんど。
エルスマンという名前が俺を見る目にフィルターをかける。
はっきりいってそういう奴らとお近づきになるなんてこっちからごめんだ。
だから仲良くなるのは俺の家柄と同じかそれ以上の相手ばかり。
けれどは珍しく俺のことをフィルターをかけた目で見ない。
等身大で俺と付き合ってくれると一緒にいるのは心地良い。
少し首をかしげていってやるとは顔を手で覆い
盛大に溜息をついて見せた。
「じゃぁせめてそれらしく高いの頼め。店の売り上げに貢献しろ。」
「OKー。」
どうやらついていくお許しがでたようだ。
まだ少し不機嫌そうなの後をなにも言わずについていく。
周りの景色が閑静な住宅街から街の風景へと変わっていっていた。
4月上旬。空気がわずかにつめたいものの空からふる光は暖かく柔らかだ。
「エルスマン」
「んー?」
が一度歩みを止めて俺の方を振り向いて名前を呼んだので
ポケットに手をつっこんだまま、小さく首を傾げて答える。
「後ろに付いて来ているアレはどうにかならないか。」
俺の後ろをは親指で示す。
首をのけぞらせて後ろをみるとすっかり見慣れた顔があった。
「あー。無理。」
俺の視線の先にいるのは黒のスーツではなく普通の服に身を包んだ我が家のSP。
この街中でうまく一般人に紛れているが毎日顔を見合わせてる俺には一発でわかる。
俺は一応多くの事業を手掛けているエルスマングループのボンボンだから、
誘拐対象の部類に入る。
おとなしく捕まってやるつもりは毛頭ないけど、
護衛なしってなると大勢で来られたとき対処ができない。
面倒だけど小さな頃からずっと続いているものなので、
最初の頃は頑張って逃げていたけど最近では仕方ないと諦めてる。というか慣れた。
「っていうかアイツらに気付くとかさすが?」
くすっと笑みを浮かべ語尾の調子を上げてみせるとがむすっと眉間に皺を寄せて早足になった。
「ちょっ…!なんで怒るんだよ!褒めただけじゃん!」
「おちょくられてる気がする」
絶対に俺には視線を会わせないとでもいうようには真っ直ぐ前をむいたまま答えた。
確かにおちょくる気持ちがなかったとは言えないけど、今回はの勘の良さを普通に褒めただけなのに。
「なぁ、ー。さーんー?おーい。」
母親にまとわりつく子供の様に俺はの名前を呼び続けた。
すれちがう人たちの視線がちらちらと突き刺さる。
けれど呼ぶのをやめない俺についには折れたらしく、小さく息をはいて俺に視線をむけた。
「エルスマン。俺、やっぱりお前と一緒に歩くの嫌だ」
「そう固いこと言わずにさぁ」
眉を下げて苦笑を浮かべるとはツイと顔を前に向けて俺から一定の距離をあけて歩きだした。
走って近付くこともできるが、今は余計な刺激をする必要はないだろう。
俺がと同じ速度で歩いているために二人の間には一定の距離が常にできていた。
着かず離れず。
それが妙に面白くて思わず小さく吹き出すとが少しだけ眉間に皺をよせてこちらに振り向いた。
「何がおかしい」
その声がいつもよりずいぶんと低音。俺は眉をさげながらへらりと笑って見せた。
「やぁ…この距離縮まらねぇな。と思ってさ」
「縮まらなくていい」
さっくりとは俺にいいかえす。
その仕草がわがままな姫のようだ。
そんなことを俺が考えているとは知らずには更に続ける。
「むしろ本気で来なくていい。」
「あー。無理着いたし。」
こちらを向いているの後方約50m。人が行きかう街の中。
明らかに異質なはずなのにその場に溶け込む和風の度でかい門を俺は指差した。
は指差した方向を向いてから眉根をきつく寄せて俺の方を見た。
「季節の懐石。」
「りょーかい。」
ただ一言そえられた言葉に俺は苦笑を浮かべながら頷いた。
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2007/06/05
あとがき
ディアッカとは煙たがってるような振りして
仲良しでイザークとも鬱陶しがってるふりして仲良しならいい。
・・・おかしいな。この主人公攻めで行くつもりだったのに総受けのにおいがする(黙れ)