渡り廊下から二つの影が見える。
ひとつは夜のような闇色の髪。もうひとつは甘い蜂蜜のような金色の髪。
じーっと、渡り廊下の柵にひじをついてその様子を見守る。
(・・・何、話してるんだろ)
アスランにしてはずいぶんと表情が柔らかい、対する先輩はどこか表情はどこか硬いもの。
しばらく見ていてもあちらがこちらに気がつく様子はない。
1階と2階だから当然だけどあちらの声がこちらに届くこともない。
向こうの状況がまったくわらかなくてその状況になぜだかイライラしてきて、次第に眉根がよっていく。
(あれ・・・?)
なんでこんなにもやもやするんだろう。
ぎゅっと胸の前の制服をつかんで目を閉じる。
けれど胸のもやもやは収まることはない。
(・・・さんに本気ってこと?)
まさかこの僕が?
そんなはずないと自嘲気味に笑いながらも、心はずきりと痛みを訴える。
肘を柵からおろしてくるりときびすを返し僕は教室のほうへ向かう。
さっきの光景が頭から離れない。
何をそんなに気にするのか。別に気にする必要なんてないはずだ。
(いつもの遊びなんだから)
パタンパタンとわざと大きな音を鳴らしながら白っぽい灰色の石畳の廊下を歩く。
リノニウムにしちゃえばいいのに変なところでこだわりがあって、
開校当初からここの廊下は石畳のままらしい。
補修する時もちゃんと石畳。
(こけたら痛いじゃないか)
こける輩もそう簡単にはいないだろうけど怪我したら大変。
小さく息を吐く。
理不尽な怒り方だとはわかっていても何かにあたらなきゃやっていけない。
(あーもうむしゃくしゃする!!)
すれ違う人たちが僕のほうを不思議そうな表情で見ている。
得体の知れない笑みを浮かべる子ってことで僕は一応有名らしいから
こんだけ荒れてるのはやっぱり珍しいのかもしれない。
足音を荒くして、一応床に八つ当たりしながら教室に向かっているとだいぶ落ち着いてきた。
だけど教室に入る直前で前から闇色の髪を持つ友人がこちらに歩いてくるのを見つけてしまった。
なんてタイミングの悪い。クラスが同じだからいつか会うのは当然だけどこのタイミングはないだろう。
相手もこちらに気がついたようでにっこりと微笑み僕のほうへ手を軽く上げてみせる。
(ポーカーフェイス・・・頑張れ、僕。)
「やぁ、アスラン」
「キラ、お前どこにいたんだ?探してもいないから。」
「ごめん。購買でパン買ってそのまま屋上で食べてたんだ」
それでここに帰るときにさんたちを中庭で発見。
ほんとタイミングが悪いのか良いのかわからない。
そして再びやってくるもやもや・・・あぁ、もう。
「僕、アスラン見たよ。中庭にいたでしょ?」
「え?あぁ、いたよ。」
一瞬きょとんとした表情をみせてから、いたって普通に笑みを浮かべてアスランは答えた。
この反応ってことはべつに普通の会話だったのかもしれない。
普通じゃない会話ってなんだ。って聞かれると困るのだけれども。
そして想像もしたくない。
「さんと一緒だったよね。何話してたの?」
教室に入りながらにっこりと微笑をつけて問いかける。
対するアスランも僕に続いて歩き出した。
いったいどんな返事を期待して訊いた質問なのか。
どんな返事ならこの胸のもやもやが収まるのか。
それはわからない。
けど訊かずにはいれなかった。
「さんが告白されてるのをみてしまったんだ。
ただそれだけだよ。」
「告白っ!?」
「あぁ。」
思わず大きな声を出してしまってから僕は自分の手で口をふさぐ。
クラスメイトたちの視線が痛い。
(告白?さんに告白?)
確かにあんなに綺麗な人なんだから告白されてもおかしくない。
だけどなんでこう自分の所有物を取られた気分になるんだろうか。
さんは自分のものではないってことぐらいわかってる。
でも、続きが気になって仕方がない。
「それでっ・・・さんはOKしたの!?」
「いや断ってたよ。」
アスランはにっこりと笑ってあっけらかんと答える。
その言葉に胸をなでおろして僕は小さく息を吐いた。
あぁ、もうなんで僕ともあろうものがこんなに安心してるんだ。
「ちなみに相手は?」
「言うなって言われたから言えない。」
「・・・僕にでもいえないの?」
「キラだから余計言えないかな。」
暗に相手に何かしに行くつもりだろう?とアスランは笑みを深める。
それに僕は言葉を詰まらせる。
「顔・・・見に行くだけだもん。」
「それでおさまるのか?」
「〜っ!」
言葉にならない声を上げ僕は頬を膨らませる。
その様子にアスランはくすくすと笑みを深めた。
アスランは正しい。
顔見に行くだけで済ませれるなんて思えない。
たぶん、僕はなにかやらかす。
だってさんは今、僕の一番のお気に入り。
(・・・本気じゃないはずなんだけどね)
おもちゃのようなものなんだと思う。たぶん。
っていうかそうじゃないと僕が困る。いろいろと。
今まで突き通してきたスタンスというかそれが崩れる。
(コレ言ったら絶対殺されるなー・・・)
誰にとは言わない。
でも彼を溺愛してるあの人に殺されるのは確実。
「始まるみたいみたいだぞ、キラ。」
教室に教師が入ってきてアスランが僕に声をかけながら椅子を引いてそこに腰を下ろした。
僕も前をみて、次の教科を確認しアスランにならって席に着いた。
***
俺の目の前の席で眠るチョコレートみたいな茶色の髪の幼馴染。
規則的に動く背中は彼が熟睡してることを知らせるものだ。
しかし、教師からはうまく死角になってるらしくまだ気づかれていないらしい。
この幼馴染は小さいころからそういうところに関しては天才的だ。
クスリと微笑み、先ほどの会話を思い出す。
(・・・まさか告白されてた相手が男だったとはいえないな)
だからこれは俺の胸の中にしまっておこうと思う。
2007/09/26
あとがき
ヤマト様嫉妬をするの回。
主人公さんほとんどでてきてないですね orz
そして一言も話してないという
・・・そんなサイトです 笑